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番外5  賢者の描いた魔法の未来図

本編の約200年前、後に賢者と呼ばれるようになる半魔族の少年ロディエルのお話です。

 これはいつかの、遠い昔のお話。






 ある晴れた秋の日。

 シュレンディア王都の王城。

 色付く紅葉に囲まれる、風光明媚な庭園の一角。

 庭園の大きな池のほとりで、茶会に興じる者達の姿。


 1人は、当代のシュレンディア王。

 その両隣に、彼の2人の息子。

 そして王の対面には…漆黒の鱗を纏う、龍人の大男。

 どうやらこの4人は、何やら大事な話をしていたようだ。


 そこに走って来る、1人の少女。

 彼女は国王である父のもとに駆け寄った。




『お父様!もうお話は終わりましたか!?』

『おお…エルーナか。どうしたのだ、そのように息を切らして』

『エルーナはお父様にお願いがあるの!どうか…どうか聞いて欲しいのです!』

『そう慌てるな。やれやれ…エルーナはもっと落ち着きというものをだな…』

『お父様ったら!』

『わかったわかった。して話とは何だ?』

『実は…エルーナは、あるお方に恋をしてしまったんですの!』

『な、何!?』

『お父様!エルーナとそのお方を結婚させて下さい!』






 …この出来事が。

 結果として。

 後の“魔の侵攻”の引き金になったと言えよう。
















 夏の盛りのシュレンディア王国。

 田園地帯のど真ん中に空いた街道。

 その街道を、豪華絢爛な馬車が悠々と進む。


 馬車の中には…10代の少年と、50代の男が乗っている。

「久しぶりの故郷フィズンはいかがでしたかな?ロディエル殿」

 壮年の男が、少年に語り掛ける。

 窓の外を眺めていた少年が振り返る。

 少年の人ならざる金の瞳と炎のように鮮烈な金髪が、夏の日光を受けて輝く。

「はい、久しぶりに父上母上とゆっくり過ごすことができました。叔父上…いえ、国王陛下も魔族とフィズンの様子を気になさっていたので、王都に帰ったら早速報告いたします!」

 少年は弾けるような笑顔だ。

 それを見た壮年の男は満足そうだ。

「それは重畳。陛下もお喜びになるでしょう」

「しかし…マルゲオス様にはこうして毎度毎度お付き合い頂いてしまって、何だか申し訳が無い気がしますね」

「そうお気になさるな。シュレンディアにとって貴方は重要な存在であり、私がお目付け役を買って出ているまでです。私としても、旧知のトワナグロゥ様とお会いしたいという目的がありますのでね」

「ふふ、そう言って頂けると助かります」

 そう言うと再び、黄金の少年は窓の外に目を向ける。


 夏の盛りのシュレンディア。

 高台にあるこの街道からは、遠くの大河と銀嶺が一望できた。








 少年ロディエルは、このシュレンディア王国にとって特別な存在だった。


 彼の母エルーナ・アルデリアスは…先代シュレンディア国王の娘にして、現国王アソッド・アルデリアスの妹姫だった。

 そして彼の父は、なんと魔族の長トワナグロゥだ。


 10数年前に遡る、エルーナ姫の求婚事件。

 当時のシュレンディアがひっくり返るほどの騒ぎになった一件。

 アルデリアス王家の姫が魔族の長に嫁いだ、大騒動だった。




 確かに魔族は、シュレンディア王国の一員だ。

 今から100年程前に、シュレンディア南方にある『死の砂漠』の向こうから放浪して来たという魔族は…現在シュレンディア領の一部を自治区としている。これは当時のシュレンディア国王ローブルの意向で、魔族もその恩に報いるためにシュレンディアの為に尽力している。

