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その28 流星群の日

シュレンディア王国における特別な夜…“流星群の日”。

魔法と異能が異常に強化されるというその夜は、騎士団が不審者を取り締まるためにシュレンディア全土で巡回を行うという。

フェリアがかつて記憶を失ったのも“流星群の日”らしく、それを黙っていたマリィルとラージェに対してフェリアは探りを入れる決心をして…。

 フェリアは夢を見ている。




 フェリアは夕焼けの海岸線を歩いている。

 そこは、“漣次郎”が知らない場所。

 フェリアの歩く砂浜から陸地側には、文字通り何も無い。

 建物も…森すら無い、荒れ果てた岩だらけの平原が広がっている。

(ここは、どこだろう…?)

 夢の中のフェリアは、海岸線を小走りに進んでいく。

 そしてフェリアの前方に、小さな人影。

『いた』

 フェリアは呟き、人影に走り寄る。


『ラージェ!ここにいたんだね』

『…姉さまか…』

 人影は、ラージェだった。

 以前の夢と同じ、子供の姿。

 そして彼女の眼は…泣き腫らしたらしく真っ赤だ。

『ラージェ、戻ろう。皆も君を探してたよ?』

『…』

『…ラージェ?』

『…アタシなんていなくてもいいんだよ、姉さま…』

 消え入りそうな小声で、ラージェが呟く。

『そんなこと無い!君が一緒にいないと、僕は寂しいよ…』

『だけど…』

 口籠るラージェは、終始俯いている。

 フェリアと目を合わせようとしない。

 困ったらしいフェリアも黙り込み、暫しの沈黙。

 浜辺には、穏やかな波の音だけ。


 沈黙を破ったのは、ラージェ。

『アタシには何もない』

 そう言うと、ラージェは静かに座り込む。

『アタシにはさ…たとえばマリィルみたいな一途さも無い…姉さまみたいな行動力も無い…』

『…』

『それに…アタシには…父上の様な、覚悟も無い』

『ラージェ…』

 泣き出しそうなラージェ。

 フェリアも、彼女の傍らに静かに座る。

『…アタシには分からない…!だって、なんで…父上は命まで懸けて…あんなことしようとするのかが…!!』

 涙をこらえるラージェ。

『…僕たちがやらなきゃいけないんだよ、ラージェ』

『でも…』

『どうしてもラージェが不安なら、僕が君を支えるから…!』

『姉さま…』

 幼い2人は、夕日の浜辺で見つめ合っている。


(もう、僕にはわからない)

 “漣次郎”は、諦観交じりの意識でこの夢を眺めていた。

(マリィル…ラージェ…そして、フェリア。この3人について、マリィルとラージェは何かを隠している。これはもう…絶対間違い無い)

 微睡む“漣次郎”。

(何かが…おかしい。何か良くない事が起きる…そんな予感がする。この3人は、ワルハラン特区を開放する為に何をしようとしているんだろう…?)

 そのまま、“漣次郎”の意識は沈んでいく…。











 夏季後節を迎えたフィズン基地…その一角にある大きな会議室に、小隊長以上の幹部が全員集まっていた。迎撃戦は季の後節終わり際が多いのでまだまだ先だろうに、皆一様に殺気立っている。

 そんな中に、状況が良く呑み込めていないフェリアの姿もあった。


 集められた幹部の前方には、騎士団長のマシェフ。

 いつに無く真剣な表情の彼は…重い口調で話をしている。

「皆…遂に夏の“流星群の日”まで10日を切りました。これはフィズン騎士団にとって迎撃戦以上に重要な夜です…心して掛かりましょう。当日は海上部隊、陸上部隊共に終日交代制での巡回を行います。最近も不穏な動きをする『月の民』が王都で摘発されたこともあり、そういった組織に対する監視は特務部隊に一任するので…」

(“流星群の日”…一体どんな日なんだ?ただ流れ星が多く見られる日…って雰囲気じゃないのは確かだけれど)

 ピリピリした騎士団幹部を尻目に、フェリアだけが訝し気にその話を聞いていた。先日マシェフからそういう日があるとは聞いていた彼女だが、まさかこんな大掛かりな物だとは想像もしていなかった。

