その35 夜空を翔ける
『月の民』に関する情報収集の為に、サルガンと共にカシナ村を離れていた漣次郎。
しかし用事を済ませて帰ってくると、村中に何故かレーヴェット騎士団の騎士達が大勢来ており…。
黄昏時のカシナ村には、普段ではありえないような騒めきがあった。
いつもは山間部の村らしく長閑な雰囲気で、外部からは稀に旅行者が来る程度の場所だが…今日はちょっと様子が違う。常時は駐屯者しか居ないレーヴェット騎士団の騎士が大勢居り、村人に聞き込みをしている。
そして漣次郎とサルガンは、騎士と共にサルガン宅へと向かっている。
「まさかあのサルガン様が、こんな所に住んでいるとは知りませんでした…」
漣次郎達を先導する若い騎士達は、ガチガチに緊張している。
“元フィズン騎士団長”というサルガンの肩書は彼の退役後も健在だったようで…騎士にとってはサルガンの強面も相俟って威圧感があるらしい。
「…そんな事はどうでも良い、状況を教えてもらおう」
「わ、わかりました!しかし一応、現場も見て頂いて…」
そのやり取りを見ながら、漣次郎は動悸が速くなっていく。
(“山中の一軒家で魔族が発見された”…この状況、テルルが騎士団に捕まっていると見て間違いない。だけどこの人達は“僕達が魔族を匿っていた”と考えている訳では無さそうだけど…?)
危険な状況の筈なのだが…状況が飲めず漣次郎は困惑している。
緊張する騎士達は速足で、漣次郎達と共にサルガン宅へと急いで行く…。
もうだいぶ暗いサルガン宅の周囲には…騎士達が灯りを焚いている。
そしてそこには、青いマントの騎士…レーヴェット騎士団の中隊長が居た。
そして彼は、サルガンを見るなり驚愕する。
「な、サルガン様!?まさかここは貴方の家だと!?」
「む…お前はラングルか?儂が退役した時にフィズンの新兵だった筈だが、レーヴェット騎士団に異動していたとはな」
「あの魔物、サルガン様の家に何という狼藉を…!」
(狼藉…?)
未だに状況が分からない漣次郎。
サルガンは動揺を一切表情に出さず…苛立ち気味に促す。
「いい加減、この状況を教えろ」
「分かりました…」
そして遂に、中隊長の口からこの状況が説明される。
レーヴェット騎士団からの報告はこうだった。
『今日、レーヴェット地方北部のカシナ村外れにあるサルガン氏自宅にて魔族が目撃された。発見したのはカシナ村に住むサルガン氏の知人で、顔を見にふらりと様子を見に来た際サルガン宅内に魔族が居るのを発見した』
それだけなら…漣次郎達にとって非常に拙い筈だ。
しかしこの事件は、ここからが漣次郎達の予想外だった。
『サルガン氏の友人は驚き、慌てて村に帰り駐屯の騎士を呼びに戻った。しかし騎士や村の若者と共にサルガン宅に戻った時…既にサルガン宅は魔族によって散々荒らされ、食料が盗まれていた。裏手の窓が1か所割られており、どうやらそこから侵入し逃走したと思われる』
サルガン宅は、服が散らかり花瓶や硝子が割られ…なんと空き巣に荒らされた風だったのだ。レーヴェット騎士団はそれを見て“レーヴェット山中に潜んでいた魔族がサルガン宅を荒らした”と判断したようだ。
『レーヴェット山中の地理に詳しい村民の助けを受け、騎士団は魔族を捕縛した。魔族は小柄な犬型の幼体で、特に暴れるなどは無く大人しい。一旦その魔族はニシュレ村にある騎士団小基地に収容し、他に仲間が居ないか尋問を行う』
そして…テルルは、やはりレーヴェット騎士団に捕まってしまったようだ。
日が沈み…もうすぐ完全に夜になる。
サルガン宅からは騎士も撤退し、漣次郎はサルガンと共に荒らされた家をそのままに…レーヴェット地方の地図を広げている。
