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その70 冬の終わりに

デルゲオ島での戦いの後、互いに歩み寄った漣次郎とフェリア。

あの作戦でフィズン周りの状況は変わっており、そんな中で2人は人間と魔族の在り方を変えるよう動き出しており…。

 フィズンの街では今、薄黄色の花がそこかしこに咲いている。




 春季を迎えたフィズンの大通りを、2人の少女が通る。

 それはミューノ・パルサレジアとココロン・ベルンの2人だった。彼女達は以前このフィズンの街に本拠地を置く“フィズン騎士団”に所属していたのだが、今は宰相ビスロ直属の“特務隊”の一員だ。


「あたし達2人でフェリア小隊に配属されたのがもう1年前なのかぁー…なんか不思議な感じだねミュー」

「まあ、あの頃とやってる事あまり変わって無いけどね」

「えー?何言ってんのミュー、去年はパルサレジアの指示でイロイロやってたんでしょー?あたしアレには本当に驚いたんだから!」

「あ、そっか…そう言えばそうだったね」

 ミューノとココロンの2人は今、のんびりと街を散策している所だった。春のフィズンはとても和やかな雰囲気に包まれているが…それは先の冬季後節に魔王のしもべ“スレイヴ”による襲撃が無く、迎撃戦すら発生しなかった事が要因として大きかった。


 魔族による大規模襲撃が予測されていた先月だったが、実際はそれが無かったどころか恒常の迎撃戦すら無かったのだ。元々騎士団が全戦全勝だったとはいえフィズンの民衆は迎撃戦を恐れていたため、皆も現状を喜んでいるのだろう。

 ちなみに特務隊は、引き続きフィズン防衛に加わる形になったままだ。

 これは“念のため”というのが建前だが、実際は主要任務の無い特務隊の扱いが微妙なせいだった。なのでミューノとココロンも今日は非番で、こうして気ままにしている。




 そのうち2人は、フィズンの中央広場に来た。

 暖かな春の日差しの下、2人は広場の端っこにある石垣に腰掛ける。

 何故か妙に楽しそうなココロンが、眠そうなミューノに尋ねた。

「そういえばさ、ミュー」

「何?」

「ミューってまだパルサレジア孤児院の任務もしてるの?」

 ココロンのその問いに、ミューノは柔らかく微笑む。


「実は…パルサレジア公からはもう不要だって言われてるんだ」


 ミューノの回答に、ココロンは目を丸くする。

「そ、そうなの!?」

「うん。実を言うとね、特務隊として秘伝術の魔法陣を見つけた直後にノルガル様に呼び出されて“お前は務めを十分果たした”って」

「パルサレジア孤児院ってそういう所なんだ、もっとなんか厳しい感じなのかなー…って」

「まあ確かに守秘義務とかあって大変ではあるけど、十分シュレンディアに貢献すればこういう事もあるんだ。望めば好きな地位も用意してくれて、実際に魔法院で鍵番までになった人もいるの」

「ふーん、あたしもっと殺伐としたのを想像してたよ」

「確かにノルガル様は厳しい方だけど、あくまで孤児院だからね」

 最近のミューノは、今までにない解放感を感じていた。

 特務隊の作戦が済んだことに加えてパルサレジアの任務もその報告もない…今まで定期的に行っていた事が無くなったため、彼女はどこかぼんやりとしていた。


 欠伸を噛み殺しながらうとうとしているミューノ。

 ココロンはそんな彼女の頬を楽しそうにツンツンする。

「ねえねえミュー!」

「…今度は何?ココ」

「孤児院と縁が切れるなら、また本名を名乗っても良いんじゃなぁい?」

 ココロンの言葉を、ミューノは眠い頭で巡らせる。

(わたしの、本当の名前か…)

 そもそもミューノが孤児院で育ったのは、彼女が災害で親族を喪ったからだった。パルサレジア孤児院で育った者は姓をパルサレジアにするのが習わしなのだが…元の名を大切にしたかった彼女は、孤児院入りした時に偽名を使ったのだ。

(『ミュウ・イオラ』…もう名乗る事も無い、わたしの本当の名前。わたしに唯一残された、お父さんとお母さんから貰ったもの)

