その14 鬼灯のような
漣次郎が“フェリア”に転生して、シュレンディア暦で半月が経った。
フェリアは小隊の面々ともすっかり打ち解けていたが、徐々に他の4人が抱えるものが垣間見えるようになって来て…。
早朝のフィズン基地を、フェリアは独りで歩いている。
流石に“記憶喪失のフェリア”も、この世界の生活に慣れてきた。
早朝には、所属する中隊のミーティングに参加し。
兵舎で朝食を済ませて任務に出る。
昼には一度兵舎に戻り、その後は夕方まで再び任務。
あとはイレギュラーが無い限り、夜と非番は自由だ。
これが、今のフェリア小隊の基本的な動きだった。
通常任務だけであれば、特段忙しいわけでも無い。
しかしフェリアの表情には疲れが見える。
(今日はいい日になりますように)
フェリアは心の中で、ここ最近続けて居るお祈りをする。
(姫様やルゥイの干渉が無くて、王様の急な任務が無い…至って普通の一日になりますように…!)
度々やってくるイレギュラーな障害物。
フェリアを悩ませるそれらが起きないことを心の底から祈りつつ…フェリアは兵舎の扉を開ける。
「ただいま、みんな!」
「天空のラミに祈りを」
フェリアの帰りを待っていたフェリア隊は、賑やかに朝食を食べている。
“転生”当時はここに3人しか居なかったが、今は5人…たまにアイラが来るのでその時は6人…に増えている。ココロンもミューノもフィズン基地に慣れてきており、仲良く伸び伸びしている。
「うへぇー…今日のスープの貝、あたしの苦手な奴だ。ねえミュー、お願いだからコレ食べてくんない?」
「何言ってるのココ、子供じゃあるまいし…。騎士団の食堂が作ってくれる料理にいちいち文句言わないの」
「わ、わかったよぉ…。ああラミ神、その輝く眼で見ていてください、あたしは今から苦手な食べ物を克服しますから…!」
「確か“ラミ神は試練に立ち向かう人間を祝福する”だっけ?まったく…相変わらずココは信心深いよね。こんなのが“試練”だとわたしには思えないけど」
もはや恒例となっている“ココロンの好き嫌い”にいつも通り付き合わされているミューノが、彼女を軽くあしらっている。当のココロンはというと、ものすごい形相で苦手な食べ物を頬張っている…。
そんな2人を、フェリアは優しく見守る。
「…なんですか隊長、そんな見ないでくださいよぉ…」
恨めしそうな眼で抗議するココロン。
その表情に、フェリアは思わず吹き出しそうになる。
「だってココロンその台詞を毎日言ってない?そうやってミューノに押し付けようとした食材はもう50種類くらいあると思うんだけど」
「正確には48種類ですよフェリア隊長」
「な、なんで全部数えてんのミュー!?」
「面白いから」
「ひどいよぉ…」
(相変わらず仲良しだね、この2人は…)
仲睦まじいココロンとミューノをフェリアが眺めていると、不意に横から誰かがもたれ掛かって来る。
「…くかー…」
「ちょ、ちょっとラージェ…」
ラージェが朝食を食べながら、器用に居眠りをしていた…。
見かねたマリィルが、彼女の肩を揺さぶる。
「ラジィ起きて下さい。こんな所で二度寝されては困りますわ」
「…うーん…姉様ぁ…相変わらず足が速いねぇ…」
(足が速い?僕最近走ってないけど!?)
