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番外4  紅百合の尖兵

本編の数年前、ヴァンガード計画が始動する直前のフェリアのお話です。

 僕の生きるこの場所は、小さな小さな籠の中。

 籠の中に居る事に気付くまでは、幸せだった。

 でも籠の外を垣間見てしまった今…心がもう前には戻れない。











 ここはデルゲオ島。

 魔族が棲む、絶海の孤島。

 その小さな島に、朝日が差した。


「えい、やあ、とー!」

 朝日が昇ったばかりの時間。

 僕はいつものように、剣の稽古をしている。

「お上手ですよフェリア様、」

「えへへ、そうかな!?」

「もちろん。フェリア様の歳でここまで強い子供は、この島にそう居ないでしょう」

 僕の世話係のベルガーが、パチパチと手を叩く。彼は斑模様の毛皮に猫のような顔をした魔族で、僕の剣の先生でもあった。そして…いつも僕の朝稽古に付き合ってくれる、兄のような存在だった。

 僕は得意気になって、ベルガーにお願いをする。

「じゃあベルガー、試しに僕と戦ってよ!」

「ええ、良いですよ」

「もちろん手加減無しで!!」

「え…えーと、それは流石に…」

「むー!なんでさ!?」

「フェリア様に怪我をさせてしまってはいけませんから」

「僕は気にしないのにさー」

 ベルガーの言葉に、僕は思わずムッとなる。

 そしてわざとらしく、大きな溜息をして見せる。

「もう…魔王の娘も楽じゃないよね!」


 僕の父トワナグロゥは、魔王だ。

 このデルゲオ島の魔族を統べる者。

 そして僕は魔王の娘として…皆を幸せにしたい。

 その力が、僕にはあるというのだから。


「僕はどんどん強くなるんだ、だって父上と約束したんだから!」

「その意気ですフェリア様、フェリア様は特別な存在なのですから」

 僕は…この島ではとても珍しい、魔族と人間の両方の血を持っている。

 産まれた時から選ばれた存在なのだ。











 朝の稽古を終えた僕は、ある場所を目指す。

 そこは…この島ではとても珍しい森。

 その場所に、会いたい人が居たから。


「父上!」

 森の端っこ、木々と荒野の境目という場所に…黒い鱗の龍人が居た。

 それが僕の父上。

「おお、フェリアか!」

 僕に気付いた父上が、嬉しそうに僕を抱き上げる。

 僕も父上にしがみ付く。

「えへへ!お仕事お疲れさま!」

「ふふふ、仕方のない娘だ。私はまだ仕事中なのだぞ?」

 このデルゲオ島は殆どが荒野で、木はとても大切なのだ。だから父上は荒野を森に変えるように…土からきれいにする方法を一生懸命に探していた。そのお陰か…この森はちょっとずつ大きくなっていると皆が言っていた。流石は父上だ。

「森が増えれば、皆が喜ぶね」

「ああ」

 だけど父上は、難しい顔をしている。

 僕はその理由をちゃんと知っている。

「…ねえ父上、大陸には森がたくさんあったんでしょ?」

「そうだ…偉大なるローブル王から賜った我等の第二の故郷フィズンには、かつて森と水しか無かった程だったからな…。あの頃は木材にも清浄な水にも困る事の無い、豊かな生活が出来ていた。この島にもそれがあれば良かったのだがな…」

「でも僕達は、大陸から追い出されちゃったんだよね」

「ああ…そのせいで今は、飲み水を得るのにも苦労する有様だ。種によっては海水でも問題無いが、清浄な水があるに越した事は無いからな。だからこそ我々は…あの豊かな大陸に皆で帰らねばならん」

