その21 嵐の日
春季後節の迎撃戦を終えたフィズンは、平和に夏季を迎えていた。
嵐が多いというシュレンディアの夏季…その日フィズンは激しい風と雨に晒されていた。フェリアは元の世界の“台風”を思い起こしながら夜の兵舎で眠れずにいたが、何やら嫌な予感が胸中に芽生え…。
フェリアは夜の兵舎で、窓の外の豪雨を静かに見ている。
先日の“迎撃戦”から、10日とちょっと。
春季は既に終わりを告げ、今はシュレンディア暦で夏ノ5日。すっかり気温は上がり、今も雨だが湿度が高いせいで体感気温だと暑いくらいだ。フェリアも騎士団服の夏服を引張り出したが…スカートのとんでもない短さにまだ馴染めていない。
それでもフェリアは、変わりゆくシュレンディアの季節を楽しんでいる。
「ふふ、まるで台風だ。夏季にはこんな嵐がしょっちゅう来るらしいから、僕達騎士団もその水害対策に引っ張り出されるんだろうね」
暗い自室で、フェリアは独り言を零す。
外の様子はもう良く分からず…室内にはただ激しい雨音だけが響いている。
そして何故かフェリアは、突然えもいわれぬ不安を覚える。
(…なんだろう、嫌な予感がする…。具体的には分からないけど)
胸の中にモヤモヤしたものを抱えながらフェリアはベッドに倒れ込む。
そしてその不安の正体は、翌朝判明することになる。
まだまだ暗い、豪雨の早朝。
未だ日も出ていないような時間。
「フェリア小隊長は居るか!?」
女性兵舎に、男性の声が響く。
「…ぅおっ!?」
不安のせいで眠りが浅かったフェリアは、その声で飛び起きる。
「フェリア小隊長は居るかー!?」
「居ますよー!少々お待ち下さい!!」
寝惚け眼を擦るフェリアは、ぼんやりした頭でそそくさと着替え、バタバタとせわしなく兵舎の1階へ駆け下りる。
そこに居たのは、フェリアと同じ中隊に所属する中年の小隊長マルネオだった。
「フェリア小隊長!すまないが急ぎフィズン港へ飛んでくれ!」
「ええっ!?何故??」
「行けば分かる!我々も追って出るからな!!」
「りょ、了解です!<アストラル>!」
同僚に急かされ、フェリアは異能でフィズン港に向かった。
そしてフェリアはそこで、地獄を目の当たりにする。
フェリアがワープしたフィズン港の埠頭・監視塔。
そこからだいぶ西方の海岸には、広い岩礁地帯が存在する。
そして大勢の騎士の姿が、豪雨の向こうに霞んで見えた。
その岩礁地帯に、1隻の小型船が難破していたのだ。
「え、漁師さんが遭難したの!?急ごう…『アーク・ウィング』!」
フェリアは上級白術で宙に浮き、その船に向かって急接近した。
難破船に近付いて、フェリアはその状況をようやく理解する。
言葉も出せず、適当な騎士の側に着陸する。
「おお、フェリア小隊長か。応援感謝する!」
「いや、え…なんですかこれ…?」
「見ての通りだ」
苦々しく吐き捨てる騎士の言葉も、フェリアには半分しか届かない。
岩礁地帯には…異形の生物達の死体が転がっていた。
ざっと10体。
人間では無い。
毛皮や角…羽…尻尾などがあり、その容姿は人間には程遠い。巨躯の者では並の人間よりだいぶ体長が大きい。彼等は既に冷たくなっており、赤い血が波間に漂う…。
「…」
絶句するフェリアをよそに、騎士が淡々と状況を説明する。
「記憶喪失のフェリア隊長は覚えがないだろうが…こいつらは見ての通り魔族だ。ごく稀にこうして嵐の夜などに流れ着いては騎士団と交戦している。この周囲の連中は我々が始末したが…まだ海岸線を調査せねばならん」
「は、はい…」
「しかしフェリア小隊長が来てくれて助かる。早速上級白術で飛行し、近隣海岸の捜索を…どうしたフェリア小隊長?」
「…う」
「顔色が真っ青だぞ!大丈夫か!?」
