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その39 月の集会

思わぬ所で『月の民』に関する情報を手に入れた漣次郎。

フェリアの計画を阻む為にも、協力者である『月の民』についてもっと知りたい…漣次郎は危険を覚悟で、彼等に探りを入れる準備を進め…。

 秋も深まり、そこかしこで穀物の収穫が始まったモードン公領。

 広大な農地が一望できる高台に鎮座する領主ユミノール・モードンの屋敷、その奥まった場所にある応接間に…変わった客人が2人居た。




「どうだフェリア、最近の様子は。あれ以来記憶の混濁などは無いかのう?」

 1人は燃えるような金髪の、初老の男…シュレンディア国王カイン・アルデリアス。明らかに“御忍び”という地味な恰好をしているが、その赤い眼差しが力強過ぎて殆ど隠れられていない。

「ご心配をお掛けして申し訳ありません。でも僕は大丈夫です」

 もう1人は、紅髪の半魔族フェリア。普段はモードン公別邸を借りて療養をしているのだが、今日はフェリアの様子を気にしていたカイン王の訪問を受け、こうしてモードン邸にやって来ていたのだった。


 カイン王は久しぶりにフェリアに会えてご機嫌だった。

「ふふ、変わり無い様で何よりだ。其方には早くフィズン基地に復帰し、デルゲオ征伐を先導して貰わねばならんのだ。儂の侍従や騎士団幹部は“フェリアの復職は冬の流星群まで様子見”と煩いが、儂としてはもう復帰させたいぞ?」

「いえ陛下、僕としても冬の流星群を待つのが良いと考えています。デルゲオ征伐はどんなに早くとも1年以上の準備期間が必要…それまでに僕の記憶と流星群の関係が分かればいいんですよ」

「ふむ、まあ其方がそう言うのであれば仕方があるまい」

 当のフェリアがこの療養を良しとしているので、カイン王も無理に復職を進めることを諦めたようだ。そして何か、カイン王が難しい顔になる。

「ではその間、悪いが其方にはワルハラン特区へ行ってもらおうかのう」

 カイン王の提案に、フェリアはちょっとおどけてみせる。

「陛下、御冗談を。今僕は“療養中”という名目ではありますが、一応騎士団の監視下でもあるんですよ?陛下の命であれば可能でしょうが、あまり特例というのも良くないのでは?」

「そうも言っておられんのだ、其方も聞いているんだろう」

 カイン王は珍しく疲れた声色で、ため息交じりにぼやく。

「今、ワルハラン特区は情勢が悪化している。“流星群と記憶喪失によるフェリアの療養”の件を、半魔族は王政の謀略と捉えているようなのだ。このままでは拙い…儂としては其方を筆頭に半魔族の地位向上を推進するのが目的であって、半魔族との衝突は望むところでは無い」

「そうでしょうね、僕としても何とかしたいという思いはあるんですが…」

 ワルハラン特区の件は自分と『月の民』の策略だというのに…フェリアはいけしゃあしゃあとカイン王に嘘を吐く。

 カイン王も、困ったようにぼやく。

「ヤレヤレ…さっきも言った通り、儂としてはこの件に乗じて其方をすぐにでもフィズンに戻したいと考えておる。しかしそうなると王都の民や貴族がのぉ…」

「“半魔族の要求に屈した”などと噂が立てば、陛下の立場が悪くなってしまいますよ。僕には陛下しか後ろ盾が居ないんです、そうなれば僕は騎士団には居られないでしょう」

 そうしてフェリアは、良い考えがあるとばかりにカイン王に進言する。

「たとえ僕がワルハラン特区に赴いて自ら説明しても…半魔族にはきっと“王政に言わされている”と思われるでしょうね。それこそ僕が単独行動で、王政の眼がない所でそういう話をしないと効果は無いと思います」


