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その29 星降る夜に

遂に“夏の流星群の日”を迎えたフェリア。

いつもと違い慌ただしい騎士団を尻目に、フェリアはマリィルとラージェの3人で夜の巡回に向かい…そこで“漣次郎”はフェリアの秘密について知る事になる。

 夏の満天の星空を、フェリアは自室から眺めている。




 マリィルとラージェに秘密を打ち明けてから数日…遂に“流星群の日”は翌日に迫っていた。その間…マリィルはややぎこちなかったが、ラージェは完全に普段通りの様子で過ごしていた。

 フェリアはというと…自身の秘密を2人が受け入れてくれた事に感謝していた。しかも2人はその事を他言しなかったので、フェリアも今まで通りに生活できていた。

 …しかしまだ不安が残っている。


(フェリアの事故と流星群…考え過ぎだとは思うんだけど)

 フェリアはまだ、あの事故の事が納得できていなかった。そして“このまま流星群を迎えて良いのか?”という点が引っ掛かったままだった。

(マリィルもラージェも…フェリアについて知っている事を全て教えてはくれた。だけどまだあの事故については納得できない点もある…それも確かだ)

 そうして肩の力を抜き、フェリアはベッドに仰向けで倒れ込む。

(“フェリア”…君は一体どういう奴なんだよ?そして君はマリィル達に隠れて何をやっていたんだ…?そして君は、『月の民』と何を企んでいたんだ…?)

 そうして悶々としながら、フェリアは目を閉じる。

 そして彼女はあることを思い付き、ガバッと起き上がる。




 フェリアは部屋の窓を閉め、扉に鍵をかける。

 さらに、いつも寝るときに外す金剛石の指輪を手に取る。

 そして…金剛石の指輪を翳し、魔法陣を思い浮かべる。

「…『スター・ウィスパー』」

 それは…未来予知や占いの出来る超級白術。

 そして彼女が望んだのは…流星群直後のフェリアの姿だった。

(この術、自分の事については上手く行かないらしいけど…そんなの重々承知だ。でも何でもいい…僕が無事に“流星群の日”を終えられる確信が欲しいんだ)

 そしてフェリアの脳裏に…あるヴィジョンが浮かぶ。


 もうすぐ夜が明ける、フィズン郊外。

 馬車に揺られるフェリア。

 フェリアの傍らには…寝息を立てるマリィルの姿。

 ラージェは御者を務め…背中を向ける彼女の表情は窺い知れない。

 そして…遥かな水平線に、朝日が顔を出す。


 そのヴィジョンを見たフェリアは、胸を撫で下ろす。

(…少なくとも、無事に流星群を終えることは出来そうだ。それが分かっただけでも今の僕には十分だね)