「す、すみません…ちょっと気分が悪くて…」
魔族とはいえ、慣れない死体を目撃してしまったフェリアは…吐き気と目眩で大変な事になっていた…。
フェリアは雨に打たれながら…遠巻きに騎士団の仕事を眺めている。
(…吐いちゃった。情けないなぁ…きっと“フェリア”なら何ともなかったんだろうけどさ、今の僕には厳しいね…)
あまりの惨状を目の当たりにしたフェリアは、胃の中身をひっくり返してしまったのだ。そしてそんなフェリアを気遣ってか、騎士達がフェリアに休憩するよう促してくれたのだった。
フェリアは荒れる海を見ながら、岩礁を歩き回って漂流物を観察する。
難破船の物と思われる漂流物は…木片、ロープ、網、銛、桶など。騎士達はこの魔物を“嵐に乗じた侵略者”と断じたが…フェリアにはそう思えなかった。
(こんなの侵略者じゃないでしょ…僕にはあれ漁船にしか見えないんだけど。魔族の住む“デルゲオ島”って絶海の孤島らしいからね、魔族も漁をするんだろう…)
フェリアは魔族に同情している訳では無い。
やって来た魔族を討伐したのは正しいとも思っている。
しかし…拭い去れない何かが、胸の奥に残っている…。
(僕…魔族ってもっと野蛮な何かだと思っていた。でもこの道具なんか見たら、フィズンの漁師さんと似たり寄ったりじゃん。近い将来、そんな魔族と戦う事になるのか?僕は…)
いつか行われる“デルゲオ島征伐”…フェリアはそれがちょっとだけ憂鬱になる。
ぼんやり波間を歩くフェリアは、何気なく漂流物の木箱に手を伸ばし、
岩礁の隙間に、何かが居る。
まだ暗い波間の、岩の隙間。
赤黒い双眸が、フェリアをじっと見ている。
フェリアもそいつから目を離せない。
一見、灰色の狼。
しかし骨格は人間に近い。
立耳に、長い髪。
そいつはボロ布1枚を纏っている。
アイラ姫くらいの小柄さ。
どう見ても子供だ。
「ま、魔族…!?」
「…」
そいつは声も上げない。
動きもしない。
荒波の打ち付ける海岸、岩の間で縮こまっている。
…こいつは恐らく、騎士団に討たれた仲間の最期を遠目に見ていたのだろう。淀んだその深紅の瞳は、既に自身の運命を悟っているらしい。
(くそっ、こんな子供を…その、殺せって!?魔族だから?!?)
焦るフェリア。
判断できない。
剣すら抜けない。
しかし放っておけば、騎士団が見つけるだろう。
(“フェリア”ならきっと始末する…間違い無い。そしてフィズンの騎士としてもそれが正しい…そんな事は分かってる!)
迷うフェリア。
(でも僕は、僕は…!)
そしてフェリア…いや“漣次郎”は、その狼に手を伸ばす。
フィズン港への“魔族漂着騒動”は、騎士団の手で治められた。
討伐された魔族は全て雄で、シュレンディア人と比較しても大型の個体ばかりだった。魔族の死骸は不浄とされ、ラミ教の神殿で処分するのが習わしだ。その為死骸は全て騎士団から神殿に引き渡され、周辺海岸の捜索も無事終わって騒動は終結した。
フェリアは兵舎の風呂にゆったりと浸かっている。
「…」
精神的に疲れてしまったフェリアは、冷えた体を温めていた。
今回の一件でフェリアが体調を崩したことを騎士団長マシェフに知られてしまい、今日フェリア小隊は急の非番となったのだ。マシェフの過剰な気遣いに感謝しつつ、フェリアは頭の中でぐるぐると考えを巡らす。
(さっきの僕の判断…果たして正しかったのだろうか?きっと“フェリア”的にもシュレンディア的にも拙いんだろうなぁ…。でも“僕”としてはこれが正しいと思ってしまったんだ)
“フェリア”の夢。
“漣次郎”の想い。
その2つのせめぎ合いに、フェリアは頭を悩ませている。
「姉様、入るね」
そんな風呂場に、ラージェが入って来た。
フェリアは無遠慮なラージェに溜息。
「…1人で入りたいって言ったじゃん」
