憂鬱
「……拒否権は?」
『殺し合おう』と言ったそいつに、俺はそう問う
殺し合いまでいったら間違いなく俺は殺されるのだが
でもこいつは……自分が面白いと思ったことをとことんやる奴だ
だから答えは……
「ない」
食い気味にそう言われた
やはり予想通りの言葉が出てきた
そして、予備動作など一切見せずに蒼は瞬時に自分の背後を取る
…………キンッと、金属がぶつかり合う音が辺りに響く
「やるやんけ」
自分は蒼の移動に反応して、ナイフを腰から取り出しながら蒼から放たれる攻撃を防ぐ
……瞬時にナイフを取り出せたから良かったものの、反応出来なければ確実に死んでいた
ナイフとナイフで鍔迫り合いになっている
力は……こちらがほんの少し押しているが互角
しかし蒼はもう一つのナイフを取り出し、こちらに攻撃してこようとする
「ちっ……!!」
思わず舌打ちをしてしまう
鍔迫り合いになっているナイフを弾いて、地面を蹴り5m程距離を取る
蒼は……ニヤニヤと笑っている
クソ、面倒にも程があるぞ……
と、そんなことを思っていると……
「どーん」
「!?」
少女の声がした
それを聞いた瞬間、急激に身体が重くなる
膝をついてしまう程、身体が重くなる
何が……起こった!?
ゆっくりと視点を動かして声がした方を見ると……
身長が140cmくらいしかない黒髪の少女がいた
「遅いよ、甲斐。何してるの?」
その少女は蒼に対して、呆れながらそう言った
「悪いなぁ瑠美。でももうちょい遊ばせてくれや」
蒼がそう言葉を返してジロリとその少女の方を睨む
口は笑っていた
瑠美という少女はそんな態度の甲斐に睨み返し
「パパが早く戻って来いって」
と、少し怒気を孕んだ声で言った
それに対し蒼はやれやれ、と呆れた雰囲気を出してその少女の方へ向かう
そして蒼が、瑠美という少女に何かをされて動けない俺に対して言った
「それ、時間経ったら直るから。安心しとき」
そして、道路の曲がり角まで行って姿を消した
「星乃君、大丈夫……?」
雨翔先輩がそう訊いてくる
大丈夫かと言われれば大丈夫ではないのだが……
甲斐の奴に蹴られた頭が滅茶苦茶に掻き回されてるくらい痛い
なんとか意識を保ちながら肩を貸して貰って歩けているが……
「大丈夫……ではないですけど……」
と、頭を抑えて痛みに苦しみながら訊いてきた質問に答えた
「今は……病院に向かってるんですか?」
今何処を歩いているのかも分からない自分はそのような事を雨翔先輩に問う
「うん……少し遠いけど……」
雨翔先輩は俺の様子を心配しながらそう言った
それに対して俺は……
「雨翔先輩の家のほうが近いですか?近いなら……そっちの方が助かります」
流石にこのまま歩いていたらいつか気絶してしまいそうだ
だから俺は雨翔先輩の家が近いならそちらへ行こうと提案する
「……分かった……そうしよう……」
雨翔先輩はその提案に、更に進んで行って……
家の前まで来た
一軒家……学生が……
滅茶苦茶立派とまでは行かないが、綺麗な一軒家だった
異能都市上位勢だからか……?
そんなことも考えたが、早く休まないと頭が壊れそうなので思考を止める
「じゃあ、入ろっか……まだ大丈夫……?」
雨翔先輩は心配してくるが……
「なんとか……」
と、苦しみながら返答することしか出来なかった
そして家の中に入り、リビングまでたどり着いた
俺は置いてあるソファにグッタリと横たわる
意識が段々薄れていくのを実感した
やぁ、星乃龍弥君
甲斐君にこっぴどくやられたみたいで何より何より
今回は僕の命令じゃないんだけど……
まぁ、あいつも相当自由な奴だから好きにさせてやっているが
……誰かって?
『カミサマ』
……と呼ばれている
厳密には名前なんてないもんだけどね
ここは何処か……ね
なんの変哲もないただの暗闇だけどなにか?
あははっ
同じ言葉を繰り返すのは私は好まないんだけど、厳密に言えば君の夢の中
起こっていることは現実だけどね
俺が話していることは
現実であり、事実だ
真実かと言われれば少し違うけれど
まぁ、そんなこんなで君は僕に生まれた時から選ばれている
俺が利用する為だけに
私の言う事は絶対だ
……そんな顔するなよ、何人か殺して貰うだけだから
ほんとうに嫌そうな顔するね
割と君はもっと残虐に成長するもんだと思ってたんだけど……
そんなことなかったかな
まぁいいさ、そのうちまた君の夢に現れるし
嫌なら精々抗ってみなよ
あと甲斐君がやったやつはサービスしてあげるから
それじゃあまたね
「……!?」
白昼夢から目が覚める
身体を起こして、自分を落ち着かせようと深呼吸をする
少し落ち着くと、いつの間にか毛布がかけられていたことに気づいた
今の時刻は……いや、ここは雨翔先輩の家か
時計を探して辺りを見回す
キッチンの近くの壁にかかっていた
6時半を指している
それを見てから大きなため息を吐く
時計のせいでため息を吐いたのではなく、先程までいた夢に対してため息を吐いた
そして、昨日起こったことを思い出す
……甲斐直人、生きているとは思っていたが、まさかあんな形で再会するとは思わなかった
昨日顔面を蹴られたが……顔面というか、脳天を蹴られたのだが……
治っている……
痛みが全然感じられない
夢の中で言っていた『サービス』とはこれか……
そんなことを思いながら身体を立ち上がらせ……
「……あれ……星乃君……?」
立ち上がった所で雨翔先輩がリビングに入ってくる
名前を呼ばれてどうしようかと、迷ってしまう
そんな様子を見て、雨翔先輩は
「朝ごはん作るから、待ってていいよ……」
と言ってくれた
好意を無下に出来ない俺は、朝ごはんが出来るまで椅子に座って待つのだった
どうも皆さん、わがまくです
読んで頂きありがとうございます
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