その42 白銀の山
聖地・銀嶺山に魔族が棲んでいるというラージェの話…そこへの道程を知るという老人に出会い、確信を得た漣次郎はその地を目指す。
彼等が『月の民』に与する存在なのか確かめる為、そしてテルルを保護してもらうことが出来る所なのか見定めるためにも…。
ワルハラン特区のほど近く。
ミューノ・パルサレジアは意外な人物に呼び出されていた。
「久しぶりだねミューノ君。しかし大変だねぇ、こんな時期にワルハラン駐在とは」
「そうですね…特区の情勢は相変わらず良くないので」
特区付近にあるやや高級な宿…その最上階のとある部屋にミューノは居た。そして彼女と机を挟んで向かい側、そこにはフィズン騎士団小隊長ルゥイが居た。
ルゥイは物憂げに、ワルハラン特区を眺めている…。
「やれやれ…あの夏の流星群は、この国の半魔族を大いに揺さぶってしまったね。フェリアの養生は彼女自身の希望だっていうのに」
「仕方がありませんよルゥイさん。“魔の侵攻”以来、半魔族の地位はずっと低いまま…フェリア隊長はそんな現状を変える可能性を持った逸材なんですから。それだけ半魔族の皆さんに期待されているという事なんでしょう」
「だけど…この状況、フェリアが望んでいる事とは思えないよ」
ルゥイはシュレンディアの人間では珍しく、半魔族に理解のある男だった。
騎士団学校でも半魔族ワールと友情を築き、フェリアだけでなくマリィルやラージェを差別することもしない彼は…ワルハランの情勢悪化に心を痛めているようだった。
「総督のテンジャ様もしょっちゅう王都と特区を行き来しているみたいで、この前会った時も“もう参っちゃうわよ!”とかぼやいてたなぁ。あの人あんなだけど真面目で義理堅いからねー」
「…ルゥイさんってテンジャ様とそんなに気安いんですか?あの方は王族ですよね?」
「ああ、俺も一応貴族だからね。子供の頃から面識があるのさ!」
(そう言えばそうだった…ルゥイさんは気さくだからすっかり忘れてたよ)
しかし総督テンジャの尽力も、ワルハランの情勢安定までは行っていないのが現状だ。ミューノはこの状況に、不安が募るばかりだった。
そしてルゥイは、ミューノを呼び出した要件を切り出した。
「実はミューノ君…俺、妙な話を耳にしてね。悩んだんだけど…それを君に伝えておこうと思ったのさ」
「妙な話…?」
「実は少し前、ワールが1人で特区に里帰りをしていたんだ。その時ワールは“ミューノに会った”って言っていたから、これは君も知っているよね?」
「ええ、心当たりがあります」
(この前レンさんに“『月の民』語”を教えた時の話っぽいな)
ルゥイは椅子から身を乗り出し、ミューノに顔を近付けて囁く。
「あの日、ワールは夜中に海岸付近をぶらついていたんだって。そしたら…なんか1人で浜辺に向かうココロン君を見かけたって」
「…!?」
「それに…僕の地元で養生しているフェリアも、何か怪しい動きをしているとかいう噂があってさぁ。妙な連中がフェリアの周りをうろついているって父上もぼやいていたね」
(それはたぶん『月の民』だ…きっと騒動を起こす日が近付いているんだろうな。でもココ…一体何をしているんだろう?)
