最凶の異能都市4位
……能力練習場の入り口の扉に手がかけられて、開けられる
俺と草薙は身構えているが……
草薙はどうやら相手を知っているようだ
そして、完全に扉が開かれる
開けた人の姿が見える
普通のセーラー服を着ていて……青い髪に緑色の瞳……
それと……可愛い
だが、纏っている『悪』のオーラが尋常じゃない
正直すぐにでも逃げ出したいくらいには途轍もないオーラを発している
しかし彼女は俺らにゆっくりと歩きながら近づいて
「あれ、誰かいたんだ……草薙君と……誰かな……?」
と不思議に思ってそうな顔で言った
どうやら俺の存在は知らないようだが……
「雨翔先輩……どうも」
草薙が彼女に向かって挨拶をする
雨翔先輩……と
前に少し聞いた、最凶の異能都市4位ってのは……目の前の女子なのか
……確かに最凶だ
雨翔先輩は、草薙に対して笑顔で挨拶を返す
「うん……草薙君は……久しぶりだね……」
そして雨翔先輩は俺の目の前まで近づく
それを見た草薙はチャンスと思ったのか
「じゃ、じゃあ俺トイレ行ってくる!またな!」
と言って全力ダッシュで逃げていった
逃げ足が早すぎる
とりあえずまた会ったらあいつはぶちのめそう
そう考えて、俺は俺に視線を向けている雨翔先輩に向き直る
「は、初めまして……雨翔先輩」
緊張しながらそう挨拶をする
すると、雨翔先輩は笑顔で挨拶を返してくれる
「うん、初めまして……君の名前は……?」
挨拶を返してくれた後に俺の名前を訊いてきた
流石に俺の名前は知られていないか、まぁ有名でも困るんだけど
そう思いながら俺は自分の名前を言う
「俺の名前は星乃龍弥です」
と、端的に
すると雨翔先輩はもう一歩俺に近づく
俺は後退りしそうになったがなんとか堪え、その代わり雨翔先輩から顔を逸らす
「僕の名前は雨翔心……星乃君……かっこいい顔してるね……」
雨翔先輩はそう言いながら右手で、ゆっくりと優しく俺の左頬に触れる
頬に触れた手は温かかった
だが、急に触れられたので流石にビックリしてしまい、身体がビクッと震える
俺は雨翔先輩に思わず視線を戻す
……雨翔先輩は優しく微笑んでいた
この人、絶対纏ってるもののせいで避けられている
悪い人間にこの顔は出来ない
しかし、どう反応すればいいものか……
「君は……逃げなくていいの……?」
雨翔先輩が俺の頬に触れていた手をゆっくりと離し、微笑を浮かべたまま俺に訊く
きっと、草薙のように逃げた方がいいと思っているのだろう
けど俺は違う
「俺は……逃げませんよ」
はっきりと伝えた
雨翔先輩は口には出さなかったものの目を見開いて驚いている
……何故か分からないが、俺はこの人と一緒にいなければならないと思ってしまった
だから俺は逃げない
「……好き……」
雨翔先輩が小さく呟いていた
それを俺は聞き逃さなかった
……ん?……好き!?
どういうことだと、少し混乱してしまう
顔には出さないが……
「い、いや……何でも……ない……」
雨翔先輩が慌ててそう誤魔化すが……俺にははっきりと聞こえてしまっていた
好き……か
そんな感情、あいつにしか持ったことがないのだが
さて……どうしたものか
そう考えていると、雨翔先輩が話を切り出す
「こんな所で話すのもなんだし……美味しいご飯を作ってくれる喫茶店に連れてってあげようか……?」
確かにここでは他に人が来る可能性もある
なら、そこまでついていった方がいいかもしれない
そう考えて俺は雨翔先輩に伝える
「はい、お願いします」
と……
そしてついていくと、そこまで大きくはない喫茶店の目の前まで来た
というか……随分と入り組んだ所にあるんだな
そんなことを思っていたら、雨翔先輩が店の中に入る
俺もそれに連れられながら入っていった
……中はかなり綺麗だ
テーブル席が4つ……カウンター席が6つか
しかしそれだけ席があるのに、人が、客が一人もいない
そんなふうに店の中を見渡していると、カウンター席の方から「いらっしゃいませ!」とダンディな男の声がした
そちらの方へ顔を向けると、身長が2mくらいありそうな店の制服であろう服を着ている大男がいた
流石に驚くしかなく、一歩だけ後ずさってしまう
もう少しよくみると、眼鏡をかけていて髭もある
40代くらいの日本人だろう
それに、もう一つ目の前の男から感じたことがある
……強い、修羅場を何度も潜り抜けている人間だ
そんなことを思っていると、大男は雨翔先輩の方を見て驚く
「心!もしかして友達を連れてきたのか!?」
大男が雨翔先輩の方を向き、そう訊いた
心……雨翔先輩の下の名前か
どういう関係なんだ?
それと……果たして俺と雨翔先輩は友達なのだろうか
いや、疑問に思うのはそこではないのか?
……というか雨翔先輩のオーラを喰らって平気な人とかいるのか
疑問に思うことが沢山あるな……
「……友達かは分からないけど……ここの方が話せるし……連れてきた……」
雨翔先輩も友達かは分からないようで、そのように言った
それを聞いた大男はうんうんと頷いてカウンター席へと案内してくれた
俺と雨翔先輩は隣同士で座る
俺が右側、雨翔先輩は左側でだ
距離の間隔は割と近く、少し寄っただけで触れそうな距離だが……
それはそこまで気にしなくてもいいだろう
そんな中、雨翔先輩が俺の方を見て話しかけてくる
「……ど、どう……かな……?」
どうかなとは……いい感じの雰囲気と訊きたいのだろうか
俺がどう返そうか迷っていると、喫茶店のマスターであろう大男が雨翔先輩に言う
「おいおい、大丈夫か?」
俺に対してではなく、雨翔先輩に対してそう言った
心配しての一言なのだろう……雨翔先輩が顔を背けてぷくっと顔を膨らませているが
それを見兼ねて、とりあえず大男が俺に対して自己紹介をする
「私の名前は鬼頭重喜、ここの喫茶店を運営している者だ。それともう一つ言うなら……心の親代わりと言った所かな」
雨翔先輩の……親代わり
だから雨翔先輩のオーラも平気なのか
……雨翔先輩の実の親は?
まず最初にその疑問が浮かんだが、とりあえず鬼頭さんが自己紹介してくれたのでこちらも自己紹介をする
「俺の名前は星乃龍弥です。雨翔先輩とはさっき会ったばかり……ですね」
俺がそう言うと、雨翔先輩の顔が赤くなる
……言っちゃだめだっただろうか
その様子を見て鬼頭さんは困った顔しながら俺に言った
「すまないね、心は人と話すのがあまり得意ではないから困らせてしまうかもしれない」
……まぁ、そんな気はしていた
こんなオーラを纏っていちゃ、まともに人と話すことなんてないだろう
それは流石に失礼か
そんなことを思ったが、俺は表情を変えずに真顔で言う
「気にしてないですよ。あとオレンジジュースをください」
そう言うと、鬼頭さんは笑顔で
「おう、分かった。心もなんか飲むか?」
と言った
その言葉に対して雨翔先輩は顔を背けながら「コーヒー」と呟いて、それを聞いた鬼頭さんはドリンクを作り始める
……少し沈黙が続くが、やがて雨翔先輩がはっきりと俺に訊く
「異能都市に来た君の……目的を教えてくれないかな……?」
と……今まで俺が誰にも訊かれなかったことを
どうも皆さん、わがまくです
読んで頂きありがとうございます
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