 放浪当時から魔族の長だったという龍人トワナグロゥは、今では誰よりもシュレンディアの歴史に詳しい生き証人であり、そしてシュレンディアを最も愛する者だ。


 そのトワナグロゥに、当時15歳のエルーナ姫が突然求婚した。

 姫の2人の兄は大反対。

 周囲の侍従も大反対。

 何より、トワナグロゥ自身が誰よりも強固に反対したのだった。


 しかし当時の国王は、娘のエルーナ姫を猫可愛がりしていた。

 そして彼はトワナグロゥの事も、深く信頼していた。何しろ彼は、2人の息子から後継者を選ぶ時…迷った末にトワナグロゥに助言を求めた程だった。

 結局…当時の国王の一声で、反対するトワナグロゥに有無を言わせず、エルーナ姫の願いは叶ってしまったのだ。











 シュレンディア王都・王城にある『玉座の間』

 ロディエルはそこに跪いている。

 彼の前方には、空の玉座。

 両脇には、王城の憲兵達。


 夕日の差し込む玉座の間は、厳粛な静寂に包まれている。




 その玉座の間に、甲冑姿の男が現れる。

 憲兵達が恭しく居住まいを正す。

 そして甲冑の男は、どかりと玉座に座り込む。


「待たせてすまんなロディエル!」


 ロディエルはその声に応え、胸に手を当てて一礼する。

「滅相もございません、陛下」

「“叔父上”で良いと再三言っておるであろう!」

「しかし、陛下をそのようにお呼びするのは恐れ多くて…」

「はっはっは!お前は相変わらずお堅いなあ!まあ好きにせよ!」

 ロディエルの前方…玉座に座して豪快に笑うこの男が、当代シュレンディア国王であるアソッド・アルデリアスだ。彼はロディエルから見れば母の兄…実の叔父に当たる。


 玉座で寛ぐアソッドが、ロディエルを促す。

「して、魔族領フィズンの様子を聞かせて貰おうか」

「はい!」

 ロディエルはそれに、快活に答える。

 彼は、書き記してきた報告書を広げる。

「今年の夏季は漁獲量が例年より多く、フィズンはとても潤っているようです。しかしシュレンディアでは古くより“豊漁ならば大嵐来たる”とも言われますように、今年の夏季は海が荒れそうです」

「ふむ、そうだな。俺も漁民の噂を耳にしておる」

「そこで現在…父トワナグロゥが災害に備え、ワルハラン港にある防波堤の改修計画を進めています。既に陛下のお耳にも入っているかと思いますが、物資はワルハランに揃っており、陛下の許可が頂ければすぐにでも着工できるそうです」

「おお…流石はトワナグロゥ殿だ、相変わらずやることが早い」

「“シュレンディアに恩を返すのが魔族の義務”ですから」

 ロディエルの報告に、アソッドは満足そうに大きく頷く。

「よし、明日にでも許可を出すとトワナグロゥ殿に伝えよう。ロディエルも報告ご苦労だったな!」

「お褒めに預かり光栄です、陛下」

 大役を無事終えたロディエルは、ほっと胸を撫で下ろす。


 そこでふと、アソッドの表情が曇る。

「…ときにロディエル。例の件はどうだった」

「例の件、ですね…」

 例の件。

 現在王都で囁かれている、ある噂。

 “魔族領に「反人間」の勢力が生まれている”というものだ。

「私と父が調査した範囲では、そういった者達の存在は確認できておりません。父は昔から“シュレンディアに反逆しようとする者に容赦しない”と公言していますし、魔族の多くは現状に不満を持っていないと思われますが…」

 魔族への疑いに、ロディエルは複雑な心境になる。確かにそういった噂は彼の耳にも入っているし、あからさまに半魔族の彼を疑うような者も王政内にはいるのだ。

 ロディエルの報告を聞いたアソッドも浮かない表情だ。

「…俺とてそれが真実だとは思っておらんし、それにトワナグロゥ殿を疑おうなどとは考えたことも無い。しかし彼も既に100歳を超えておられるし、彼が退いた後を憂いている者達が根も葉もない噂を流している…そんな事だろう」

「その間を取り持つのが、『親交大使』である私の使命です」

 ロディエルの、毅然とした回答。

 その回答を聞き、アソッド王の口角が上がる。

「良く言った。これからもよろしく頼むぞ、ロディエル!」

 聞くべきを聞き終えたアソッドは、マントを翻して玉座の間を去った。




 そしてアソッド王が去った後、ロディエルも玉座の間を退出する。











 もうすぐ地平線に、日が沈む。


 ロディエルは王城にある自室に向かっている。

 ロディエルの両後ろには、2人の侍従。

 “弱冠15歳の少年であるロディエルに侍従が付き、王城に住み込んでいる”。これは、単に彼が国王の親族であるというだけでなく…彼がシュレンディア王国において重要な役職を担っているからだった。