居眠りするラージェは不気味な寝言を発している…。
「ラジィったら!!」
「…はっ!?」
真顔で起きるラージェ。
そしてボーっと周囲を見回し、
「…姉様の新記録は…?」
頭を抱えるマリィルと、腹を抱えるフェリア。
「ラジィ、貴女ももう先輩騎士なんだからしっかりして下さい。ココちゃんやミューちゃんに示しが付きませんわよ!?」
「アタシはしっかり者だよ?自慢じゃないけどさ。そうだな…ミューと同じくらいのしっかり者だよね」
「ええぇ…わたしとラージェさんが…?」
見るからに不服そうなミューノだが、これ以上喋ってもさらにラージェが滅茶苦茶言うのが分かっているらしく、喉まで出かかった言葉を飲み込んでいる。
「ねえラジィさん、隊長って足も速いんですか?」
そんな中、変な所に食いつくココロン。
「むぅ?超速いよ。今度見せてもらいなよ!」
「そうですね!そういう事でお願いします隊長!」
「…姉様?」
…フェリアはというと、ラージェの発言に終始ツボっていた…。
いろいろ収拾が付かなくなりそうな状況を、マリィルがまとめる。
「さあさあ皆さん、今日から春季後節なんですよ?前節までは警邏の任務でしたが、今日から持ち回りが替わるんです。しっかり気合を入れて臨みましょうね♪」
そしてフェリア小隊は朝食を片付け、兵舎を後にした。
シュレンディア暦は、四季八節と呼ばれる区切りになっている。
春夏秋冬が“季”と呼ばれ、それぞれ90日。そしてそれの前半後半が“前節・後節”と言うらしい。そして今日は春季46日…いわゆる春季後節の1日目だ。
…これが騎士団にとっては重要だった。
騎士団の基本任務は、この節ごとにシフトする仕組みになっているのだ。
だからフェリア小隊も、今日から別の任務に就くことになる。
とある高い塔の上で、フェリアはさわやかな海風を浴びる。
春季後節でのフェリア小隊の任務は“駐屯”だ。
フィズン港の北の端…大陸の本当の先端には、騎士団の監視塔がある。そこには騎士が常駐しており、昼夜を問わず『スレイヴ』の襲撃に備えて水平線を睨んでいるのだ。
…しかし今までの記録では、『スレイヴ』の襲撃は季に1回。
だからこの駐屯は、ただでさえヒマなフィズンの騎士にとって最もヒマな任務なのだ。
「凄い凄い!隊長凄いですよコレ!これが噂に聞く“千里鏡”ですよねー!?」
塔のてっぺんで、ココロンは大はしゃぎだ。
この塔の最上階には、硝子板を組み合わせた遠視用の道具…“漣次郎”の知識でいう所の望遠鏡…が、仰々しく設置されている。これはシュレンディアの識者達が知恵を寄せ集めた逸品で、迎撃戦ではいつも役に立っているという。
千里鏡を壊しかねない勢いのココロンをラージェが煽る。
「おいおいココ、前の迎撃戦は冬季後節の終わりくらいだったから、今日だってスレイヴが来てもおかしくないんだよ!」
「ホントですか!?わー来ないかなー!楽しみだなー!」
「ココ、不謹慎」
ミューノは落ち着いている…ように見えるが、何だかいつもと違ってソワソワしている。何だかんだ彼女も、初めて来たこの櫓に興味津々のようだ。
「うふふ、ココちゃんとミューちゃんは初めてだものね。ここはご存じ騎士団の監視塔で、海の向こうからスレイヴが来るかを見張る場所なの。もしスレイヴが来たら、火薬の仕掛けで基地に合図を送るのよ♪」
マリィルは海側の窓辺に近付く。
海から来る風が、彼女の金髪と兎耳を撫でる。
「この任務、本来は3組の交代制なの。だけれどマシェフ団長の計らいで、私達の小隊は朝から夕の時間のみの担当にして頂けたのよ♫」
(…いいのかなぁ、これ。他の騎士になんて思われているのやら)
フェリアは内心複雑だった。
なにしろこれは、正確にはカイン王の計らいだ。
曰く“乙女に夜更かしは厳禁!”との事らしい…。
いずれにせよ、ここの任務は“ただ居るだけ”なのだ。
なのでフェリア小隊は、思い思いに駐屯をする…。
「ねえラジィさん、尻尾に触っても良いですか!?」
千里鏡に飽きたらしいココロンが、今度はラージェの尻尾に興味を示す。
「へ?アタシの尻尾?」
一瞬驚いたラージェだが、気持ちの良い笑みで快諾する。
「いいよ!」
「わーい!」
早速ココロンが、尻尾を好き勝手に触り始める。そんなココロンを、ミューノが何か言いたげな表情で見つめている…。
「この尻尾…なんだか手触りはしっとりです!だけど硬いですね!」
「へへへ、面白いでしょ!あと体の方にも鱗があったりするよ!」
「ホントですか!?ていうかラージェさん腹筋凄いですね!」
