表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/80

その46 号砲

ミューノの情報によれば、ワルハラン特区の状況は一触即発なのだという。それを重く見た漣次郎はワルハランに張り込む決意をし、テルルを連れてそこへと向かうが…。

 晩秋のモードン公領。

 外れに位置する小高い丘で、フェリアは高い秋空を仰ぐ。




「デルメーの計画は放棄した」

 フェリアの両隣には、ラージェとマリィル。難しい顔をしたラージェがフェリアにそう報告した。

「やっぱり無理か」

「ああ、あまり真祖にも無理をさせられないからな。それに言ってしまえば、今回の計画は最終的に必須という訳でも無い…いずれフィズンを落とす事を考えれば、やっておきたいのは山々だけど」

「うふふ、ラジィはもっと肩の力を抜くと良いですわ♪貴女の完璧主義も、過ぎれば毒という物ですの♫」

「そうだな、アタシ達に出来る限りの事をしよう」

 フェリアは黙って、2人のやり取りに耳を傾ける。


「ワルハランの皆は、姉様の号令を心待ちにしているよ」

 空を仰ぐフェリアに、ラージェが静かに告げる。

「決行は明日の日没、既に準備は整っているよ。姉様にもカイン王からの“ワルハラン行きの勅旨”の密書が届いている…モードン公も納得してくれたから、姉様は堂々とワルハランに行けばいい」

「そうだね。僕の方も準備は万端さ!」

「フェリア様…どうかご無事で」

「心配要らないよマリィル。まあちょっと怪我はするけど、僕もそれぐらいは体を張らないとね!」

 そうしてフェリアは勢いよく2人に振り返る。

「さあ…ヴァンガードである僕らの使命の為に、もう一頑張りと行こうじゃないか!」











「ここを拠点として使って頂いて大丈夫ですよ。一応ここ表向きは“商店倉庫”なんですが、地下水道からしか出入りできないので安心です。持ち主の商人もパルサレジア公の雇われで、わたしのような諜報員の存在すら知りませんから」


 漣次郎はテルルを伴い、ワルハランのとある場所に来ていた。

 そこはミューノ達パルサレジアの諜報員が使うという“隠れ家”の1つだという。商人の倉庫の一角が不自然に区切られており、入り口の無いそこには地下からしか入れないという特殊な立地だった。

「ありがとねミューノ。いつ『月の民』が動くか分からない以上、ワルハランに拠点が欲しかったんだ。でもここ、ミューノ以外の諜報員が来たりしない?」

「今ワルハランで活動しているパルサレジアについては把握していますが、現状ここを使っている者は居ませんよ」

「でも、気紛れな奴が来ちゃったら…?」

「…基本的に“隠れ家”は内鍵をして使う決まりですし、開けてもらうときは合言葉を使います。誰か来たら向こうが合言葉を言ってくると思うので、そしたら異能で逃げればいいのでは?」

「へー、なら大丈夫かな?」

 窓も無いここは火の灯りだけしかない暗闇だ。

 一面煉瓦で覆われた小部屋には武器や用途不明の小道具が置かれており、いかにも怪しい場所という雰囲気を醸し出す。そしてそこには、ミューノが漣次郎の為に用意したらしい保存食も置かれていた。

「ワルハランの地下水道は複雑なので、地図を置いて行きますね。あとあまり人通りの多い所から出るのは避けて下さい」

「ああ、わかったよ。ありがとねミューノ!」

 漣次郎はテルルと一緒に、数日はここに張り込む予定だった。


 フェリアと『月の民』が起こすという騒動。

 概要まで掴んでいる漣次郎だったが、詳細な決行日までは分かっていなかった。また、未然防止しようとした場合だと…漣次郎かミューノが積極的に動かざるを得ず、その場合2人のどちらかに危険が及ぶ可能性が大きかった

 なので漣次郎はあくまで“実行された計画が騎士団に阻止される”という形を望んでおり、計画を知る漣次郎自身がそのアシストをすればいいという考えだった。




 しかしミューノは、テルルに興味津々だった。

「ふーん、貴女が噂のテルルちゃんね。ふわふわの毛並みに尻尾…すごく可愛いね、ちょっと触っても良い?」

「むー…」

「あれ、レンさん…もしかしてわたし警戒されてます?わたしが貴方の協力者だって事、この娘は知ってますよね?」

 テルルを触りたくて仕方が無いという様子のミューノに対し、テルルは妙に気が立っている…。初対面の相手を怖がることが多いテルルだが、何故かミューノに対して攻撃的な姿勢を見せている。

