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第四次世界大戦(2)

 第三次世界大戦の最終的解決策として、日本、ウクライナ、ロシアの三国は合同し、ムリーヤ国として新生したわけであるが、それによる主として軍事的な基本戦略の変化は、明瞭の一言に尽きた。

 つまり、


「沿岸を航行する内航船舶の絶対的な安全が確保できるなら、態々外洋に出なくとも良い」


 というのが、合同後は()()で主要な資源を確保できることになったムリーヤ国の、偽らざる本音だった。

 エヒメオーナー(愛媛船主)に代表されるような世界的外航船舶の数々(マル・フリート)も、より安価で、より安全に、より短期に往復でき、そこにより多くの需要があるのならば、そういう航路に就航するのが道理というものだった。

 もちろん、世の中はそこまで単純に出来ては居ないし、日本人は第二次世界大戦の敗北の原因が物量と制海権の確保の失敗にあることを、決して忘れては居なかった。

 居なかったが、であるが故に、態々長大な航路(しかも有事には横から厄され易い)を征く必要性に迫られなくなったのであれば、「内航」船舶の絶対的な守備に必要な海軍力の整備に特化していくのは、自然なことだった。

 ムリーヤ国海上自衛隊の大きな目玉は、六隻余りの航空護衛艦(正規空母)と、「独自開発」した先進的な統合海空艦隊戦闘システムを搭載した多数の汎用護衛艦だったが、それらは決して親善目的以外の作戦行動で、「内航」航路――言い換えれば防空識別圏という名で示される制空圏内から、外に出ることは無かった。

 外洋に出て仮想敵国の海上戦力を監視・追跡し、有事の際には必殺の一撃を見舞う主体的役目を担っていたのは、合同後に倍プッシュ(日本列島沿岸での話であって、合同後のムリーヤ国全体で言えば四倍プッシュだったとも言える)された、水中戦力だった。

 第三次世界大戦中、また戦後の合同後に旧ロシア海軍の軍事技術をキャッチアップしたムリーヤ国海上自衛隊では、長期の作戦行動に適している一方で、隠密作戦行動に必ずしも適しているとは言い難い発動機である原子力機関を搭載した潜水艦について、一定の結論を出していた。

 曰く、


「発見された潜水艦とは()()()()()


 であり、低出力・低騒音な状態で長時間運転可能な次世代超小型原子炉と、超大容量・超高出力・超高頻度充放電可能な次世代バッテリーを組み合わせ、持久力と瞬発力を兼ね備え、且つ長期間の外洋での作戦行動を前提とした設計こそ、潜水艦の最適解だと考えていた。

 戦闘艦が常に最大船速で行動することは極めて稀であり、また最大船速で行動すれば現代のいかなる技術を以てしても、探知を逃れることは困難である。また現代に於いて潜水艦を除けば、単艦で作戦行動を取ることは極めて考え難く、従って原子力航空母艦に随伴する戦闘艦艇は、空母に倣って最大船速で行動し続ければ、何れ燃料の問題に直面し前線から離脱を強要される。

 故に、往時のアメリカ海軍のような原子力水上戦闘艦を持たない現代の米中海軍に相対するのであれば、必ずしも長時間全速力を発揮する必要性は薄い、というのがムリーヤ国海上自衛隊の判断であり、そして実際、そうなった。


 米中の主要艦艇のほぼ全てを、出港時点から概ね正確に追跡し、隠密裡に監視下に置いていたムリーヤ国海上自衛隊潜水艦隊は、艦艇毎にムリーヤ国自衛隊大本営統合幕僚監部から全兵装使用自由の命令が下ると、三回その命令の実在性・妥当性について規定通りに確認した後、全艦艇を挙げて空中からの攻撃に歩調を合わせて統制飽和雷撃を敢行した。

 ムリーヤ国海上自衛隊潜水艦隊が放ったのは、主に三〇式魚雷と簡素な正式名称で呼ばれるそれで、旧日本国海上自衛隊が開発・装備していた一八式魚雷の正統な発展系に属する物だった。

 つまり、旧ロシア海軍の技術をキャッチアップしたにしては()()()()性能だったとも言えるし、旧日本国海上自衛隊の装備品としては正当に()()()()()性能だったとも言える。


 どちらにしても、この時の米中機動部隊にとっては、最悪の災厄以外の何物でもなかった。


 自らが仕掛けたのと同様に、四方八方から超低空を飛来する攻撃機やミサイルで戦闘指揮所(CIC)の対応力が飽和する中で、


「警戒はしていたが、しかし予期しない近距離の海中」


 から加えられたそれは、米中機動部隊の戦闘行動を破綻せしめた。

 差し渡し数百キロに及ぶ艦隊の外輪から、あるいは輪形陣の内側から、空からの攻撃と歩調を合わせて加えられた一撃は、各艦の防空戦闘を、僅かばかり乱した。

 仮に全装備品の探知能力を飽和させる攻撃が行われても、作戦行動を継続なさしめるように設計されている(そうでなくては困る)のが戦闘システムというものである。


 であるが故に生じた遅延こそが、この場合は命取りとなった。


 戦闘システムの処理能力が飽和した間隙を衝いて、絶好の射点から殺到した魚雷と、空中を極超音速で殺到したミサイルの、何かあるいは両方に滅多撃ちにされ、米中機動部隊の空母は、その殆どが帰投した艦載機を収容する前に被弾炎上し、撃沈された。

 その護衛艦も、タングステン製弾芯に串刺しにされるか、艦底からのバブルパルスに爆砕され真っ二つにされるかの二択を迫られた。

 攻撃を何とか生き残った残存艦艇は、生存者の救助に当たるか、躍起になって周辺海域を虱潰しに対潜哨戒するかしたが、全ては後の祭だった。

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