 フェリアの提案に、カイン王は深く頷く。

 そうしてフェリアは、計画を次の段階に移す為動き出す…。











「一緒に来てくれたら良かったんだけどなー」

「無茶言わないでください、わたしも任務を外せないんですって」

「まあ急には無理だよね、それに流石にこの距離…僕の異能じゃ無理かなぁ」




 秋のワルハラン。

 ワルハラン特区の外壁が朧げにしか見えない程の町外れ…そんな郊外の小さな喫茶店のテラス席に、漣次郎とミューノが居た。

「あらかた“彼等の言葉”については説明しましたけど…覚えられました?」

「貰った手帳の中身を暗記しておくよ…」

「一応“入信希望者”っていう体で潜入するんでしょう?ならそういうの持ち込んでも大丈夫でしょうけど…彼等は皆熱心なので、関心が薄そうなのはそれだけでアレです」

「わ、わかったよ…“半魔族すごーい!”って感じで良いんだよね」

「…こんな調子のレンさんで大丈夫かなぁ?そもそもわたし達だって“真祖”の事は良く分かっていないんですから気を付けて下さいよ?」

 何やら怪しげな会話をする2人だが…それはもちろん『月の民』に関するものだ。


 先日出会った半魔族ウゴレの情報で、チャロデン村付近で行われるという『月の民』の集会について知った漣次郎は…ウゴレの助けで“月神信仰の入信者”を装って彼等の集会に潜入することにしたのだ。


 という事で、漣次郎はミューノから“『月の民』が使う隠語”についてレクチャーを受けていたのだ。密かに活動する彼等はそれ用の用語を使っているので、それを知らないと話にならない。

 さっきここで合流し、かれこれ1時間ほどミューノに教わっていた漣次郎。主だった用語は大体掴めたので大丈夫な筈だが、漣次郎自身もあまり自信が無い。

 そんな漣次郎を見て、ミューノにも不安が伝染する。

「…レンさん、やっぱ心配」

「そうなんだよ。僕自身心配で」

「自信満々に弱気な事言わないで下さい」

「仕方ないじゃん」

「もー…」

「ま、まあ何とかするって!いざとなったら逃げ帰るから!」

「…その“居候させてくれているお爺さん”にも“拾った子供”にも、あまり迷惑を掛けちゃダメですよ?」

 漣次郎はミューノを信用できると判断し、サルガンやテルルの事まで全て彼女に伝えていた。魔族のテルルの事は流石に驚いたミューノだが…“まあ何というか、貴方らしいですけど”と一応は納得してくれていた。

「とにかく無理は禁物です、安全第一で」

「了解、任せて!」

 不安を振り切るかの如く、自信も無いくせに胸を叩いてみせる漣次郎。

 ミューノも呆れながら…それでもどこか安心しているようにも見えた。






「あれ、お前ミューノか?」

 声を掛けられた。

 話し込んでいた為か、気配に気づかなかった。

 漣次郎だけでなくミューノも驚いて声の方を向く。

 男だ。

 漣次郎より小柄。

 黒い髪の間から…猫耳が覗いている。

 漣次郎は、そいつに見覚えがある。

「…ワールさん?」

 2人の前に突然現れたのは…フィズン騎士団ルゥイ・モードン小隊所属である筈の半魔族騎士ワールだった。


「そういやお前とココロンはワルハラン駐在になったんだってな」

 どうやら非番を利用しての単身里帰りだったというワールが、たまたまこの喫茶店に入った所ミューノを見つけて声を掛けたらしい。今は隣席に座り込み、のんびりお喋りしている。

 ミューノはワールに漣次郎の事を“ワルハラン在住の従兄”と紹介したが…シュレンディアで黒髪が珍しい事もあり、天涯孤独なミューノの過去を知らないワールは黒髪でお揃いの2人を見てすんなり納得していた。

「ワールさんは良くお休みにワルハランへ帰って来るんですか?」

「いやそうでもねぇが…なんか特区できな臭い噂が流れてるって聞いてよぉ」

 半魔族のワールなら、何か特区の詳しい情報を持っているかもしれない…それを考えたらしいミューノが、それとなくワールに探りを入れ始める。ワールにとってもミューノは知った相手だからか、だいぶ気安く話してくれる。

「噂…やはりフェリア隊長の件なんでしょうか?」

「らしいぞ?オレも昨日特区の実家に帰ったが、近所の連中にフェリアのことを根掘り葉掘り聞かれたからな。オレも“フェリアが自分で休職を言い出した”って言っておいたが、あの様子じゃあ皆納得はしてねぇだろーな」

