第5話 初感染
一体どうすれば……ゲームとはいえ死ぬのはいい気がしない。悩んでいる間にも体から数字が飛び出してHPが減っていく。
そうだユーリさん!ユーリさんに助けてもらえば……ってどうやって連絡とるんだ?
「ユーリさーーーん」
叫んでみたが当然返事などない。
HPをみるともう26になっている。あと42秒……
タッタッタッタと近くを走る音が聞こえる。白いローブを纏った5歳児ぐらいの子供が森の小道を走っている。
もうこれしかない!
「す、すいません!! 助けて下さい」
その子供は周囲をキョロキョロと伺い自身の顔を指差す。
俺がコクリと頷くと近寄ってくる。金髪のおかっぱ頭で青い目をした可愛らしい幼女だ。その幼女は女の声で話しかけてくる。
「どうしたの?」
「クエストで毒に掛かってしまって死にそうなんで助けてくれないかなぁって」
「クエストで毒……」
そういうと口元がニヤリと歪む。
「あんた初心者か。予習ぐらいしとけよ。蜂の巣駆除は運営の罠だから。そのままくたばれ! それじゃ!」
幼女はそういうと俺の前から立ち去ろうとする。
「へ?」
その容姿から想像もしないような答えが帰ってきて唖然とする。
幼女はくるり振り返ると俺の顔見てニコッと笑って
「あ? 怒った? だったら死ぬまで見ててあげようか? あと30秒ぐらいで死ぬんでしょ?」
な、なんだこいつ性格クソわりぃぃ……
幼女は俺の胸を宝石のようなものがついた杖でコツンと叩くと
「大体予習もせずにMMOやろうって魂胆が気にいらない。どうせ報酬が他のクエよりいいな。蜂の巣駆除ぐらい簡単でしょってノリで受けたんでしょ?」
と言った。
く、悔しいが当たっている。で、でも負ける訳にはいかない!
「こ、このゲームは、よ、幼女がやっていいゲームじゃないぞ!」
「あははははは! これアバターだよ。中身が幼女なわけねーじゃん」
……体は子供、頭脳は大人……どっかの迷探偵か……
「あんたよくみたらデフォルト顔でハゲじゃね?」
「そ、それがどうした」
「適当にゲームするなら止めたほうがいいよ。こっちは真剣にやってるんだから。失礼でしょ? で、あと何秒?」
「……26秒」
こ、こいつ……なんとかギャフンと言わせてやりてぇぇぇ……
俺が拳を握りしめるとそれを見た幼女は
「このソフィアの街近辺はPK禁止エリアだからなんにも出来ないよ」
と言った。
俺にはPKの意味が分からんが……多分、人を傷つけるようなことは出来ないってことか
「たとえPK可能エリアだったとしても私のアバターレベルは25。あんたは1。私には逆立ちしたって勝てっこないの、わかる?」
あれ? ダブルスラッシュの隣のアイコンが光ってるわ。これなんだろ……まあいいや使ってみよ。
『ミーコ35に感染を使いますか?』
ミーコ35? こいつの名前か? 感染って確か最初にもらったスキルだよな……まあいいや使ってやろどうせ死ぬし。
幼女が嬉しそうに話す。
「さあ、もうすぐ死ぬかなぁ」
HPの残りは1
俺はYESをタップする。
すると幼女の体から1という数字が飛び出てくるのと同じに俺の体から1という数字が飛び出てきて、俺の視界は真っ暗になる。
そして字幕が現れ『あなたは死にました。デスペナルティはアバターレベルの低下です』と表示されている。
まあレベル1だしこれから下がることもないだろう……
『復活しますか?』
と表示されている。
……なんか精神的に疲れたし、今日はもういいかな……
NOをタップするとログアウトしますと表示され、目を開くと俺の部屋の天井が目に飛び込んでくる。そしてかーちゃんがご飯!と大声で俺を呼んでいた。