ルゥイの意外な情報に…ミューノは胸騒ぎを覚える。
そしてミューノは、不本意ながらココロンの周囲を探ることにする。
今日のルゥイは、普段と違いとても静かだ。
そして彼は、意外な言葉を口にする。
「俺…フェリアの事が分からなくなってきちゃった」
「それは、どういう意味ですか?」
「いやさぁ…確かにフェリアは記憶が戻って、俺のことも思い出してくれたよ?まあそのせいで以前みたいな塩対応に戻っちゃった訳だけどさ」
「そうですね…マリィルさんも“以前のフェリア様とルゥイさんはこんな感じでしたわ♪”って言っていましたね」
ルゥイは机の木目を睨みつけ、呟く。
「ワールが言っていたんだ、“記憶喪失のフェリアはフェリアじゃ無かったように思う”って。俺には良く分かんないけど、ワールの言いたい事…何となくだけど理解できるんだ。今思えば確かに…記憶を失ったというだけでは説明できない程、この前までのフェリアは人が違っていた」
「…」
「あ、ごめんねミューノ君。こんな話されても、前のフェリアをよく知らない君には分からないよね…?」
「…いえいえ、興味深い話です」
(ワールさんもフェリア隊長のことを疑っているんだ。それにルゥイさんも一応とはいえ不信には思っている…もしかしたら力になってくれるかもしれない。だけど今は、とにかくココだ)
ココロンの事を心配するミューノは、心細げに特区の城壁を眺める…。
「テルル、足元に気を付けてね」
「だいじょうぶだよ」
「しかしここ…寒いし暗いね」
「そう?」
「…テルルは毛皮があるから良いね、羨ましいよ」
漣次郎はテルルを伴い…暗い洞窟のような場所を進んでいる。
カンテラのような灯りを手に進む漣次郎は、足元のゴツゴツした岩場に注意しながら暗闇の先を目指す。大きな背負い袋には雪山で活動する最低限の道具が入っており、漣次郎にとってそれはかなりの重さだった。
対するテルルは、暗闇を気にも留めずに軽い足取りで洞窟を進んでいる。時折岩間にいる生物に目を止めたりする彼女は…あらゆるものに興味津々という風だ。
「えへへ、たのしいねレン」
「うーん、まあこういう冒険感も嫌いじゃないけどさ」
漣次郎は、寒くて湿度の高い洞窟に辟易していた。
足元の岩場には海藻のようなものがへばりついており、気を付けないと滑って怪我をしそうだ。しかも2人とも履いている靴は山道用…重い靴と悪い足場にげんなりしながら、漣次郎は注意深くゆっくり歩を進める。
(こんな道があるなんてね…これなら途中までは人目を気にせず進むことが出来るよ。あとは見つからないように禁足域まで行ければ上々なんだけどさ)
漣次郎は、気を引き締める。
いま2人が目指している場所…それは、銀嶺山にあるという魔族の集落だった。
漣次郎は先日出向いた古物商から、この道順を聞いていた。
昨日の事…漣次郎はテルルを連れて、あの日古物商の男に指定された郊外の一軒家を訪ねていた。古物商はテルルの姿を見てようやく漣次郎の言葉を信じたようで…案内された別荘で“魔族の集落”に向かう方法を教えてもらったのだ。
『いいか良く聞け、もしお前らがレーヴェット騎士団に捕まったら…銀嶺の魔族も危険に晒すことになる。しかし向かうにはレーヴェット騎士団の管理する“禁足域”に入り込まねばならん…故に無理は禁物、とにかく見つからない事を最優先しろ』
かつて騎士だった頃に銀嶺山で遭難し、銀嶺の魔族に助けられたというこの古物商は…今でもたまにその集落へ物資などを運んでいるという。
『銀嶺山脈西側のシュレンディア西海岸は、全域がほぼ断崖だ。その断崖にはいくつかの洞窟入口があるのだが…その1つが禁足域まで続いているのだ。それを知っているのは儂と、儂を頼って来たレーヴェットの半魔族くらいしかおらん』
レーヴェットに隠れ住む半魔族…この男は以前、銀嶺山の禁足域を放浪していた半魔族を“魔族の集落”に連れて行った事があるという。それ以来、噂を聞いた半魔族に同様の話を数回したことがあるらしい。