「…という訳で、各中隊長は配下の小隊と共に計画的な巡回を行ってください。今年もこの日を無事に終えられるよう、皆の働きに期待します」

 そう言って、マシェフは通知を終えた。




「あれ?フェリアってば“流星群の日”の事を忘れたままで、誰からも詳しく聞いていないのかい?それは色々とよろしくないねえ」

「そうなんだよ、だからいろいろ教えて欲しいんだ」

「ふふふ、任せてくれ給え!」

 先程の会合を終えたフェリアは、ルゥイを呼び止めて話し込んでいた。ルゥイは驚いていたものの、親身にその辺を説明してくれた。


「“流星群の日”…それは夏と冬に1日ずつある特別な夜さ。シュレンディア全土で観測できるこの現象は、上空のエーテルが揚流とか滞留とか何とかで定期的に活性化する事で…この夜だけエーテルが尾を引く火球になって観測できるのさ」


 そもそもフェリアはまだ“エーテル”についてちゃんと理解できていない。

 だからそのまま口に出す。

「エーテル…って一体何なんだか」

「俺も良く分かんないけど…魔法を使う元になる気体?らしいよ。ちなみに魔法媒体にはエーテルを引き寄せ変質させる効果があるらしいのと、半魔族の異能もこれを使うって話だね」

「異能もか…」

「エーテルが活性化すると…簡単に言うと、魔法が強化されるんだ。具体的に言うと…使えない魔法が使えたり、使える魔法が高出力になったりだね。とにかく…みんな誰もが強くなっちゃうこの夜は騎士以外に外出禁止令が出て、騎士が巡回して怪しい奴を取り締まるって訳さ」

「成程ねぇ。“強くなった魔法で無茶苦茶やろう”って輩を取り締まるのか」

「…そして冬の“流星群の日”に、君は土砂崩れの事故で記憶を失ったんだ」

「…」

 それこそが、フェリアにとって一番重要だった。




 フェリアの事故と、“流星群の日”。

 それらが無関係とは…フェリアには思えなかったのだ。

(マリィルとラージェは…この件をわざと黙っていたに違いない。その日を迎える前に何とか話を聞きださないと…!)

 フェリアは意を決し、女性兵舎へと歩を早める。











 とは言っても、フェリアは白昼堂々と2人を詰問する気にはならなかった。パルサレジアの監視者であるミューノの眼がある手前そういうのは伏せたかったし、何より“自分自身にも秘密が有る”という負い目がフェリアを消極的にさせていた。

 なのでフェリアは…夜を待って2人を呼び出した。




 夜のフィズンは、夏特有という豪雨に晒されている。

 今もフェリアの部屋の窓を、豪雨が激しく叩いている。

 そしてその煩い状況は、内密な話をするフェリアにとっても好都合だった。

「一体どうなさいましたかフェリア様?」

「へへへ、子供の時みたいに一緒に寝ちゃおうってか?」

 フェリアの呼び出しに、2人は快く応じた。

 そしてフェリアは、単刀直入に斬り込む。

「もうすぐ夏の流星群なんだってさ。この話は僕まだ聞いていなかったよね?」

「…そうですわね、もっと早く言っておくべきでした。簡単に言うと“全ての魔法と異能が強化される夜”で、それに乗じて悪事を働く輩を騎士団が取り締まりますの」

 マリィルは…明らかに言葉を選んでいる。

 フェリアはさらに踏み込む。

「僕が記憶喪失になった事故の日も、冬の流星群だったんだよね?」

「…ええ、そうですわ」

「何で黙っていたの?」

「それは…」

 詰問するフェリアに、マリィルが申し訳なさそうに俯く。

(やっぱり、2人には何かがある)

 フェリアは確信し、疑念をぶちまける。


「そもそもおかしいと思っていたんだ…『アストラル』という異能を持つフェリアが、なんで土砂崩れなんかを回避できなかったのかが。それに2人はその事を黙っていた…ねえ、マリィルとラージェは一体何を隠しているんだい?」