 その役職の名は、『親交大使』。

 人間と魔族を繋げる役割を担う者だ。

 彼はシュレンディアにとっても魔族にとっても重要人物なので、誰もが彼こそ適任と考えたのだった。






 ロディエルの自室の前。

 そこには…何故か一人の男がロディエルを待っていた。

「おや?ロディエル、君も王都に帰っていたんだね」

 その男の顔はアソッドによく似ていたが…髪の色が違う。服装も違う。そして何より…纏う雰囲気がとても柔らかい。アソッドとは顔しか似ていないという風貌だった。


 男に声を掛けられ、ロディエルが目を見開いて驚く。

「え…イリューザ様!?どうなさったんですか?」

「何、久しぶりに王都に来たのでな。君の顔を一目見たくなった…それだけだよ」

 優しく響く、不思議な声。

 彼はロディエルのもう1人の叔父、イリューザ・アルデリアス。

 エルーナ姫とアソッド王の異母兄にあたる男だった。




 ロディエルの私室。

 ロディエルはイリューザを招き入れていた。

 侍従が茶を入れ、2人は談笑している。

「ふふふ…エルーナが元気そうで良かったよ」

「はい、母は相変わらずですよ。元気過ぎて父も困っていました」

「それはそれは…。その分ではむしろ、エルーナがトワナグロゥ殿に迷惑をかけていないかを心配した方が良さそうだね」

「…ちなみに“イリューザ兄様ならきっと小言を言うでしょうね”と、母が言っていました」

「ええっ!?いやはやエルーナは全部お見通しかぁ…」

「あはは。母は怖いですよ♪」

 ロディエルはイリューザの頼みで、フィズンでの話をしている。彼も魔族に嫁いだ妹の事を気にかけているようで、こういうのは良くある事だった。

 …それにロディエルも、彼相手なら話がしやすかった。


 イリューザ・アルデリアスは、宗教都市パマヤの長。

 それはシュレンディアにおいて、王政から最も離れた要職だった。






 イリューザはアソッドの兄であるが、アソッドと違いイリューザは妾腹だったのだ。故に王位継承権はアソッドの方が上であり、現在イリューザは政争の種にならぬようあえて王政と距離を取っている。

 …しかし実は、過去に一度だけ荒れそうになった事がある。

 先代の国王が、後継者選びで大いに悩んだ時だ。


 苛烈で強い意志を持つが、短気なアソッド。

 思慮深く智に優れるが、穏やか過ぎるイリューザ。


 先代の国王だけでなく、貴族や側近の多くも当時どちらを支持するかを悩んでいた。王の資質としてはイリューザが上と考える者も多く、“兄イリューザを王に”という声が存外に大きかった…というのは事実だ。

 結局、先王は悩みに悩んだ末…最後は魔族の長トワナグロゥに助言を求めたのだった。そしてトワナグロゥが出した助言が“嫡子のアソッド様こそ王に相応しい”というものだった。






 イリューザはロディエルの私室から、王都の夜景を眺める。

「私も久しぶりの故郷…王都を楽しめたよ。君と一緒にフィズンへ行っていたマルゲオス司教も王都に戻って来たようだからね、明日には彼と一緒にまたパマヤへ戻るよ」

「それではまた、暫くお会いできませんね」

 ロディエルはちょっと寂しそうに目を伏せる。

 ロディエルにとって、シュレンディアにいる肉親でも親しいのはアソッドとイリューザの2人ぐらいだった。アソッドは王として多忙を極める故に、こうして気軽にお茶会…などという訳にはいかない。

 なのでロディエルにとって、叔父イリューザは最も心を許すことが出来る数少ない人間だったのだ。


 少しの沈黙。

 僅かに迷ったのち、ロディエルが口を開く。

「…私から、パマヤの叔父上にお伺いできればいいのですが」

 その言葉に、イリューザは困ったような笑みを返す。

「ダメだよロディエル。シュレンディアで魔族の出入りが認められているのは…自治区のフィズンを除けばワルハランだけだと知っているだろう?君が王都に入るのだって特例なんだ、パマヤになんてとても無理さ」

