謎が多い男
「学園長なんて説明すりゃあ……あ〜……でもゾンだけなら……面倒なことにならなきゃいいが……」
西谷さんが俺と雨翔先輩の前を歩きながらボソボソと呟いている。ちなみに面倒なことではある。俺が妹に会いたいが為にここまできているのだから。そういえば、西谷さんが雨翔先輩と知り合いなのか?
「西谷さんが雨翔先輩と知り合いの先生なんですか?」
「そうだね……あと何人かいるけど……」
「そうなんですか……」
一応隣にいる雨翔先輩に訊いてみると、そのような答えが返ってきた。……もしかして清院学園よりも王義学園の方が関わり深かったりするのか雨翔先輩は……。
「よし、とりあえずこっち来てください」
そう言って、西谷さんは応接室と書いてある看板がかかっているドアを開ける。応接室……京宮のことを嫌でも思い出すな。まぁ、今はそんなことはどうでもいいか。西谷さんに続いて俺と雨翔先輩がその部屋の中に入る
「清院学園より綺麗だな」
思わず呟いてしまった。応接室の中は清院学園より綺麗で、少し見回してみるとウォーターサーバーもあった
「こっちは国に支援されてるんで、設備が向こうよりいいんですよ。どうぞ、座ってください」
「なるほど」
その呟きが聞こえていたのか、西谷さんはそう説明し、俺と雨翔先輩を大きなソファに座るように促す。そして西谷さんも咳払いをしながら、机を挟んだ対面のソファに座って、本題に入る
「で、ええっとゾンの話でしたっけ?」
「そう……何処にいるかとか……知ってることを教えて欲しい……」
ソファに座りながら雨翔先輩がそのように訊いた。俺も同じように座って西谷さんの返答を待つ
「私はあんま、知らないんですけどね〜……それでも、教えますよ」
「ありがとうございます」
俺は座りながらだが、頭を下げて西谷さんに感謝の意を示した
「いやいや……というか、君、雨翔さんとどういう関係なんだい?」
「友達です」
それ以上でも以下でもないだろう。協力者でもあるけれど、そっちの方は説明が面倒なので端的に俺は『友達』とだけ答えたのだ
「……はえ〜……まぁ、分かった。とりあえず私が知ってるゾンについてのことを話そう」
俺と雨翔先輩はその言葉に頷いて、姿勢を軽く正した。それを見た西谷さんは少し笑って、そして話し始める
「ゾンはうちの三年生でね……君たちも知っている通り、ここは実力主義」
それは知っている。王義学園は完全実力主義で、決闘が盛んに行われている。それと、優秀な人材を他校から推薦したり……中学生もスカウトするらしい。西谷さんは続けて言う
「もちろん、異能都市1位であるゾンは優遇されているんだ。学校に来なくてもいいほどに」
「そういうことか……」
王義学園に行けばゾンがいるかと思っていたが……そういう理由でゾンは学園に来ないのか
「あと、これは雨翔さんは知ってると思うけど……10位以内だと家が支給される。というか、何に対しても優遇だ」
その言葉に対して、雨翔先輩は頷く。西谷さんは少し息を吸って、溜めて……息を吐きながら言った。呆れているというか……諦めたような声色で言った
「つまり、ゾンは複数の家を所持している」
「場所が分からないってことですか!?」
大富豪かよ。複数の家を所持ってそりゃ諦めるもんだ。……呆れるもんだ。思わず立ち上がって叫んでしまったが……ゾンを本当に見つけれるのか?