 視線が定まらず、オロオロするマリィル。

 ラージェは…穏やかな笑顔だ。

 切り返してきたのは、ラージェ。

「…へへへ、確かにアタシ達は姉様に言ってない事がある」

「それは一体何?」

「その前に…」

 ラージェは居住まいを正し、深呼吸し…真剣な眼差しでフェリアを見据える。


「…姉様は、本当にアタシ達が知っている“フェリア”なの?」


(まさかとは思っていたけど、とうとう来たか…)

 最も痛いところを突かれたフェリアは、腹を括る。

 ラージェは続ける。

「最初に気付いたのはマリィだった…“フェリア様がまるで別人に思える”ってね。アタシは鈍いから半信半疑だったけれど…この半年で、だんだんマリィが正しいって思うようになった。だから今の姉様に、アタシ達3人の“本当の夢”について語っても良いのか…2人でずーっと悩んでいたんだよね。流星群のことを黙っていたのも、この疑問があったからさ」

「…」

 俯くマリィル。

 真顔のラージェ。

 そして…思いつめた表情のフェリア。

 少しの沈黙。

 意を決し、フェリアは口を開く。


「…その通りだよ、今の僕は“フェリア”じゃない」


 マリィルは動かなかった。

 ラージェは静かに目を閉じた。

「…そっか、じゃあ貴女は…“誰”?」

「名乗るほどの者じゃないよ。ただ不幸な事故で死んだ人間…って所だね」

「それで眼が覚めたら“フェリア”になってった…って事?」

「そうだね」

「驚かなかったの?別人の身体になったってのに」

「そりゃ驚いたさ。でもなっちゃったもんは仕方が無いし、戻る手段も戻る身体も無いからねぇ…」

「そんな状況なのに…貴女は姉様として生活し、姉様が望んでいただろう行動を取ってくれている…それは何故?」

「不運なフェリアの遺志を継ぐべきだと、僕自身が思ったからさ」

「…お堅いね、誠実なんだ」

 フェリアの答えに、ラージェは満足そうに頷く。

 そして彼女は、俯くマリィルの肩を抱く。

「マリィ、ここはこの“姉様”を信じてみようよ」

「…ラジィがそう言うのであれば」

 そうしてラージェの顔に、笑顔が戻った。






「前にも言ったけど…アタシとマリィも姉様の全てを知っている訳じゃ無いんだ」


 そう語り出したラージェは、普段見せないような落ち着いた雰囲気で話している。

「あの日の事故で姉様が重傷を負った理由も…正直アタシには分からない。姉様の反射神経と異能から考えれば、怪我する前に離脱できる筈だからね。それによりにもよって“流星群の日”…確かに偶然じゃ無いかもしれない」

 ラージェは額に手を当て、重い息を吐く。

「そもそも姉様は、自ら進んで『月の民』に接触していたみたいなんだ。アタシも気になって『月の民』に探りを入れようとしたことが何度か有るけれど…さっぱり上手く行かなかったよ」

(テンジャ様が言ってた“ラージェと『月の民』の件”がこれかな?)

 フェリアは内心納得しながら、黙ってラージェの話に耳を傾ける。

「それに姉様には超級術もあるし…そういう姉様しか知らない情報が色々あって、それが例の事故にも関係しているかも…考え過ぎかなぁ?」

(超級白術『スター・ウィスパー』は占いも出来る…もしかしたらフェリアは、あそこで土砂崩れが起きることを予め知っていたのかもしれない。それであえて事故に遭って…なんて、いくら何でも無いか)

 逡巡するフェリアの表情を見ながら、ラージェはゆっくり喋る。

「でも結果的に…姉様は文字通り“人が変わった”。前みたいなカリスマも覇気も薄いけれど、自己主張のし過ぎで反感を買うなんて事はほぼ無くなったよ。お陰で騎士団内でも味方が増えたし、もしかしたら半魔族嫌いのビスロ殿下にも受け入れられるかもしれない」

