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その2  フェリアという騎士

この小説を見て下さっているどこかの誰かに感謝です。

基本はこんな感じで、TS転生した男がメインです。


異世界の女騎士フェリアに転生してしまった男・漣次郎。

しかし彼が転生した女騎士とその仲間は、どうやら普通の人間では無いらしく…。


 フェリアは夢を見ている。




 それは不思議な夜だった。

 荒れた薄暗い街道が、豪雨に晒されている。

 それなのに空の一部は雲が無く、満月が見える。


 その街道に…フェリアとマリィル、ラージェが立っている。


 3人の任務は、この街道の巡回らしい。

『やっぱりアタシは反対だよ姉様…いくらなんでも危険過ぎる。今ならまだ引き返せるんだから、考え直そうよ…』

 難しい顔のラージェが、フェリアに抗議してくる。フェリア達の行く手は、谷沿いの山道のようだ。木の少ないその山は、確かにこの豪雨で崩れてもおかしくない。

 谷底の濁流が、轟音と共に荒れ狂う。

『いいかいラージェ?こういうのは勢いと度胸でぶつかってみるものさ。案外すんなりいくと思うよ?』

 フェリアの声。

 夢は彼女視点なので表情は分からないが、自信に満ち溢れている。

『だけど…』

 俯くラージェだが、マリィルは笑顔だ。

『私はフェリア様を信じていますから♪』

『そう、2人とも…僕を信じて。大丈夫だから』

『姉様…』

 雨の街道、3人は歩き出す。

(…これは、きっと…フェリアが事故に遭った日の記憶だろう…)

 夢の中、“漣次郎”の意識がそう考える。

(任務で谷間の道を往く途中の事故だった…マリィルは確かそう言った。彼女の言う通りなら…この後フェリアは土砂崩れで大怪我をすることになるんだろう…)


 この夢は、フェリアの中にある記憶の欠片なのだ…。











 港町フィズンを、朝日が包む。




 フェリアは兵舎の自室で、もっそりと体を起こす。

「…う~ん…なんか変な夢見たなぁ…」

 寝起きのフェリアは、眠い瞼を擦る。

(…筋肉痛とかは、やっぱ無いか)

 昨日の迎撃戦で激しく戦った彼女だが、肉体的な疲労は感じない。きっと“騎士フェリア”にとって、昨日の戦闘程度は負担にならなかったのだろう、と…彼女は頭で考える。

 そしてフェリアは、部屋に備え付けの鏡と対面する。


 そこには、まだ見慣れない女性の姿。


 フェリアは思わず、鏡から目を背ける。

(な、慣れないなぁ…)

 自分の姿に驚いてしまったフェリアだが…深く息を吸い、覚悟を決める。そして再び、鏡に映る“自分”を凝視する。

 鏡に映るのは、ベッドから半身を起こした細身の女性だった。

 紅い短髪に、大きな金の瞳。

 起伏の少ない、引き締まったボディライン。

 整った顔立ちは、どこか中性的で。

 そんな女性が、鏡の中から自分を見つめているのだった…。




 フェリアはまだ、この環境に慣れていなかった。

 何しろ“漣次郎の意識”がフェリアの身体に転生してまだ10日も経っていないのだ。大事故で重傷のフェリアが退院したのが3日前で、迎撃戦に駆り出されたのが昨日だったのだ。

 フェリアはまだこの世界どころか、自身の変化にすら慣れていない状態なのだ…。




 フェリアは小さくため息を吐く。

(とにかく、早くこの環境に慣れなくちゃね…。僕が何をしたところで、こうなっちゃった状態は変わらないだろうし…)

 頭を掻くフェリア。鏡の中の彼女も頭を掻く。

 そして再び、鏡像の自分と目を合わせる。

(まあ転生は百歩譲って良いとして…性転換とはね…)

 彼女は深呼吸する。

(そう、仕方ないんだよ。もう僕は“フェリア”として生活しなきゃいけないんだからさ。こういうのにも慣れないと…!)