「だろー!?」
ココロンがラージェの身体をまじまじと見ている。
「やっぱりラージェさんもすっごい鍛えたんです?」
「いやいや、アタシは半魔族だから…特に鍛えなくてもこんなだよ?姉様もそうだよね。ただマリィはそこまでじゃないけれど、そのへんは種族差なのかなぁ」
「確かに…。あたし騎士団学校時代に、たまに視察に来るフェリア隊長に絡んでは“どうやって鍛えているんですか!?”ってしつこく聞いたんですけど…いつも答えは“僕は鍛えなくても凄いのさ!”って感じでしたからねー」
「あはは、姉様らしいや!」
(ふーん、種族的な物か…)
フェリアはマリィルに借りた魔術書を読みながら、ラージェ達の会話を聞いていた。
そして不意にココロンが、ラージェの尻尾を触りながら彼女に訪ねる。
「ちなみにラジィさんの親御さんも同じ尻尾が?」
「うーん…どうだろ?」
ラージェは珍しく困ったように肩を竦める。
「だってアタシ達、親の顔知らないし!」
(え?)
ラージェとココロンの言葉に、黙って聞いていたフェリアも反応する。
「え…そうなんですか?」
「イロイロ複雑なのさ!」
「そ、そうですか…」
(僕達の、親…)
2人のやり取りを聞きながら、フェリアは考えを巡らせる。
(前に見た夢…半魔族の町を出立した時、僕達の親族は居なかったみたいだけど…。そういえば僕達の家族ってどうなっているんだろう?)
ラージェとココロンの会話に耳を傾けながら、フェリアは物思いに耽る…。
そんな中…黙って本を読んでいたミューノに、マリィルが声を掛ける。
「…ねえミューちゃん、1つだけ聞いて良い?」
マリィルは真剣な面持ちだ。
「…なんですかマリィルさん?」
ミューノが本から目を上げる。
マリィルは躊躇いがちに、それでもミューノに聞いた。
「ねえ、ミューちゃんは名前からして『パルサレジア孤児院』の出身なのよね?」
(孤児院…?ミューノって孤児なの!?)
内心驚くフェリア。
当のミューノは黙っている。
「…」
「御免なさいね…。でも私達、貴女ともっと仲良くなりたいの。貴女と事をもっと教えてくれたら嬉しいわ」
「答えにくい事を聞きますね、マリィルさん」
「そうね…でも無理に言う必要は無いわ」
「別にいいですよ。『パルサレジア』を名乗っている以上、どうせ隠せることじゃ無いですからね」
言葉以上にミューノは不機嫌そうで、音を立てて本を閉じる。
「わたしの両親は、10数年前にあったギゼロ河の水害で亡くなりました」
ミューノは日の当たらない壁際に寄りかかり、腕を組んでいる。
今、ミューノは無表情だ。
「わたしは小さかったからよく覚えていませんけど、泥の中に埋まっていた所を掘り返されて唯一助かったらしいです。ですが家族はもちろん、住んでいた村の皆も…」
「…そんな事があったのね」
「そうして行く場所の無かったわたしは、貴族であるパルサレジア公の運営する『パルサレジア孤児院』に引き取られました。そして慈悲深いパルサレジア公は…わたしみたいな孤児をたくさん引き取り、公と同じ家名まで授けて下さるんです」
「水害…あの河って荒れるんだね…」
フェリアはこの間、王都に行った時の事を思い返す。
確かにあの広大なギゼロ河が氾濫すれば、大惨事になるだろうと思った。
「わたしはパルサレジア公に多大なご恩があります。だからわたしは稼ぎの良い騎士団に入ってお金を溜めて、孤児院にお返しをしたいんです」
「恩返しという事なのね、ミューちゃんは立派ね♪」
「…なんだか照れくさいですね」
ミューノは口をとがらせてそっぽを向いた。
その話を聞いていたラージェが、目を輝かせてミューノに飛びつく。
「ミュー偉いっ!偉いぞぉー!」
「何で抱き着くんですか!?だからわたしは半魔族と慣れ合うつもりは…」
凄い嫌そうなミューノだが、声はそこまででも無い。
「ミューはホントすごーい!!」
ココロンも便乗して飛びつく。
「ちょ、ちょっとー!?」
2人の重みに耐えられず、ミューノがひっくり返った。
そんな3人を、マリィルは優しい表情で見守っている。
「うふふふ、やっぱりミューちゃんは良い娘ですわねフェリア様」
…だがその声には、隠してはいるが、何かがまだ燻っている…。
「うん、そうだね…」
フェリアも3人も見守る。
そしてマリィルと同じく、フェリアもまだ腹の中に違和感が残っている。
(パルサレジアっていうのは孤児院だったか…。でもアイラ姫の言ってた“パルサレジアの回し者”って、結局どういう意味だったんだろう?)
