Hookah and cigarettes 8
灼熱が、辺り一面を包む。
ジャヴァウォッキーが燃えていく。
食道を焼かれ、肺を焼かれ声を上げられないまま、天に慟哭して。
元が死体だからだろうか、枯れ木を焚べたかのように燃え尽きていく。
私の体も、大量に付着していたコールタールが燃焼点に達して服ごと焼いていく。
皮膚が焼き切れ、脂肪を燃料に筋肉が燃え、骨が炭化し、内臓を舐めるように火が侵食してくる。
それでも、意識を切ることが叶わない。
内側から盛り上がってくる肉が、その気持ち悪さが、私の感覚を遮断させてくれない。
沸いた端から、灼熱がその肉を侵食してくる。
嗚呼、まさに生き地獄とはこういうことか。
考えられるのは此処までだった。
来たのは感覚の奔流。
痛い、熱い、苦しい、辛い、死にたい。
熱い、苦しい、気持ち悪い、死にたい。
臭い、苦しい、熱い、痛い、死にたい。
辛い、熱い、痛い、辛い、熱い、痛い。
狂う、痛い、熱い、辛い、乾く、痛い。
臭い、痛い、辛い、しんどい、助けて。
狂いたくない、誰か、ここから逃して。
死にたくない、誰でもいいから助けて。
姉さんと一緒に居たいだけだったのに。
姉さんを見つけて話をしたかったのに。
一体、私はどこで道を誤ったのだろう。
「姉 さん。」
喉が完全に焼け落ちる前に、ほぼ無くなっている喉で空気と共になんとか声を絞り出す。
まだ残る眼球で隣を見る。
姉さんも燃えている。
急速に眼球の水分が周囲の熱で消滅していく。
目が全く見えなくなった。
ごめんね。
その言葉は喉から音として出なかった。
気付けば、痛みは無く。
私の意識は暗闇へと。
「『定義』『燃えたコールタールはタールである。
故に燃焼中のコールタールはタバコの煙と混ざり煙草の煙に戻る。』」
意識が完全に途切れる直前、辛うじて残っていた鼓膜にガラスの割れる音ともにその声が響いた。
フワっと、持ち上げられた感覚がする。
皮膚組織は焼け、神経すら跡形もなくなった私の身体。
脳と耳だけは、辛うじて残っている。
いや、それしか、のこっていない。
いしき したしゅんかん あたまのなかが からっぽになる。
なにかきこえる。
おとこのこえ。
ねえさんのこえ。
わたしは、いしき、を。




