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その8  反撃

騎士フェリアを毛嫌いし、彼女を追放しようと企む騎士団長。

彼の予定通り“フェリア追放の策”は計画通り進んでいくが、

フェリアはその審議の場で、ネイオレスへの反撃を目論む。


 フェリアは夢を見ている。




 夕焼けの、フィズンの浜辺。

 海を臨むフェリア。

 傍らには、マリィルとラージェ。

(…また、フェリアの夢…)

 フェリアの表情は分からないが、彼女の声は弾んでいる。

『3人揃って入団できるとは、嬉しいじゃないか。そして…これで僕らもシュレンディア王国騎士の仲間入りさ』

『フィズン基地に配属というのも有難い事だね、姉様。魔族との戦いで最前線になるここなら手柄を立てやすいから…』

『私は3人一緒の部隊という方が嬉しいですわ。こんな配慮をして下さった王様には感謝しなければなりませんね♪』

(…3人が、騎士団に入った時の記憶…?)

 3人は思い思いに、騎士団への入団を喜んでいる。


 不意にフェリアが一歩前に出て振り返り、2人を正面から見据える。

『これもまだ出発点さ…僕の夢のね!』

 微笑む、マリィルとラージェ。

『知ってるよ、姉様』

『勿論存じ上げておりますわ、フェリア様♪』

『だろうね…でも敢えてもう一度言うよ。これは僕の決意表明さ』

 一呼吸置くフェリア。

 黙る2人。

 そしてフェリアは、大海原に振り返る。


『僕は…皆を自由にするんだ。不自由な生活を強いられている同胞を救い出してみせる。そして皆で豊かな暮らしができるように、僕はこの国に挑むよ!!』


(フェリアの、夢…。同胞を救い出す…?)

 “漣次郎”の意識が、微睡む。

(…それは、半魔族を解き放つって事かな…?確か半魔族はどこかの町に集められているとマリィルが言っていた…。シュレンディア王国に管理されている彼等が自由に暮らせる世の中を、フェリアが望んでいた…?)

 しかし、夢の内容が“漣次郎”には良く分からなかった。

(じゃあ“紅百合部隊”もその為…?女性ばかり集める理由は良く分かんないけど…まさかその部隊で魔王を倒す…とか?)

 “漣次郎”の意識が沈んでいく…。

(よくわからない…でも、僕に“半魔族の解放”なんてできるのかな?でも今、僕が“フェリア”である以上…彼女が為そうとした事は、僕が成し遂げてあげないと…。その為にも、ネイオレスなんかに負けていられないよ…)


 そして“漣次郎”の意識は、深い眠りに落ちていく…。











 早朝の騎士団基地・司令塔。


 昨夜遅くまで活動していたフェリアは、欠伸を噛み殺しながらネイオレスの元に向かっていた。そのフェリアの側にはマリィル達は居らず、ネイオレス直属の騎士が数名付き纏っているだけだった。

「…貴様、欠伸とは余裕だな」

「え、いやその…昨日不安で眠れなくて…」

「ふん…まあどう転んでも結果は見えているがな」

「そうですね」

 ネイオレスの部下は、フェリアに冷たい視線を送って来る。ミューノ曰く、どうやらネイオレスは半魔族を嫌う騎士を優先的に自分の直属にしていたという。という事でネイオレス一味は皆フェリアを嫌っていた。

 そんな連中に囲まれたフェリアは、そっと溜息を吐く。

(…まあ、しょうがない。他の騎士だって…今回はネイオレスが嫌われ者だったから僕の味方をしてくれたけど、そうでも無ければなかなか関わってこないしね。半魔族を嫌っていなくても、積極的に助けてくれる人は居ないんだろう)

 そしてフェリアは、今朝の夢を思い返す。

(“英雄”とか言っても、僕の立場はこんなものか。王様が特別好意的なだけで、基本的に半魔族は被差別対象って事だね。でも…)

 フェリアはグッと拳を握る。

(…“フェリア”の夢のため、それに王様と進めている“紅百合部隊”の為にも!僕はこんな所で躓かないよ!)