「わたしも先日ココと一緒にフェリア隊長に会いに行きましたが…フェリア隊長自身も困っていましたよ」

「うーん、フェリアなぁ…あいつなんか元のクソみたいな性格に戻りはしたが、なんか違和感があるんだよなぁ…」

 ミューノはぼやくワールの様子を伺いながら…カマをかける。

「…王都騎士団では『月の民』っていう人達が特区で暗躍しているとかいう噂も流れていましたけど、ワールさん何か知っています?」

 『月の民』という言葉に、ワールは露骨に不機嫌になる。

「以前ココロンの奴も言っていたが、実際『月の民』は実在するぜ?あいつらは王政に反抗する連中だからな…最近は特に特区への出入りが多いみたいだし、あいつらきっと半魔族を利用するつもりなんだ」

(出入りが多い…ウゴレさんの言っていた内容も本当のようだ)

 ウゴレの情報の裏が取れて、一先ず安心する漣次郎。

 その時…ワールの視線が漣次郎に向く。


「ちなみにあんた…どこかでオレと会った事無いか?」


 急なワールの言い草に、漣次郎は面食らう。

「ぼ、僕と!?」

「うーん、なんか雰囲気がなぁ」

 銀の眼でじっと睨まれる。

(げ、まさかバレた?!)

「多分気のせいだよ!!」

「そ、そうかぁ…?」

(テルルも“匂いでわかる”とか言っていたけど…魔族や半魔族はそういうの分かっちゃうのか!?)

 なんとか誤魔化す漣次郎だが、ワールは納得したようには見えない。

 暫く漣次郎の顔を睨んでいた彼だが、急に飽きたらしく視線を逸らす。

「ふーん…なら良いけどよ。でもあんた、暫くは用心する事をオススメするぜ?特区の半魔族は当分あの調子だろうからな」

「だろうね…そうするよ」


 もちろん漣次郎も、ワルハランに居座るつもりは毛頭無い。

 明後日にはウゴレに聞いた『月の民』の集会の日だ。

 『月の民』…魔族と同じく“月神”を信仰し、異能を持つ半魔を“上位種”と崇める謎の集団。件の集会には“真祖”と呼ばれる連中も現れるというウゴレの情報もあり、どうしても漣次郎はそいつらに接近したかった。











 そして遂に…集会の日がやって来る。


 漣次郎は前日にチャロデン村へ前乗りし、昼間から山の中で行われるという集会に備えていた。今回は漣次郎単身で…だいぶ快復したテルルに“いっしょに行く”と縋られたものの、流石に今回は無理なのでサルガン宅に置いてきた。


 ウゴレに聞いた目的地は、廃れた鉱山跡地だった。

 チャロデン村だけでなく…銀嶺山脈の南部は全体的に鉱物が豊富なのだという。その中でも金剛石は、装飾品に加えて魔法媒体という2つの用途がある上に希少な為…非常に高価で取引されているのだ。

 その為、一昔前にシュレンディア全体で“採掘ブーム”のような物があったらしく…その頃掘られた鉱山の跡地がそこかしこにあるのだという。そういう場所にはかつて鉱夫が寝泊りに使っていた建物が残っており…『月の民』はそれを利用していた。


 鉱山の周囲には鉱夫らしき男が数人作業していたが…その全員が『月の民』だった。漣次郎は彼等に接触すると…ウゴレに貰った“証の首飾り”と合言葉を彼等に伝え、入信希望である事とその理由を捏造し…特に疑われることも無く潜入することが出来た。






「お若いの、貴方は何故“雛”になりたいと?」

「…僕は異邦人でして、シュレンディアにもラミ教にも慣れなくで。そんな僕にも居場所をくれると教えてくれた人が居て、その言葉を信じてここへ来ました」

「そうか、苦労なさったんだな…。しかし“銀の君”と鳥達に全てを委ねれば、貴方にも安らぎが訪れましょう」

「ええ、とても楽しみです」


 鉱夫小屋は大した広さでは無かったが…何と地下に広大な空間が広がっていた。恐らく元坑道を拡張したらしいその空間には松明が焚かれており…そこに100人以上の人間が居た。

 そして漣次郎は“入信希望者”として侵入しており、今は近くに居た『月の民』のおばさまと話をしていた。彼女は見たところ普通の人で…大それた事をしでかすようにはとても見えなかった。

「…“雛”ってこれが全員なんですか?聞いていた話だと、もっと居るかと…」

「んん?貴方は飛び入りだから知らないかもしれないけどねぇ、ほんとはもっと大勢居るのさ。雛の中でも選ばれた“渡り”をするのがあたし達って訳で、だからここにはこれしか居ないのさ」