 意を決したフェリアは、鏡の前で…着替えを始めた。


 まず寝間着の上下を脱ぐ。

 …この世界では、スポブラ型のが主流らしい。しかしパンツは想像通りの形状だ。どちらも色気の無い紺色で、伸縮性に優れている。どうやら“フェリア”は、騎士として下着も機能性を重視していたようだ。

(慣れろ…慣れないと…)

 顔が火照る。

 フェリアは自分の透き通る白い肌に目が眩むが、なんとか堪える。女性の身体ながら意識は男目線で見てしまうので、そういった経験が皆無な“漣次郎”の意識にとっては刺激が強過ぎた…。

(…胸は、やっぱ無いな…)

 フェリアは、胸が薄かった。

 …これは、転生した“漣次郎”にとっては好都合だった。これで揺れたり跳ねたりするほどボリュームがあったら…流石に激しい違和感で混乱していたであろう。


 しばしフェリアは、赤面しながら鏡とにらめっこを続ける。




(…もう限界だ!)

 半裸の自分に耐え切れず、フェリアは服を着る。

 白い詰襟風の、半袖上着。

 上着と同じ意匠の、スリット入りスカート。

 マリィル曰く、これがフェリアのお気に入りらしい。

(やっぱりこの服、騎士団っぽくていいね。でもマリィルやラージェの服は違ったし、騎士団指定の制服とかって無いのかなぁ…?あと魔法で飛んでるときに下からその…丸見えなんだけど、その辺フェリアはどうしてたんだか…)

 鏡を見ながら、フェリアは他の装飾品?も身に付ける。

 昨日の魔法で使った金剛石の指輪を手に取り、指に嵌める。

 何かの金属鉱石のネックレスを首に掛ける。

 そして戦闘用では無いらしい…黒い石の小刀を腰に差す。

 マリィル曰く、これで装備は大丈夫…らしい。

 支度も出来たフェリアは自室の扉に手を、


「おはよー姉様!!!」


 突然だった。

 フェリアの部屋に、ラージェが飛び込んできた。

「ちょ…ラージェ…てぇええええ!?」

「なんだなんだ姉様?朝から鏡をじっくり見ちゃってさぁ。ひょっとして…自分に見惚れていたのかな?姉様美人だもんね!」

「そんなじゃないし!それよりラージェ!!」

「ん?」

 フェリアは目を閉じている。

 耳まで真っ赤になっている。

「な、なんて格好だよ!!」


 フェリアの部屋に飛び込んできたラージェは…何故か下着どころか、何一つ身に付けていなかったのだ。











 ラージェとひと悶着した後、フェリアは自室を出た。


 フェリア達が住む女性騎士用の兵舎は、完全に他とは隔絶された場所にある独立した建屋だった。なのでここには、衣食住に困らない程度の最低限の家具が備え付けられている。

 フェリアはそんな女性兵舎の廊下を歩く。

 煉瓦造りのこの建物は、春先の為かひんやりしている。

 廊下の窓硝子越しに、フィズンの海と漁船が見える。

 “屋内でも靴”という違和感に耐えながら、階段を降りる。

 そこで、ちょうど兵舎の玄関が開く。


「あ、フェリア様おはようございます♪」

「おはよう、マリィル」

 入って来たのはマリィルだった。朝も早いのにどこか外出してきたらしい彼女は、小さな体で大荷物を運んでいる。そしてちょっとふらつきながら、それを大きな木のテーブル上に置く。