 そしてフェリアは、到着した部屋の扉を開け放つ。






 そこは、フィズン基地司令塔の会議室だった。

 部屋の中央には大きな長机が置かれ、その机の向こうにはフィズン基地の重役達…騎士団長、大隊長など…が鎮座している。彼等の背後は窓が並び、晴天のフィズンの街並みが良く見えた。


 フェリアの正面…机の中央には、団長ネイオレス。

 両手を組んで肘を突き、背を丸めてフェリアの来訪を待ち構えていた。もう隠しきれない程にやついた口元から、猫撫で声が発せられる。

「おはようフェリア、こんな朝早くに済まないな。本当は昼過ぎの予定だったのだが、王都からの使者が思いの外早く来てくれたのでな、時間を前倒しさせてもらったぞ」

「いえ、お気になさらず」

 確かに今、ネイオレス側に貴族らしい出で立ちの小太りの男が1人座っている。彼はネイオレスの用意した資料に目を通しながら、偶にフェリアの姿を盗み見ている。

(ネイオレス…そんなに早く僕を追い出したいんだ…って、え?)

 辟易するフェリアは、ネイオレスの背後に知った顔を見つける。


 そこには、ネイオレスの部下に混じってミューノが並んでいたのだ。


 確かに今朝、フェリアが兵舎を出るときにはもうミューノの姿が無かったが…。フェリアの視線に気付いているのかいないのかミューノは眉一つ動かさず、隊列の中で微動だにしなかった。

(ミューノ…いや、僕はあの娘を信じるよ)

 ミューノに気付いて表情が変わったフェリアに、ネイオレスはさも不思議そうにわざとらしく振る舞う。

「おや?どうしたフェリア。パルサレジア隊員がここに居るのがそんなにおかしいかい?まあ愚鈍な貴様は気付かなかったようだが…彼女は私の命令で貴様を見張っていたのだ。それにも気付かんとは…いやはや英雄が聞いて呆れるな」

(…愚か者は、はたしてどっちかな?)


 そしてネイオレスは組んでいた手を解き、机を叩く。

「役者は揃った。では始めよう…“騎士団物資消失事件”についての審議をなぁ!」






 広い会議室の中に、重く硬い空気が満ちている。


「物資の消失が確認できたのは一昨日の夜…冬ノ76日。物資の内容としては矢が多数、備蓄の固形食、全身鎧を中心とした防具類などです。しかし見張り担当はそういった備品の移動は把握しておらず、さらに冬季後節の中でフェリア隊員が倉庫に入ったという目撃談が多く…」


 ネイオレスの部下が、淡々と報告をする。

 もうその内容はどうでもよかった。

 フェリアとネイオレスは、報告など耳に入っていない様子で睨み合っている。どうせ内容はネイオレスのでっち上げだとフェリアには分かっているし、ネイオレス本人も開き直っているようだ。

「…という事からして、状況的にこの犯行が可能なのは異能『アストラル』を持つフェリア隊員のみとしか考えられません。先日捕らえた男については…フェリア隊員が記憶喪失となって物資の横流しが途絶えたため、物資を盗みに自ら基地に忍び込んだと証言しています。また消えた備品は行方不明のままで、現在捜索途中という状況です」


「そうか、報告ご苦労だった」

 ネイオレスの部下が報告を終えると、ネイオレスは片手を挙げて部下を下がらせる。その間、彼はフェリアから一切視線を逸らさなかった。

「聞いた通りだフェリア。このフィズン基地の備品倉庫から物資が消え、それらの移動は確認できず…そして貴様は最近、その倉庫で目撃されている。言い逃れはできんぞ」

 王都から来た役人が、そのネイオレスの言葉に深く頷く。

 もちろんフェリアも黙ってはいない。

「そういった認識は僕にはありませんが」

「だが倉庫係はそうだと言っている」

「…倉庫での、僕の目撃情報の信憑性は?」

「騎士は嘘など言わん。半魔族は知らんがな」

「…では僕からも、報告について何点か気になることが…」

「いや、半魔族の発言は無意味だ。聞く価値は無かろう」

 不毛な問答に、フェリアは苛立つ。

「しかし」


「不要だと言っている、見苦しいぞフェリア!」


 頑ななネイオレスに、フェリアは声を荒げながら、

「いえ、ネイオレス団長は聞きたくないでしょうが…」

 そしてフェリアはネイオレスから視線を外し、王都から来た役人に視線を送る。彼は自分が巻き込まれると思っていなかったらしく…フェリアの強烈な視線を受け、面食らってあたふたしている。