「…まさか、それがフェリアの狙い…なんて?」

「まあ結局は、全部アタシの妄想の範疇なんだけどね。あの頃の姉様はかなり過労気味だったから、普通に事故に遭ったってのも無くは無いんだよなー」

 そうしてラージェはニカッと笑い、フェリアに歩み寄る。


「流星群の事は、いずれ知られると思ってたよ。でも実際姉様は冬の流星群でわざと怪我をしたっぽいし、また危ない事されても嫌だったから2人で黙ってた」

「そっか…」

「まあいずれにせよ…今の姉様ならアタシ達の“本当の夢”を教えても大丈夫そうだ!」

 そこでマリィルも、ようやく笑顔を見せる。

「…ええ、ラジィがそこまで言うのならば私に異論はありませんわ」

「ありがとう…僕も“フェリア”の夢を叶えるために頑張るからね」

「へへへ、頼もしいじゃん!」

 そうしてフェリアの背中をバシバシ叩いた後、ラージェが満面の笑みで告げた。

「…アタシ達の“本当の夢”なんだけど、実はなかなか激ヤバなんだ。流石にミューノに聞かれると拙いからさ、“流星群の日”の当日に話させてよ」

「え、でも3人きりになれる状況とかある?」

「当日は小隊毎で巡回するんだけれど、アタシ達の小隊は兵舎待機組も要るから…ココとミューには兵舎に居て貰おうよ。そうして3人でゆっくり話したいな」

「…いいよ、わかった」

「へへへ、ありがとね姉様」


 3人は笑顔で、手を取り輪になっていた。




















「おい漣次郎!!!」




 ある冬の日の夕刻。

 雑居ビルの廊下で、逸太が漣次郎を呼び止めた。

 逸太は怒りとも悲しみとも言えない表情だ。

「やあ逸太、どうしたんだい?」

 対する漣次郎はいつも通りだ。

「テメー…どーしたもこーしたもあるかっ!!お前あの話は本当なのかよ!?」

「あの話って?」

「しらばっくれる気か!?」

 逸太は怒りに任せ、漣次郎の肩を掴む。


「この会社辞めるってマジかよ!!?」


 “神無月漣次郎が退社するらしい”。

 逸太がこの噂を聞いたのは、つい先程の事。

 あまりの驚きに、逸太は漣次郎を探して問い詰めに来たのだ。

「…ああ、本気だよ」

「は?!」

「辞める。この会社、今週末でね」

 当の漣次郎はケロリとしている。

 その彼の態度が、逸太をさらに煽る。

「何でだよ!?まだお前、記憶だって戻ってねーじゃねーか!そんな状態で何故にこんな事決めたんだよ!?いや悪いとは言わねーけど…せめて俺には言えよ!」

 今まで漣次郎の面倒を見てきたという自負がある逸太にとって、漣次郎がこんな重大な決断を黙ってしたのが許せなかった。

 激昂する逸太を前に、漣次郎は言葉を濁らせる。

「…そうだね、君に言うべきだったのは分かっている。でも正直な所…君にどう説明すればいいか分からなかったんだ。だから黙って決めてしまった」

「…いや、教えろ」

 尚も食い下がる逸太。

 周囲の眼も気にせず、彼は当惑する漣次郎の胸倉を掴む。

「…心配してくれているんだね、逸太」

「はぁ!?ばっ…バカ野郎、どう聞いたらそういう…」

「わかった逸太、説明するよ」

 穏やかに笑みを浮かべる漣次郎。

 その眼は、確かな強い輝きを秘めている。

「今夜、僕の家に来てよ」

「…わかった」

 逸太は、ひとまず漣次郎の誘いに乗ることにした。






「実は僕、どうしてもやらなければいけないことがあるんだ」

 漣次郎に誘われ、逸太は彼のアパートを訪れている。

 空気が気まずいからと漣次郎がつけたテレビからは、近々やって来るという冬の流星群のニュースが流れている。そして適当な夕食にと取った宅配ピザを食べながら、ジュース片手に漣次郎は説明をする。その対面、逸太はまだ不満そうに漣次郎の顔を睨む。