「うーん困ったなぁ…えっとね、わたしはミューノ・パルサレジア。レンさんとは協力関係だから、そんな怖い顔しなくても大丈夫だよ?」

「…」

 テルルは半眼でミューノを睨んでおり、全身の毛を逆立てている…。


「あなた、レンと仲が良いの?」


 テルルの問いは簡潔だった。

 それを聞いて、ミューノも納得する。

「ああ、そういう事か…。わたしはレンさんと以前一緒に騎士をやってて、また一緒に騎士をやれたらいいと思ってるよ?だけどそれ以上の関係では無いから安心してよ」

「ほんと…?」

 テルルは漣次郎を上目遣いで伺う。

「ああ、ホントホント。それにミューノは別に好きな人が居るみたいだから、その辺は大丈夫だよ?」

「ふーん…」

「ちょっとレンさん、今そこまで言う必要ありました!?」

 露骨に警戒を解くテルルと、不貞腐れるミューノ。

 そうしてミューノは不満そうに溜息を1つ吐くと、テルルの尻尾を遠慮がちに触りながらぽつりと漏らす。

「…こう言っては何ですけど、テルルちゃんを連れてない方がレンさん自由に動けるのでは?」

「テルル役立つよ?」

 すかさず抗議するテルル。

 ちなみに漣次郎にも、テルルを連れていたい理由があった。

「ミューノの言う通りではあるんだけどね、いかんせんラージェがどう来るか見当もつかないからさ。来なければそれまでだけど…来ちゃった場合、異能のせいでどんな姿か分かったもんじゃないからね」

 ラージェの異能『ソウルスワップ』。

 以前ラージェは漣次郎の前に、真祖『月の民』の少女という姿で現れた。その時の彼女は雰囲気も喋り方も全くの別人で、あれをやられてはとても漣次郎に見抜けそうにない。しかしテルルならそれを見抜けるという。

「テルル、匂いでわかるから」

 自慢げなテルル。

「異能で姿を変えたラージェさんが分かるって事?」

「そうだよ。テルル、ラージェ様の匂いは良く知ってるから」

「…すごいね」

 感心するミューノ。

 そう話しながらも、テルルは持参した変装セットをいそいそと装備し始めた。術者が使う灰色のローブを纏い、フードで狼耳をすっぽりと隠す。空っぽにくり抜いてある背負い袋に尻尾を納め、最後に仮面を被ってそれは完成する。

「レン、完成だよ」

「よっしゃ、じゃあ行こうか!一応地下水道の下見はしておきたいからね!」

「わかりました、わたしも途中までなら案内しますよ。でも今日わたしは巡回の日…今は早朝だからまだいいですけど、この後騎士団に戻らないとなので」

「いいよ、後は僕達が思うようにやるからね」


 そう言いながら、3人は“隠れ家”を後にする。











「これが、人間の町…」


 地下水道を一通り歩き回り、とりあえず漣次郎達はワルハランの町外れにある出口から外に出た。微妙に小高く人気の無いその場所からはワルハランの町が一望でき、テルルがその景色に見入っている。

「そういえば、テルルが大きな町を見たのは初めてかな?フィズンに流れ着いた時はすぐにサルガンさんの所に連れて行っちゃったし」

「わふー…」

「ねえテルル、君の故郷にはこういう町無かったの?」

「無かったよ。あそこ削った石をつみ上げた家ばっかりで、こんなキレイな町は見るの初めて!」

「そっか、そりゃ良かった」

「テルルいろんな所を見てみたいなぁ…」

「君の今のその恰好なら、怪しまれない限り大丈夫かもね。でも毛皮を少しでも露出させたらダメだから難しいなぁ」

 そう言いながらも、漣次郎は注意深く町の様子を伺う。

 大通りにはデモ隊のような連中が数箇所におり、それを警戒する騎士団が小隊単位でそこら中を巡回している。時刻はもうすぐ日没で…町外れのここまで届く喧騒は、夜遅くまで続くとミューノは言っていた。