「貴方はこの審議の結果を、王政に…カイン王にどう報告するつもりですか?“ネイオレス団長がフェリアの話を聞かず追放した”…カイン王は、貴方になんて言うでしょうね」

 役人が取り乱す。

「そ…それは困る。貴女はおおよそ“黒”なのでしょうけれど、私には迷惑を掛けないで頂きたい!」

 そして彼は、仕方が無さそうにネイオレスを宥める。

「いやはやネイオレス団長、王政に報告する私の立場も考えて頂きたい…。無意味とは思いますが、フェリア隊員の話も聞きましょう」

 フェリアの口車に乗せられた役人を苦々しく一瞥し、ネイオレスがしぶしぶといった感じでようやく折れた。

「チッ…では聞いてやろうフェリア。時間の無駄だろうがな」


(ふん、ここを去るのはお前だよ…!)

 怒りを燃やすフェリアの反撃が始まる。











「まず最初に」

 重い空気の会議室に、フェリアの張りのある声が響く。

「先程の報告…消えた物資が発見されていないというのは事実ですか?」

 ネイオレスはつまらなさそうに吐き捨てる。

「…現在まだ発見されていない、これは事実だ」

「本当ですね?」

「しつこいぞフェリア!貴様…そんなに物資の隠し場所に自信があるのか?浅知恵だけは働く醜い半魔族め…物資については、貴様を追放した後に私の先鋭部隊が必ず見つけ出してやろう!」

「そうですか。まあ頑張ってくださいね」

 ネイオレスの回答に満足したフェリア。

(さて、もう少し時間を稼ぎたいかなぁ)

 フェリアは“今日の作戦”を思い浮かべながら、話す内容を考える。


「では次に」

 少し芝居がかったフェリアの言葉に、ネイオレスは眉を顰める。

「この10日間ほど、夜間に外部の商人らしき馬車の出入りが目撃されています…それも数回にわたって。これは番兵を含む複数の騎士からの目撃談になりますが…これについて団長はご存知ですか?」

 そのフェリアの発言を聞いたネイオレスが食いつく。

「貴様、ちゃんと謹慎していたのか?何故そのような調査を行っている」

「半魔族では無い僕の部下が、自主的に行っていたようです」

 しれっと言い放つフェリア。

 蟀谷を押さえるネイオレスが、ミューノに鋭い視線を送る。

「…パルサレジア隊員、君からそう言った報告は無かったが」

「大変申し訳ございません。人間のココロン・ベルン隊員は監視対象外という指示でしたので、彼女の動向までは…」

「…命令通りにしか動けんのか君は、期待外れだな」

「申し訳ございません」

 答えるミューノは、露骨にそっけない。

 ミューノを睨むネイオレスをよそに、フェリアは話を続ける。

「で、どうでしょうか?」

「ふん、私も把握しているが…それは基地に出入りしている外部の商人だ。本件とは全くの無関係だな」

「彼等が物資を持ち出した可能性は?」

「あり得ないな。倉庫係の目を掻い潜ってそんな真似はできない」

「そうですか」

 フェリアはあっさり引き下がる。

(ネイオレスは嘘を言った、そして王政の役人がそれを聞いた…これでOK。あとは動かぬ証拠をぶち上げてやろうか)