 そうして安心したフェリアは、そのままぐっすりと眠りに落ちる…。











 そして遂に、流星群の日がやって来た。


 フェリア小隊の当日の動きは…基本的に“夕刻から夜遅くまでの巡回”だった。これはフェリアの居る中隊共通の動きで、あとは巡回する予定ルートが別々になっていた。

 そしてフェリアは最終確認という事で、昼前に中隊で集まっていた。




「やれやれ…今日の巡回は終わるのが明け方だよ。俺はまだ良いけど、君の美容には実に悪いよねー。王様も君が大事ならそれくらい強権を振るっちゃえば良いのに」

「それはどうでも良いけど…夜の巡回ってなんか慣れないなぁ」

 今フェリアは中隊での会合を終え、兵舎に向かっている最中だった。そしていつも通り、同じ中隊の小隊長ルゥイがフェリアに絡んでいる。

「しかしこれは誤算だったなぁ…俺は君と一緒に流星群の夜を過ごせると思ったのにさ。その為に無理を言って君と同じ中隊に配属して貰ったんだよ俺は!?」

「…ルゥイとこの基地で会った時、運命がどうのこうのって言ってたのは嘘?なんか汚くない?」

「ふふふ、貴族とはそういうものさ!俺は俺の恋路に全力だからね!」

「えぇ…」

 普段通りな軽口を叩き合うフェリアとルゥイだが、その前方からワールが姿を現した。彼は寝起きらしく、寝癖がある上にどこかぼんやりしていた。


「あれ、どしたのワール?まだ起きてないかと思ったよ」

 ルゥイが意外そうに話しかけるが、確かに今は昼前。巡回にはまだ早い時間なので、一般隊員のワールはまだ寝ていても大丈夫な筈だ。

「ふわぁ…いやな、ちょっとした事件がな」

「え、事件!?」

「オレらの隊の馬車がよぉ、車輪が壊れちまったんだ。多分ありゃ劣化だな」

「ええっ!?よりにもよってこんな時に!?」

 のんびり話すワールの報告はとんでもない物で、ルゥイは仰天して走り出す。そして去り際に、フェリアに振り返る。

「ごめんねフェリア、また明日!今日は長丁場になるけどお互い頑張ろう!」

 そうしてルゥイは、猛ダッシュで去って行った。


 そんなルゥイを、ワールは眠い眼で見送っていた。

「…ワールは行かなくて大丈夫なの?」

 慌てないワールにフェリアは尋ねるが、彼は別に焦らない。

「だってよぉ…ルゥイ小隊の隊員って、元々は田舎のモードン領の配下だぞ?みんな地元じゃ農具を弄っていたような手際の良い連中で、オレが去る間際にもほぼ修理は終わってたぜ」

「それ、ルゥイに言ってあげれば良かったのに」

「あいつ面白いからな」

「…酷いね、地味に」

 フェリアは試しに、ワールにも軽口を放ってみる。

 しかし予想外に、ワールの反応は自然だった。

「ほっとけ。あとお前、今日の任務は気を付けろよ?お前が記憶を無くしたのも流星群の夜だったらしいからな」

 思いがけない反応に、フェリアは面食らう。

「…ワールにしては優しいじゃん、もしかして寝ぼけてない?」

「うるせぇ、失礼な奴だな」

 そうしてワールは再び大欠伸をして、ひらひらと手を振り歩き去る。

「…今のお前、オレは嫌いじゃねぇからな。また記憶が飛んだり、元のあの高慢なクソに戻られるのは残念だ…それにそんな事があったらルゥイも悲しむ」

 そうして去るワールの背中を、フェリアは黙って見送った。











「とうとう流星群ですね!あたしこれをホント楽しみにしていたんです!」


 女性兵舎に戻ると、ココロンが鼻息荒くいきり立っていた。

 そんなココロンを、ラージェが楽しそうに観察している。

「ココ、そんなに楽しいかいアレ?」

「だってだって!流星群の夜って“騎士でない者は外出厳禁”なんですよー!?あたし小さい頃から流星群の夜を外で見たいって思ってて、遂にその願いが叶うんです!」

「…でもココは今日、兵舎周辺の見張りだよ?もしかして外回りが良かったんじゃないのー?」

「良いんです、この兵舎の屋根の上で見ますから!」

「…どうやって上る気?」

「心配ご無用、備品の梯子をこっそり持ち出して来ましたから!」

「ココは思い切りが良いねぇ…」

 ハチャメチャなココロンは、どうやら無断で騎士団の備品を持って来てしまったらしい。流石のラージェも呆れている…。


 そしてそんな中、ミューノがフェリアにこっそり囁く。

「…なんでわたしとココが兵舎に残るんです?」

 その問いを予想していたフェリアは、用意しておいた答えを返す。

「巡回は3人でも十分だしね」

「…それだけですか?何か企んでいません?」

「うーん」

 そしてフェリアは、ちょっと意地悪く囁き返す。

「…ミューノはココロンと一緒が良いのかな…と思ってさ」

 その言葉に、ミューノは真っ赤になる。

「な!?何でそんな、いや嫌じゃないですけど別にわたしはそんな…2人きりだからって別に何をしようだなんて…ちょっと隊長、ホントそういう言い方は止めて下さい!!!」

「あはは、御免ね」

 恨めしげにフェリアを睨むミューノは、年相応に可愛らしかった。


 そしてそのままフェリア小隊は、夕刻まで兵舎で待機する。
















 遂に夕刻、フェリア達の巡回の時間がやって来た。


 今日は昼前から騎士団が街中に“夜の外出禁止”を触れ回っており、出歩く市民も居なければ開いている店も無い。煉瓦の敷かれた道には騎士団の馬車が疎らに巡回するだけで…その一部がフィズンの町を出て、郊外の田園地帯への巡回に向かう。