 そして、今は『月の民』にとって好都合な状況でもあるのだ。

(ミューノが言うには、昨日から特区総督のテンジャ様が王都に行っているらしいからね。総督府の衛兵は居るんだろうけど、それでも今は騒動を起こすのには好機だよね)

 漣次郎はミューノのこの情報があったからこそワルハランに張り込む事にしたのだ。漣次郎は遠くまで注意して眺め、何も見落とすまいと気を張る。




 その時、テルルが港町の方を指差す。

「レン、あそこ変」

「え、どこどこ?」

「あっち」

「いやー何処だか…テルルは目が良いねぇ」

 漣次郎も目を凝らし、テルルが見つけた異変に気付く。


 港町付近の大通りで、騎士とデモ隊が衝突している。


 それは一見、まだ小規模なものだ。

 しかしヤバそうな雰囲気も漂わせており、漣次郎は直感的に気付く。

「拙い、たぶん『月の民』が仕掛けて来たんだ…!多分あれは陽動、騎士団をあっちに引き付けて特区で動き出す気だな!?」

「レン、行く?」

「行く!急ぎで!地下水道を全速力だ!」

「わかった!」

 漣次郎とテルルは身を翻し、地下水道経由で特区への最短ルートを往く。






「…居た、あいつらだよ」


 漣次郎とテルルは特区大門のちょうど反対側、運河に近い場所に潜んでいた。そこには『月の民』から得た情報通り、怪しい動きをする半魔族の集団が居た。

 ちなみに先程港町で見かけた騒動はかなりの規模になっているようで、かなり離れたここでもその音が聞こえている。どうやら彼等は本格的に…ワルハラン騒動を発動したらしい。


「レン、大丈夫?」

「心配しないで、上手くやるよ」

 数人の半魔族は、既に異能で木材や瓦礫を大量に運んでおり…どうやらこれらを運河に放り込んで水上交通を封鎖する気のようだ。しかしそんな様子を見てテルルは首を傾げる。

「ねえレン、あんなのであの河ふさがるの?」

「いや、あいつら異能と魔法であの廃材を燃やす気らしい。今の内に止めないと拙いのは確かだ」

「わかった、じゃあテルル行くね」

「よろしく。気を付けてね?」

「うん。『アーク・ウィング』!」

 そう言うとテルルは、上級白術でどこかへと飛び去る。

(テルルは手筈通り…じゃあ僕も無理の無い程度で妨害だ!)

 漣次郎は物陰をそっと抜け出し、最も近い半魔族の背後から忍び寄る。




「『ドリーム・ペタル』!」

 漣次郎は最も近い半魔族の背後を取ると…上級白術の飛行で一気に距離を詰め、催眠の上級木術を放つ。

 桃色の花弁を受けた半魔族が朦朧として崩れ落ちる。

 工作活動をしていた半魔族達は、そこでようやく漣次郎の存在に気付く。

「な、何だ貴様!?」

「この野郎…邪魔されてたまるか!」

 半魔族達は武器を手に、漣次郎に襲い掛かる。

(まともにやり合う必要は無い、時間を稼ぐんだ!)

 漣次郎は上級白術で飛び回り、敵を翻弄する。

「貴様、騎士団の回し者か!?」

「答える義理は無いね!」

「クソが…『アクセル・オーラ』!」

 半魔族の1人が中級土術でオーラを纏う。

 そして信じられない機動力で、建物を足場に漣次郎に迫る。

「うわっ!」

「堕ちろ!」

 半魔族が振るう斧を避け、漣次郎は高空に避難する。

 こうなると敵も手を出せ無い様で、悔しそうに漣次郎を睨んで見上げている。




 その時、こちらに向かってくる者達が。

「待てー!止まれー!」

「貴様『月の民』か!?」


 テルルが騎士達に追われ、こちらに向かって来ていた。


(よし来た!)