 フェリアは一呼吸置き、鋭く言い放つ。

「騎士達からの聞き込みの結果、その夜間の商人がワレン商会の者だと判明しました。貴方が懇意になさっている、ワレン商会の…」

 そこで始めて、ネイオレスの顔に焦りが浮かぶ。

「…何?」

「団長はワレン商会と深い関係にある…そうですよね?貴方の部屋にこんなものがあったそうです」


 そしてフェリアは最初のカード…“ワレン商会の舞踏会招待状”を切る。


 ネイオレスが口をポカンと開け、一瞬呆気にとられる。しかし次の瞬間には、彼の顔が激怒に染まる。

「貴様、私の執務室に無断で入ったな!?」

「いえ、僕は謹慎の身でしたから。僕の見張りに来た貴方の部下の中に…僕に同情してくれた方が居て、これを渡されたというだけです。その方の名は伏せますが」

 フェリアもさらりと嘘をつく。

 ネイオレスは怒りをあらわにするが、平静を装って弁解する。

「それはワレン商会が一方的に送り付けてきただけだ。重ねて言うが、これは本件とは無関係だ!」

「いえ、そうでも無いようですよ?」

「…何だと?」

「…」

 そして突然、口を紡ぐフェリア。

 さんざん喋っておいていきなり黙ったフェリアに皆困惑し、会議室には変な静寂が訪れる。


 そしてその静寂の彼方、司令塔内に複数の慌ただしい足音。

 それらは会議室前で止まると、大扉が音をたてて開く。






「団長!報告が!!」

 会議室に、5名の騎士が雪崩れ込む。

 先導して入って来たのは、フェリア小隊の上にいる騎士団の中隊長だった。彼と彼の部下…そしてちゃっかり彼等に混ざるココロン…が、息を切らして報告する。


「例の“消えた物資”が発見されました!」


 その報告に、ネイオレスを始め着座していた面々が立ち上がる。

「な…何だと!?」

「それはどこにあったのだ!」

 口々に問い質す重役達。

 ネイオレスは口を開かない。

(よし、ココロンは上手くやってくれたね!)

 息を切らしながらもドヤ顔のココロン。

 彼女は中隊長と一緒にワレン商会に押し入ってくれたようだ。

 予定通り動いてくれた彼女に、フェリアは内心感謝する。


 フェリアの上司である中隊長が報告を続ける。

「そ、それが…フィズン南方の、ワレン商会の倉庫にありました。現在それらは騎士団が押さえ、ワレン商会の取り調べを行っています!」

 ワレン商会。

 いきなり現れたフェリアとは別の騎士の口から…その単語が出た。

 皆の視線が、ネイオレスに集まる。

「…ふん、運が良かったなフェリア。貴様の容疑は晴れたぞ」

 ネイオレスは悔しそうな風に見せているが、焦りと不安が表情からバレバレだった。当然フェリアも、ここで追及を止める義理は無い。




 さも不思議そうに、フェリアが首を傾げながら呟く。

「倉庫係は、何故ワレン商会の犯行に気付かなかったのでしょうか?」

「…知らん」

「倉庫係へ聴取をしたのは、団長の直属部隊ですよね?それでしたらこれは彼等の不手際でしょうか?」

「知らん知らん!もうこの話は終わりだ!」

 明らかに取り乱すネイオレス。

 さらに追い詰めるフェリア。

「ワレン商会と繋がりのある貴方が、無関係だと?」

「当然だ!私は忙しいのだ、職務に戻る!!」

 そこでフェリアは片手を挙げ、去ろうとするネイオレスを制す。

「失礼…一瞬離席します。<アストラル>」

「な!?」

 フェリアの姿が、言葉通り一瞬にして消える。

 そして5秒後には、また同じ場所に現れた。


「これを見ても、そう言えるでしょうか?」


 ワープして再び現れたフェリアの手には、紙の束。

 ネイオレスの顔が蒼白になる。

「これは貴方がワレン商会に宛てた書状ですよね。“騎士フェリアを追放するための策”について事細かに書かれています」

 それは、昨晩フェリア達が見つけたもう1枚のカード。

 商人バリオンに当てた“ネイオレスの策謀指示書”だ。

「な、何故貴様がこれを…!?」

「さあ?」

「き、貴様ぁ…!」

「入手方法よりも内容ですよね?書面の筆跡を確認すれば、これが貴方の書いたものだと確認できるでしょう。これらについてご説明願います、ネイオレス団長」

 もうネイオレスは喋らない。

 怒りと憎しみを込めた視線でフェリアを刺してくるだけだ。

 フェリアだけでは無く…王都の役人も、同席している大隊長も、報告に来た中隊長達も…ネイオレスの負けだと悟っていた。











「ここまでのようですね、ネイオレス殿」


 突然だった。

 開けっ放しだった会議室の入口。

 そこに鮮やかな金髪の少年が立っていた。

 歳はどう見ても10代前半だ。

 彼を見たネイオレスが、口をだらしなく開く。

「な、ま…マシェフ様…!?」

(え、誰!?)

 フェリアの筋書きと無関係の人物が現れ、困惑するフェリア。

 そんなフェリアをよそに、少年マシェフがフェリアに挨拶する。あどけなさの残る彼の顔立ちは…どことなくカイン王に似ている…?