「食堂から色々と貰って来ましたよフェリア様♪ラジィを起こして、朝御飯にしましょう」

「ラージェならさっき起きてたよ」

「駄目ですフェリア様、ラジィはすぐ二度寝しますわ」

「えぇー…」

 ラージェを起こす為、フェリアは今来た道を戻ることになる。






「天空のラミに祈りを」

 寝惚けたラージェが加わり、3人揃って朝食にする。


 シュレンディアの食文化は、スープが基本だった。

 “漣次郎”が転生して以来、今まで見かけた全ての食事にはスープが必ず付いていた。それらは主に、ここフィズンが港町であるからなのか魚介系が主のようだった。

 ちなみに何故スープが必須であるのか、それは記憶の無いフェリアにも予想が付く。

 …シュレンディアはパン食だが、そのパンがクソ硬いのだ。

「…うん、美味しいね。パンとスープがよく合う」

 その為、一般的にパンはスープに浸して食べるらしい。

「今日のは良い素材を使っているらしいですわ、フェリア様。“迎撃戦”の次の日は、朝昼夕と食事がちょっとだけ豪華になるんです♪」

 マリィルが海藻と野菜のサラダに、何かドレッシング的な物を掛けながら説明してくれる。

「それは何で?」

「何でも士気向上の為とか。“迎撃戦”も1季に1回程度な上に基本的に負けませんし、フィズンはそもそも治安も良いです。なので騎士団の緊張感も薄れやすいんですよね。だからいざ“迎撃戦”となれば大袈裟に戦って、勝って、お祝いするんですの♪」

「へー」


 “転生”を“記憶喪失”という事にしているフェリアは、この世界についていろいろ知るために質問を多くすることにしていた。


 転生直前に“元のフェリア”が土砂崩れの事故で大怪我を負ったという事もあったため、この方便は存外すんなり受け入れられていた。そして丁度マリィルが物知りだったことも幸いし、彼女はフェリアに多くを教えてくれている。

「あとさ、食事の度に言ってる“天空のラミに祈りを”って…何?」

「天空の神ラミへ捧げる、食事の前のお祈りですよ♪」

(神様か…この名前は憶えておかないとマズそうだね…)

 何度も何度も質問をしつこく繰り返すフェリアに対し、嫌な顔一つせず詳しく説明をしてくれるマリィルに…フェリアはとても感謝していた。




「姉様、そんな事知らなくてもやっていけるよ?」

 …半面、ラージェはいろいろと抜けていた。

「ラジィ、それは良く無い事ですよ?騎士たるもの一般教養くらい知っておかないと恥ずかしいですわ」

 なだめるマリィルだが、ラージェは意に介さない。

「知らね、アタシは大丈夫だし」

「じゃあラジィ、ラミ神についてフェリア様に説明して下さいな」

「…なんか神サマ。空のどっかにいる」

「駄目みたいですわね…」

「うるせーなマリィ!!アタシは別に気にしないし!!」

(仲が良いなぁ、この2人は)

 そんな2人のやり取りを、フェリアは微笑ましく見守る。フェリアの幼馴染だというこの2人は、記憶喪失の彼女の為に甲斐甲斐しく尽してくれていた。






 朝食を済ませたフェリア達は、兵舎で寛いでいる。

 なにしろフェリアは記憶喪失…という事になっているため、現在は復帰に向けて休養中だった。しかし昨日の“迎撃戦”は特別だったため、急に呼び出しを受けたのだが。

 そんな訳で、フェリアはマリィルに様々な事を教わっている。


「さあフェリア様、聞きたい事があれば何でもどうぞ♪」

 朝食を片付けた兵舎の机に掛けたマリィルが、フェリアに向かって笑顔を向ける。澄んだ彼女の青い瞳とふわふわの金髪はまるで人形のようで、幼い顔立ちも相俟って彼女の年齢が18というのがフェリアには信じられなかった。

 そしてマリィルの頭上…白い兎耳が愛らしく揺れる。


(さーて、聞きたいことは山ほどあるけど…)

 フェリア…いや、フェリアに転生した“漣次郎”にとっては、この世界は分からないことだらけだった。彼女は何から聞けばいいのかを逡巡し、最も基本的な事を聞く事にした。

「うーん…そうだね、まずは僕達3人について詳しく教えてよ」

「ええ、分かりましたわ♪」

 “漣次郎”がフェリアに転生した時に病院で一通りの説明を聞いていたのだが…その後彼女は、なし崩し的にこの2人にお世話をされている状況だ。

 なので“この3人”に関してすら、分からないことだらけなのだった。




「改めまして、私はマリィル。フェリア様の一歳年下の後輩騎士ですの♪小さい頃からフェリア様と一緒に育って、3年前にフェリア様と一緒にフィズン騎士団に配属されました。それはあっちのラジィ…ラージェも同じですわ♪」

