その24 三英傑の英雄譚
遂にやって来たフィズンの祭「旭日祭」。
フェリアはその前夜祭に行われる舞台に出演することになったが…どうやらその舞台関係者の中に、かつてフェリアが追放した前フィズン騎士団長ネイオレスの配下が混じっているらしく…。
まだ暗い、フィズンの町の大広場。
旭日も未だ夜の彼方だというのに、老若男女問わず多くの民衆が辺りを出歩いている。町中の至る所に明りが灯され、既に屋台や大道芸人がそこかしこで準備を進めている。そしてその中でも広場の端に作られた仮設舞台が、特に多くの人を集めていた。
「なんだなんだ、今年は何でこんな人が集まってんだァ?」
「何を言ってんだい、今年の舞台にはあのフェリアが出るんだよ?」
「“魔の再来”の英雄がか!?そりゃ楽しみだ!」
「ラミ教団の子供騙しも、今年ばかりは見てやらねぇとな!」
この場所でもうすぐ行われるのが『三英傑の英雄譚』の舞台だった。例年は子供やその父兄が見るのが関の山だというのに、今年は“あのフェリアが出る”という噂のせいで例年以上に大勢が押しかけていた。
その舞台袖で、ガチガチに固まっている女性が1人。
「やばいやばいやばい…大丈夫かな…?」
それはやはりフェリア。既に衣装を身に纏って準備万端だが、オロオロと舞台袖近辺を歩き回る。表情は仮面で窺い知れないが…声色が弱気すぎる。
「小隊長、大丈夫ですか…?」
「大丈夫じゃないです…」
「ええっ!?演技が無理だって言うからいろいろ簡略化したんですよ!?頑張ってくださいよぉ!」
共演の役者達がフェリアを気遣い、あの手この手で励ます。流石のフェリアも気まずさと使命感を漲らせ、何とか気合を入れる。
「…いや、なんとかやりますよ」
「おお、その意気です!」
フェリア含む演者一同が手を繋ぎ輪となり、団結を確認する。
そして座長の男が代表して皆を鼓舞する。
「今年の舞台はフェリア殿のお陰で、今までにない注目度です。なんとしても成功させましょう!」
そして一同は散り、開幕に備える。
そして舞台裏の物陰には、密かにミューノが侵入していた。
舞台の脇にある演台に、警護を連れた大司教ナディルが現れる。
観客も始まりを察し、静かになる。
ナディルは悠々とした手付きで台本を広げ、観客に優しげな視線を配る。
「御機嫌よう、シュレンディアの民よ。今年もまたこうして平和な旭日祭が迎えられそうですね。これもまたフィズンを守る騎士団の努力の賜物であり、これについては私からも感謝を申し上げます」
そしてナディルは、ゆっくりと左手を掲げる。
「我々シュレンディアの民は、この平穏を齎した偉大なる三英傑への感謝を忘れてはなりません。故に今年も私はこの地で『三英傑の英雄譚』を語ります。いつかフィズンに真の平穏が訪れるその時まで…」
舞台近辺の明りが落とされる。
そして遂に、前夜祭の舞台が幕を開ける。
「おおよそ200年前…このフィズンの地は、魔族の根城となっていました。彼らは恐るべき異能を振るう驚異的な存在で、シュレンディア王国とは常に敵対関係でした」
舞台の上には鎧の人間達と、魔物を模した仮装をする人間。彼等は武器を手に舞台の両袖に構えて緊張感を漂わせる。
「しかしある時突然、魔族がその均衡を破りました。魔族の長…魔王トワナグロゥが軍勢を率いシュレンディア王都へ一気に押し寄せたのです。これが現在“魔の侵攻”と呼ばれている、魔族によるシュレンディア侵攻の始まりです」
魔族側の舞台袖から、数人がかりで操る獅子舞じみたカラクリが現れる。そして騎士側には金の鎧を纏う男が現れて先陣を切り、2つの勢力は舞台の中央でぶつかる。
「時の国王であった勇猛なるアソッド王は、その急襲にも果敢に立ち向かいました。しかし魔族の用意周到で苛烈な襲撃には耐え切れず、アソッド王は王都で遂に斃れてしまいました」
大型のカラクリと金鎧の戦士は激闘を繰り広げるが、遂に戦士は倒れ込む。鎧の人間達が彼を舞台袖まで運び去り、舞台には魔族の勢力だけが残った。