「…そうですね。でも叔父上やマルゲオス様は、そのラミ教で“生まれながらに悪”とされている魔族と仲良くして下さるんですね」

「確かにラミ教はそういう宗教だけど…私もマルゲオス殿も魔族を信頼しているよ。いつかラミ教がシュレンディアで流行るかもしれないけれど、その時に備えて教義をこの国向けに改変しておかないとね」

 穏やかな笑みのイリューザは、ひとしきり話すと静かに立ち上がった。

「さて、私は帰り支度を始めようかな」

「もう行ってしまうんですね、叔父上…」

「ふふ…どうせ私も季に1回はパマヤの様子をアソッドに伝えに来るんだ。そう遠くないうちにまた会えるよ」

「わかりました。叔父上も体にお気をつけて」

「ロディエルもな」

 イリューザは立ち上がり、ロディエルの私室を後にする。

 そして去り際に、軽く手をあげて部屋を出る。

 ロディエルも、扉が閉まるまでイリューザを見送る。




 これが今生の別れになるなどと、2人は思いもしなかった。











 同日の深夜。

 ロディエルは私室で、趣味の魔法研究に勤しむ。

 彼の私室には様々な魔法の文献が並んでおり、また多種多様な形状・大きさの魔法媒体が棚に収められている。

 ロディエルには『親交大使』という役こそあるものの、別にこれと言って忙しい立場でも無かったのだ。さりとて仮にも王族の親類であるロディエルに雑用など…という事もあり、彼は結構王城内でも自由が許される身だった。




 ロディエルは隕鉄の試験片を片手に考え込んでいる。

(うーん、隕鉄に強いエーテルの流れを産む力があるというのは実証する方法があるけど…その度合いや向きを決めている要素は何なんだろう。形や内部組織に依るという過去の文献もあることはあるけど…)

 ロディエルは棚の本を一冊開き、その頁を捲る。

(エーテルは全ての人間や魔族が持っている物だし、自然界にも濃い場所・薄い場所がある。でも人間はそのままだとエーテルを扱えない…だから“魔法媒体”を通して扱えるように属性を持たせる…それが6属性魔法だ)

 魔法。

 それは6種類の魔法媒体…琥珀・真珠・翡翠・隕鉄・黒曜石・金剛石…に宿るという不思議な力だ。人体や空中にあるエーテルに作用し、時に熱を産んだり、周囲の水分を集めたりするという個々の特性を持つ。しかしこれら魔法媒体については…その原理は分かっていない。

 というか、研究する者もほとんどいない。

 その理由は至極単純。

 利用価値が低いからだ。


 だからロディエルは、その研究をする。

(きっと…きっと、この原理をきちんと理解できれば…世界はもっと便利に、より豊かになるんだ)

 ロディエルの夢。

 それは、魔法の力で世界をより豊かにしたいという願いだった。






 真夜中の王城。

 ロディエルの私室に、ノックの音が響く。

(こんな遅くに誰だろう?)

 読んでいた文献からロディエルは顔を上げ、扉に向かう。

「どなたでしょうか?」

(…この感じ…)