 マリィルは自己紹介をしながら、ラージェの方を示す。


 ラージェは、窓際の長椅子で朝日を浴びながら三度寝をしている…。フェリアやマリィルとは違う浅黒い肌のラージェは、いつも長い銀髪をポニーテールに結っている。彼女の燈色の眼は初めて見た時こそフェリアを驚かせたが、慣れれば違和感は無くなった。

 そして…微睡むラージェの長い爬虫類の尻尾が、のんびりゆらゆらと動いている。




 起きそうにないラージェを一瞥したマリィルが説明を続ける。

「私達が今居るのは、シュレンディア王国で最大の港町であるフィズンですの。そしてこの基地はシュレンディアでも特に大きな“フィズン騎士団”の拠点で、普段は町の警邏や武術訓練を任務としていますわ」

「ほうほう」

「フェリア様の記憶が戻れば、私達も通常任務に戻ることになると思われますが…今はフェリア様の記憶を優先するとの事で、休養を頂いておりますわ♪」

「なるほどね…」

「しかしなんといっても…フィズン騎士団の最大の使命は“迎撃戦”ですわ。海の向こうから大挙して押し寄せる『スレイヴ』…魔王の僕を迎え撃つ事なのです♪」

「海の向こう…魔王…」

「ええ」

 いまいちピンと来ていないフェリアの表情を読み取ったマリィルが、そこで一旦説明を切る。そして彼女は少し首を傾げて何かを考え込む。

「むー…そうですわね、では先に魔王と魔族の事を説明しますわね」

「え、僕もっと魔法とか異能の事とか聞きたいんだけど」

「魔法については…説明が大変なので改めてにさせて下さいな。それに異能のことについては、魔族の説明と一緒にさせて頂きますので♪」

「なるほどね、わかったよ」

 そして“長くなる”と前置きし、マリィルが『魔族』の話を始める。








 魔族。

 それは異形なる者達。

 人類に害を為す者達。

 そしてかつて…シュレンディア王国を蹂躙した仇敵。


 昔…世界には魔族と呼ばれる異形の生物がそこかしこに生息していたという。昔はフィズンの地にも魔族がおり、シュレンディア王国と形式上の“相互不可侵”を以てのにらみ合いをしていた。

 その均衡が破られたのが約200年前。

 魔族によるシュレンディア侵攻。


 今では『魔の侵攻』と呼ばれる、シュレンディアの暗黒期だ。


 突如として不可侵を破りシュレンディアを襲った魔族は、時の国王を弑して王国のほぼ全域を支配たのち、人間の男を奴隷にし…人間の女には魔族の仔を無理矢理産ませたという。

 敗走したシュレンディア軍は南方の小都市に押し込まれ、絶体絶命。

 王国の滅びはもう目前まで迫るという状況だった。

 そのシュレンディア暗黒期に夜明けをもたらしたのが…三英傑。


 勇者、賢者、聖者と称えられる3人の英雄だ。


 彼等の働きにより魔族はシュレンディア領から追い出され、さらに三英傑は魔族の地であったフィズンまでもを奪取した。行き場を無くした魔族は海の向こうへ逃げ去り、現在は遥か彼方の孤島に住み着いているのだと言われている。

 そして現在に至るまで、魔族とシュレンディアは敵対している。

 そのため現在でも、魔族によるフィズン攻撃が行われているのだ。








「…無理矢理子供を産ませるとか、魔族は酷い事するね」

 マリィルの説明を聞いたフェリアが第一に発した台詞がこれだった。そしてフェリアは今の説明で、自分達3人が“どういった存在”なのかが分かった気がしていた。

 説明するマリィルも目を伏せがちにし、言い難そうに説明を続ける。

「…三英傑がシュレンディア領を取り戻した時、そこには半魔族…人間と魔族の混血の子供達が大勢居たそうです。魔族の血を引く人間にはある特徴があったため、彼等は1つの町に集められ…今でも半魔族は皆そこに住んでいます」