「そんな事言われても、アタシだって姉様が心配なんだよ」
そう言うラージェはサッサと体を洗い、湯船のフェリアの横に来る。
フェリアも何だかんだ、ラージェの気遣いに感謝する。
「姉様…今回の任務キツかったでしょ?」
「…まあね」
「うーん、それはきっと…アタシ達に流れる魔族の血のせいかもね。こういう任務って基本は、監視塔の見張りと小隊長と中隊長で対処するらしいんだけど…アタシだって“やれ”って言われたら嫌だもん。生理的に」
「そういうものなのかなぁ」
「そうだよきっと。だから姉様も…辛かったらアタシ達を頼ってよ!」
「…うん、わかったよラージェ」
そう言いながらも、フェリアは内心複雑だ。
(いや、こればっかりはラージェ達を頼れないや。何とか隠し通さないと…)
そしてフェリアはラージェに告げる。
「でも正直…今回はかなり精神的に堪えた。今日は1人になりたいんだ、夕方には帰るから心配しないでね」
「…そっか、わかったよ」
そう言うラージェの燈の瞳は、どこか悲しげだった。
風呂から出たフェリアは、宣言通りに異能でフィズン基地を離れた。
そして目指すは…レーヴェットの辺境だ。
銀嶺山脈の麓はフィズンと天気が違うらしく、サルガン宅の周辺は小雨だった。
いつものように変装して男みたいな姿のフェリアが、異能でサルガンの丸太小屋の傍に降り立つ。
そして直ぐにその戸を叩く。
「サルガンさん、レンです!」
「来たか、入れ」
フェリアは周囲に誰も居ないことを確認すると、丸太小屋に素早く入り込む。
「とんだ厄介を持ち込んでくれたな」
フェリアを出迎えたサルガンは、いつも以上に不機嫌だった。しかしフェリアとしては彼以上に頼れる者がおらず、ひたすら平謝りをするばかりだった。
「ごめんなさい!でも他に頼れる人が居なくて…」
人の好いサルガンは渋々フェリアのお願いを聞いてくれているが…彼の人の好さに付け込んでいるようで居心地が悪かった。
「…」
そしてそのやり取りを、暖炉の前の生物が聞いている。
暖炉の前には…小さな灰色の狼獣人が、大きな布にくるまれていた。
狼はこの状況が呑み込めていないようで、ただじっと体を小さく丸めている。どうやら警戒というよりは困惑しているようで、フェリアとサルガンの会話に耳をそばだてている。
「…この子はいずれ僕が何とかします。だからしばらくの間、この子をここに置いて欲しいんです!お願いします!」
フェリアは今朝見つけたこの魔族の子供を手に掛けることも見捨てる事も出来ず…異能でここまで連れてきてしまっていた。さらに“半魔に好意的”だったサルガンに頼るという傍迷惑な手段を取ってしまったのだ。
無理難題を押すフェリアに、サルガンは呆れ顔だ。
「どうにかすると言っても…レン、お前当てはあるのか?」
「う…いやのそ、今必死に考えているんで…」
「それに漂流してきた魔族の仔を衝動的に拾ってくるとは…騎士が聞いて呆れるな」
「すみません…」
「…まあ、儂はその性根が悪いとは思わん」
「…ありがとうございます、本当に」
何だかんだ甘いサルガンに、フェリアはただただ感謝あるのみだった。
そして問題の、魔族の子供。
「…」
今朝フェリアがサルガンに押し付けた後、どうやらサルガンがこの子を洗ったらしい。びしょ濡れで薄汚れていた毛皮と髪は、暖炉で乾いてふわふわになっている。あと容姿からするに…恐らく少女だ。
しかし相変わらず眼には生気が無く、彼女は無感情にフェリアを見上げている。
「や、やあ。さっきはろくに話も出来なかったね…。僕はレン、君と同じ魔族の血を引く半人間さ。あまり魔族っぽい見た目じゃないかもしれないけど…さっきの異能で信じて欲しいかな」
「…」
(そもそも魔族って喋るのか?)