 テルルがおびき寄せた騎士団は漣次郎の居る所までやって来て…そこで工作をする怪しげな半魔族の存在に気付いたようだ。

「な…貴様らは何者だ!?あいつの仲間か!?」

「ヤベ、騎士団だ!」

「貴様等も何をしている!?おいなんだこの廃材は!?」

「くそ、こうなったらやってやる!」

 突然現れた騎士団に、工作員の半魔族は自棄になる。

 そうして彼等は騎士団に勝負を挑んだ。

(よし、計画通り!ミューノのお陰で騎士の動きはだいたい分かってたから、近くの小隊をテルルが上手い事釣ってくれた。後は騎士団任せだな)

 漣次郎はその様子を尻目で見ており、同高度まで飛行してきたテルルに抱き着かれる。そしてこっそり異能を使用し、その場から一瞬で消え去った。











「何て事だ、運河の方は騎士に見つかったらしい…」

「そんな…!港町の『月の民』は上手くやってくれたのに」

「それでも大門は計画通り封鎖できたんだ、それだけは良しとせねば」


 ワルハラン特区大門、その内側にミューノとココロンは居た。

 2人は今日騎士団拠点に複数の“音爆弾”を仕掛けた後、無断で抜け出し『月の民』と半魔族の所に合流していた。騎士団的には非常に拙い状態でがあるが、ミューノが仲間のパルサレジアに“隠密活動”と言っておいたので、一応帰還できる道程は確保していた。


「しかし、あんたら2人には感謝しているよ。騎士であるあんたらが内側から工作してくれたお陰で大門封鎖も予定通りすんなり行えた」

「いえいえ、これも隊長の為ですから!」

 2人と一緒に居た半魔族の男が謝意を述べると、自信満々にココロンが胸を張っている。“音爆弾”を用意したのも仕掛けたのもミューノだったが、空気を読んで彼女は黙っている。

「石壁で囲われるこのワルハラン特区は、出入り口がこの大門だけだ。そして王政が監視目的で作った隠し通路もすべて塞いである…あとは空から来る敵を監視すれば、ここは強固な城塞だ!」

「とはいえ、半魔族も全てが我々『月の民』の協力者という訳ではありません…あくまでフェリアの扱いに不満を抱いているだけであって、この抗議活動に賛同している者はさほど多くありませんから」

「しかし、どうしましょーか?運河を封鎖できなかったのは痛いですよね…」

「そうだな、元々は“運河封鎖解除”を条件に“フェリア解放”を要求するつもりだったのだが…」

「こうなったら特区籠城…やってやりましょう!」

 『月の民』も半魔族も、すっかり熱くなっている。

 ココロンもその熱に当てられて浮足立っている。

 ミューノは…そんな皆を静かに観察している。

(運河封鎖は失敗した…きっとレンさんが上手く邪魔してくれたんだろうな。あとはこれを扇動している真祖が見つかると良いんだけど)

 一応ココロンに“協力する”と言った手前、ミューノは彼女の希望を汲んで動いてはいる。しかしその実…フェリアを信用していないミューノは漣次郎と協力し、この騒動を収める為に様子を伺っていたのだ。

(運河が封鎖できなかった以上、『月の民』と協力する半魔族には交渉材料がほぼ無い筈。特区の半魔族の多くはこの騒動に対して消極的に協力しているだけ…あとは上手く誤情報を流して、大門封鎖に反対する雰囲気を作ろう)

 ワルハランの情勢が悪化して以来、特区にはミューノ以外にも数人のパルサレジア諜報員が出入りしていた。彼等が今どこに居るか知りたかったものの…今ココロンの側から離れると怪しまれてしまう。ミューノは仕方なく、暫くは協力者として振る舞う事にしたのだった。




 大門内側に大勢が集まっている喧騒の中。

 誰かが、ミューノに近付いてくる。

(この気配…)

 ココロンは気付いていない。

 ミューノは密かに、自らそいつに近付く。

 そいつは少し驚いた様子だが、それでもミューノを厳しい眼で見た。

「お前ら、何でこんな所に居るんだ?」

「貴方こそ」


 そいつはフィズンの半魔騎士…ワールだった。


 2人はココロンから少し距離を取り、密やかに話す。

「…わたしはココと一緒に、フェリア隊長の為にここに居ます。貴方は?」

「オレは特区が気になってて、最近ずっとここに居ただけだ。騎士団的にはヤベーが、小隊長のルゥイが無理を通してくれたのさ」

「そうですか…」

「しかしココロンの奴はともかく、お前がフェリアの為に動くとはな」

「…そんな不思議ですか?」

 ワールは黒い尻尾を揺らしながら、銀の猫目でミューノを睨む。

「お前…今のフェリアを信用してないだろ。見りゃあ分かる」

「…」

 ワールの言葉からは、私怨以上のものが感じ取れた。

(この騒動…ワールさんは反対なんだ)