漣次郎もサルガンも…険しい表情だ。
「テルルは…賢いですね」
漣次郎は、ぽつりと呟く。
サルガンも神妙に頷く。
「そうだな…儂の知人に見られてしまって、咄嗟に機転を利かせたのだろう。確かにこの有様なら、騎士団も儂等が匿っていたとは思わんだろうからな…」
テルルは恐らく…漣次郎やサルガンに迷惑を掛けまいと、こうして空き巣のような所業をしたという事だろう。そうして山中に逃げたまでは良かったのだが…恐らく険しい山中で迷い、土地勘のあるカシナ村民に見つけられてしまったのだろう。
「テルル…折角上級白術を使えるようになったんだから、飛んで逃げれば良かったのに」
テルルには…逃げる手段もあった筈だ。
しかし2人が疑われないよう念を入れてか…漣次郎が使っている寝床には、漣次郎がテルルにあげた髪飾りと金剛石の術具がそっと置かれていた。
「…こういう魔法媒体は足が付く可能性がある。ましてお前さんがこれを買ったのは王都の店、テルルが捕まった時これを持っていれば…最終的にお前さんに行きつく可能性はあったな」
(テルル、そこまで考えて…)
漣次郎は、テルルの聡明さに感心していた。
サルガンは…難しい顔だ。
「…レーヴェット騎士団小基地のあるニシュレ村というのは、カシナ村からかなり南に行った所にある。小基地と言っても大した施設では無いが…それでも終日騎士が駐屯しているからな、あの娘の様子を探りに行くのも難しいだろう」
「…」
しかし、漣次郎の意志は固かった。
「僕は、テルルを救出に行きます」
その漣次郎の言葉に、サルガンは眉を顰める。
「…危険だぞ?」
「そんなの関係ありません、あの娘は僕の恩人ですから」
「それだけでは無い」
サルガンは試すように漣次郎を睨み付ける。
「騎士団相手にそんな大それたことをしでかすのであれば…今度こそお前さんはシュレンディアに居場所が無くなるぞ?そうなればフェリアへの復讐どころでは無くなるだろうな。まあ…お前さんが騎士団相手に顔を見られずテルルを救出できるというのであれば、話は別だが」
漣次郎は地図を畳み、懐に収める。
「僕にはフェリアの異能『アストラル』がありますから。そして上級白術と上級木術も併せて、あの娘を救け出して見せますよ」
「そうか…」
漣次郎の決意が固いと見たサルガンは溜息を吐き、不意に何かを紙へ書き殴る。そうしてそれを小さく畳むと、漣次郎に無理矢理押し付ける。
「儂がしてやれるのはここまでだ。明朝までは騎士をこの家に入れんから、救出に成功しても失敗しても…ここの地下の食料貯蔵庫に異能で戻って来い。儂の足では今夜中にニシュレに行くなど不可能だから同行できんが、上級白術が使えるレンなら可能なのだろう?」
「…感謝します」
漣次郎はサルガンの厚意に、深いお辞儀で返した。
そうしてサルガンに借りた外套を羽織り、先日王都で入手した魔法媒体を装備してサルガン宅を後にする。そして地図と夜光を頼りに…騎士団小基地のあるというニシュレ村を単身で目指す事にする。
薄曇りの暗い夜空を背負い…漣次郎は山間部の上空を翔ぶ。
ここはニシュレ村…レーヴェット騎士団の小基地があるという村だ。
もう夜も遅いニシュレ村の村人は皆もう家に入っているようで、見える範囲に人影は無い。そして村の端の方に少し明るい建物が1つあり…地図によればそれこそが小基地の筈だ。
漣次郎は、人気の無い静かな街道に降り立った。
そして、疲労感に苛まれる体を無理矢理動かす。
(つ、疲れた…超級白術『アーク・ウィング』の飛行ってこんなに負担が大きいの?フェリアの体がいかに優秀だったか思い知るよ…。しかしそうも言っていられるか、騎士団の情報通りならテルルは尋問を受けているんだぞ!?)
