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皇室会議(2)

「第四代皇帝ムリーヤ・ノ・ナディーヤ・ワカコ陛下、並びに都鴇宮・彗依殿下、秋桜・橘・朝臣・勝柄・美雪様、御入来!」


 という宮内省特別高等警察の衛士の宣言と共に扉が開かれ、彗依達親娘三人は、一礼すると、「こすもす」議会議事堂の中央に進み出た。

 議事堂内は「こすもす」に詰めかけた皇族一同と、関係閣僚で埋め尽くされており、起立した彼らの万雷の拍手によって、一行は迎え入れられた。


「(今、この議事堂を爆破したら帝政が終わるな)」


 と彗依は内心思ったが、口にし(フラグを立て)ないだけの分別はあった。

 一行は先ず、議長席を外して(しつら)えられた貴賓席に座し、その斜め後ろに議事進行役(議長)である現大統領、ヴァイオレッタ・マリア・スズキを控えさせた、今上皇帝陛下御夫妻に対し、深々と最敬礼した。

 初老に差し掛かり、灰色の髭を蓄えた今上皇帝陛下が、重々しく、


「よく参った。面を上げられよ」


 と述べてから、ゆっくりと顔を上げた一行を代表して、彗依が、マイク無しに議場に朗々と響き渡る声で、御挨拶申し上げる。


「今上皇帝陛下、並びに皇后殿下におかれましては、本日、御意を得まして誠に恐悦至極に存じます。

 皇室の藩屏たる都鴇宮(トトキノミヤ)(・ノ・)夢玲和(ムリーヤ)家が世子、彗依と、その婚約者、秋桜・橘・朝臣・勝柄・美雪が、ご報告申し上げます。

 私達は、こちらにおわします、過去の時代から現代に来られました、第四代皇帝ナディーヤ・ワカコ陛下から、恐れ多くもこの時代の両親として慕われ、共に親として、夫婦(めおと)として、生涯不変に、互いを想い、慈しみ、支え合うと、永久(とこしえ)の愛を誓い合いました。

 ここに、私達の結婚と、第四代皇帝ナディーヤ・ワカコ陛下のこの時代の両親として立つことを、どうかお認めくださいますよう、お願いいたします」

「お願いいたします」

「おねがいちまちゅっ」


 最後、二人が深々と再度一礼したのを真似て、ナディの舌足らずな声が続いたので、挨拶は微妙に締まらなかったが、これは不可抗力だろう。

 背後の議員席に立つ数々の皇族からの、生温い視線とさざめきを感じながらも、彗依と美雪は動揺は欠片も見せずに、ゆっくりと頭を上げた。


「うむ、」


 と頷いた今上皇帝陛下が徐に立ち上がり、議場をぐるりと見回してから、厳かに宣言した。


「私、第三百七十一代皇帝、ムリーヤ・ノ・キリール・アレクサンドル・マサヒトは、我が甥、都鴇宮家が世子、彗依と、その婚約者、美雪の結婚を認め、また二人が、この時代の第四代皇帝ムリーヤ・ノ・ナディーヤ・ワカコ陛下の両親となることを、認めるものである。

 また、正式な皇統に連なる者らである()()()()()、私は()()()()()()()()()()()()()()()ものである。

 異議のあるものは、直ちに名乗りを上げ、前に進み出よ!」


 シン、と議場は静まり返った。

 それは、内心反発していても、今上皇帝陛下の威徳により、名乗り出ることが出来なかったから、という訳ではない。

 特に彗依は根回しを行っていなかったが、皇族専用生体認証システムが誤認とは言え、二人を「正式な」皇位継承者として認識し、そして第四代皇帝ナディーヤ・ワカコ陛下に親と慕われているという事実は、皇族一同、そして参加資格がありこの場にも臨席していた政府閣僚をして、次の皇帝は皇統に連なるこの二人以外に有り得ない、と納得なさしめるに足るものだった。

 であるから、この場合の静寂は、満場一致の肯定的反応だった。

 再び「うむ、」と頷いて着席した今上皇帝陛下に代わって、後ろで存在感を消していた現大統領、ヴァイオレッタ・マリア・スズキが一歩前に出て皇帝陛下の隣に立ち、朗々と述べた。


「只今の今上皇帝陛下の御言葉について、異議なし、と認めます。

 ムリーヤ国政府は直ちに、この決について最高議会に付託し、近日中に必ず、賛否を明らかにいたします」


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