「なるほど…」

「“巣”だって此処だけじゃあ無い。今日だってそこら中の巣に、渡りの雛達がこんな風に集まっている筈さね」

(“雛”は『月の民』、“巣”は集会所、“銀の君”は月神で…“鳥”は半魔族。“渡り”っていうのは確か…真祖の言葉を持ち帰って仲間に伝える役目を持った『月の民』の事だった筈。全く、ミューノの手助けが無かったらチンプンカンプンだったね)

 どうやら『月の民』は日常的に隠語で喋るらしく…ミューノに教えて貰った単語リストが無かったら全く話について行けなかっただろうと漣次郎は思う。

(ミューノが居てくれて、本当に助かっているよ)


 そうしている内に『月の民』が騒めきだす。

 どうやら…真祖『月の民』がやってきたようだ…。




 集まった『月の民』の前方…祭壇らしきところに、数人が登壇する。

 彼等は一様に…真っ白なローブと月を模った杖を持っている。

 各々が角や尻尾を模った装飾品を身に付けており…模造品だと分からなければ、遠目に半魔族にも見える出で立ちだった。


 そしてその中の1人…禿頭の老人がゆっくりと語り出す。

「今日も大勢の雛が集まったねぇ…とても喜ばしい事だ、感謝するよ」

 穏やかな言葉で話すその男が…これからシュレンディアを大混乱させようとしている首謀者の1人にはとても見えない。

「収穫祭の時期が、もうすぐそこまで来ている。籠の鳥の中にも、雛の声に応えてくれる者達が多く現れた。機は満ちた…あとは我等が万全に事を運び、紅い鳥が飛び立つ時を待つのみだ」

(“籠”はワルハラン特区、“紅い鳥”はフェリアだ。“収穫祭”…彼等の起こす騒動の具体的な内容が知りたい…)

 まだ入信希望者という体でしかない漣次郎は、変に質問して目立つのは避けたかった。しかし同様の疑問を持つ『月の民』が居たらしく、真祖に質問を飛ばす。

「デルメーではレーヴェット騎士団の内通者を利用して、一部の砦を押さえての抗議活動…しかしワルハランでは何を起こすのですか?」

「総督が籠を離れる日…大門を閉めて籠城し抗議を行う予定です。さらにはかの地と王都を繋ぐ運河を、優れた異能を持つ鳥達が封鎖します。その力を見せつけ…鳥がいかに優れた存在かをシュレンディアに知らしめるのです」

「しかし…運河に手を出しては、王都騎士団が黙っていないのでは?」

「騎士団は動くでしょうが…ラミ教団がそれを妨げるでしょう。鳥は彼等の教義において、表向きには“生まれながら試練に立ち向かう者達”…鳥を飼い殺しにすることを目論むラミ教団にとって、鳥と騎士団との対立は望むところでは無い筈ですからね」

「そういうお考えなのですか…」

「そうして手始めに、紅い鳥の解放を確約させるのです。さすれば紅い鳥が王様と共に、邪悪なる魔族を滅ぼすでしょう…そして英雄となる紅い鳥を、シュレンディアの人間達に崇めさせるのです」

(特区の半魔族が、ワルハランから王都への運河を塞ぐ…それは確かにヤバそうだね。でも最終目的は“デルゲオ征伐”…これならシュレンディア人にも月神信仰が受け入れられるって訳か)

 真祖の言葉は、実に尤もらしい。

 だからこそ漣次郎は、それを信じることが出来なかった。




 ひとしきり話し終えた真祖の男は、緩やかな動作で大きく手を広げ…月を模した祭壇に祈りを捧げる。

「魔王は恐らく…スレイヴを通じてフィズンの様子を常に伺っているのです。だからフィズンの騎士団長が“剛鎚の鉄人サルガン”から“無能な貴族ネイオレス”に変わった直後に、“魔の再来”を決行したのでしょう」

 そうして彼は集まった『月の民』に向き直り、深々と頭を下げた。

「シュレンディアを守る為にも…紅い鳥の力は不可欠です。既に先日の“夏の迎撃戦”で、フィズンから彼女が去った事を魔王に知られているのですから。時は一刻を争います…皆の力で、紅い鳥を解き放つのです」