夜に溶け込む黒い外套と覆面を纏う漣次郎にとって、この暗い夜は有利でもあり不利でもある。漣次郎の姿は闇夜に紛れてはいるが、夜目の利かない漣次郎自身も前に進むのにすら苦労するのだ。
(サルガンさんの情報通りなら…この村で夜間も明るい建物は、騎士団小基地だけの筈だ。明かりの位置からして、ここは村外れで小基地に近い場所…灯りを目指して進もう)
そして漣次郎は足元に気を付けながら、摺足で目的地を目指す…。
騎士団小基地は…策に囲まれた小さめの建物だった。
敷地内の屋外にはほとんど誰もおらず、入り口付近に2人の騎士が居るのみだ。それもそのはずで…そもそもシュレンディア王国が平和であり、その中でもこのレーヴェット地方は特に治安が良いのだ。
故に、ここの騎士には緊張感が無い。
夜の騎士団小基地は、見張りが2人。
物陰に潜む漣次郎に気付かず、雑談をしている。
「全く、今日は野次馬ばかりで大変だったぜ。俺だって魔族なんてのは初めて見たから、奴等の気持ちも分からんでもないが…」
「そうだな、まあ明日には宿泊しているデルメー本隊の連中がレーヴェット騎士団本部に連れて行くからな」
「しかしあの魔族の子供、そもそも人間の言葉が分かるのかよ?上の連中は仲間の居場所を吐かせたいみたいだけどよぉ…」
「さあな?無駄かも知れん」
物陰の漣次郎は聞き耳を立て…その話を聞いていた。
(この基地…聞いていた通りそんなに大きくは無いな。そして窓もあるから…中を覗いて『アストラル』で侵入できるぞ。あとそれ以外に、僕の手札は…)
漣次郎には今、異能以外に白・火・木という3属性の魔法がある。
下級術は風を吹かすだの草を生やすだの全く当てにならないので、基本的に役立つのは中級以上だ。一応漣次郎は魔法教本で木術も上級まで習得済みだが、今使えそうなものは限られている。
(中級白術『トルネード・ジェイル』や上級火術『ボンバー・シュート』は強力だけど、派手過ぎてここじゃ使えないよ。中級木術『ヒーリング・ベール』は回復術だし、そうなるとやっぱり…)
今の漣次郎にとって一番頼れるのは…。
そして漣次郎は、行動を開始する。
「…よし」
漣次郎はまず上級白術で敷地内に入ると…人気の無さそうな窓から中を覗き異能で侵入に成功した。
…内鍵のかかったそこは、物置らしい。
普段は平和なレーヴェットらしく、武器は無く雑貨だらけだ。
漣次郎は物を避け扉に近付き、耳をそばだてる。
足音は…無さそうだ。
(サルガンさんは“何度か来たことがある”とか言って、この小基地の地図を描いてくれた。手書きだから大雑把だけど…)
漣次郎は深呼吸し、考えを纏める。
(サルガンさんの情報によれば…この建物は地下室有りの2階建て。上はここの所長の部屋で、地下に拘留用の牢があるという。外から見て2階は暗かったから上には誰も居ないだろう…)
屋外の基地入口に2人、2階は無人、1階は不明、そして恐らく地下には少なくとも1人以上…サルガン曰く“夜間の駐在は基本2人”らしいが、今は常時で無い以上この情報を鵜呑みには出来ない。
漣次郎は気を付けながら、地図を開く。
(地下へ降りる階段の場所はここから近いけど、そこの見張りをどう突破するか…)
今の漣次郎には、フェリアのような武勇が無い。
既に魔法と異能を使い過ぎて、かなり疲労も溜まっている。
だが…今の漣次郎は燃えていた。
(早く…早くテルルを救けてあげないと!)
そして漣次郎は、腹を括る。
小基地2階、所長室。
暗いその部屋に、漣次郎が佇む。
(1階も無人だった…しかし地下からは話し声が聞こえた。という事は地下にも2人以上、どうにか1人は釣るしかない。大変心苦しいけど…こうするしか)
そうして漣次郎は、物置から持ち出した箒を強く握る。
そしてその箒を…所長室の花瓶に向けて強く振り抜く。
「…何の音ですかね?」
「何か割れた音がしたな…俺が見て来るから、お前は地下に戻れ。恐らく何でも無いとは思うが、何かあったらいかんからな」
「了解です、先輩」
誰か2人が、地下から基地1階にやって来た。
その内1人が2階に向かい、もう1人が地下に降りて行った。
そしてその足音を…異能で最初の物置に戻った漣次郎が密かに聞いていた。
(よし…一気に決めないと!)