『干潮時だけ現れる低い位置に、その洞窟の入口はある。近くの海岸付近に3ツ山の連なった大岩があるからそれを目印にしろ』
そう語った古物商は…漣次郎にざっくりとした地図を寄越したのだった。
そうして古物商の話を聞いた翌日…つまり今日。
漣次郎はテルルを連れて、こうして“魔族の集落”を目指している。
いかんせん洞窟に入れるのは干潮時のみとの事なので…漣次郎は話を聞いたその日にすぐレーヴェット西海岸へと向かい、目印と言われた大岩を飛行しながら探し出していたのだ。そして用意していた雪山用の荷物を揃え、テルルと一緒に異能『アストラル』でここへと来たのだった。
潮の匂いが満ちるこの洞窟を、2人は着実に進む。
「レンだいじょーぶ?力を使って疲れてない?」
「平気平気、慣れてきたってのもあるかもしれないけど…そこまで負担にはなっていないからね」
テルルは漣次郎の体調を心配してくれている。
いかんせんフェリアに劣る漣次郎は、彼女に比べて異能や魔法が掛ける体の負担が大きい。飛行してこの洞窟を見つけ、テルルと2人で『アストラル』使用…漣次郎にとっては負荷が大きすぎる筈のこの状況だが、漣次郎は意外と元気にしていた。
(何だかんだ、僕自身の身体に戻ってから異能と魔法を使いまくっていたからねぇ。トレーニング的なのかは分かんないけど…とりあえずは良い事だね)
休憩を繰り返して登るつもりだった漣次郎にとって、これは嬉しい誤算。フェリアの動向を考えても集落探しにあまり時間を掛けたくは無いという思いが漣次郎にはあった。
不意にテルルが、立ち止まる。
「葉っぱの音、木のにおい…」
「本当?じゃあ禁足域ももうすぐかもね」
そう話す内に…進行方向に幽かな光が。
漣次郎とテルルは、その光に向かって進む。
漣次郎とテルルが洞窟の果てに行きついた先は、聖地『銀嶺山』の二合目より上…聖者マルゲオスが指定したという禁足域だった。
出たその場所は、山間の沢沿いだった。
洞窟の出口は石で隠すように塞がれており、2人は周囲に注意しながら最小限にそこを崩し、元通りに修復した。ちなみにその場所は木々に囲まれる森林地帯ではあったが…聞いていた通り見える範囲に禁足域を囲む柵があったので、2人揃って目立たない茶色のローブを纏って注意深く登っていく。
「よし、とりあえずここまでは来ることが出来たね。しかし…ここはまだ雪は無いけど寒いなぁ」
既にこの場所で、サルガン宅と比較しても高地だ。木々の紅葉は大半が散っており、隠れて進む漣次郎達にとってはあまりいい条件では無い。だがこの禁足域には、そもそも騎士どころかラミ教団の大司教すら立ち入らないので…入ってしまえばこっちの物だった。
「ねえレン、どこを行く?」
「そうだねぇ…地図通りには行きたいけど、いかんせん足場が悪いな。あの古物商のおじさんは“獣道がある”って言っていたけれど、そもそもあの人歳の割にガッチリしていたし、こんなのへっちゃらなんだろうな」
人の立ち入らないこの禁足域は、それ故に山道すら無い未踏の地だ。古物商の地図にあるチェックポイントを辿れば進めそうではあるが、歩く場所には難儀しそうだった。
「じゃあ…レン、飛ぶ?」
「良いね、そうしようか。でも木の多い所をなるべく低く飛ぶんだよ?」
「わかった…『アーク・ウィング』」
「『アーク・ウィング』!」
漣次郎とテルルは、落葉がそこかしこに流れて溜まった晩秋の沢を、低空飛行で慎重に進んでいく。
「ねえレン、次の目印はー?」
「えっとね…『貝の岩』っていう、巻貝っぽい模様のある大岩があるみたい。少し進路を西に変えるらしいから、こっちかな?」
元気いっぱいのテルルに比べて、人間の漣次郎はやはり体力的に劣っている。もう騎士に見つけられる心配が無いくらいの標高まで来たのは良いが、疲労する漣次郎に合わせさっきから休憩を繰り返している。