 いつも賑やかな港町フィズンは今、とても静かだった。




 フェリア達も静かな町を巡回している。

 ミューノとココロンは基地に残り、女性兵舎で待機しながら基地周辺を見張っている手筈だ。フェリア達は夜明けまで兵舎に戻れないが、中隊長がたまに様子を見てくれるというので心配はしていなかった。


 ただ…。

「…とはいっても、この巡回ってやっぱ暇そうだね」

 フェリアの“流星群の日”の巡回に対する率直な感想がこれだった。彼女はマリィルと並びながら御者を務め、ゆっくりと馬車を進めている。

「ええ、別にスレイヴのような敵と戦ったりするわけではありませんからね。あと“魔法が強くなる”とは言っても、過去に『月の民』なんかが騒動を起こしたという記録もありませんからね♪」

 マリィルも頷き、隊服の胸元をパタパタと仰いでいる。確かに夏季の真っ盛りな今日は暑い…しかしマリィルは豊満な谷間に構わず仰ぐので、フェリアはなるべく視線を逸らしている。

「寝ずに一晩中巡回をするのが単純にダルいね…」

「へへへ、アタシが寝たら起こしてくれよな!」

 そんな2人の背後、馬車の中には寝そべるラージェ。まだ夕刻だというのに、既に夕食用に持ち込んだ携帯食に手を出している…。

「…もうラジィったら、まだ夕方ですわよ?それに行儀悪いからせめて寝そべって食べるのは止めて下さい」

「はいはーい」

 苦言を呈するマリィルに。ラージェは珍しく素直に従う。でも携帯食を咀嚼するのを止めようとする気は無さそうだ。

 そんな3人の姿は、半年前からあまり変わっていなかった。




 しかしフェリアは、意を決して自ら切り出す。

「…で、例の話はいつしようか?」

 その言葉に、マリィルの表情が硬くなる。

「そうですわね…」

 言い淀むマリィルだったが、背後からラージェの明るい笑い声。

「へへへ、そうだねぇ…街中は聞かれると怖いから無しだ。それにどうせアタシ達もフィズン西区を中心に巡回する必要があるし、西区で人気のない所が良いかなぁ?」

「まあ、今日の巡回って道程は別に決まっちゃいないから…正直どこでもいいや」

 フェリアは考えを巡らすが、別に場所に拘りは無かった。正直な所、馬車が入れる所なら郊外の山中なんかで満足だった。

 しかし軽いフェリアとラージェをよそに、マリィルは深く悩んでいるようだ。

 そうして彼女は、重い口を開く。

「…フェリア様、フィズン西区に良い場所がありますわ」

「え、どこどこ?」

「あそこです」

 マリィルが指差す先。


 そこは…前に一度訪れた事のある、勇者像のある小高い山だった。











 遂に日が沈み、フィズンに夜の帳が下りる。

 フェリア達が目指した場所は、フィズン西の小山…頂に勇者像がある広場だった。その道中には…かつてフェリアが土砂崩れに遭った場所もあった。ちなみにそこは誰も困らない場所だったらしく、土砂崩れはこの半年間でほぼそのままだった。


 今フェリア達は、勇者像の傍らで流星群を待っている。


 馬車を停めて一息吐いたフェリア達は、満天の星空を仰ぐ。

 最初に口を開いたのは、やはりフェリア。

「…じゃあ教えて貰おうか、僕の…僕達の秘密を」

「へへ、いいよ」

「…」

 それにラージェが答えるが、マリィルは黙っている。

 そうして悩みながら、ラージェが遂に“秘密”を口にする。




「実は、前に姉様に嘘を言った」

「…どの話が嘘?」

「レーヴェットに居た頃の話…あれ全部嘘なんだ」

「え!?」

 落ち着いた口調で話すラージェの言葉は…フェリアを驚かせるには十分だった。

「“異能が無くて、口減らしで処分されそうになった”ってアレさ。本当はそんな事無くて…レーヴェットにはちゃんとした半魔族の集落があって、そこがアタシ達の本当の故郷なんだ」