 真祖の言葉に呼応し…皆も首を垂れる。






(真祖『月の民』の言葉は何だかまともそうだったが、絶対に何か裏がある…そんな気がする)

 今日の集会は既にお開きとなり、『月の民』は廃坑や山道などをバラけながら散り散りに帰路に就いていた。漣次郎としては真祖に探りを入れたかったので、“勝手がわからない”という風を装ってまだその場に留まっていた。


 そんな時だった。


「貴方、今日初めていらっしゃった新たな雛と聞きました」

 留まっていた漣次郎に声を掛けてきたのは…10歳位の少女。真っ白い髪に吸い込まれそうな空色の瞳…美少女と言って差し支えないその娘が、微笑みながら漣次郎の服の裾をくいくいと引張っていた。

(こんな子供でも…真祖なのか)

「ええ、そうです」

 真祖の側から声を掛けられると思っていなかった漣次郎だが…ここは上手い事動揺を隠すことに成功した。

「今は我々にとっても大切な時期…協力に感謝します」

「いえそんな、僕は拠所を探してここに辿り着いただけですから」

「ふふ…貴方は正しい事をしていますよ?」

「あ、ありがとうございます」

(大人びたというか…凄い雰囲気の娘だな…)

 あどけない表情ではあるものの…妙に理知的で子供にはそぐわない雰囲気を話すその少女に、漣次郎は気圧される。そして彼女は、漣次郎の考えを見透かすかの如く言い放った。


「貴方は私達“真祖”について知りたいのでしょう?」


 これには漣次郎も、流石に驚く。

「え!?いやまあそう思ってはいましたけど…何故そんな」

「これも月神様のお導きです。我々真祖には生まれつきそういう力が備わっていますからね。今は雛が一羽でも多く必要な時期…新たに雛を志望する方はとても貴重なんです」

(それ本当かな…。この世界に転生して半年、ラミ神も月神もただの信仰に過ぎないと思ったけど…まさか神様が実在するっていうのか…?)

「月神様は凄いのですよ?籠の鳥の中でも、月神様を篤く信じる方の多くが“月に関する異能”を発現していますから」

「それは…凄いですね」

(月神を信仰すると、月に関する異能が手に入る…それが本当なら、まさかマリィルは月神の篤い信者…?良く分かんないけど)

 困惑する漣次郎に、美しい少女は慈愛に満ちた笑顔で囁いた。

「5日後…ここから少し東にある山の頂で、真祖が収穫祭に向けた儀式を執り行います。もし興味があれば、月が昇る時間にそこへ来てみませんか?」


 そういうと少女は、小さな手を振って漣次郎の側を離れて行った…。
















 同日、夕刻。

 モードン公別邸には、マリィルとラージェの姿。

 フェリアは朝からずっとカイン王に謁見中で、未だに帰って来ていない。


 マリィルは静かに、窓辺で書き物をしている。

 ラージェは…長椅子に寝そべって眼を閉じている。

 マリィルの柔らかな金髪が…窓から吹き込む秋風に揺られる。

 もうすっかり秋のモードン公別邸は、美しい紅葉に囲まれていた。




 ラージェが、眼を開ける。

「ん…」

「あらラジィ…御目覚めですの?今日はずっとそうしていましたわね♪」

「…姉様は?」

「まだ王様にお会いしていらっしゃいますわ♫」

「長…朝からずっとじゃないか」

「ラジィだって、今日はずっと寝ていらっしゃいましたわよ?」

「今日ここに居たのは“アタシ”じゃない…マリィだって分かっているだろ」

 そういうとラージェは、寝ていたらしいのにぐったりと疲れた様子で上体をゆっくりと起こし…空いた窓まで歩み寄る。

 彼女は寝癖の付いた銀髪を掻き毟りながら、鋭い視線を窓の外に向けた。


「…偶然なんだけど、今日面白い奴を見つけたよ。あれで上手く釣れたらいいんだけど…どっちでも良いように魔法で行くか。あと面倒だから、マリィと姉様にも協力してもらおうかな」


 ラージェの言葉に、眉を顰めるマリィル。

「それはどういう意味ですの?」

「姉様が帰ってきたら…ね」

 そう言い、ラージェは窓の外の夕日を一瞥すると…そのまま二度寝をし始める。


お付き合い頂いている方々に感謝を。

シュレンディア王国も秋真っただ中となって参りました。

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