 眠気で朧な意識の中、ミューノはぽつりとつぶやいた。


「ミューノのまま…でいいかな」


 その回答に、ココロンは不思議そうだ。

「えー、なんでー?」

「だってわたしもう5歳からこの名前で生きてきたし、この名前でココと仲良くなったから…“ミューノ”って名前も結構好きなんだ」

「あたしと…?」

「ココは…わたしの一番星だから」

「えへへ、また言ってるじゃん」

「…」

「え、あれ…ミュー?」

 ミューノはそこまで言うと、眠気の限界を迎える。

 彼女は目を閉じ、並んで座るココロンの肩にもたれ掛かって寝息を立て始める。

 ココロンはちょっと赤面しながら、しばらくそのまま硬直していた。











「デルゲオ島征伐は非常に難しい…と?」




 同日、ほぼ同時刻。

 漣次郎はシュレンディア王城の庭園で、カイン王にデルゲオ島に関する報告をしていた。彼はデルゲオ島の現状に関して包み隠さず報告を行い、そうして出た結論がこれだったのだ。

 カイン王は難しい面持ちで漣次郎の報告を聞き終わり、溜息と共に言葉を吐き出す。

「独断でデルゲオ島に行き秘伝木術を使った上、その魔法陣を魔族に模写されてしまった…その点について言いたい事は山ほどあるが、魔王のフィズン侵攻計画を未然に防いだ功績もあるからのう。それについてはとやかく言うまい」

「申し訳ありません…」

「ちなみにだが、魔族が秘伝木術でシュレンディアを攻撃する可能性は本当に低いのだな?黒曜石と違って、木術媒体の琥珀は入手が容易だ」

 カイン王の懸念。

 漣次郎は秘伝木術で魔王の企みを阻止したが…その魔法陣をデルゲオ島に残してきてしまった以上、確かに魔族が秘伝火術の代わりに秘伝木術でシュレンディアを攻撃する可能性はある。しかし一応、漣次郎はその辺についても予め考えてあった。


「魔法院の調査結果にもあったんですけど、地質を強制改変して森を作る秘伝木術『グリーン・インベイド』の発動条件は“陽の当たる場所で発動する”事なんです」


 カイン王は感心したように髭を撫でる。

「ほう、陽の当たる場所だと?」

「特務隊のデルゲオ島潜入作成を明け方に決行したのもそれが理由でした。つまり魔族…正確には真祖『月の民』が秘伝木術で破壊活動をするにしても、目立つ所に魔法陣を描かないといけませんからね」

「其方のやったように“流星群の日”に発動される可能性はどうだ?」

「年2回の流星群の日では、流星が必ず深夜に発生します。僕はテルルの異能で明け方に無理矢理やりましたが、あの娘の異能抜きでは不可能ですね」

 “秘伝木術を魔族に返還する”と漣次郎が思いついてすぐに、彼はそれに関する懸念を全て確認していたのだ。その漣次郎の回答は理にかなっているが、しかしカイン王はとても微妙な表情だ。

「まさかとは思うが其方…“魔法陣を奪われるまでが計画だった”などという事はあるまいな?」

「そんな事あるわけ無いですよ。秘伝術は賢者の奥義、シュレンディアの宝なんですから」

 鋭いカイン王の視線にも、漣次郎は白々しく返す。


 カイン王やビスロは恐らく、漣次郎がわざと秘伝術をデルゲオ島に置いてきたことに気付いているのだろう。しかし魔族によるフィズン侵攻を防いだのは差し引きしてもプラス…だから彼等も強い事を言ってこなかった。




 カイン王は半ば呆れながら、漣次郎の報告書にも目を通す。

「特務隊の作戦以降、魔族はフィズン襲撃を完全放棄してデルゲオ島の荒野で緑化計画を進めていると」

「ええ、そもそも魔族がフィズンを求めていた理由が“魔族の滅びを回避する事”だったようですので。フィズンを奪還できずともデルゲオ島が開拓できさえすれば、魔族は防衛力を向上できるそうですし」