「…」

 絶句するフェリアをよそに、ラージェは続ける。

「シュレンディア王国はこの大陸の北端で、そのシュレンディア領の西の端に銀嶺山脈があり、その麓一帯がレーヴェット地方…これは大丈夫だよね?」

「う、うん…」

「えっと…レーヴェットは銀嶺山脈の東側だけど、実は反対側の西海岸にも僅かに土地があるんだよね。王政も当然それは知ってて、半年に1回レーヴェット騎士団が船を出したりして視察するんだけど…それでも利用価値の低い“銀嶺山脈の西側”の大半は未踏の地なんだ」

「まさかそこに、半魔族の集落が!?」

「そうそう」

 微笑むラージェ。彼女は懐かしそうに夜空を見上げる。


「その集落の中で、優秀な子供がシュレンディアに送り込まれたのさ…それがアタシ達。そうしてシュレンディアで活躍することで半魔族の地位を押し上げて、いつか故郷の半魔族もシュレンディアに受け入れられるようにする…それがアタシ達の使命なんだ」


 神妙な表情で黙っているマリィル。

 いつもの破天荒さが信じられないような、穏やかなラージェ。

 フェリアはもう、驚きの連続で頭痛がし始めていた。






 夜空に、流星が降り始めた。


 フェリアは確かに、エーテルの高まりを肌で感じる。

 この流星はこのまま数時間続くというが…今のフェリアは頭を抱えており、まともに星降る夜空を見ていなかった。

(ここまでの話、今までに見た“フェリアの夢”と合致はしている。それに…このマリィルとラージェの関係も…)

 以前フェリアが見た『3人がワルハランに来た時の夢』…あの夢ではマリィルがラージェを“ラージェ様”と呼んでいた。そしてフェリアが最後に見た『どこかの浜辺の夢』…ラージェは、というか“ラージェの父”とやらが何か特別なのだろうか…?


 フェリアは試しに聞いてみる。

「…実は僕、たまに“昔のフェリア”の事を夢に見ていたんだ」

「え!?」

 声を出して驚いたのは…マリィル。

 ラージェも目を丸くしている。

「…何をどこまで見たの?」

「うーん、断片的だから何とも…それに夢の殆どは君達から聞いた話と大差無かったからねぇ。でもいくつか分からない事があったかなぁ」

「それは何?」

「マリィルがラージェを様付けにしていたり…ラージェがお父さんの話をしていた」

「…!」

 流石のラージェも面食らったようで、言葉を詰まらせる。

 そして逡巡した後、観念したかのように大きな溜息を吐く。


「…アタシの父様は、故郷で高い地位にあったんだ。能無しのアタシがこの大役を仰せつかったのもきっとそのせいだね」


 それでフェリアも腑に落ちる。

「…そうだね、異能の無い君がシュレンディア行きに選ばれた理由がそれか」

「うん」

「君のお父さんは、命を懸けていたの?」

「…」

 ラージェは目を閉じ、顔を顰める。

「…そうだね、もう生きてはいないだろう」

「それは何でか、聞いても良い?」

「うーん、そうだね…父様は重い病気だったんだけど、アタシ達の為に無理をした。アタシ達の使命のためには、故郷から離れてわざとレーヴェット騎士団に保護される必要があったんだけど…その為には銀嶺山脈越えが必須だったんだ。だけど銀嶺の峠道に詳しい古老の中で、まだ動けたのはアタシの父様だけで…」

「そっか…」

 フェリアは星降る夜空を仰ぎ、ラージェの父に祈りを捧げる。






 満足したらしいラージェは、打って変わって軽い笑顔に戻る。


「だけど…アタシ達のやることは変わらない。王様の期待に応え、姉様が中心となり『紅百合部隊』を立ち上げ、いつかデルゲオ島の魔族を征伐するんだ。そうすれば姉様は本当に三英傑にも並ぶ英雄になって…その姉様が王様に故郷の話を打ち明けようって訳さ」