 拳を握りしめ、父上は遠くを見つめる。

 そしてその鋭い視線を僕に向けた。

「フェリア…もうすぐお前は10歳になる。そうすれば遂に『ヴァンガード計画』を始動させるぞ。お前は魔族の未来を切り開く存在になるのだ!」


 その言葉に、僕は気持ちが昂る。

「はい、父上!僕がきっとみんなを幸せにします!」

 父の願い。

 大陸の故郷フィズンを人間から取り戻し…暮らしにくいこのデルゲオ島を去って、皆で豊かに暮らす。それこそが父の願いで、僕にはそれを為す力があるんだ。


 だから僕は、強くなりたい。











 父の『ヴァンガード計画』。

 それは…魔族のものだったフィズンを取り戻すための作戦だ。




 父上は今からだいたい10年前…島の強い魔族を集めて、人間との子供を作るよう促したらしい。この島の中枢には少ないけど人間も住んでいて、その皆が快くそれに応じたという。

 僕の母ノルン・アルデリアスは、この島の人間の中でもかなり偉いらしい。その理由は良く分かんないけど、とにかくそういう事なのだという。そして僕の父トワナグロゥは魔族の王様だ。

 そんな2人の間に産まれた僕は最初から特別で、皆が恭しく接してくれる。それは当然のことだと思うし、特別な僕は皆のために頑張らなきゃいけないんだ。


 全ては尖兵…『ヴァンガード』に選ばれ、皆の為に戦うため。

 悪しき大陸の人間から、故郷を取り戻すために。






 今、僕は10歳になる直前だ。

 そしてそれを控え…『ヴァンガード』を選ぶために、僕と歳の近い半人半魔の子供が島中枢に集められている。見込みのあるのは10人…選ばれるのは3人だ。

 その10人の中で、一番のお気に入りの娘が居た。

 だから僕は、昼過ぎにその子の所へ遊びに行く。


「やっほーマリィル、遊びに来たよ!」

 ここは島中枢に作られた学び舎。

 『ヴァンガード』育成のための建物。

 建物…とは言っても、石ばっかりのデルゲオ島の建物は当然石造りだ。広々としたここは10人の子供が生活する予定なのでいろいろ揃っており、もう既に住んでいる候補の子供も居た。

 そしてこのマリィルもその一人。

「あらフェリア様、来て下さったんですね!」

 ふわふわの金髪に海のような蒼い眼…そして可愛らしい、兎種の耳。マリィルは僕が声を掛けると声色を弾ませ、僕に抱き着いて来た。

「ふへへ…マリィルってばまた胸が大きくなったね。いいなぁ…」

 僕も彼女を強く抱き返す。

 僕と違ってもう大人びたマリィルの身体は、柔らかくて良い感触だ。

 マリィルはちょっと恥ずかしがる。

「そ、そう言われましても…」

「あー柔らかい、いいねぇ…」

「ふぇ、フェリア様…」

 僕は気が済むまで、暫くそうしていた。




 改めて僕は、マリィルと一緒にこの学び舎を探検する。

「あ、もう机が作ってあるね」

「ここは皆で寝る部屋も、ご飯を食べる部屋もありますわ♪ああ、フェリア様と一緒に生活ができるなんて夢のようですわ…!」

 そうしてバタバタと駆け回り、僕は表へと飛び出す。

 そこには…10人の子供には大きすぎる、平らな地面が広がっていた。

「広いねぇ。ここで戦ったりするのかなぁ?魔法や異能の練習もしたいよね!」

「でもフェリア様、私は運動が苦手ですわ」

「そうだねぇ…」


 実はマリィルは…この『ヴァンガード計画』で産まれた子供では無かった。

 恋に落ちた人間と魔族が丁度居て、その娘が丁度いい歳だったから…だから数合わせに選んだと父上は言っていた。だけどマリィルは8歳で異能『ムーンフォース』を発現し、父上は期待以上だと喜んでいた。


