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Encounter between a girl and a witch 1



私は待っていた。

目の前の彼女の事を。

私は待っていた。

彼女と出会えるその日を。




わたしは待っていなかった。

目の前の彼女の事を。

わたしは待っていなかった。

彼女と出会えるその日を。


何故なら、彼女に酷な事を伝えなければいけないからだ。

彼女の願いを踏み躙るように。

か細い希望を手折るように。

彼女の望まない言葉を告げねばならないからだ。


「はじめまして、貴方がシガレット?」

扉を開け放った少女が、扉の先、揺り椅子に座って目を瞑る魔女に言葉を投げかけた。

「そうじゃが、お主は誰かのぅ。」

ゆるりとした動きで、帽子を上にあげて、闖入者の顔を魔女か見据えると、少女もその瞳を見据えて声を上げた。

「私の名前はアリアナ、アリアナ・クローネ・トリアイナ。

 知っているでしょう? ……姉さん。」

その言葉になんの感慨も見せる事なく、ゆっくりと魔女は体を起こすと、揺り椅子から腰を上げ首を傾げる。

「知らんのう…姉? なんの話じゃ?」

「惚けないでよ、私はここ40年、姉さんを探し続けていたのに。」


「それはご苦労な事じゃったのう、ワシの名前はシガレット・スィガリエータ。

 お主の探しておる姉とは名前が違うんじゃないか?」

アリアナと名乗った少女は口籠る。

「名前は……思い出せないけれど、私の心にぽっかりと空いた穴と、違和感のある記憶と、この写真ーー。」

手持ちの小さなカバンから取り出したのは、数枚の写真。

そこには、魔女に似た顔の黒髪の女性が写っている。

そのうち一枚には少女黒髪の女性と両親と思わしき二人組と共に写った写真もあった。

「ふむ、確かに姿形は似ておるのう、じゃが髪の色はどうじゃ?

 間違いなく、この白い髪は地毛じゃぞ?」

そう言いながら、自身の長い髪をサラリと靡かせて歯を見せ笑う。


「それ。」

その笑う口を指さして、少女が宣言した。

「世の中の人間の大半は歯が臼状。

 でも、私達の村の人間は歯が獣のように尖っている。

 だから、迫害されている、我慢しなくちゃいけないよ。

 私達の正常は世間から見れば異常なんだから。」

そう言いながら少女が右の口端を人差し指でこじ開け自身の歯をむき出しにする。

「姉さんが言ってた言葉だよ、思い出した?」


その様子を見ながら魔女はゆっくりと首を振る。

「…残念ながら、そんな言葉も、お主の言う村も知らん。

 何かの勘違いじゃろう?」

「声も同じ。」

間髪入れずに返す少女。

「声程度なら似た人間はいくらでもおるじゃろう?」

やれやれと言った感じで魔女が煙草に火をつけて一息吐く。


「私と似た目鼻立ち、貴女は姉さん、そうなんでしょう?」

それでも尚諦めずに、少女は魔女に詰め寄ってきた。

「違うと言っておろうに、世の中には自身と同じ人間が3人入ると言うぞ?

 まぁ出会ったら死ぬらしいがのう。」


「……歯まで同じの人間がどれだけいるのよ。

 やっぱり貴方が姉さんなんでしょう?」

「話にならんのう。」

「タバコ・タバコなんて名前の人間がいるわけないじゃない。

 偽名でしょう、本名は?」

「酷いこと言うのう……これは本名じゃよ。

 そもそも姉の名前を覚えておらんのならワシの名前が仮に偽名であっても関係あるまい。」

一瞬、少女が目を伏せ、瞑り、頭を振る。

「どうして……どうしてそんな嘘をつくの。」

「いや、嘘ではないんじゃが」

「そう……わかった。

 この街に御執心なんだ、姉さんは。」

魔女の眉がピクリと動く。

「どう言う意味じゃ」

その言葉を聞き、軽い笑みを浮かべながら、どこか虚な表情で少女が続ける。

「何かは分からないけど、此処に、私を騙してでも居たい理由があるんだ。」

そう言ううちに徐々に少女の息は荒いものへと変わっていく。

「…仮にそうだったとして、どうするつもりかのう。」

短くなったタバコを消しながら、魔女は新しい紫色の紙巻きタバコを取り出し火をつける。

「当然、消す。

 消せば姉さんが戻ってくるでしょう?」

少女の瞳が挙動不審にキョロキョロと動く。

その様子を見て魔女が咥えタバコのまま大きくため息をついた。

「どうも、本来の姉に代わってお主を叱らんといかんらしいな。」


「本物の姉さんだから止めてくれるんでしょう?