「確かに冬季後節の迎撃戦は発生しなかったが、それにどれだけの信憑性があるのかは疑問だな」

「僕が魔王トワナグロゥから直接聞いた話なのでこれは間違い無いでしょう」

「魔王、か…」

 これには流石のカイン王も、かなり悩ましそうだ。


 なにしろあの作戦の直後から、度々フェリアが漣次郎に接触するようになっていたのだ。そして彼はそれを継手にしてテルルと共に時折デルゲオ島を訪問するようになり、彼らと交流を図っているのだった。











「漣次郎、なんか疲れてるみたいだね?」

「最近異能を使いまくりだからねぇ…」

「失礼な言い方になるけど、正直アタシは貴方がそこまでの働き者とは思わなかったよ」




 漣次郎がカイン王に報告した日の夕方。

 彼はテルルと一緒に“朧の箱庭”へとやって来ていた。


 今は2人でヅェニワラ宅にお邪魔しており、テルルはヅェニワラと一緒に夕飯の準備をしてくれている。くたびれた漣次郎はここに居候するラージェと他愛の無い話をしており、ぐったりとした彼の様子をラージェが面白がっている。

「まさかデルゲオ島の魔族を救うなんて方向に行くとは…斬ったアタシが言うのも何だけど、貴方もつくづくお人好しだ。アタシ達に散々利用された挙句に出した結論がこれとはね」

 箱庭に暮らすようになった今のラージェは、長い銀髪を常時下ろしている。そんな彼女は漣次郎と話しながらも、なにやら机で書き物をしている。

「それ、ミューノにも言われたよ」

「ミューノは…まあ言うだろうね。あの娘は合理的だからアタシみたいに呆れ返ってそう」

「あははー…だけど三英傑の秘密を知ったからこそ、魔族と人間のどちらかに肩入れするのは嫌だったんだ。片方だけが完全に悪いって訳でもなさそうだし」

「確かに、根本である“アルヴァナがロディエルを殺害した本当の理由”は真因が不明で、デルゲオ島にも明確な情報が残っていない。こうなればあとは人間と魔族の感情の問題だろうさ」

「だよね。だからこそ僕はなるべく平穏な感じがいいかなーって」

 テルルと縁を持った漣次郎だからこそ思う。

 魔族と人間は、もっと平和に関わり合えるのではないかと。


 漣次郎と話しながらも、変わらずラージェは何かを書き続けている。流石に気になってきた彼はその手元を覗き込む。

「そういえばラージェ、さっきから何を書いてるのそれ?」

「子供向けの教材だよ」

「え、どういう事?」

「長老に“箱庭の子供達に勉強を教えてほしい”って頼まれているんだ。元々ここって本とかほぼ無いし、そもそも読み書きができるヒトがほとんど居ない。だけどこの前ヅェニワラさんが“聖者の戦衣”検証の謝礼にビスロ様から本を貰ったから」

「ああ、それを使って子供達に色々教えているんだ」

「そういう事。今のアタシは先生みたいなものだね」

 普段あまり表情を出さない素のラージェが、今は随分と楽しそうにしている。

 生まれながらにして“ヴァンガード計画”に加わる使命を負っていた彼女にとって、箱庭での暮らしはとても快適なのだろうと漣次郎も思う。全てを騙り、嘘をついてきた彼女の顔は…今この瞬間、あまりにも穏やかだった。






 ラージェは漣次郎が見ている前でそのまま少し作業を進め、どうやらキリの良い所でそれを切り上げた。彼女は書き上げた紙束を鞄に仕舞い込み、改めて漣次郎に向き直る。

「で、デルゲオ島関連は今どうなっているんだ?」

「ああ…フェリアから色々聞いたり、実際に僕自身も魔族の話を聞きながら“人間と魔族の関係”の落とし所を探してる感じだね」

「ふふ、それは確かに難しいだろうさ」

 漣次郎もこれには苦笑いしか返せない。

 ラージェの言う通り、現状はかなり難しかった。


 アルヴァナを“勇者”と称えるシュレンディア。

 しかし魔族は、魔王の息子を殺したアルヴァナを憎んでいる。

 根本にあるこの溝だけは、どうやったって塞がらないのだ。


 漣次郎は溜息と共に床で寝転がる。

「シュレンディアとデルゲオ島じゃ“魔の侵攻”に対する認識が正反対だし、王政は勇者の墓所に関する情報を完全に秘匿しちゃったからなー」

「それは当たり前だよ漣次郎。三英傑はシュレンディアにおいて信仰されていると言って良いほど支持があるから、それを完全否定する情報なんて事実だとしても公表できる筈が無い」