 漣次郎の言葉に納得しかねる逸太が、食ってかかる。

「何だそりゃ…記憶も無いのにやりたい事なんてねぇだろ」

「そうでも無い。しかし、この感覚を説明するのは難しいね…」

「…“神のお告げ”ってか?」

「そんな感じだと理解してくれると助かる」

「ふざけんな、俺をバカにしてんのか?」

 微妙にはぐらかす漣次郎。

 まだまだ納得のいかない逸太。

 そして逸太は、狭いアパートの部屋を見回す。


 逸太は今までも、数回ここを訪れている。

 私物が少なめな、男の1人暮らし部屋だ。

 しかし、今までには無かったはずの…明らかな異物が存在する。

 逸太はそれのうち、1つを手に取る。


「…ランタン?」

「ああ、そうだよ」

「それに寝袋、テント、保存食…。お前、どっか旅にでも出る気か?」

 漣次郎の部屋にあるそれらは、どう見てもアウトドア用の道具一式だった。それらが何を意味するか、逸太にはわからない。

「そんな所だね」

 素っ気無い漣次郎。

「どこに行く気だよ」

「流星群を見に、山にでも行こうかとね」

「何だそりゃ、何の為だよ…」

「気にしないでくれ」

「言えよ」

「言いにくい」

(こいつ…まさかとは思ったが本当に…?)

 そこで逸太は…遂に、ずっと秘めていたとある“疑い”を口にする。



「お前…“神無月漣次郎”じゃないだろ」



 呆気にとられる漣次郎。

 睨む逸太。

 視線を逸らす漣次郎。

 睨む逸太。

 2人とも黙ったまま、約1分。



「…ご名答、凄いね逸太は」



 半信半疑だった逸太は、その回答に面食らう。

「お、おい…冗談だろ…?俺は冗談のつもりで…」

「いや、君が正しい。本当は僕、神無月漣次郎じゃない」

「マジかよ…!?」

「しかし逸太、良くそれに気が付いたね。“漣次郎”が事故に遭ったのだって君と知り合って数カ月だったらしいから、君と“漣次郎”との関係はそこまで親密では無いと思ったんだけど…どこで気付かれてしまったんだろうね?」

 唖然とする逸太。

 観念したかのように、肩を竦める“漣次郎”。

「今年の夏の交通事故…あれ以降の僕は、“神無月漣次郎”じゃなかったんだ。元々の僕も別の事故に遭ったんだけど…目が覚めたら僕、“漣次郎”になっていた」

「嘘だろ、それって…」

「“転生”とでも言うべきかな?」

 あっけらかんと言い放つ、“漣次郎”を名乗る謎の存在。

 頭を抱える逸太。

「…わかんねぇ」

「…それでね、僕…僕自身がやるべきことをやらなければならないんだ。これは“漣次郎”では無く、こうなる前の…元々の僕の望みだね」

「それをやるために、会社を辞めたのか?」

「そうなるね…でも全て終えたら、また戻って来るつもりではある。もしそれが可能であればの話だけど」

「…そりゃどれくらいかかるんだ」

「わからない…でも、僕はここに戻りたいと思っているよ。君にちゃんとしたお礼をしたいからね」

「…元の“漣次郎”はどうなったんだよ?」

 “漣次郎”は視線を、窓の外の満月に移す。

「…多分成仏?してると思う。わからないけど」

「そうか…じゃあさ」

 いつに無く真剣な逸太。

 思わず“漣次郎”も、居住まいを正す。


「お前の本当の名を教えてくれよ」


 微笑む“漣次郎”。

「いいよ。でも多分、逸太は驚くと思う」

「なんだ、“元々は女”だってか?」

「ええっ!?なんでわかるんだい!?」

「露骨過ぎて雰囲気でわかるんだよバカ!」

「いやはや、そこまでバレてるとは恐れ入ったよ」

「いいから名前を教えろよ」

「わかったって。僕の本当の名はね…」




 そして“漣次郎”は遂に、本当の名を逸太に告げる。

コレを読んでくれたどこかの誰かに感謝を。

今後の話作りにわかめも四苦八苦です。

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