 マリィル自身も、父上に選ばれたのがよほど嬉しかったらしい。

「私のお父さんとお母さんも、私に期待していませんわ。ただ“フェリア様やラージェ様に迷惑を掛けるな”と…でも私は頑張りたいんです」

 マリィルは真直ぐだ。

 僕は彼女のそんな所が好きだ。

「大丈夫大丈夫、マリィルはもう異能があるじゃん!僕なんてまだだよ?」

「ふふふ、フェリア様にそう言って頂けて嬉しいですわ♪」

 そう言いながら僕達は、石の学び舎に戻っていく。




 異能。

 魔族なら12歳までにはまず発現するという、特別な力。

 強い心の持ち主や強い異能の魔族が親だと、強い異能が手に入ると父上は言っていた。マリィルもきっと、父上の期待に応えるべく強い心であの異能を手に入れたんだろう。

 だから僕も、そんな異能が早く欲しかった。
















 明日、僕の誕生日がやって来る。

 そうすれば僕は10歳だ。

 それは…『ヴァンガード計画』始動を意味するのだ。




 夜、僕は親友の家に遊びに行く。

 とは言っても…真正面からお邪魔する訳じゃ無い。石造りの家の合間を軽く飛び回り、目当ての部屋へとするりと飛び込む。そこには…銀髪と浅黒い肌の半人半魔、ラージェが寝る寸前で寝床に横になっていた。


「え、姉さま!?」

「こんばんはラージェ!」

 驚くラージェに飛び乗り、僕は彼女の服の中に手を突っ込む。

「ちょ!?姉さまってば!?」

「あー良い、ラージェはスベスベで良い筋肉で…」

「な、急に来てなんなんだよ!やめてー!」

「いいじゃないかちょっとくらい!」

「ちょっとって…いつもじゃないかよ!!」

 しばらくじゃれ合っていたが…僕も流石にラージェには敵わない。

 もみくちゃになっている間に、逆にラージェに馬乗りになられてしまった。

「…もー姉さま、これで懲りた?」

「ふふ、じゃあ今度はラージェが僕を好きにしていいよ!」

 僕はいつもラージェに構うけど、ラージェはあまり僕に構ってくれない。だから構って欲しくてラージェにおねだりしてみる。

「冗談やめてってば、それに今はそんな気分じゃないし…」

 …今日のラージェはあまり機嫌が良くなさそうだ。

 それは単に、僕が寝込みを襲ったのが原因という訳でも無い様子だ。


「もう…寝ようと思ってたのに」

 そう言う不機嫌なこの娘…ラージェは、魔族で2番目に偉いユゥランジェの娘だ。だから親同士が親しいので、小さい時から僕達はよく一緒に遊んでいた。ちなみに…島の子供達の中でも特にラージェは頭が良く、僕と同い年とは思えない程利発だった。