「むー…悩ましい。魔王は停戦を望んでいるみたいなんだけど」

 フェリアが語った通り、魔王トワナグロゥはやはりシュレンディアからの攻撃を恐れていたらしい。魔王はフィズン奪還が絶望的になったことを嘆いているようだが、それでも人間との和平の可能性に前向きだった。

 ラージェも机に頬杖を突き、微笑んでいる。

「魔王様はイリューザ王から連なる大陸の王家を嫌っているけど…ずっと人間を、シュレンディア王家を愛していらっしゃる。貴方も島でそれを見た筈だ」

「…まあね」

 ラージェの言う通り、漣次郎はデルゲオ島である信じられない事実を知った。

 そしてそれこそが、漣次郎の望む最後のピースだった。








 その夜、ヅェニワラ宅で夕飯をご馳走になった漣次郎は、テルルと一緒にあえて箱庭の外で野営をしていた。妙に暖かい“朧の箱庭”内部と違い、シュレンディア最高峰の銀嶺山は年中雪が溶けないので、標高の高いここは春でもまだまだ寒かった。

 実は…漣次郎がデルゲオ島に行き来するようになった頃からある悩み事が発生していた。そもそも今日彼がここに来たのもそれが主な理由だったのだ。




「久しぶりにレンとゆっくりできてるね」

「ごめんねテルル、最近構ってあげられなくて」

 漣次郎とテルルは、爆ぜる焚火を眺めてのんびりとしている。

 ここは以前2人で銀嶺山を登った時に野営したのと全く同じ場所だった。あの時用意した天幕をわざわざこんな所に張って野営をしている理由…それは、漣次郎が最近忙しくて寂しがっていたテルルにせがまれたからだった。


 焚火をじっと見るテルルは…ほぼ真顔。

「あーあ…せっかくレンの作戦が全部上手くいったのに、レンはその後もずーっと忙しいんだもん。テルルは悲しいよ」

「そうだねぇ、いずれフェリアが接触してくるとは僕も思っていたけど、まさかこんなすぐ来るとは思わなかったよ」

「レン、もうあの人に関わらなくてもいいのに」

「そうはいかないよ。僕はデルゲオ島であの道を選んでしまったんだから、最後までちゃんとやり通さないとね」

「むー…」

 最近のテルルは、基本的にずっと不機嫌だ。

 澄ましたような表情をしている彼女はむっとしている事が多く、今だって漣次郎の腕を強めに甘噛みしてくる。

「がぶ」

「ちょ、いてててて」

「あぐー」

「痛いテルル痛いって」

「だってー…」

 痛がる漣次郎に不平を言うテルル。

 口を尖らせる彼女が言わんとすることは明白だった。


 最近よくデルゲオ島に行く漣次郎だが、テルル同伴で無い時の彼は基本的にフェリアと行動を共にしていた。故に最近の彼はしょっちゅうフェリアの匂いを纏っており、それがテルルの機嫌を損ねているのだ。


 まだ気の収まらないらしいテルルが漣次郎にのしかかってくる。

 力で敵わない漣次郎は、もう彼女の好きにやらせることにする。













「漣次郎、なんか君怪我してないかい?妙な噛み跡があるけど」

「分かって言ってんだろうけど、君のせいでテルルが不機嫌なんだよ」

「あはは、それは悪い事をしたね!でも仕方ないだろう?」

「…まあそうなんだけどさ」




 翌日、漣次郎はまたデルゲオ島を訪れていた。

 彼はいつも通り決まった場所でフェリアと落ち合い、今は海岸沿いを2人で歩いている。フェリアはかなりにやついた表情で、噛み跡だらけの漣次郎を見ている。

「漣次郎、なかなか派手にやられているじゃないか。あのテルルって娘は思ったより嫉妬深いんだね」

「…まあ、相手してあげない僕のせいでもあるけどさ」

 砂浜を歩く2人から見た内陸側…デルゲオ島の広大な荒野は、今や新緑が溢れる森林になっていた。フェリアの話だと島の3割は既に緑化されているらしく、この調子だと春季後節を待たずしてこの島から荒野が無くなるという。

