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Dogs of war 2

 思ったより堅い。

9ミリで頭骨を吹き飛ばして分かったことだが、アイツらには脳はあっても鼻や目はないらしい。

銃弾すら弾く赤い筋肉の層が脳を守っている。

「ならーー。」

関節を砕けばいい。

ヴィレミナ(※散弾銃)で右膝を撃ち抜く。

相変わらず、いい音だ。


巨腕がデコを掠め、そのまま化け物が後ろに飛び退く。

膝関節が撃ち抜けていない?

あの距離の散弾でダメ、なら。

ドミーニカ(※SVD)!

スコープを覗かず直接撃ち込む。

が、めり込むだけで止まる。

人を壊すことだけに、人を貫くことだけに特化した銃弾が嘲笑うかのように止められる。

ウェンディ(※ウィンチェスター)を構え左足に撃ち込む。


歯茎剥き出しの下顎をその長い舌で舐め上げながら、無理矢理下顎を持ち上げ笑う。

効かないというパフォーマンスか何かか?

そんな暇があるのならーー

「ーー攻撃に転ずれば良いものを。」

ドミーニカで右膝関節を狙う。

相変わらず良い音の歯軋り(装填音)とその獣叫(発射音)を聞きながら、時間が遅くなるのを感じる。

昔と同じだ、何かを壊す瞬間、その一瞬を楽しむように、楽しめるように、私の知覚は鋭敏になり世界が遅くなる。

撃ち出された弾が、めり込んだ一発目の上に重なり、押し出された一発目が関節を砕いていく。

皮膚が裂け、筋肉を裂きながら無理矢理貫通し、骨が割れ、透明な液体を撒き散らしながら、化け物が絶叫する。


気付けば上がっている口角。

両手にジーグリットとジークルーン(P220、拳銃)を構え、右足を無くした化け物に突っ込む。

此方に向かい遅い世界の中でもそれなりに早く突き進んでくる舌筋。

今の私なら見切れない速度ではない。

右に左に避けながら的確に、ストローの様に丸められた舌へとジーグリットを撃ち込んでいく。

舌に掴まれそうになる足、それを軽く跳び上がりかわして、足で舌を踏み抜く。

そのまま、踏み躙るように足を動かしさらに一歩踏み込む。

ジークルーンを構え、頭部と思わしき場所にマガジン一本分弾をぶち込む。

おまけにジーグリットの残りと背中から前に回してヴィレミナでもう一発。

今度はサボット弾を装填し頭を吹き飛ばした。

透明の液体を撒き散らし、化け物は沈黙する。

舌もピクリとも動かなくなった。

音が戻ってくる、聞こえる笑い声。


それが自分の喉から発生しているのだと気付くまで一瞬時間がかかった。

自分が恍惚の表情で笑っているのがわかる。

そのまま後ろを振り向き、デニスが相手にしている化け物に狙いを定め、ウェンディに声を上げさせ、すかさずコック(※コッキングレバー)をスライドさせる。

ああ、懐かしい感覚。

肩にくる衝撃も、手に来る振動も、その後の余韻も。

もう一発、更に一発、もっと、もっと!



「……ぇさん、姉さん!」

デニスの声で我に返る。

足元には大量の弾がめり込んだ異形。

「…ありがとね。」

「感謝なんて良いですよ、たった2人しか残ってない家族なんですから。」

溜息を小さくつくその手にはジェリコ945と941。

「…あんたにも感情が残ってたのね。」

「何か言いました?」

「いや、なにも。」

わざと聞き取れない様に喋った。

我ながら意地が悪い。

「…じゃあ早く弾の装填を、おかわりが来ました。」


木々の隙間に白く光る獣の頭骨。

見える範囲で少なくとも5.6体はいる。

「…ヘカートも持ってくれば良かったんじゃないですか?」

「前の化け物と戦った時に壊れちゃったのよアレ。」

「なら、M82もV94もありましたよね?」

「……なんで持ってないのか分かっている癖に茶化さないの。」

本当にコイツは。

まぁしかし愚弟の言うことももっともだ。

最初にやり合った奴には痛覚があったからこれでイケると踏んだが、予想を外したか?

いや、それでも銃弾は効くことが分かっている。

そして、見た目以上の行動はしてこない。

それぞれの個体で強化されている部分が違うが、足が太い奴は足が速いし、木をその足の指で掴んで木々の間を飛び回る。

腕が太い奴はその剛腕を高速で振り回したり、こちらの身体のどこかを捕まえようとして来る。

そして、どの個体も共通して恐ろしく長い舌で此方を削り取ろうとしている。

というか、執拗に耳を狙われている気がーー。


一瞬よぎった想像に背筋が凍る。

普通の舌とは違う薄く広い舌。

さっき殺した化け物の下の先は丸まっていた。

…そんなことをする意味も理由もない筈だ、その舌で木々を薙ぎ倒しているのが確認できるのだからそのまま舌で貫けばいい。


「デニス、自分の耳に気をつけなさい。」

一瞬キョトンとした顔をして、それでもデニスが頷く。

単なる直感だ、まさか舌を筒状にして此方の耳の中に差し込もうとしているなんて言えるわけがない。

ましてやそれで此方の脳みそでも啜るんじゃないかなんて、自分の妄想に嫌気がさす。

ただそれでも、どこか確信を持ってその言葉をデニスにかける。

自分でも嫌だが、こういう時の予感はよく当たる。

グローリアとハワードの時もそうだった。


だからこそ、確信できる。

私は、デニスは今日死ぬ運命に無い。


「聞こえますか。」

隊長の声?


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