星乃龍弥の目的
「異能都市に来た目的……?」
俺は雨翔先輩からされた質問を口に出して反芻する
なんでそんなことを訊いてくるのだろうか
まず最初にその疑問が浮かぶ
……異能都市に来た目的……言うつもりは毛頭ないのだが
「だって星乃君は……何か隠してるから………。目的の為に手伝えることがあるなら手伝うよ……?」
雨翔先輩が最初に会った時のような微笑を浮かべながら、俺の顔を見ながら言った
俺は雨翔先輩から顔を背けた
……なんで隠してるって分かったんだ
もしそれを言ったとしても……協力なんて……
……全く手掛かりが掴めなくても協力なんて!!
「大丈夫……?」
雨翔先輩が心配しながらそう訊く
俺は思わず顔を抑える
どんな酷い顔をしてたのだろうか
さっき背けた顔をまた雨翔先輩の方へ向ける
……優しい笑みを浮かべて、俺を見ていた
そして雨翔先輩は話し出す
「僕はね、とある人のクローンなんだ……」
……クローン……!?
クローンって確か……同じ人を作れる……
詳しくは知らないけれど、確か禁止されているはずじゃ……
そんなことを思いながら雨翔先輩の話を聞く
雨翔先輩は俺の驚いた顔を見てクスっと笑い、話を続ける
「それで……色々実験されて……今みたいになってるけど……それでも助けて貰ったんだ……」
そこまで言って、雨翔先輩は俺を真剣な顔で見て黙った
……だから助けたいということか
………………実験体だったなら、もしかしたら何か知っているかもしれない
俺の妹のことを
だから俺は言った
もしかしたら、本当は誰かに聞いて欲しかったのかもしれないその目的を……
「俺は……俺の妹を……紗耶を助けたい。その為にここに来たんだ」
俺は初めて誰かに自分の目的を話した
雨翔先輩はそれに対して……
「え?」
「お、お……っと」
俺が疑問の言葉を、一文字を放ち
ドリンクを作り終えて俺と雨翔先輩の様子を見ていた鬼頭さんが狼狽える
何故かって?
それは……俺が雨翔先輩に抱きしめられているから
体温が直に感じるくらいに
……この人距離感バグってないか?
「話してくれてありがと……って……あ……」
雨翔先輩の顔が赤くなる
自分がしていることに気づいたのか、すぐに雨翔先輩は俺から離れてしまった
「星乃君だったか……許してやってくれ、きっと初めて話せる相手が出来て嬉しいんだよ」
鬼頭さんが苦笑しながら俺にそう言ってくれた
雨翔先輩の顔がもっと赤くなってしまったが……
……顔を手で隠してしまったが
「とりあえず、作ったから飲むかい?置いておくよ」
そう言って鬼頭さんは俺の方へオレンジジュースが入っているグラスを、雨翔先輩の方にはコーヒーが入っているカップを置いてくれた
俺は自分の飲み物が入っているグラスを右手で取り、ゴクゴクと半分ほど飲み干した
少し喉が渇いていたから丁度よかった
そして今度は鬼頭さんが少し考えて俺に訊く
「妹さんを助けたいなら……警察に頼るのはダメなのかい?」
しかし俺はそう訊いた鬼頭さんの方へ向いて“それが出来ない理由”を告げる
自分でも分かるくらいに苦虫を噛み潰したかのような顔で
「違法な研究施設にいるんですよ……妹は。だけど異能都市上層部は研究施設を取り締まろうとしない」
きっと……他人の命よりも能力の開発の方を奴らは優先している
上層部が非人道的行為を認めているのだ
だから……警察は頼れない
「それは……困ったな……」
顔をしかめながら、鬼頭さんは呟いた
けどその代わり、少し落ち着いたのかさっきまで顔を赤くしていた雨翔先輩が元に戻って俺に言う
「……少し遠回りかもしれないけど、一つだけいい案があるよ……」
それに対して俺は思わず
「本当ですか!?」
と大きく反応してしまった
それに鬼頭さんも雨翔先輩も少し驚いた顔をしていたので、俺は小さく「あ、すみません……」と謝罪した
それにしてもやっぱり話してよかった……と、心からそう思った
しかし、安堵している俺に対して雨翔先輩は忠告をする
「けど、簡単な訳じゃないかも……」
と……
雨翔先輩はさっき置かれたカップを両手で持ちながら、コーヒーを一口啜って
そして、その良い提案とやらを俺に伝える
「……異能都市一位、ゾンに会う……」
異能都市……一位?
この異能都市最強の学生に会う……?
それとこれと何の関係が……
俺はそう思ったが、すぐに納得する理由を、雨翔先輩は伝えてくれた
「あの人は、違法な研究施設を潰してまわってるんだ……」
……そういうことか、と俺は納得する
紗耶をそのまま探すより、異能都市で有名な異能都市一位を見つける
そして、異能都市一位に違法な研究施設にいるはずの紗耶のことを聞けば……紗耶の居場所に近づけるかもしれない
確かに良い案だ
紗耶を直接探すのは一人では途轍もなく難しかったし……
だが、肝心な異能都市一位をどうやって探すか
それを考えなければいけない
その瞬間、扉が開く音がする
鬼頭さんがそれに真っ先に気がついたようで、すぐに「いらっしゃいませ!」と言った
こんな所に人が来るんだなと一瞬先程までの話題を忘れてそちらを見る
その男は赤いマフラーをしていて、6月には合わない季節外れの変な格好だなと思った
鬼頭さんほどではないが、そこそこ身長が高く青髪……いや、雨翔先輩よりかは少し濃い紺色みたいな髪色だが、前髪に赤いメッシュをしている。……そして糸目
……何か忘れているような……
「久しぶりやな、星乃」
その男は入ってから目が合った俺に向かって言う
いや、糸目なのでちゃんと合っているかは分からないのだが、俺に向かってそう言ったのだ
『久しぶり』と……
……何か忘れていたものを思い出した
思い出してしまった
俺とこいつは会ったことがある
……2年前のあの時に
こいつは……殺さないといけない奴だ
どうも皆さん、わがまくです
読んで頂きありがとうございます
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