もう既に夕日が沈みそうになっている。かなり登って来たここは周囲にうっすら雪が積もっており、2人は外套を茶色から防寒機能のある白色のものに変えていた。
「レンまってて。テルルが飛んで見て来るよ」
「え、テルル大丈夫?」
「まわりに人はいないよ…『アーク・ウィング』」
地図のチェックポイントは曖昧で、見知らぬ山中でそれを探すのは難儀が過ぎた。幸い2人揃って白術が使えたので…雪に埋もれた目標物を風で掘り起こしたり、チェックポイントを上空から探したりという方法で比較的スムーズに進めていた。
(テルル…あの娘をどうしよう)
飛び去る後姿を見送りながら、漣次郎はまだ悩んでいる。
仮に順調に“魔族の集落”に辿り着けたとして、古物商の言葉通りなら漣次郎がそこで拒絶されることは無いと思われる。恐らく彼等はテルルの事も受け入れてくれるとは思うが…。
(テルルは僕の“フェリアへの逆襲”を手伝うつもりだ…だけどそうなるとあの娘は、ラージェと対立するという事になってしまう。僕にとってあいつは命を狙いに来る敵だけど…テルルにとっては“お姉さんみたい”な仲だっていうし)
テルルを“魔族の集落”に置いてくるかどうか。
漣次郎はここまで来て、まだそれを悩んでいる。
「レン、『貝の石』あったよ!」
「お、本当かい!?じゃあ案内をお願いするね」
探索から戻ってきたテルルの後を追い、漣次郎も飛び立つ。
聖地『銀嶺山』は、シュレンディアの最高峰だ。
かつて伝説の聖者マルゲオスが、ラミ神の啓示を受ける為に登頂したというこの山…上部大半が未踏の地であるこの山は、当然ながら人工物は何も無い。ただただ手付かずの自然が広がるこの場所は、ある種の神秘性を湛えている。
目的地は山の中腹だというが、古物商から貰った地図からするにまだ道半分が良い所だ。漣次郎の異能を以てすれば…テルルを連れて一旦サルガン宅に戻り、翌朝また禁足域まで直接行くという方法もある事はある。
しかし登山による疲労を考慮すると、それはかなり厳しい見立てだ。だからこそ漣次郎は今夜、銀嶺山中での野営を行う準備をしてきたのだ。
「テルル、そっち引張って」
「はーい」
「うーん…まあこんなもんかな?」
「端っこに隙間あるよ」
「ほんとだ、適当に雪で埋めちゃおうか?」
もう日は沈み、漣次郎とテルルは野営の準備を進めていた。
元々この銀嶺登山はテルルと2人の予定だったので、予めサルガン宅でいろんな道具の使い方などを練習して置いていたのだ。
今は2人で、木の骨組みと毛皮からなる天幕のような物を組み立てている。
傍には漣次郎の火術で焚火も起こしてているが…ここは西海岸側な上に海からは直接見えない位置なので、漣次郎はあまり心配していない。
「レン、ごはんにしようよ」
「そうだね、昼間は携帯の保存食で済ませちゃったけど…寒いから汁物を作りたいなぁ。幸い近くに沢もあるし、ある物で作ろうか」
「わーい!」
今日はどうせ野営だろうという想定をしていた漣次郎は、簡単な調理器具と干し肉などの保存食を持ち込んでいた。それに道中で茸や木の実をちょっと収集もしていたので、それらを鍋に纏めて調理しようというつもりだった。
「テルル、水くんでくるね」
「暗いから気を付けてね?」
「だいじょーぶ、テルルにはよく見えてるよ」
そう言いながらテルルは…魔法や徒歩で一日中山登りをしていたとは思えない元気さで、沢へ向かって一直線に駆けて行く。
夜も更け、漣次郎は焚火を消して天幕の中で寝そべっていた。
小型の天幕は2人で使うとやはり狭く、テルルが漣次郎にくっついている形になっている。しかし元々サルガン宅でもテルルはこんな調子なので、漣次郎はすっかり慣れっこだった。
今日の銀嶺山は快晴で、風もあまり無い穏やかな気候だった。天気を心配していた漣次郎にとっては有難い話だったが、野生動物に遭遇する危険性についてはどうしようも無かった。