 ロディエルが眉を顰める。

 扉を開ける。


「こんばんわ、ロディエル様」


 そこに居たのは、女性の憲兵。

 透き通るような白金色の髪、見るものを釘付けにする大きくて深い紫の瞳…そして彼女を知る誰もが、王都で一番だというその美貌。

 憲兵隊長アルヴァナ・カナンだった。




 夜のロディエルの私室。

 再び机に向かうロディエル。

 その後ろで、アルヴァナが足を組んでその様子を見ている。

「フィズンの様子はどうだったのかしらロディエル様?シュレンディアに歯向かう愚かな魔族は見つかったかしら?」

「いや、そういうのは居なかった。陛下にもそう報告したよ」

「ふん…どうかしらね」

「…」

 正直、ロディエルはアルヴァナが苦手だった。

 今夜こうして彼女がここを訪ねてきたのだって、決してロディエルとアルヴァナが親しいから…などという理由では無い。

「アルヴァナは、また僕の様子を探りにきたんだろう?」

「もちろんよ。フィズンでよからぬ動きがあっては大変でしょう?」

「…貴女の期待に沿うような事は起きてないよ」

「魔族の言葉を、この私に信じろと仰るの?」

 棘のある、アルヴァナの物言い。

 彼女は王国でも特に有名な“魔族嫌い”だったのだ。


 しかし普通なら、こんな発言は許されない。

 何しろロディエルは、半魔とはいえアルデリアス王家の人間だ。

 だが、アルヴァナにはそれが許される。

 何故なら彼女は…アソッド王お気に入りの愛人だからだ。

 アルヴァナはその美貌でアソッド王に取り入り、憲兵隊長の地位を手に入れていたのだ。ただしそれだけなら批判が殺到しそうなものだが…彼女はその美貌に加えて極めて高い実力も備えていたものだから始末が悪い。

 だから今の王都で、彼女の思うようにいかない事は無い。




 魔法媒体を弄るロディエルに、アルヴァナは素っ気ない言葉をかける。

「ロディエル様は相変わらず魔法がお好きね。そんなものを研究して何になるというの?」

「…この力をきちんと使えるようになれば、いろんなことに応用できるよ」

「本当かしら?」

 アルヴァナの声には、あからさまな嫌疑の色が伺える。

「魔法はエーテルを使用するというけれど…それは貴方達魔族の“異能”も同じでしょう?私の眼には、貴方のエーテル研究が魔族の為にしか見えないのよね」

「そんなことはないよ」

 ロディエルはあくまで淡白に応じる。

 しかしそこでアルヴァナが、わざとらしく可愛い猫撫で言い放つ。


「あらごめんなさい、ロディエル様に異能の力はありませんでしたわね♪魔法の適性なら全部あるらしいですけれど、そんなものは無用の長物ですしねぇ♪」


 ロディエルの手が止まる。

 それは、半分は事実だ。

 ロディエルには魔法の適性が全てある。

 しかし『親交大使』に就任した時、ロディエルは異能を発現していなかった。

 魔法適性が6つもあるが、一向に異能を発現できない…故にロディエルは、幼い頃から人一倍“魔法への憧憬”が強かった。

 アルヴァナは面白そうに、ロディエルの背中に言葉を投げつける。

「無い物ねだりなロディエル様…御可哀想に。そうやって碌に使い道の無い魔法を必死に研究する姿が、私にはとってもいじらしく見えますわ」

 嘲るような、アルヴァナの言葉

 ロディエルは言葉を返さない。

「では…私はこれで失礼しますわね。せいぜいそうやって無意味な研究を続けて下さればいいわ。貴方がでしゃばらないのは、それだけでこの国の為になりますから」

 そうしてアルヴァナは立ち上がり、早々に部屋を後にする。


「待って、アルヴァナ」


 突然、ロディエルが彼女を呼び止める。

 怪訝そうに振り返るアルヴァナ。

「…何かしらロディエル様」

「貴女の言葉は正しい。確かに僕には異能が無かった…それは事実」

「“無かった”?という事は、まさか…!」

 アルヴァナの眼が、驚きの光で満ちる。


 ロディエルの密かな目標の1つ。

 “アルヴァナに自分を認めさせること”。

 魔族嫌いの彼女と仲良くできれば、どんな相手でも仲良くなれる自信がロディエルにはあった。そしてその願いと、魔法への憧れが…彼の異能を目覚めさせていたのだ。


 ロディエルが自信に満ちた笑みを零す。

「最初に、貴女に見せたかった。僕の異能を」

「…なんで私に?」

「貴女を驚かせたかったから」

 ロディエルは悪戯っぽい少年の顔で、静かに手を翳す。

「この異能は…きっと世界を変える。魔法の力がこの世界をより良くするきっかけになると思うんだ」




 そしてロディエルは、自ら名付けた異能『グリモワール』を発動する。


入れ所も無いし入れる必要も無さそうだった、賢者ロディエルのお話でした。

昔の事なんで、本編との関わりは薄いです。

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