「王都を陥落させた魔族は凄まじい勢いでシュレンディアを侵略し、その強大さを前にシュレンディア軍はまともな反撃が出来ませんでした。シュレンディア軍は敗戦を続け南下を繰り返すうちに、遂に国土南端の都市パマヤまで後退してしまいました」
魔族役は一旦舞台から捌け、代わりにボロボロの戦士達が力無く現れる。その部隊の先頭には、銀の鎧を纏う戦士が居た。
「王を失ったシュレンディア軍は、アソッド王の兄弟であったイリューザ王が王位を継ぎ指揮を執っていました。しかしイリューザ王にはアソッド王程の勇猛さは無く、国土の大半を奪われたシュレンディアにはもう望みが無いかと思われました」
その時銀の鎧の戦士の元に、純白の法衣を纏う男が現れた。
「パマヤまで敗走したイリューザ王を迎えたのは…当時パマヤのラミ教団を纏めていたマルゲオス司教…後に聖者と呼ばれる男でした。彼は王都の悲劇に心を痛め、戦の経験など無かったというのに、イリューザ王と共に魔族と戦う決意をしたのです」
法衣の男は深く考え込み、そして鎧の戦士達に合図を出す。そうすると舞台袖から数人の侍従と荷物が現れ、彼は反対側の舞台袖に去って行った。
フェリアは出番が間近に迫り、緊張が高まる。
この舞台は聞いていた通り、大司教ナディルの朗読メインで進んでいる。観客も静かに耳を傾けてくれているのでまだ気は楽だが…。
「フェリアさん、出番です」
「ええ、分かりました」
そしてフェリアは出番に備え、舞台袖にスタンバイする。
(今日のこの舞台でネイオレスは仕掛けてくる予定…それは分かっている。そしてそいつはミューノが見張ってくれているからもう大丈夫…あとは僕がちゃんと演じるまで…!)
フェリアは気合を漲らせ、出番を待つ。
「聖者はシュレンディア再興の為、ラミ神の啓示を求めました。聖者は天空に鎮座するラミ神に声を届ける為、シュレンディアの最高峰“銀嶺山”を登ることを決意したのです。ラミに怯える魔族は銀嶺山を恐れて近付かなかったため麓までは容易に近付けましたが、しかしその道程は過酷でした」
舞台の上から雪を表現した紙吹雪が舞い、聖者の一行はよろよろと進む。しかしその後方で従者が1人また1人と倒れていく。
「苦難を乗り越え、多くの従者を喪い、銀嶺の頂に達した聖者の前に…ラミ神は顕現したと言います」
その時、舞台の上の方に一際大きな明かりが灯る。球体のそれには眼の模様が描かれており、それはラミ教の経典に描かれるラミ神の姿そのものだ。
「困難に挑む人間を祝福するラミ神は、多くの犠牲を払い懇願する聖者の姿に涙を流したそうです。その涙は雪となって銀嶺の頂に舞うと、それを浴びた聖者には“啓示の力”が備わったのです」
そして舞台の上の明りが消え、遂にフェリアの出番がやって来る。
真っ暗になった舞台の上に、3つの人影。
そしてその1つ…舞台中央の聖者の姿が照らされる。
「聖者はラミ神に授けられた“啓示の力”で…魔族に対抗できる人間を見出し、力を授けることが出来ました。そして啓示を受けたその2人には、ラミ神の奇跡とも言うべき超常の力が宿ったのです」
まずはフェリアと反対側の人影が照らされる。
「その1人は…イリューザ王の遠縁だった王族の少年ロディエルです。彼は啓示の力で“魔法陣”を生み出し、その力でシュレンディア軍は魔族の異能に対抗できるようになりました」
彼の姿が照らされると、観客が騒めく。彼は王都の若い人気役者なので、彼目当ての女性たちが黄色い声援を送っている。賢者役の彼は深い紺のローブを纏い、太陽を模した杖を高々と掲げた。
そして遂に、フェリアの姿が照らし出される。
「そしてもう1人は、王都でアソッド王と共に魔王と戦った女騎士アルヴァナです。啓示の力は彼女を強大な戦士に変え、さらに彼女はロディエルの魔法陣の中でも最強の術を使いこなすことが出来たのです。彼女は正真正銘最強の戦士になりました」
フェリアの姿が舞台の上に現れると、観客から大きな歓声が上がった。
(うわっ…!ヤバい冷静になれ…!)