「特徴…?」


「半魔族の一部の者は“異能”を発現します。魔族と同様に…」


 兎耳のマリィル。

 爬虫類っぽいラージェ。

 フェリア自身も…分かりにくいが…尖った耳と人ならざる虹彩の金眼をもっていた。そして記憶喪失のフェリアは今までに…自分達3人以外でこんな亜人のような者を一度も見かけていなかったのだ。

「つまり僕らは『魔の侵攻』の時に残された半魔族の末裔って事だね」

「ええ、そうですわ」

「異能…という事は、魔王の『スレイヴ』とかいう使い魔も…?」

「ご名答。魔王の持つ異能によって生み出されていると言われていますの」

「じゃあ当然、僕の異能…アストラルも、魔族の血による力って事だね」

「その通りですわ♪」

「…なんだか複雑だね」

 魔族の力で魔族と戦う。

 その歪な状況に、フェリアは苦笑いする。

 しかし次のマリィルの言葉が、彼女を驚かせる。


「半魔族は長い間、シュレンディアでは白眼視される存在でした。しかしその偏見もかなり改善されて来ていますわ。特に今の国王陛下が半魔族に目を掛けて下さっていて、フェリア様なんて特に期待をされているのですよ?」


「げ、国王陛下…!?」

 マリィルの口から出た思わぬ単語に目を丸くするフェリア。

 そして彼女は今後の生活について、早速不安を覚えるのだった…。

(やれやれ…どうせ異世界転生なら、もっとスローライフをするとか気楽な方が良かったなー。“フェリア”はいろいろ忙しそうな人だから今後も大変そうだ…)











 フェリアがマリィルと話し込んでいると、突然ラージェが飛び起きた。


 そしてとんでもない速度でフェリアの隣の席に飛び込む。

「うわっ!」

「おはよー姉様!!」

 そしてラージェはいきなりフェリアに頬擦りしながら、尻尾をフェリアの足に絡ませてくる。激しいスキンシップに、フェリアがたじろぐ…。

「お、おはようラージェ…。寝起きなのに元気だね」

「えへへ!」

 距離感の近いラージェに赤面するフェリア。

「マリィの小難しい話がつまんなくて起きちゃったよ!」

「えぇー…」

(なんかIQの落差がすごい…)

 能天気なラージェに気圧されるフェリア。

「すみませんねラジィ、私の話がつまらなくて」

 話を遮られたマリィルは呆れ気味にぼやく。

 そんな2人の態度なんぞどこ吹く風とばかりなラージェ。

「もー難しい話とかもういいよ!ねえ姉様、3人でどっか行こうよ!せっかくの休日なんだしさ!」

「もうラジィったら…フェリア様は大怪我から復帰したばかりなのですから無理をさせては駄目ですわ」



「そっか、それに今日は王様が来るって言ってたし我慢だね」



「…は?」

 眉を顰めるマリィル。

「えっ!!?」

 飛び上がるフェリア。

 驚く二人にキョトンとするラージェ。

「あれ?言わなかったっけ?」

「聞いてませんわラジィ」

「じゃあ言い忘れてたね。団長に伝言しろって言われてたのを」

 事も無げに言い放つラージェを諫めるマリィル。

「もう…困りますわそんな大事な事を…!」

「えへへ。ゴメンねマリィ!」

「ゴメン…じゃないですわ!」

(ど…どういう状況…?まさか…)

 置いてけぼりを食らうフェリア。

 そして申し訳なさそうにマリィルが告げる。


「すみませんフェリア様…この前貴女が土砂崩れの事故で大怪我を負った時、国王陛下も大変ご心配して下さっていたようです。そして“近々フェリアの見舞いに行く”とも聞き及んでおりましたが…それがどうやら今日だったようです」

「うっわー…マジか」

 突然の事に困惑するフェリア。




 記憶喪失の女騎士は、まだ右も左もわからないというのに…早速この国のトップと会わなければならない事になってしまったのだった…。


番外的な感じで、現代に転生した女騎士の話も挟んでいこうと思います。

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