 そしてこの娘も…『ヴァンガード』候補の1人だ。




 僕はもう、この娘や他の同年の子供達と一緒に訓練するのが楽しみだった。

「ねえねえラージェ、明日は何の日か分かる?」

 僕はウキウキしながらラージェに訊ねる。

 ラージェはこれに即答。

「姉さまの10歳の誕生日だろ?」

「その通り、遂に僕は10歳になるんだ!この夜が明ければ、『ヴァンガード』の訓練がやっと始まるのさ!ホント楽しみだよね!」

 僕が此処に来た理由。

 それは、これを彼女にいち早く伝えたかったからだ。


 しかし…ラージェの反応は冷めていた。

「…そうだね」

「あれ?ラージェは楽しみじゃないの?」

「テルルにしばらく会えなくなっちゃう…それが嫌」

「テルル…流行病の時に皆を治してくれた、あのフェイルさんの娘さんだっけ?僕は会った事無いけど」

「アタシの兄や姉は、アタシと何十歳も離れてる…そんな人達よりテルルの方がずっと大事だもん。アタシはテルルを実の妹だと思っているよ」

「そっか、僕も一度会ってみたいなぁ」

 そう言いながら、僕はラージェの顔色を伺う。

 …それだけが理由では無いと、僕は直感で感じる。

「ねえラージェ、何か悩んでるの?」

 僕の問いに、ラージェはすぐ答えなかった。

「うーん…」

 ラージェは迷いながら、起き上がって部屋の隅に行く。

 彼女の部屋は…大陸時代の物だという本だらけで、読書好きの彼女は良く本に没頭していた。そしてラージェは部屋に明りを付け、その中の一冊を開く。

「姉さま、見て」

「おいおい、僕は本読むの嫌いだよ?」

「いいから」

「はいはーい…」

 ラージェに促され…僕は渋々、その本を覗きこむ。


 その本は…大陸の風景を描き上げた絵の画集だった。


 ラージェがゆっくりと、本の頁をめくる。

「これは『ギゼロ河』。かつて魔族が大陸に居た頃…何年も掛けてこの大河の流れを変え、大湿地だったフィズンは住めるような土地になったんだって」

「…」

「これは『銀嶺山脈』。ずっとずーっと高い山が連なって、雪が解けずに積もり夏でも残るんだってさ。その山は信じられない程長く並んでいて、この島よりはるかに大きいそうだよ」

「…」

「そしてこれが『死の砂漠』。アタシの父上や魔王様は、元々この砂漠の向こうで生まれたんだってね。デルゲオ島どころか、シュレンディア王国よりも広い範囲が砂ばかりの灼熱の世界…信じられないよ」

「…」

 僕はその絵に見入る。

 それは…僕の知らない世界。

 僕の知らない大陸の風景に、僕は心奪われた。




 そしてラージェが、本を閉じる。

 僕は何も言えず、ラージェに視線を移す。

 ラージェの橙の瞳が、僕を捉える。

「ねえ、『ヴァンガード計画』について姉さまはどう思う?」

「え?いや…人間からフィズンを取り戻すため、皆を幸せにするために僕が頑張るんだって。僕達は半人半魔で、皆の為に戦える特別な存在なんだから…父上もそう言っていた」

「アタシはそう思っていない」

 ラージェの瞳は、憂いで曇っていた。


「アタシ達は『ヴァンガード計画』の為だけに産まれてきた生き物なんだよ」


 ラージェの言葉に、僕は何も答えられなかった。

「確かにアタシ達は特別さ。強い魔族が一斉に子供を産んで、近い歳の半人半魔の子供達を揃えたんだからね。だからアタシ達にはそれが求められるし、そういうふうに育てられている…違う?」

「…」

「アタシ達の生き方は、産まれた時からもう決まっているのさ」

 そう言うラージェの言葉は、ひどく冷たかった。

 ラージェは本の表紙を撫でる。

「大陸にはこの本にあるような、見た事の無い景色がいっぱいあるんだ。それにこの世界は広くて、いろんな人が生きている…そんな中でアタシ達は『ヴァンガード』という使命に、生まれながら縛られているって事」

「で、でもシュレンディアは悪いやつらで、皆の為にも戦わなきゃ…」

「大人達の話だって、どこまで本当か分かんないよ?アタシの考えでは、大人達はアタシ達にウソも教えてる…そうして戦う理由を押し付けられてるような気がするんだ」

「…」

 僕はそれに、何て言えばいいか分からなかった。

 僕はただ黙って、ラージェの部屋を後にした。











 僕はトボトボと、夜のデルゲオ島を歩く。




『シュレンディアは魔族を裏切った…だから我等はシュレンディアを攻めたのだ。性根の腐ったアソッド王を斃し、魔族が中心となって偉大なるローブル様の夢を叶えるために!』


『ローブル様は“人間と魔族が共に共栄する国”を夢見ていた…。しかし人間を支配するシュレンディアの王政は屑共で、とてもあの聡明なローブル様の子孫とは思えなかった!だからこそ我々がエルーナを女王に据え、人間を管理するべきだったのだ!』


『しかし我等は、よりにもよって魔族を裏切った主犯のアルヴァナに敗れたのだ!何たる屈辱、何たる悲劇…お前の兄ロディエルを殺したあの女を、きっとシュレンディアの愚民どもは称えているのだろう…』


 僕の頭の中で、父上の教えが反芻している。

(…僕はこれを全て信じ、父上の夢を叶えるべく戦おうと思っていた。僕にはそれが当たり前だったから)