フェリアは心臓がバクバク言いながら、冷静さを保とうとする。彼女はラミ神の姿が描かれた鮮烈な空色のマントを翻し、震える剣を斜め下に構えた。
予想していた以上の歓声を受け、フェリアはすっかりアガってしまっていた。
「イリューザ王は彼等を“三英傑”と呼び、彼等を従えて王都へ向けて進軍を始めました…これは魔の侵攻が始まってから約1年後の事でした。勇者を先鋒に、聖者を大将に据えたその布陣は魔族を蹴散らし、シュレンディア軍は破竹の勢いで王都へ進軍したのです」
フェリア達の反対の舞台袖から、魔族に扮した役者達が大勢現れる。フェリアは段取りを半分忘れて混乱しながら剣を振るうが…プロの相手側は流石なもので、フェリアに合わせてアドリブで殺陣を演じ切って見せた。
「三英傑に導かれ、シュレンディア軍は遂に王都まで進軍しました。そこには魔王率いる最強の魔族軍団と魔王のスレイヴ達が待ち受けており、そこで両者はかつてない衝突を繰り広げました。これがシュレンディア史上最も激しい戦いだったと言われる“王都奪還戦”です」
舞台袖からカラクリ魔王が再登場し、スレイヴに扮した真黒い衣装の役者がぞろぞろと現れる。慣れてきたフェリアも段々と冷静さを取り戻し、今は台本通り“苦戦する勇者”を演じる。
「この戦いでシュレンディア軍は大いに苦戦しました。両軍が数多の犠牲を出し、王都は人間と魔族の骸で埋め尽くされました。その状況を打開しようとしたのが賢者で…彼は秘術を開放し、命を懸けて遂に魔族を討ち払いました」
苦戦するシュレンディア勢から賢者役の男が抜け出し、魔王に向けて何かを投げる。それは火力の低い派手な火薬仕掛けで、炸裂したそれを受けたカラクリ魔王は怯んで舞台袖に逃げていく。そしてそれを見届けた賢者も倒れ伏した。
「賢者ロディエルは、王都に斃れました」
倒れた賢者に白い布が被せられ、舞台袖かやらってきた豪華な輿に乗せられ退場する。しかし鎧の役者達は武器を手に、勇者と聖者の周囲に集まる。
「しかし魔族を討ち払ったシュレンディア軍には勢いが残っていました。イリューザ王を王都に残し、義憤を燃やす勇者を筆頭にしてシュレンディア軍は魔族を追撃しました」
そしてフェリアは、剣を真上に掲げる。
それを合図に、役者達は全員袖へと捌けた。
「シュレンディア軍はフィズンを目指し北進しました。そしてギゼロ河を渡った所に陣を敷き、そこで夜を明かしたのです」
舞台の上には再び聖者役が現れる。彼は舞台中央に歩を進め、祭具を振って祈りを捧げる。そして彼の元に、舞台袖からフェリアがゆっくりと歩み寄る。
「しかしのその夜、勇者が聖者にこう告げました…“魔族が何やら恐ろしい異能を発動しようとしている”と。そういう旨の言葉をラミ神から聞いたという勇者は、先鋭と共にフィズンを急襲すると言い出したのです」
聖者役が宥める素振りをするが、フェリアはそれにゆっくり首を振って答えた。
「魔王相手に少数先鋭では、恐らく生きては帰れまい…聖者は説得を試みるも、勇者の覚悟は固くその意志を曲げることは無かったそうです。そして勇者は選ばれし先鋭部隊と共に、決死の覚悟を胸にフィズンに向かって去りました」
フェリアは左胸に右手を添え、軽く頭を下げる。そして追いすがる聖者を振り切るように…登場した反対側の舞台袖へと、やや速足で去って行った。
「…勇者アルヴァナと先鋭部隊がどのような最期を遂げたかは、誰も知りません。しかし翌朝聖者がフィズンに攻め入った時には、魔族の勢力がほぼ半壊していたと言います。聖者はフィズンに残存する魔族を駆逐し、魔王は僅かな魔族の生き残りを連れて海の彼方に敗走しました。その日遂に…シュレンディアの長い夜が終わったのです」
夜空は既にだいぶ白んできており、水平線を見るに…もう日の出まであと僅かだ。