騎士1人は、2階に釣った。
漣次郎は物置の戸を、静かに開ける。
懐から、琥珀の埋め込まれた杖を抜く。
そのまま忍び足で地下に降りる階段まで進む。
そして、金剛石の指輪を翳す。
「…『アーク・ウィング』」
漣次郎は僅かに浮かび、階段を浮遊しながら下降する。
「な、何だ貴様?!」
「どこから入った!?」
階段を下りた狭い地下室には、騎士が居た。
(や、ヤバ!?)
そしてそこには…漣次郎の予想に反して、騎士が2人。
しかし怯んでいる暇はない。
「…『ドリーム・ペタル』」
「な!?」
漣次郎は催眠の上級木術を、騎士2人に向けてぶっ放す。
琥珀の杖から、薄桃色の花弁が舞う。
「き、貴様ぁ!」
「逃がすか…!」
しかし騎士は、すぐには眠らない。
漣次郎はそのまま反転し、飛行したまま1階に戻る。
(やっぱり簡単には眠らない…マリィルはすぐ眠らせていたけど、それはあいつの異能『ムーンフォース』の力なんだろう)
逃走する漣次郎は、1階で停止する。
「何かあったのか!?」
2階から降りて来る騎士の声。
地下室からも1人追って来る。
(よし来た…)
そうして漣次郎は、わざと2人に見られる位置で…最初の物置に飛び込んだ。
(…いいぞ、計画通りだ)
漣次郎は物置に飛び込むなり、異能『アストラル』で地下室に戻っていた。
先程の騎士2人は、物置で騒いでいるようだ。
地下室には、騎士が1人眠っていた。
そして…漣次郎はその最奥にある牢へと近付く。
狭い牢の中に…テルルが居る。
地下牢に横たわっている。
裸にされて、手足を縛られている。
全身ずぶ濡れになっている。
表情は…髪で隠れて窺い知れない。
(テルル…!)
漣次郎は牢に近付く。
「おい居ないぞ!?」
「外に逃げたんだ、追え!」
上から聞こえる騎士の声…どうも外へ捜索に向かったらしい。
(…物置の窓を開けておいて正解だったね)
「<アストラル>」
鍵を開ける時間も惜しい漣次郎は、異能で牢の中に侵入する。
そうして漣次郎はテルルを抱き上げ、そのまま異能で姿を晦ます。
レーヴェット地方で魔族が発見された一件は、思わぬ展開となった。
事件発生は夏ノ66日。
レーヴェット北部に位置するカシナ村郊外にて、独居老人の家が魔族によって荒らされているのを村民が発見。カシナ村駐在のレーヴェット騎士団員が本件に対応し、地理に詳しい村民の協力を受け、同日昼にカシナ村山中にてその魔族を確保した。
発見された魔族は犬型の幼体で、場所がレーヴェット北部だった事もあり“夏の嵐でデルゲオ島から漂流してきた”と考えられる。恐らくシュレンディアに流れ着き、レーヴェット山中に隠れ住んでいたのだろうというのが騎士団の見解だ。
捕縛した魔族はニシュレ村にあるレーヴェット騎士団小基地に移送し、尋問を実施。過去の記録から魔族はシュレンディア語を解する筈だが、この個体はそもそも言葉を理解していなかった。さらに捕縛時の身なりからして仲間が居るという線は薄いと思われた。
しかし同日深夜に問題が発生。
ニシュレ村の小基地が、何者かによる襲撃を受けたのだ。当時その場には基地内外に合計5人の騎士が居たのだが、そこに謎の存在が侵入。地下牢に居た魔族を見張っていた騎士が上級木術を受け昏睡し、謎の存在はごく僅かな時間で魔族ごと姿を消したのだ。
侵入者は外套と覆面で特徴が一切不明だが、少なくとも基地内で白術と木術を使用していた。魔法適性2種は貴重な情報とはいえ、レーヴェット地方には大小様々な村が100以上存在する為、調査にはかなりの時間を要すると思われる。
犯人の正体について、レーヴェット騎士団は2つの線で調査をしている。
1つは、レーヴェットに隠棲していると噂される半魔族だ。広大な銀嶺山脈は調査が万全では無く、さらに銀嶺山脈の向こうにあるシュレンディア西海岸には未だ謎が多い。レーヴェット騎士団は特捜部隊を編成し、秋季から本格的に調査を開始すると発表した。