早速コミュニケーションに不安を覚えるフェリアだが…それを見かねたサルガンが割って入る。
「レン…この仔は恐らく、我々の言葉を理解しているぞ。お前さんが置いて行った後儂も色々聞いてみたのだが、首を振って答えはしたからな。会話自体は可能なのだろうが…」
「そうですか…しかし話せないというのは、仲間の事が余程堪えたんでしょうね」
「そんな所だろう…仲間が騎士団に殺されるのを見ていたのでは無理あるまい」
そしてサルガンは、わざとらしい溜息を吐いてフェリアを睨む。
「儂のこの家には、食糧貯蔵用の地下室がある。それにここを訪ねて来るような者も殆ど居らんからな…レンは忙しいだろうから、当面の間この仔の面倒は儂が見てやる」
結局押し付けてしまう事になったフェリアは、ばつが悪そうに感謝を述べる。
「…ありがとうございます」
「あと儂はレーヴェットに隠棲する半魔に出くわすことが偶にあるからな…もし機会があれば、彼等にこの仔を引き取って貰えるか当たってみよう」
「本当ですか!?」
「まあ期待はするな。半魔は総じて魔族を憎んでいる」
そう言うとサルガンは、荷物を持って外出の準備をする。
「儂はちょっとカシナ村まで行ってくる。いろいろ入用だからな…」
そう言い残すと、サルガンは丸太小屋を出て行った。
そこには、フェリアと狼少女が残される。
「ここなら君も安全さ。だから安心してね」
サルガンが留守の間、フェリアは喋らない狼少女との交流を図る事にした。
フェリアとしても、今日の一件で海の向こうの魔族に対する興味が湧いていた。なので難しいとは思いながら、少女の言葉を引き出そうと試みる。
「君も魔族だからわかるだろうけど…人間にとって魔族は敵だ。だから人目に付くようなことをしては駄目だよ?」
「…」
言葉は出さないが、狼少女はゆっくり頷く。
「僕はずっとここには居られないんだけど、その間あのお爺さん…サルガンさんが居てくれるからね。サルガンさんは君の味方になってくれるから、彼の言う事を良く聞くんだよ」
「…」
頷く狼少女。
「いい子だね」
フェリアは狼少女の頭に手を伸ばし、優しく撫でる。
狼少女は抵抗せずされるがままだが…さっきよりはリラックスしているようだ。彼女はフェリアを命の恩人と認識はしているようだが、しかしまだ“何故助けられたのか?”というような困惑が顔色に浮かんでいる。
「僕はここから遠い町に住んでいるから、ずっとここに居るわけにはいかないんだ。でもできる限り様子を見に来るようにはするから安心してね!」
「…」
じっと静かにフェリアを見据える狼少女。
彼女の疑念は、フェリアにもわかりやすかった。
「君…“何で助けたんだ?”って顔をしているね」
「…」
躊躇いながらも、狼少女は頷いた。
「確かにこの国では、魔族を殺すのは正しい事だ。だけど“僕”にとっては…君みたいな子供を殺すのなんてとても無理だよ。ただ君が悪い魔族なら、話は別だけどさ」
「…!」
フェリアの軽口に、狼少女は過剰に反応した。
彼女はフェリアに縋りながら、必死に首を横に振る。
まるで“自分は悪い魔族じゃない”とでも言うように。
「あ、ごめんね!その…言い方が良く無かったかな。とにかく君は大丈夫だからね!」
必死な狼少女に慌てたフェリアは、何とか取り繕う。
そんなフェリアを見て安心したのか、狼少女は遂に口を開いた。
「…うん」
狼少女の声は、抑揚の少ない掠れたものだった。
「ねえ君、名前を聞いても良いかな?」
話ができる状態になった狼少女に、フェリアは質問を敢行する。
狼少女はフェリアの顔色を伺いながら、ちょっとずつ言葉を絞り出す。
「…テルル」
「テルル…良い名前だね。歳はいくつかい?」
「…14」
(あれ、アイラ姫とだいたい同じかむしろ小さい背丈だからもっと年少かと思った。まさかアイラ姫より年上とは)
狼少女…テルルは、俯き加減で少しずつ言葉を紡ぐ。種族的に表情が出にくいのかは分からないが、フェリアには彼女が殆ど無表情に見える。