 その森林地帯には魔族の姿もちらほらと見えた。彼等は元々この島の下民…テルルと同じく異能が無いか弱い者達らしいが、今は魔王が進める開拓計画の労働力だという。


 働く魔族達を見て、フェリアは感慨深そうに微笑む。

「デルゲオ島の社会構造もじきに変わるだろう。今までの“異能本位の階級制度”もフィズン侵攻を見据えたものだったから、不要となった今それは消えていくことになる筈さ」

「まあ確かに、今のデルゲオ島には仕事とかも山ほどありそうだしね。この木はどんどん切って木材にするんでしょ?」

「その通り。で、そうして空いた土地にまた木を生やして切って…それの繰り返しさ」

「…いくら賢者ロディエルの秘伝術とは言え、そんなことやってたら地面とか地下がおかしくなりそうだね」

「それは父上も懸念しているよ。だからそれの検証を行う区画を決めて緑化と伐採の実験をやるってさ」

 そんな話をしながら、2人は森林地帯に入り込んでいく。


 今日フェリアは、漣次郎をとある人物に会わせようとしているらしい。その男はこの森林地帯と荒野の境目…今まさに開拓を行っている最前線に居るという。






 爽やかな緑の下を進み、漣次郎とフェリアは荒野との境に辿り着く。

 そこには1人の魔族と1人の人間が待っていた。

「父上、ごきげんよう!」

「む…フェリアか。今日はどうした」

 その魔族が、ゆっくりと振り返る。


 そいつは黒鱗で全身を覆った、巨躯の龍人だった。

 身長は2mを優に超えており、フェリアと同じ光彩の細い金眼をしている。頭から背中にかけて鬣が生えているが、それは元の色が分からないくらいの白髪になっている。動きも緩慢なそいつは杖で身体を支えており、その姿が彼の重ねた齢を物語っていた。

 この魔族こそが…かつて“魔の侵攻”でシュレンディアを壊滅させ、今なお“魔王”の名で恐れられるフェリアの父、魔族の長トワナグロゥだった。


 トワナグロゥは漣次郎に気付くと、その顔をじっと見る。

「む、お前も来ていたか」

「どうも、お邪魔しています」

 漣次郎はもう何度かこの島を訪れているので、彼がトワナグロゥと会うのもこれで数度目だった。

 彼はフェリアやラージェが言っていた通り、テルルと絆を結んだ漣次郎の事を信用してくれていた。フィズン襲撃の“焦天の日”を邪魔した事も秘伝木術返還で不問と見てくれており、今魔族と人間の間に立とうとする漣次郎にも協力的だった。




 そして…問題はもう1人の人間の方。

 そいつと漣次郎は正真正銘の初対面だった。

「ほう、其方が噂の異世界人か。俺もフェリアからよく話を聞いているぞ」

「どうも初めまして。僕はシュレンディア王国宰相付き部隊“特務隊”の隊長、漣次郎と言います」

「大陸からこの島に特攻してきたと聞いたからどんな益荒男かと思えば、其方思ったより細身だなぁ!」

 豪快に笑うその男は一見、漁師のような出で立ちだ。丈の短い半袖の服を着ているので、鍛え上げられた屈強な腕と腹筋が露出している。肌は日に焼けて浅黒く、ややウェーブのかかった鮮烈な茶髪がとても印象的で、40代だという年齢を全く感じさせない活力があった。

 そして…その男の眼差しは、とても力強い。


「俺の名はソドリオだ、よろしくなレンジロウ!其方のような気概のある若者がまだ居るとは…大陸もまだ捨てたものでは無いな!」

 彼こそが、大陸とこの島を繋ぎ得る特別な存在だった。


こんな所までご一緒して下さった皆様に感謝します。

漣次郎とフェリアの旅も、もうじき終点となります。

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