もう1つは、犯人が『月の民』という可能性だ。
半魔族の異能を崇拝するという異教徒『月の民』にとっても、魔族は仇敵の筈だ。今まで国内で拘束された『月の民』に聞き取り調査を行ったがほぼ想定内の反応で、この線はかなり薄いと思われる。
ただし…夏ノ62日に王都で拘束された“夢遊病事件の手配犯”が、拘束時に金剛石と琥珀を所持していた点が今回の事件と符合する。この手配犯の男は『月の民』と考えられるため、活動拠点と思われる王都の拠点を憲兵隊が引き続き調査を行う。
いずれにせよ、魔族を支援する存在など…シュレンディアは許さない。
騎士団は引き続き調査を行い、必ず犯人を拘束すると宣言した。
「一旦は、何とかなりましたね…」
「一応はな」
ニシュレ村に向かった翌日。
サルガン宅の地下室で、漣次郎とサルガンはテルルの治療をしていた。
救出したテルルの状態は…酷いものだった。
きつく縛られた手足は出血しており、顔と腹は強く殴打され…特に顔は腫れが酷い。全身ずぶ濡れだったのは水責めを受けたせいらしく、『アストラル』でサルガン宅へ戻った際に水を吐いていた。その他にも細い裂傷が全身に多数見られ…尋問の苛烈さを物語っていた。
ちなみに…どうもテルルは捕まってから一言も喋らない事で“そもそも言葉が通じない”というフリをしたらしく、レーヴェット騎士団の公表した情報からしてもサルガンが疑われることはまず無いと見て良い状況だ。
しかし…テルルが喋らなかったのは、それだけが原因でも無さそうだった。
「テルル、もう大丈夫だからね。今後ここにまた騎士が来る可能性もあるけど、僕が君をちゃんと守るから」
「あー…」
「…ごめんね、君をこんな目に遭わせてしまって。もっと僕がこういう事態までちゃんと考慮しておけば、こんな事にはならなかった」
「んー…」
テルルの表情は…終始虚ろだ。
そしてテルルは、言葉を喋れなくなっていた。
今は呻き声を上げるくらいで、包帯まみれの体を漣次郎に預けている。彼女は小さい手で弱々しく漣次郎の服を掴み…静かに目を閉じている。
「…お前さんが初めてテルルをここに連れ込んだ時、この娘の背中には酷い傷があった。理由はわからんが、恐らくデルゲオ島でも虐待を受けていたのだろう」
「僕も、その可能性は大いにあるかと」
「騎士団の尋問で酷い仕打ちを受けた上に、島の頃の厭な記憶を思い起こしてしまったのかもしれん…いずれにせよ、暫くは落ち着かせてやらねば」
「…」
「一応言っておくが…儂は騎士団の対応を正しいと思っている。例え子供でも、魔族は異能次第でいくらでも危険になり得るからな」
「それは…僕だって理解しています、していますが…」
レーヴェット騎士団が間違っている…とは漣次郎も思わない。
魔族を恐れるシュレンディア人の感覚は、そういうものだと理解できる。
しかし…漣次郎の中に、納得しきれないものが残る。
その夜、漣次郎はテルルを寝かせ付け…星空を見上げる。
(僕はただでさえ指名手配犯なのに、今回の一件でさらに動き辛くなっちゃった。フェリア達への反撃は諦めたくないけど…)
あくまで追われる身である自分は、フェリア達に居場所を知られれば危険なのだ。今は広大なレーヴェット地方の片隅に居るから良いものの…フェリアはどこにでもワープできるのだから、完全に安全と言える場所はどこにも無いのだ。
しかし…いずれにせよ、今はテルルの安全を最優先にしたかった。
そして漣次郎は、決心する。
(僕は、あくまでテルルを優先するべきだね。フェリアよりも、あの娘の身の安全を確保するのを急がなきゃ…)
しかし漣次郎は、フェリアの事も諦めたくない。
あの3人の企みを思えば…急ぐに越した事は無い。
だから漣次郎は…協力が頼めそうなとある王都騎士に手紙を書く。
ここまで読んで下さった方々に感謝の念を。
今後どういう話になるかちゃんと決めていないので、今まで以上に行き当たりばったりのわかめになります。