舞台の上からは聖者役も退場し、誰も居なくなったそこに大司教ナディルが登壇する。祭儀用の大きな杖だけを手に、彼女は舞台中央までゆっくり進む。
「三英傑に感謝と祈りを。シュレンディアの為に散った賢者と勇者に安寧を。聖者の血を引く我等ヤショウ家には、彼等の偉業を後世に正しく伝える義務があります」
そして遂に、遥かな水平線から旭日が顔を出した。
フィズンの町を、朝日が包む。
「夜明けは尊いものです、平和はかけがえのない宝です。そして今日この日は…それに感謝し、皆で喜びを分かち合う日なのです」
ナディルが大きく杖を振り、高く澄んだ金属音が響く。
「さあ皆…今年も盛大に、旭日祭を始めましょう!」
観客からは、盛大な拍手と歓声。
町のどこかで花火が上がる。
遂にフィズンの『旭日祭』が幕を開けたのだった。
「お疲れ様です隊長!」
「いやー無事終わって良かったよ…」
前夜祭の舞台を終えたフェリアは、フィズンの外れで休憩をしていた。緊張から解放されたフェリアは木陰の石垣で涼んでおり、その横でココロンが舞台について熱く語っていた。
「フェリア隊長が勇者役なんて夢みたいですよー!あの舞台で使われている仮面って聖者がその手で作ったという逸話の残る凄い物なんです!それを半魔族の隊長が身に付けるなんて…あたし一生忘れません!」
「そう?僕今日の舞台で結構やらかしちゃったんだけど…」
「そんな!隊長は最高でしたよ!?それに今日この旭日祭で隊長と2人で居られるなんて…去年のあたしに言ってもきっと信じないでしょうね!」
眼をキラキラさせるココロンだが、フェリアにとってはまだまだ今日は長い。
「いやいやココロン…まだ油断ならないからね?失敗したネイオレスが破れかぶれで何かしでかさないか…」
寛ぎながらも、フェリアは周囲の気配を伺う。
今ミューノは、劇団に居たネイオレスの手先を丸め込んで情報を聞き出している手筈だ。そしてラージェとマリィルはネイオレスの居場所を探っている最中だった。
そんな中。
ココロンと寛ぐフェリアに近付く、何者かの気配。
ココロンは気付いていない。
フェリアは静かに目を閉じている。
そしてその誰かが、ココロンの肩に手を置く。
「ココ」
「ひゃあッ?!」
「そんなに驚かなくてもいいじゃん」
やって来ていたのはミューノだった。
「お帰りミューノ、お疲れ様」
ミューノの接近に気付いていたフェリアはゆっくりと目を開け、ミューノを労う。ミューノはちょっと照れながらも報告を始める。
「例の劇団員は、やはりネイオレス様に大金を積まれて“フェリア隊長が舞台を壊す”ように仕向ける予定だったようです。なのでマシェフ団長が倍額を出すと伝えたらあっさりと寝返りましたよ。ネイオレス様はもうフィズンに影響力が無い様で、この程度が関の山という事でしょう」
「そっか、ミューノの報告通りだね!」
「…ただネイオレス様の居場所については知らないようでした。一応心当たりはあるのでラージェさん達に伝えておきましたが…」
「流石ミュー!超優秀じゃん!!」
「…それが気に入らないんじゃ無かったの?」
以前のモードン公領での一件を思い出してか、ミューノは複雑そうだ。しかしココロンは嬉しそうに首を振る。
「前はそう思ってたけど、今は違うかな。ミューが頑張ってるとあたしも嬉しいよ」
「は、恥ずかしい事言うの止めてくれない…!?」
「えへへ!!」
ミューノの手を取って小躍りするココロンを、フェリアは微笑ましく見守る。そしてそんなココロンの後方に、ラージェとマリィルの姿を見つけた。
「姉様見つけた!見つけたよー!」
フェリアの姿を見つけたラージェは、凄い速さで駆け寄って来た。そして数秒遅れてマリィルが息を切らして追いつく。
「はぁ…はぁ…ラジィ待って下さいな…」
「マリィおっそーい!」