 私のーー我儘を!」


その言葉と共に、少女の腰元のペットボトルの口が開き始めた。

1人でに開いていくその蓋が木造の床に落ちる軽い音。

その音が鳴ると共に2人が動き出す。


シガレットが紫色の煙草を思い切り吹く。

瞬間、紫色の煙が小さな塊になり高速で放たれた。

それをペットボトルから湧き出した水の塊が止める。

その紫の煙が水中で霧散すると共に、シガレットの服の隙間から、白い煙が噴出される。

が、完全にシガレットがその身を隠す前に小さな水の玉が飛来し、煙をかき消していく。

舌打ちをするシガレット、その頭に

「グローボ!」

の掛け声とともに水の塊が発射された。


人1人の頭を包み込めるであろうその玉は、それなりの速さでシガレットの頭に飛んでいく。

が、その水の塊にシガレットはもう一度紫の煙草を向け、吹き出す。

紫の煙草の先から腕くらいの太さの螺旋を描いた紫色の塊が現れ、水を貫き破裂させる。

今度、舌打ちするのは少女の方だった。

「大人しく捕まってくれたら良いのに。」

そう言いながら二つ目のペットボトルの蓋を今度は少女が手で開く。

シガレットは焼き切れた紫のタバコを吐き捨て、新しい紫色のタバコに火をつける。


「同じ煙草で大丈夫なの? 姉さん。」

「勘違いしとる子供の躾ならこれで充分じゃて。」

目を瞑って嗤うシガレットと口角を上げる少女アリアナ。

「笑い方まで私にそっくりなんだか、ら!」

ペットボトルの水がその先を尖らせて伸び、槍の形をとる。

それに手を浸し掴みながら、アリアナはシガレットに向かい高速で槍を突き出す。


紙一重。

背を逸らし、頭上を水の槍が通り過ぎる。


「悪手。」

水の槍が形を変え、シガレットの体を包み込む。

ただの槍であれば戻す手が完全に隙となるが、シガレットに向けられていたのは水の槍。

水の魔女たるアリアナ・クローネ・トリアイナは水を自由自在に操る。

槍はあくまでも思考を絞る為のものであり、最初からシガレットを捉えるつもりの攻撃だった。

想定通りに決まり、アリアナが顔を歪めてわらう。


「何がそんなに面白いんじゃ?」

嗤うアリアナの隣に興味深そうなシガレットの白い顔が突然現れる。

水の中を見るとシガレットを包んだ筈の水の塊に紫色の煙がゆらゆらと浮かんでいた。

アリアナが一瞬間を開けシガレットの方を振り向くと同時に、煙管がアリアナの頬の横の空間を叩いた。

鉄同士がぶつかり合う様な凄まじい音を鳴らしながら、その矮躯は小屋の壁に叩きつけられた。


「おーおー、運が良かったのう。

 此れが異能で作った煙管じゃったら首から上が捥げて死んでおったじゃろうなぁ。」

そう言いながらシガレットが煙管をトントンと肩に乗せ叩く。

自らの首筋に手を当て、一瞬顔の色が青くなっていたアリアナだったが、シガレットの方を見て俄にほくそ笑んだ。

「本当なら殺すこともできる筈なのに私を殺さなかった。

 やっぱり貴女は姉さんなんだ。

 だから、街を消して後顧の憂をたつね?」

「どういう結論じゃ、言ったじゃろう躾と。

 この程度ではどうも仕置きが足りん様じゃなぁ」

溜息を吐きながらシガレットが首を振る。

その様子を見ながら、背中の方にある出口にアリアナが跳ぶーーが。


「逃がさんぞ、街を消そうとする様な悪い子はのぅ。」

いつの間にか出口を塞いでいた半固形化した煙に包まれ、アリアナの動きが止まる。

「さて、此処に念書でも書いてもらうとしようか、街を襲いません。とな。」

何処からか取り出した文字の書いてある羊皮紙を少女の目の前にシガレットが押し付ける。


「ぐっ...ジャヴァウォッキー!!」

少女が叫ぶと共に、煙が消し潰された。

煙の隙間から現れたのは草食獣の骨を被った様に見える何者か。

その身長と体型から少年の様に見えなくもない。

だが、顎から上は草食獣の骨と接着されており、足に至っては、踵の側面を斜めに切ったものが三つ柏の家紋の様にくっ付き、乱雑に縫合されていた。

首とスルスルと伸ばされた舌にも乱雑な縫合が目立つ。

そして薄く匂う屍臭。


それを見たシガレットが嫌悪感を露わにする。

「死骸を操りおるか。」

「私を連れて逃走しろ!」

間髪入れずに叫ぶ少女を連れて、獣骨頭の異形の脹脛が妙な膨張を見せた。

木の板が破損する巨大な音と共に、シガレットの小屋の床が大きく割れていた。

地面を蹴る音が小屋の扉の先から聞こえて来る。

その距離は音が鳴るたびにどんどんと遠ざかっていく。


「…仕方あるまい」

そう言いながら自身の足に煙草の煙を吹きかけると、シガレットが帽子についた小瓶を一つ取り、中の液体を自身の足の煙に塗り、床を蹴ると小屋の中には誰もいなくなった。

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