「お久しぶりです、騎士フェリア。記憶を失っているそうなので分からないとは思いますが…僕はマシェフ・アルデリアス、現シュレンディア王カイン・アルデリアスの三男です」


 まさかの王族の登場に仰天するフェリア。

「え、王子様!?」

「僕は“フェリアが心配だ”と父から言われて、数日前からフィズンの町に滞在していたのです。やはり父の読みは正しかった」

 そしてマシェフは、ネイオレスに厳しく言い放つ。

「『魔の再来』で手柄を立てた騎士フェリアの存在が、当時団長であった貴方にとって許せなかったのでしょうね…。しかし私怨でフィズン騎士団を混乱させた責任は取って頂きますよ、ネイオレス殿!」

 もうネイオレスは…言葉も無く、ただただ俯くだけだった。











 夕方。

 フェリアはやっと兵舎に帰って来れた。

「ねーさまー!!お帰り!!」

「フェリア様…信じておりましたわ…!」

 兵舎に入った瞬間、フェリアに飛びつくラージェとマリィル。楽しそうなラージェとは対照的に、マリィルは半泣きだった。

「フェリア様…ああ、フェリア様…!」

「姉様、今日はマリィと一緒に寝てあげな?マリィったら今日一日、ずっと姉様を案じてこんなだったんだからさ!」

「ええっ!?」

 ラージェの提案に、フェリアはしどろもどろになってしまう。


 それを聞いて乗っかる奴が。

「はーいはーい!あたしも隊長と添い寝したいでーす!」

「ちょ、ココロンまで!?」

 フェリアの背後で、ココロンが元気にとび跳ねる。

 それを呆れ顔で見守るミューノ。

 彼女達も今、フェリアと一緒に兵舎に戻って来ていたのだ。


「これでネイオレス様は罷免でしょうね」

「いひひー!そりゃミューのお陰だー!」

 淡々と報告するミューノ…だが、楽しそうなラージェにウザ絡みされているので何だか微笑ましい光景だった。

「本当にありがとね、ミューノ」

 フェリアはミューノに感謝する。何しろ彼女はネイオレスの部下でもあったというので、彼女がネイオレスに漏らせばこう上手くはいかなかった筈だった。

「…いえ」

 そっぽを向くミューノ。

 でもちょっとだけ照れているのがフェリアには分かった。

「ミュー最高!ホントいい娘なんだからー!!」

 ココロンがすごい勢いでミューノに頬擦りする。

「ちょっとココやめ…まいっか…」

 されるがままのミューノ。

 ミューノも何だかんだ、ココロンのそれは嬉しそうだ。


 フェリアに寄り添うマリィルが一言。

「ようやく…ようやくフェリア小隊の活動が始まりますわね♪」

「ホントだよ…最初からこんなんじゃ、先が思いやられるよ…」

 言葉とは裏腹に、フェリアの口角は上がっていた。






















「貴様の計画を信じた私がバカだった」


 夜のフィズン郊外。

 罷免されたネイオレスが部下を引き連れ、フィズンを去ろうとしていた。

 ネイオレスの乗る馬車の横…馬上には商人バリオン。

 今回の一件…ワレン商会側の主要な実動員はバリオンだけだったので、彼は商会に切り捨てられていたのだ。

「そ、そんなぁ…」

「貴様の献策だぞ!?貴様が“任せてほしい、きっと上手く行く”などと言うから!私はそれを信じたのだぞ!?」

「私そんな事言ってませんよぉ…」

「言い訳は聞きたくない!!」

「うぅ…」

 苛立つネイオレスは、それをそのままバリオンにぶつける。

「そもそも貴様が不用意にあの倉庫に近付くのがまずかったんだ!」

「だって…夜中に商会の事務所で残務をこなしていたらいきなり魔法で眠らされて…あんなのどうしようもないというかぁ…」

「貴様は言い訳しか言わんのか!!」

「す、すみませんってぇ…」

 のろのろとして弱気なバリオンに、ネイオレスは舌打ちをする。


 そしてフィズンの町を振り返り、その眼に炎を燃やす。

「見ておれフェリア…このままで済むと思うなよ…!」


 ネイオレスは憎しみに満ちた表情で、フィズンの町を去って行った。


これを読んで頂いているどこかの誰かに感謝を。

いつかフェリアの夢が叶うその日まで頑張って書きたいです。

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