「悪かったですわね、私は走るのが苦手ですので…」
先に着いたくせに報告をしようともしないラージェを横目で咎めながら、息を整えたマリィルが替わって告げた。
「フェリア様、ネイオレスの居場所が分かりましたわ」
フィズンの外れにある廃屋。
今日の旭日前夜祭でフェリアを嵌める計画が頓挫した前騎士団長ネイオレス・ポルックは、部下から苛立ち紛れにその報告を聞いていた。
「…例の劇団員、何故動かなかったのだ!あれだけの大金を掴ませたのだぞ!?」
「も、申し訳ございません!どうやらマシェフ団長がその倍額を出して“フェリアの邪魔をするな”と動いていたらしく…」
「何だと!?どうしてマシェフ様がそれを知っているのだ!?」
「それは…」
しどろもどろになる部下を叱責するネイオレス。
そしてその廃屋に、誰かの声が響く。
「残念だったね、ネイオレス!」
廃屋の入口に、フェリアが堂々と立っていた。
フェリアの背後には…見張りと思わしき男達が気絶して倒れていた。
「フェリア、貴様何故ここが…!?」
「さあね?まあこんな廃屋に隠れているなんて、あんたらしいじゃん」
「何だと…貴様ぁ!!」
最初焦っていたネイオレスだったが、煽るフェリアに逆上する。
「何故この私がこんな事をしていると思っている!誉れ高き騎士団から汚らわしい半魔族を排除しようとする私の大志を理解できん愚か者が!貴様が大人しくフィズンを去れば全て丸く収まったものを!!」
「相変わらず無茶苦茶ですね。僕達が汚らわしいなんて決めつけて貰いたくないよ」
フェリアは鼻で嗤うと、わざとらしくネイオレスに優しく語り掛ける。
「ですが…今回は見逃してあげますよ。貴方だって不祥事が立て続けというのも困るでしょう?僕としては貴方を告発した所で良い事ありませんから」
「な…!?」
フェリアのあんまりな言い草に、ネイオレスは絶句する。
そして彼は顔を真っ赤にして怒鳴り散らす。
「フェリア貴様ぁ!やはり貴様は騎士団の膿だ!何としても貴様を排除せねばならん、我等がシュレンディアの為に!」
「はぁ?意味わかんないんですけど」
「私は知っているぞ、貴様の秘密を…!」
ネイオレスは顔を歪め、憎しみを込めた言葉を絞り出す。
「貴様は『月の民』と結託する危険分子だ…!私は貴様が『月の民』と密会していた事を知っているんだ!」
その言葉はフェリアも引っ掛かったが、気にも留めず吐き捨てる。
「何それ、また言い掛かりですか?」
「私の部下が確かに見たのだ!」
「見ただけですか…」
「ぐっ…」
「ふぅ…まあそんな所でしょう。だいたい僕は『月の民』がどんな連中かも全く知りませんけどね」
「いいや…知らんとは言わせんぞ!」
そしてネイオレスは、フェリアの予想外の言葉を吐いた。
「“月神信仰”は魔族の信仰だ!『月の民』は魔族と同じ神を崇める邪教徒なのだぞ!?そんな連中が、魔族の血を引く貴様とつるんでいる…何も無いとは言わせんぞ!!」
そしてフェリアの言葉を待たず、ネイオレス一味は逃走を始める。
「覚えていろフェリア、貴様の思い通りにはさせんからな!!」
追う気も無いフェリアはただ、情けないその後姿を眼で追うに留めた。
1人残されたフェリアは、頭の中でネイオレスの言葉を巡らせる。
(…ココロンが言うには、『月の民』は聖者に反発したシュレンディア人の末裔。だけどネイオレスが言った通りなら、『月の民』は魔族と同じ信仰を持つ異教徒だ。まあネイオレスが言う事なんて出まかせかもしれないけど…)
そしてフェリアは、静かに首を振る。
(…まあいいや、今はお祭りを楽しもうか。『月の民』について調べるのは旭日祭が終わった後でも良いし)
そしてフェリアは何かを呟き、その場から姿を消した。
読んで下さった方々に多大な感謝を。
なかなか進め方が決まらず、わかめも四苦八苦の様相です。