「…きっとテルルにも家族が居るよね?今もデルゲオ島で帰りを待っているんだろうけど、君を帰してあげる方法が今の所無くて…」
「んー…」
首を横に振る、テルル。
フェリアは思わず閉口する。
「…その、ごめん。聞かない方が良かったね」
微妙な雰囲気になりそうだったので、フェリアは強引に質問を続ける。
「ね、ねえテルル!君も魔族なら…異能が使えるの?」
「う…!」
目を見開くテルル。
彼女は答えに困り、視線が泳ぎ…首を小さく横に振る。
「…んーん」
「そっかぁ…」
流石にフェリアも、今のテルルのバレバレな嘘には気が付いた。しかし問い質すのも可哀想だったので、そのうち改めて聞きだすことにした。
そしてフェリアは、本題に入る。
「ねえテルル、君の故郷…デルゲオ島ってどんな所?」
魔族が棲むという絶海の孤島…デルゲオ島。
そこについてテルルに聞いたフェリアだが、テルルは質問の意図がよく理解できなかったらしく、可愛らしく首を傾げる。
「…わふ?」
「うーん、聞き方が良く無かったね…。そうだなぁ、テルルは漁師さんなの?」
「んーん」
「違うかぁ…。でもあの船に乗っていたんだよね?」
「ん」
「じゃあ漁師のお手伝い的な事をしていたんだね。まだ子供だろうに偉いね、それとも魔族にとってはそれが普通なのかなぁ…?」
テルルの答えから、フェリアはデルゲオ島について想像する。
そんな中、テルルが何かを思いついたようだ。
「レン…」
「ん?どうしたのテルル?」
「お礼」
「何の?」
「助けてくれた」
「え、お礼をしてくれるのかい?でもいいよそんな…」
フェリアが言い終わる前に、
テルルが、纏っていた布を脱ぎ去る。
「ちょっ!?」
獣人のテルルは毛皮を纏っているとはいえ…風呂上がりのせいか布の下は全裸だった。そんな彼女が、驚くフェリアにするりと身を寄せる。
「んー」
テルルがフェリアの服に手を掛ける。
「な!?!?」
相変わらず、テルルはほぼ無表情。
「わふ」
フェリアの服の中に手を入れてくるテルル。
慣れた手つきだ。
困惑するフェリア。
至近距離…テルルのどんよりとした深紅の瞳。
テルルの背中、長い髪の隙間から見える彼女の背中には…無数の真新しい傷痕。
テルルは殆ど膨らみの無い胸をフェリアに押し付けるようにして、
「何やってんのテルル!?」
フェリアは思わず、彼女を押し退けた。
「…!?」
大声を出されたテルルは固まっている。
フェリアはテルルが脱ぎ去った布を、改めて彼女に被せ直す。
フェリアの胸中には…沸々と怒りが湧いていた。
「君はまだ子供だろ!?こんなことしちゃダメだろ!それに僕は…女だ!」
「!?!?」
どうやら二重の意味で驚いているテルルが、困り顔でフェリアを見上げている…。そんな少女の姿を見て、フェリアはどうしようもない義憤を感じていた。
「…テルルは普段からこういう事を…?」
躊躇いながらも頷くテルル。
「それは…君が進んで、望んでやっているの?」
ピクリと反応し、固まるテルル。
そして、ゆっくりと首を横に振る。
「…そっか。でもここではそんな事をしなくて良いからね」
「で、でもテルルにはこれしかないから…」
「そんな事無い、そんな事無いから…!」
フェリアは穏やかに努めようとするが…どうしても言葉の端に怒りが滲む。
(親が居ないこんな子供に、魔族は一体何をやらせているんだよ!?いや、それともこれが魔族にとっては普通なのか…!?しかしあの魔族の漁船にテルル以外の子供は乗っていなかった、それにこの子の妙な聞き分けの良さ…背中の生傷…あの眼…。きっとテルルは、魔族の中でも良い扱いを受けていなかったんだろう)
拙い事をしてしまったというように俯くテルルを、フェリアはそっと抱き締める。
そしてフェリアは…海の向こうのデルゲオ島に対して、言いようのない感情を抱いていた。
ここまで読んでくれているどこかの誰かに敬意を。
やっと獣人のキャラが出せました。
この子をどう絡ませるかが目下の悩みどころです。