 ミューノは試しに、カマを掛ける。

「この騒動について、ワールさんはどう思います?」

「どうもこうもあるか。オレの故郷を荒らしやがって…フェリアの為だか何だか知らんが、オレは『月の民』なんてクソだとしか思ってねぇよ」

(よし、ワールさんは味方だ。いざとなったら頼りにさせてもらおう)

 ワールの言葉に、ミューノは少しの安心感を覚える。

 しかし彼の次の言葉が、ミューノを驚かせた。


「しかもフェリアの野郎、どうも今日ここに来やがるらしいぞ。全くどういうつもりなんだか…」











「なんだなんだ、妙に騒がしいぞ?」


 もう日も暮れたワルハラン、特区大門付近の地下水道。

 漣次郎とテルルが潜むその場所の真上付近が、急に騒がしくなり始める。

「レン、なにこれ」

「わかんない…でも、何かが起きてる」

 上を見上げ、小首を傾げるテルル。

 漣次郎としては“特区大門の状況を伺う”だけのつもりでここに居たのだが、こうなっては直接見に行かざるを得ない。

「…行こう、気を付けてね」

「テルルは大丈夫」

 そうして2人は、近くて人通りの少ない出入り口を目指す。




 特区大門、その外側。

 そこに…紅い髪の女が居た。


「あ、あいつ…!?」

「むー…前のレンが居るね。あれが敵?」

「そうだけど…」

 物陰から伺う漣次郎とテルルは、遠目にそいつを見ている。

 大門前には既に人だかりができており、その中心で自信満々に振る舞うそいつの姿は…漣次郎が半年前まで毎日見ていたものだ。


 紅髪の女騎士・フェリア。

 謹慎になって居る筈のそいつが、何故かこの場所に居た。




「ただいま、特区の皆!僕は帰って来たよ!」

 フェリアが、封鎖された大門の見張りをしている半魔族に呼びかけている。

 反乱を起こした彼等も、フェリアの登場に驚いている。

「な、何でフェリアが!謹慎になって居る筈じゃ?!」

「本物か!?こんな所に居て大丈夫なのか!?」

「特区が大変な状況と聞いたからね。僕だって黙ってはいられないよ!」


 近くに居た騎士達も、フェリアに向かって集まる。

「貴様…何故ここに!?どういう了見だ!」

「モードン領を勝手に抜け出したのか!?」

 責め立てる彼等にも、フェリアは余裕綽々だ。

「僕はカイン王の許可を得てここに居る。これがカイン王の親書だよ」

「な、何!?」

「この騒動を収めるよう、僕はカイン王から命を受けて来たんだ!」

 フェリアは胸を張り、騎士達に宣言する。

「これは僕が原因の騒動だ、僕自身で収めて見せよう!」

 そうしてフェリアは、大門を封鎖した半魔族と『月の民』を説得に掛かる。


(あれは、何のつもりだ!?)

 様子を伺う漣次郎は、困惑しっぱなしだ。

 魔族の味方であるフェリアにとって、この騒動は成功でも失敗でも良い筈だ。だから漣次郎はフェリアがここに来るなんて予想外で、そもそも関わって来ないというのが漣次郎の読みだったが…。

「レン、あれなに」

「わかんない、全く」

「どうする?」

「どうもこうも…どうしよう?」

 フェリアはひたすら真摯に、大門を開くよう反乱した半魔族を説得し続けている。フェリア本人の説得に彼等は心動かされているようで、既に門を開けそうな雰囲気になっている。

(ミューノはどうしているんだろう、特区内に居る筈だけど)

 漣次郎は仕方なく、暫く様子を見守る事にする。




 突然だった。

「うわー!」

「キャー!!」

 フェリアの居る人だかりから、悲鳴が上がる。

 フェリアの声がしなくなる。

(な、何だ!?何が起きたんだ!!)

 困惑する。

 テルルが鋭い声。

「血の匂い」

「は!?」

 そうして人だかりから、決定的な声が聞こえた。


「ふぇ、フェリアが刺された!誰がやりやがった!!?」


 人だかりから運び出されてきたのは…腹部から血を流し、目を瞑ってぐったりとするフェリアだった…。


読んで下さっている皆様に感謝します。

漣次郎もフェリアも頑張っているようです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