しかし和気藹々とした雰囲気の中、フェリアはその疑問を呑み込んだ。
フィズン基地は、もう夜。
フェリアは軽い足取りで、鼻歌交じりに司令塔から兵舎に向かっている。
今日はフェリアにとって、とても平和な一日だった。
(いやー今日は平和だったよ。王女様も乱入しに来なかったし、王様の特務も無かった、それにルゥイは櫓で夜の番…。こんな普通の日は久しぶりだなー)
そもそもフェリアの日常は、毎日がイレギュラーの連続なのだ。まともに通常任務を遂行できたのは今日が初めてかもしれなかった。
(ほんと、毎日こうならいいのに。手柄に繋がらないトラブルは御免だよ…)
実はフェリアは、少しの焦りを感じていた。
王様の期待に応えるため。
“フェリア”の夢を叶えるため。
紅百合部隊の為に、フェリアは手柄を欲していたのだ。
だが…平和なフィズンでは手柄は望めない。
だからフェリアは内心ココロンと同じく、次の“迎撃戦”を待望していた。
(前の迎撃戦は、冬季の終わりだったっけ?迎撃戦は確か“季に1回”…もうすぐ次の迎撃戦の時期なのかもしれないね)
自分の強さに自身を持てている今のフェリアは、ワクワクしながら次の戦場を待ちかねている。
そんなフェリアの、視界の端。
(あれ…?)
遠くの暗がりに、ミューノの姿。
彼女は1人、基地の建物の狭間にするりと入り込み…フェリアの視界から消える。
(…うーん、やっぱりミューノにもまだ何かあるのかなぁ…?)
フェリアはちょっとの罪悪感を抱えつつ、ミューノを追ってしまう…。
フェリアは闇夜に紛れ、遠くからミューノを盗み見ている。
彼女は一定のテンポで狭路を歩いている。
そして懐から紙の束を取り出し、それをどこか煉瓦の壁の隙間に突っ込んだ。
ミューノはそのまま、何事も無かったかのようにそのまま歩き去る…。
フェリアはその場所を探る気にはなれなかった。
しかし、これだけは分かった。
(もしかしたらミューノは、誰かの指示で僕達を見張っている…?王女様の言っていた“パルサレジアの回し者”ってこれの事なのかな…)
フェリアは、ミューノを嫌う気にもなれない。
ミューノだって…好きでやっているのでは無いように感じる。
そしてこれは、フェリアの直感。
(きっとシュレンディアの偉い人に、ネイオレスみたいに僕を快く思わない人が結構居るんだろうなぁ…パルサレジア公ってのもその1人だったりして。まあ、今更そんな事でへこたれる気は無いけどね)
そしてフェリアは、異能で兵舎の自室に戻る。
その夜、フェリアの寝付きは最悪だった。
先程のミューノ追尾の後…当然フェリアは、兵舎に戻って来たミューノと会っていた。何気無く行き先を聞いたフェリアだが…ミューノは“夜の散歩”と事も無げで、ココロンも“いつも通り”と言っていた。
ミューノの様子はまったくの普段通りで、フェリアには彼女が隠し事をしているとはとても思えなかった…。
(…寝れない)
眠れる気がしないフェリアは、静かに私室を出る。
(確か談話室に、マリィルが持ち込んだ騎士団規則の教本が色々あったね。あれを読んでいれば眠くもなるだろう)
そして、音を立てないように兵舎の1階に向かう。
夜の兵舎の廊下は、灯りを絶やさないフィズン基地の薄い光で少しだけ明るい。
