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その他の短編集

AIでも書けそうw

作者: 皿日八目

 だいたいさあ、世界にはもともと山ほどの作品があったわけでしょ。たいていの人より千倍才能があって、千倍感性が鋭くて、千倍想像力豊かで、千倍勤勉で、千倍情熱をもっていた偉大なる先達の手になる作品が。

 

 そんなにすごい作品であふれかえっているってのに、にもかかわらず、なお新しい作品を自分の手で生みだしたいという人はあとを絶ちませんでした。


 今の時代のあらゆる領域の文化は、そんなことを考える人たちがいたからこそ築き上げられたのでしょう。


 これ以上はないのではないか、と思わせるほどのすさまじき名作の数々を前にして、しかしただひざまずき、あがめ、たたえ、うやまうことには満足できなかった。


 むしろそれを挑戦と受け止め、好いたり嫌ったり、影響を受けつつも、新しいものを作ろうと四苦八苦する人がいなかったときはありません。


 だからAIくんという、優秀なる新人君が同時代にいるからといって、人が創作をやめることも決してありません。肩を並べてともに励むことはあってもね。


 それにたとえ、さらにAIくんが進化して、完全に不自然さを克服し、いかなる指示にも完璧に応答し、完全無欠の結果を出力できるようになったとしても、やっぱり人は創作を続けるはずです。


 バーナード・スーツの『キリギリスの哲学ーゲームプレイと理想の人生』という本に、その理由が示されています。

 

 仮に、人間の住まうこの世界のあらゆる問題が解決され、すべての労働が必要なくなり、未解明の謎もなにひとつなくなったとします。まさしく天国のような世界。

 

 もう人間は、何もする必要がありません。どんなものでも機械が勝手にやってくれますし、作ってくれます。しかも人間以上にうまく。


 で、そんな世界で人は何をしたらいいのか。どんなふうな生活を送ると予想されるか……


 ――それでもやっぱり、人は自分の手で何かをしようとするでしょう。


 たとえ機械のほうがずっとうまく作ってくれるとしても、料理をしたり作曲したり絵を描いたりするでしょう。


 学問上のすべての問題への解答が与えられたとしても、人は自らの手で問題を検討するでしょう。


 それは人が昔からずっと好きだった、「遊び」なのです。


 楽しみのため、幸福のため、生きがいのため、欲求のため、あるいは死ぬまでの暇つぶしのために、人は自らの手と頭を使って遊ぶことをやめないはずです。それがサガです。


 優秀なる同時代の新人君が、たとえ常人の千分の一の時間で、等倍かそれ以上のクオリティの作品を、千倍の量作ろうとも、それでいまさら創作意欲を萎えさせるほど、人は謙虚じゃありません。


 そも、とてつもない名作がとっくに山ほどあるってのに、ずうずうしくもなお自分でそれに何かを付け加えようとする身のほど知らず恥知らず恐れ知らずの、おこがましい、思い上がった、厚顔な、鉄面皮の、わきまえない、はばからない動物こそが、人間だったのですから。


 ――とはいえ、そう考える人ばかりでもないでしょう。少なくとも二種類の人がいるであろうと、恐れ多くも申し上げます。


 他者が楽しそうに、巧みにゲームをプレイしている動画を見て、それで満足して自分ではやらない人。


 もしくは、こんなに上手にはできないかもしれないけど、それでも、自分自身でもやってみたいと思う人。


 どっちがいいもわるいもありませんが、後者に属する人は、どのような時代が訪おうと、創作をやめることはないでしょう。



「この話きみが作ったの? AIでも書けそうw」


「まあね でも 自分で作ってみたかったんだ」

 

 Tomisuke配列の練習を兼ねて書きました。やっぱり新しいことを覚えるのは楽しいですね。

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― 新着の感想 ―
[一言] 言われてみれば確かに、何故素晴らしい作品がこれだけ世に溢れているのに、我々はまだなにかを生み出そうとするのでしょうね。 考えたことがなかったのですが、こちらの作品を読ませて頂きながらなるほど…
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