優しさ
「はい、置いとくね……」
雨翔先輩が俺の座っている椅子の目の前に置いてあるテーブルに、料理が乗った皿を置く
ベーコン、トースト、目玉焼きと、なんの変哲もない洋食の朝ごはんである
「ありがとうございます、頂きます」
雨翔先輩に感謝を伝える
というか、これくらいなら流石に俺が手伝ったほうが良かったのでは……
……いや、何処に何があるのかよく分かっていないから無駄に動いて迷惑をかけるかもしれない
でもどこかで借りは返さないとな
と、そんなことを思いながらトーストを食べやすいサイズに千切って口の中に入れる
……久しぶりに誰かが作った料理を食べた気がする
外食とかを抜いてだが……
味は特に何も普通のトーストと変わらないはずなのだが、妙に美味しく感じた
「どう……かな……?」
いつの間にか向かいの席に座っていた雨翔先輩が、俺の顔色を伺いながらそのように訊く
「美味しいですよ。…………」
そこで俺は重大なことに気がつく
……なんで普通に可愛い女の子と一つ屋根の下で過ごしてるんだ?
そんなことを思ってしまったので、少し身体が熱くなる
久しぶりに、恥ずかしい気持ちになった
「どうしたの……?……あ……」
俺を見た雨翔先輩は察したようで、雨翔先輩も顔を赤くする
気まずい雰囲気になってしまった
その雰囲気のまま無言で食べ進めていると、雨翔先輩が声をかけてくる
「もう……頭痛いの大丈夫……?」
「は……はい!もう元気です!」
少し声がうわずってしまったが……雨翔先輩はそんな俺に微笑んで
「そっか……良かった……」
と言ってくれた
この人……やっぱり纏っているオーラのせいで避けられてる
俺はもう慣れたのだが
こんなに優しいのに……
……仲良しごっこはするつもりなかったんだが……
まぁ……紗耶を見つける為だからしょうがない
……しょうがないはずだ
そう自分に言い聞かせて、朝食を食べ進める
朝食を食べ終わり、学校に行く準備をする
大した荷物などないのだが……
……よし、行くか
そう考えて玄関まで足を進める
そして、玄関まで歩くと後ろから声をかけられる
「学校……行くの……?」
と、少し寂しそうな声で雨翔先輩が声をかけてくる
俺はそちらの方を向いて
「はい、そうですけど……」
と俺は言う
「僕……ついていっていいかな……」
雨翔先輩がそのように呟いた
俺に聞こえないように呟いたのだろうが、俺には聞こえてしまっていた
「いいですよ、一緒に行きましょう」
「えっ……聞こえてた……?」
俺は雨翔先輩の問いに頷く
「………本当にいいの?」
雨翔先輩が少し顔を俯かせながら訊く
「大丈夫ですよ、というかここから学校の道分からないんで、着いてきてくれた方が助かります」
それを言うと、雨翔先輩は
「……準備してくるから待ってて……」
と言って、家の奥に入っていった
外に出ると、天気は晴れていた
俺と雨翔先輩は並んで歩いていく
とはいえ、道が分からないから雨翔先輩が数歩だけ先だが
歩いている時に会話はなかった
何か話した方がいいかと俺は思ったが、いい話題が見つからない
気になることは沢山あるのだが……無理に訊くのも嫌だから口には出さなかった
途中少し曲がる時に雨翔先輩が「こっち……」と言うくらいしか何も会話がなかった
そんな気まずい空気の中、学校に着いてしまう
他にも学校に来ている生徒はいるが……こちらを避けていた
数人が小さな声で話している
……話の内容は大体分かる
「ごめんね……」
雨翔先輩が俺に小さな声で謝った
雨翔先輩は何一つ悪くないのだが
「気にしてないですよ」
俺は一言だけ言った
「星乃!昨日は大丈夫………」
後ろから呼びかけられて俺と雨翔先輩が振り向く
草薙がそこにはいた
雨翔先輩の顔を見るなり、口の動きが止まったが……
……そういえば、こいつにも借りを返してなかったな
俺を置いて逃げた借りを返してなかった
俺は動きを止めている草薙に瞬時に近づいて鳩尾に一発入れる
草薙は「ぐぉっ……」と言いながら腹を押さえながら倒れた
「よし、適当に屋上で時間潰しましょう。雨翔先輩」
俺はそう提案して、雨翔先輩の手を軽く引っ張って靴箱まで歩いていった
屋上に着いた
時間を潰すならここが一番いいだろう
あまり人も来ないだろうし
「……なんで屋上に……?」
雨翔先輩が屋上に来た理由を俺に訊く
「いや……わざわざ無理して授業に出なくてもいいと思ったので」
俺がそう答えると、雨翔先輩は微笑んで俺に向かって言った
「……優しいね、星乃君は……」
……優しいと言われるほど、俺はできた人間ではないのだが
「そうでもないですよ」
とだけ言って、少し進んで柵に寄りかかりながら座る
雨翔先輩も同じようにして俺の左側に座った
俺は携帯とイヤホンを取り出し、雨翔先輩に提案する
「……暇だし、音楽でも聴きますか?」
「いいの……?」
「良いですよ。一緒に聴きましょう」
俺がイヤホンの右側のほうを雨翔先輩に差し出して、俺は左側を耳につける
俺は携帯で適当に寝る前に聴くような優しめの音楽を指定して流す
これから……大事件が起きるとも知らずに
どうも皆さん、わがまくです
呼んでくれてありがとうございます
異能都市の小ネタ
異能都市6位の草薙、実は姉と二人で暮らしています
親とは別居しているけど、仲の良い家族です
そんな草薙は最近反抗期で学園とかも一時期騒がせたりしましたが……
現在は星乃に一方的に倒されて大人しくしていますね
それではまた会いましょう