「そういう事か、なら結局僕のやる事は今まで通りだね。秋季になれば僕達の小隊に新しい隊員も来るって王様言ってたから…このままの調子で頑張ろっか!」

「…ええ、そうですわね」

 マリィルもようやく、重い口を開く。

 そしてラージェとマリィルが、フェリアの手を取る。

「フェリア様…私達の使命の為に頑張りましょう」

「へへへ、これは3人の秘密だよ。流石にミューやココにも言えないしね!」

「…そうだね、でもいつかあの2人にも話したいよ。きっと力になってくれるから」

 フェリアも、2人の手を強く握り返す。

 フェリアはようやく、胸のつかえが取れた気がした。


 3人は並んで、降り注ぐ星を仰ぐ。

「…それじゃあ結局、フェリアの事故の件についてはさっぱりなんだね?」

「うん…ゴメンね姉様」

 ラージェは困ったように笑う。

「姉様は『月の民』と何かをしていたみたいけど…故郷でもそんな連中の話は聞いた覚えが無いからね。でも姉様は集落の長の娘…だから何か、アタシやマリィが知らない“秘密の任務”を受けている可能性は無くも無いかな?」

「…それ、何とか思い出したいけどなぁ」

「今の姉様は前の姉様と別人なんだろ?じゃあ無理でしょ、諦めようよ」

「そんなんでいいのかなぁ…じゃあ故郷に戻るとかどうだろう?」

「道順がさっぱり分かんないけどね!少なくともアタシ覚えてないよ?姉様が覚えてくれてたから覚える気も無かったし!」

「あらら…」

 フェリアの秘密について軽く諦めるラージェに呆れ気味のフェリアだが、マリィルが不意に呟く。

「…フェリア様は、過去のフェリア様のことを夢に見ることがあるのでしょう?でしたらその…いずれその“秘密の任務”について思い出す可能性もあるという事なのでしょうか?」

「あ、そっか!それはあり得るね」

 マリィルの言葉にフェリアはハッとなる。

(確かに“フェリアの夢”は、見る度どんどん過去に遡っている。じゃあそのうちフェリアについてもっともっと知れるだろう…)


 フェリアはすっきりとした表情で、3人の使命を果たそうと改めて心に誓う。
















 突然だった。

「そうじゃないんだ」

 急にラージェが頭を抱える。

「ラージェ?どうしたの大丈夫!?」

「…」

 フェリアはラージェの肩を抱くが、ラージェは黙り込んでいる。

 マリィルも真っ青だ。

 ラージェは顔も上げず、俯いたままフェリアに告げる。


「…本当はアタシだって悪い事をしているって思ってるし、ずっとそうやって生きてきた。だけどアタシは最初からそういう生き物なんだから結局そう生きるしかないし、だからこれは正しい。でも、貴方は何も悪くないから」


 ラージェらしからぬ、呪詛めいた言葉。

 フェリアは戸惑う。

 星は降り続ける。

 そして。




 フェリアの少し先、勇者像の側に謎の光が。




「…え、何?」

 フェリアはそちらに顔を向ける。

 空間が歪んだような奇妙な光が現れ…そこに何かのシルエットが浮かぶ。しかしその光はすぐに消え、辺りは再び闇の中。

 ここは暗がりだが…夜目の利くフェリアにはそれが何か分かった。

 誰かが…そこに居る。

 若い男だ。

 そしてその姿…フェリアには見覚えがあった




 そこに居たのは…かつての自分、神無月漣次郎。




 頭が真っ白になるフェリア。

 その漣次郎は、自信に満ちた誇らしげな笑顔。

 彼は何か、大量の荷物を持っている。

 フェリアは言葉も出ない。

 そして、不意にラージェが彼に歩み寄る。

 ラージェは顔も上げず、フェリアと漣次郎に向けて両手を翳す。


「…<ソウルスワップ>」


 次の瞬間、フェリアの視界がひっくり返る。






 視界が大回転した後…“漣次郎”の視線の先には、3人の女騎士。

 マリィル…ラージェ…そして、フェリア。

「な…!?」

 混乱する漣次郎。

 彼は…突然現れた“元の自分”の体に精神が戻っていた。

 夜目の利かない漣次郎には、暗くて女騎士3人の表情が分からない。


 そして俯くラージェは既に腰の双剣を抜き払っており、ただの人間である漣次郎には反応できないような速度で詰め寄り、その刃を素早く振り抜く。




 流星の降る夜空の下、暗い森の中に血飛沫が舞った。


ここまで読んでくれた見知らぬ皆様に、多大な感謝を。


ここが折り返し地点の予定です。

フェリアの物語に、もうしばらくお付き合い頂けると幸いです。

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