「あぁ、少なくとも私は知らないよ。学園長なら知っているかもしれないが……」
「じゃあ学園長に……!」
そうやって焦る俺に対して、西谷さんは冷静に宥めて言葉を返す
「落ち着いてくれ。何に焦ってるのかは知らないが、学園長も忙しいんだ」
……熱くなりすぎた。反省しなければ……。
そう考えて、ゆっくりとソファに座る。その間に雨翔先輩が西谷さんに詳細を訊く
「……今ゾン君が所持している家の軒数はいくつくらい……?」
「少なくとも5軒、多くて15かな」
「やばっ」
反射でその言葉が出てしまった。多くて15だと……?どんな金持ちだよ……
「だろ?1位って称号にはそれくらいの力があるんだ。夢のような話だよな〜」
西谷さんが笑いながらそう言うが、雨翔先輩は真剣な顔でまた訊いた
「他に、ゾンについての情報は……?」
「容姿についてと……あと何かあったかな。これもまた雨翔さんは知ってるけど、違法な研究施設を潰しているんだよ、彼は」
そうだ、それも気になった。確か雨翔先輩が言っていたけれど……。俺はその理由を西谷さんに訊いてみる
「理由は知ってるんですか?」
俺がそう訊くと、西谷さんは首を振って険しい顔をして俺に言う
「いや、知らない。けれど彼も色々あった身ではあるらしい。詳しくは知らないが……」
「謎が多い奴だな……」
紗耶の為に会おうと思っているが、ゾンも少し気になってきたぞ。それでも流石に紗耶が最優先だが……。西谷さんは俺の呟きに対して気にせずに、急にニヤニヤと笑い出した
「あと一つ忠告しておくと、戦おうとしてるならやめた方がいい」
「戦うつもりはないんですけど、なんでですか?」
「強すぎるんだよ、彼。日本で二人目のSランクなんだ」
ニヤニヤ笑ってたの自慢したいだけかよ!!忠告になってるのかそれは。だが、Sランクか。世界を崩壊させる力を持つレベルのランク……京宮が一人目で、ゾンが……
「二人目の……Sランクか」
「初耳……」
雨翔先輩はどうやら驚いているようだった。俺も初耳である。てっきりとんでもなく強いAランクかと思っていたから、そう思うのもしょうがないだろう
「まぁ、彼は隠したがってるし。一般人は知らないよ」
西谷さんは自慢気だ。なんでさっきあんな険しい顔してたんだよ……という疑問は置いておいて、他の疑問に思ったことを西谷さんに訊く
「そうだ、なんでゾンって名前なんですか?まさかそれが本名だったりするんですか?」
「違うね、彼の名前は別にある。けれど、誰も知らないんだよ」
「本当に謎が多いな異能都市1位」
これ以上情報があるのだろうか……。雨翔先輩も同じことを思っていたらしく、西谷さんに訊いていた
「……今分かるのはそれくらい……?」
「必要なら顔写真と家が何処か書いてある地図を渡す。ゾンがいる所の特定は自分たちでしてくれ」
「分かりました、ありがとうございます」
「いやいや、雨翔さんの前で変なことも出来ないしね」
そういう理由かよ。いやありがたいんだけどな?……実力主義というのをひしひしと感じるのははっきり言って苦手である。その言葉を聞いた雨翔先輩は立ち上がって、笑顔で西谷さんに近づく
「僕が居なかったら変なことをするつもりだったのかな……?」
「いっいやいや!!そっ、そそ、そんなしませんよ〜。とっ、とりあえず色々持ってきますね〜」
めちゃくちゃ冷や汗が出てたな西谷さん。ここからでも見えるくらいに。立ち上がって部屋から出て行ったが……
「ここから大変だね……」
雨翔先輩が俺の隣に座って微笑みながら言う。そんな雨翔先輩を俺は少しからかってみる
「そうですね、ここから先は協力しなくてもいいんですよ?」
「冗談で言ってる……?ちゃんと最後まで協力するよ……」
頬を膨らませて、怒った顔になる。ふと思ったが、雨翔先輩ってみんなから避けられてる割には表情豊かだよな……。口に出したら失礼な気がするから言わないが、その代わり協力してくれるという言葉に感謝する
「ありがとうございます」
「星乃君、危ない……!」
「え?」
雨翔先輩が急に俺を地面に押し倒した。何が起こったかさっぱり分からないのだが……?なんで雨翔先輩は俺を押し倒したんだ……?
「っ!?」
辺りを見ると……さっきまで座っていたソファが真っ二つにされていた。そして男だが少し高めの、一つの声が聞こえた
「あれ、避けられた」
意外そうな声を発したそいつは、ソファを横に蹴飛ばして雨翔先輩に押し倒されたままの俺を見つめ、そして言った
「誰?」
「こっちのセリフだわ!!」
どうも皆さん、わがまくです
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異能都市の小ネタ11
Sランクで公開されている人は5人で公開されていない二人は日本のゾンと、アメリカの女性である