「…テルル、寝ちゃった?」
「んーん、まだ起きてるよ」
「何か来そうな気配はある?」
「ないよー」
「そっか、ありがとね」
しかし幸いテルルがそういうのに敏感で、サルガン宅でもよく夜中に飛び起きては大型獣の接近を知らせてくれていた。なので今晩も漣次郎は、彼女を頼りにしていた。
「こういう時も、テルルのお陰で安心だね。本当に助かっているよ」
「ほんと?えへへ…」
テルルが嬉しそうに、鼻先を漣次郎にグリグリ押し付けてくる。持ってきた毛皮の寝具も防寒性は十分だったが、体温の高いテルルのお陰で今晩寒さに困る事は無さそうだ。
眠れないらしいテルルが、そっと囁く。
「テルル、今日は楽しかった」
「そう?この登山を楽しめたんならよかったよ。でも僕はもうヘトヘトで…」
「レンといっしょだから楽しいの」
「そっかぁ…」
「でも…じーじが寂しがってるかも。できるだけ早く帰ろうね」
「う、うん…」
(やっぱり、テルルは帰る気満々なんだ。だけど“魔族の集落”が良い場所なら、この娘を置いていくべきだよね。テルルとラージェが対立するのはこの娘の為にならない…それだけは避けないと)
そう考えながら…漣次郎は内心複雑だ。
(真面目に考えれば、フェリアと戦うのにテルルの力は有力だ…とは思う。それは分かっているけれど…)
フェリアには、利用されて捨てられた報いを与えたい。
だけどフェリアよりテルルの事を優先したい。
その2つのせめぎ合いが、漣次郎を悩ませていた。
「えへへ、明日が楽しみだね」
「…うん、そうだね」
漣次郎の気持ちを知ってか知らずか、テルルはこの2人旅が楽しくてしょうがない様子だ。彼女の寝つきが悪いのもきっとそのせいなのだろうと漣次郎は内心思う。
夜の銀嶺山は、穏やかな風の音だけが静かに聞こえた。
翌日、夜明けと共に2人は野営地を後にした。
進み方は昨日と同じく、古物商の地図にある目印を辿るという方針だった。しかしだいぶ高地まで来た事もあって、人目を気にする必要も無い2人は飛行中心で移動をしていた。
その為2人は、昼過ぎには目的地へと到着していた。
「…これだね、『門の岩』。間違い無いんだろうけど…」
「でもレン、何も無いよ?」
「テルル、匂いと音は?」
「ぜんぜんしないよ」
「うーん、どういう事なんだろう…?」
2人は古物商の地図にある最終地点『門の岩』まで辿り着いていた。
雪の積もる銀世界…そのただ中に、ぽつりと人工物らしいそれはあった。大きな石を積み上げて造られたであろうそれは自然の物とはとても思えず、人の立ち入らない銀嶺山禁足域に存在し得ない筈のものだ。
「まさか、『門の岩』ってこれじゃないとか?でも今までの道順も地図通りだったし、それは無いと思うんだけどなぁ」
「…」
ぼやく漣次郎をよそに、テルルは積まれた岩をじっと見つめている。
そして、ぽつりと呟く。
「…異能、なのかな?」
「え…それってつまり、“集落を隠す異能”って事?まあ確かにこの銀嶺山だって、僕等みたいに不法侵入する人間が居ないとは言い切れないから…魔族とすれば集落を隠せるなら隠すよね」
テルルの予想は、漣次郎も納得できるものだった。
「その通り、こんな所までよく来たわね」
突然だった。
『門の岩』の間から、声がする。
テルルが反射的に後ずさる。
漣次郎はテルルを庇うように、前に立つ。
「だ、誰!?」
「あら、ここを目指していたんじゃないのかい?」
「それはそうだけど…」
「あのおじさまからこの場所を聞いたのねー。見た所魔族連れだから、その子を保護してくれたという事かしら?」
その言葉と共に、『門の岩』の間から誰かが現れる。
そいつは…白い毛皮と黒い服を纏った、狐を思わせる姿の魔族の女性だった。
読んで下さる方々に感謝します。
入れ所に困った話があるので、番外編としてそのうち並べます。