 しかし…さっきラージェに叩き付けられた言葉が、頭の中でぐるぐるする。

『アタシ達の生き方は、産まれた時からもう決まっているのさ』

 大陸の風景を想像して、ラージェの言葉を受けて…僕は初めてこう思う。

(僕の、僕自身の願いは何なんだろう?ラージェに言われるまで、考えたことも無かったよ…。父上の夢は叶えたい…それは変わらない、と思うけど…)

 僕は父上が大好きだ。

 母上も大好きだ。

 この島の皆に幸せになって欲しいのも、僕の願いだ。

 だけど。

 それだけでない何かが、僕の中で燃えている。

(だけどもし…僕の父上が魔王じゃ無くて、僕が“ただのフェリア”だったら…一体僕は。何をしたいと願うんだろう?)




 次の瞬間、僕の視界が回る。






 いつの間にか、僕は浜辺へと来ていた。

 ここには穏やかな波の音しかない。

 半分の月が、ひとりぼっちの僕を見下ろしている。


「あれ…なんで僕こんなところに居るんだろう?」

 僕は家に帰る最中だった筈だ。

 僕自身の願いを考えながら。

(何となく海を想像はしたけど…)

 僕の願いを想像したとき、真っ先に思い浮かんだのが海だった。

 正確には…海の向こう。

 まだ見ぬ大陸。

 そして僕はやっと、僕自身の願いに気が付いた。


(見た事の無い場所で、知らない人達と一緒に、ただのフェリアとして生きてみたい。守ってもらえないけど、何でもできる、どこにでも行ける…そう、きっと僕は“自由”が欲しいんだ)


 生まれながらに特別。

 それが僕を縛っているんだ。

 そしてこの力はきっと…そんな僕の願いから生まれたんだ。











 翌朝僕は、日が出る前に眼が覚めた。

 いつもならベルガーと朝の稽古だけど、今日はやめておく。

 そして僕は…大好きな父上の寝室を思い浮かべる。




 僕は一瞬で、自分の部屋から父上の部屋に移動した。

「おはよう父上!」

「な、フェリア?今のは何だ!?」

 既に起きていたらしい父上が、突然現れた僕に仰天する。

「えへへー!」

「まさか異能なのか!?」

「そう!」

 僕は昨日の夜、異能を発現していた。

 急に浜辺に移動していたのがそれだった。


 “どこか知っている場所に一瞬で移動する異能”。

 それが、僕の異能だった。


 まだ寝床の父上は、拳を握りしめて肩を震わす。

「このような異能…未だかつて見た事が無い!流石は我が娘だ、お前なら必ずや『ヴァンガード』の使命を果たすだろう!良くやったフェリア!」

「えへへ、すごいでしょ!褒めて褒めて!」

「もちろんだ!すぐにその力に名前を付けねばな!」

 父が僕を抱き寄せ、優しく頭を撫でてくれる。

 そして僕は、一晩考えたある事を父に伝える。




「ねえ父上、僕はこの異能でみんなを幸せにしてみせるよ!」

「ああ、お前ならきっとできるさ」

「もしそれが出来たら、僕のお願いを1つ聞いてよ!」

「お願い…?」


「もし皆を幸せにしたら…その後、僕は旅に出たい」


 …予想通り、父上は驚いている。

「な…!?」

「僕、ちゃんと頑張るから!きっとフィズンを取り戻すから!」

「な、それは何故だ…?」

「えっとね…」

 決心を固める。


「ただのフェリアになって、好きに生きてみたいんだ」








 ラージェ…君に言われるまで、僕は考えもしなかった。

 自由という物の存在にすら気が付かなかった。

 だけどその存在を知ってしまったから、僕の心は自由へと惹かれている。


 父上の期待には応えたい。

 皆の幸せの為に戦うのも嫌じゃない。

 だけどもう…それだけじゃ僕の心は満たせない。




 自由を叶える異能を手にしてしまった今、僕の心は止められないんだ。


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