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Eraser Coincidence Flare Star 4

「姉……さん…?」

姉さん。


「そうよ?アリアナ。」

探していた姉さんが目の前に居る。

記憶とも一緒、間違いなく、同じ。

四十年。

四十、年、探、した。

探し、てい、た。

目の前が滲む。

「なま、名前が、名前っがっ、思い出せなーー。」

出会っても、名前が出て来ない。

ただ、喚く事でしか伝えられない赤ん坊の様だ、今の私は。


「ごめんね、アリアナ。

 もうこの世界の人が私の名前を思い出す事は出来ないわ。

 私の事を口に出すとまた奴等がやってくるから、そういう風にしたの。

 貴方の許可を取らなくてごめんなさい。

 まさか私の写真が残ってるなんて思いもしなかったわ。」


奴ら、きっとさっきフラムさんが戦っていたーーーーあれ? 何かと戦ってた筈なのに。

「ーー奴等って言うのがが何かももう漠然としてきてわからなくなってきてるけど、姉さんのことを姉さんとしか呼べないのはもう嫌ーー。」

子供の様に泣きじゃくってしまう、言葉も思ったものだけが乱雑に出てる。

でも、それ以外に何もできない。

「...あー、仕方ないなぁ。

 アリアナ、こっちに来て?」

姉さんが手招いている。

椅子をずらして、姉さんの隣。

頭に手を乗せてくしゃくしゃと撫でてくれる。

ーー懐かしい、感覚。

「本当は消えちゃう記憶なんだけど、貴方が口に出すまでの間だけは保持出来るように刻印してあげる。

 本当はこんなリスク負いたくないけど、可愛い妹のためだからね?」

「姉さん......?」

姉さんが私の額に指を当てる。

見えない何かが、指先から放たれ、私の頭蓋をすり抜けて、全身を巡る。

別に、光ったわけでも、音が鳴ったわけでもない。

でも何かが起きている。

「色々いじっといてあげるから、シガレットとは仲良くしてあげてね?」


するするすると、脳裏に刻まれていく。

村の中の小さい頃。

焼かれた村から飛び出した後の、暫くの間。

シルヴィアとの出会い。

招き入れられた、オルガナの街、というか当時は村。

街の開拓の手伝いと、よくシルヴィアに呼ばれる様になった姉さん。

そんな記憶がザーッと流れていく。

姉さんと話すフラムさんとソリアさん。

姉さんと一緒に土をイジるアーシアさん。

マークス、バチスカと討論をする姉さん。

彼方とお茶してる姉さん。

ストリアの悪戯にシルヴィアと一緒に眉根を寄せている姉さん。


失われていた筈の姉さんとの記憶。

そしてーーニーチェを名乗る化生のことも。

その全てが違和感なく、欠けたパズルピースをつなぎ合わせるみたいに嵌っていく。


姉さんの名前も、思い出した。

と同時に姉さんの声が聞こえて来る。

「アリアナ、貴女の記憶は戻したけど、さっきも言った通り私の事は口に出しちゃいけないわよ?」

理由は分かる。

「うん。」

「ふふ、やっぱり素直ねアリアナは。」

どういう理屈か分からないけど、姉さんの事を口に出せばアレがやって来る。


「あと、アリアナ。

 シガレットに勘違いでした、御免なさい。 ってキチンと言うのよ?」

そうだ、私は姉さんと勘違いしてあの人に多大な迷惑をかけてる。

それに、さらった人間にも、助けるためにやって来てた奴らにも。

「うん、ちゃんと謝る。 ......姉さん?」

「なぁに、アリアナ。」

「次は...何時会えるかな?」

姉さんは10分でいなくなるって言ってた。

もう時間は3分もないかも知れない。

だから、聞きたい。

会えるなら会えると、会えないなら会えないと。

頬を緩めて姉さんが笑いかけてくれる。

ああ、何時もの笑顔。


「......私の望みが叶った時にはきっと逢えるわ。

 だから、ね?」

「うん」

クシャクシャと髪を撫でて笑いかけてくれる。

記憶の中の姉さんと同じ様に。

「ヨシ、いい子。

 じゃあ、元気にしててねアリアナ。

 ...っと、そうだ、これ渡しとくね。」

姉さんが便箋を二つ取り出して、こっちに渡して来る。

「一つはすぐに開けていいよ、アリアナを鍛えられる場所が書いてあるから。

 もう一つはその人への紹介状、シガレットが貴女の力を必要にする日が来るから、それまで揉まれておいてね。」

「分かった、姉さんの言うことならなんでも正しいもの。

 だから私は姉さんをーー」

「...私を目標にするのは良いけど、アリアナはアリアナの道を行きなさい。

 私と同じ道を歩むと嫌なものに目をつけられるから、ね。」

そう言いながら、私に笑いかけ、抱き締める。

「ほら、ギューッ。

 …ね、アリアナ、貴女はこれで頑張れるでしょう?」

暖かい、姉さんの腕。

落ち着く……。

眠く、なる……。


「疲れてたのね、おやすみ、アリアナ。」


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