フェリアは音を立てないように、1階に下りる。
そして談話室に向かおうとした矢先。
兵舎の暗がりに、ラージェが居た。
フェリアは息を呑む。
ラージェは壁に向かって俯いている。
彼女はフェリアに気付いていない。
ただ黙って、兵舎の闇に佇んでいる。
彼女は微動だにしない。
そのまま、暫しの沈黙。
フェリアは意を決して声を掛ける。
「…ラージェ?」
ラージェは弾かれたように顔を上げ、振り返る。
「…ね、姉様?」
鬼灯の様な燈色をしたラージェの瞳が、暗闇の中で幽かに光る。
いつも適当で楽しそうな彼女だが…今はそんな感じでは無い。
何かを思いつめたかのように、張り詰めた表情だ。
フェリアも流石に心配になり、ラージェの元に歩み寄る。
「どうしたのラージェ…何かあったの?」
「へへへ…何でもないよ?」
「誤魔化さないでよ、仲間でしょ?」
「うーん、そうだねぇ…」
ラージェは…いつもならあり得ないような、疲れた笑みだ。
兵舎の壁に背を預け、溜息を吐く。
「うーん、何ていうか…姉様やマリィはさ、実力があるから騎士団の皆に認められているよね」
「え…ラージェだってそうでしょ?」
「いや」
ラージェは首を横に振る。
「アタシは異能の無い半魔族、なのに姉様の口添えでここに居る…。それを良く思わない人がこの基地にはいっぱい居るのさ。姉様の眼がある所では誰も言わないけど、そういう事を陰で言う奴は居る」
僅かに嫌な予感のするフェリア。
「…まさかこの隊には居ないよね?」
「え、居るワケないじゃん。ミューもココも良い娘さ」
「…そっか、そうだよね」
フェリアは胸を撫で下ろす。
そしてふつふつと、怒りが湧いてくる。
「…誰に言われているの、ラージェ?僕から文句言ってやる」
「その必要は無いよ姉様。アタシが強くなれば済む話さ!」
もうラージェはいつも通りだ。
しかしそれが、フェリアの眼には空元気に映る…。
「だけど…」
「ダイジョーブさ姉様!こんな事で躓いてちゃ、夢に近付かないしね!」
「…夢、か」
「そうさ、アタシ達3人の夢だよ」
ラージェの眼には、静かで熱い火が灯る。
「いつかワルハラン特区の半魔族を、シュレンディアの普通の国民にする…!特別扱いされない、蔑まれない、ただの普通の人にするのさ」
(…ようやく聞けた、フェリア達の“本当の夢”)
フェリアは神妙な顔だ。
恐らくこれが…以前のフェリアが『紅百合部隊』創設を望んでいた真の理由だ。
これは…以前夢で見たフェリアの記憶と一致する。
「そうだね、僕達の夢を叶えよう」
「ふーん?まるで記憶が戻ったみたいだね、姉様」
「そう?」
「そう!」
ラージェは嬉しそうだ。
恐らくラージェも半魔族という事で、嫌な思いをしてきたのだろうとフェリアは推察する。それはきっとマリィルも、ワールも、フェリアですらそうなのだ。
だからこそ思う。
(転生した僕が、フェリアの夢を叶えよう…皆の為に!)
光の当たらない場所で悲しい思いをする同胞が居なくなる未来。
フェリアは改めて…自分の使命を抱きしめる。
読んで下さっているどこかの誰かに感謝。
獣人のキャラを出したいのに、上手い出し方が思いつかなくて燻っています。