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プロローグ

 ずっと、ずっと、太古よりも神話よりも遥かな昔


 世界は我々の想像以上にファンタジーだった。


 魔法があり、さらには魔物、妖精、精霊などが存在する、ゲームの様な世界。


 大陸にはゴブリン、オーク、オーガ、エルフ、ドワーフ、獣人等の異形が徘徊し、

 大海には、人魚、サハギン、シーホース、シーサーペント、クラーケンが潜み、

 大空には、ハーピーやグリフォン、ワイバーン、ドラゴンが飛び交う

 世界は現在よりも多様な種で満ちあふれていた。


 やがて、その中で高い知性を獲得した種族達が、それぞれ村を造り、街を造り、ついには国が造られた。


 彼等【知性ある種族達】によって日ごと発展してゆく世界を見て、この世界を創造した女神はとても上機嫌だった。なぜなら世界が発展するにつれ、彼女への信仰と畏敬が高まり、それは彼女の力の源になっているからだ。


 そして、さらに世界を発展させるべく、その増した力で彼女は【知性ある種族達】それぞれに特別な力=権能(ギフト)を与えた。


 そんな世界で女神が唯一、懸念していたのは世界大戦だった。なぜなら、これまで彼女が創造した世界は幾度となく、ある種族同士が起こした世界大戦のせいで滅んでしまっていたからだ。

 

だが、今回は杞憂で終わるはずだ。

 

なぜなら、彼等【知性ある種族達】はそれぞれの価値観が違い過ぎたため、揉めてもせいぜい小競り合いする程度であり、互いに滅ぼしたいと思う程の憎悪を抱くこともなかった。そんな暇があったら自国の発展に費やしたほうがマシと考えていた。


 もちろん女神がそういう風に仕向けていたのだが・・


 ともかく女神はこの世界が滅んでしまわないよう過剰に世界に干渉し続けた。

 彼女はどんなことをしてもこの世界をあらゆる危機から護る決意を固めていた。


 異常で過剰な愛情であったが、この一見良好なサイクルは数千年も続き、世界が発展してゆく礎となった。そして、この非常に歪で過保護な世界は様々な矛盾を抱えたまま成熟していった。












―――破滅は唐突だった



きっかけは空から落ちてきたたった一つの隕石だった。

 それは、かつて恐竜を滅ぼした様な巨大なものではなく、流れ星に毛の生えたぐらいの非常に小さなものだった。

 ただ、その隕石は神々しい光を放ち、その輝きは世界中で目撃され、その美しさはたちまちに【知性ある種族達】を魅了してしまうほどだった。


 やがて地上に落ちたその隕石はより近くで見るとさらに神々しい輝きを放っており、まさに宝玉としか言い表せないものだった。


 そして、その輝きは見た者達の正気を失わせるには十分すぎた。


 その証拠にその輝きは最初にそれを手に入れたドワーフの王にいつかこの宝玉が誰かに奪われてしまうのではという疑心暗鬼を抱かせ、やがてそれは何の前触れもなく隣国に攻め込むきっかけとなった。


 奪われる前に滅ぼしてしまえ――――そう考えたのだ。


 当然、攻め込まれた隣国も黙って滅ぼされるはずもなく、激しい抗戦をした隣国とドワーフ王の懸念通りそれを奪おうと画策していた他の【知性ある種族達】の国々の暗躍もあってドワーフの国は逆に滅亡の道をたどる結果になった。

 

 しかし、戦争はそれで終わらなかった。全ての【知性ある種族達】同士が宝玉をめぐって争いを始めたのだ。女神が恐れていた世界大戦が始まってしまったのだ。


 すぐに女神は争いの原因になった宝玉を取り上げようとした―― が、これが悪手だった。

 

 女神の行為は【知性ある種族達】の反感を買い、あろうことか逆に彼等から攻撃さえ受ける始末に陥ったのだ。

 大事に育てた子供の反抗期に遭遇した母親のように、傷心の女神はどうしたら良いのか、わからなくなり、さらなる悪手を積み重ね、その信仰を失墜させていった。それは彼女の力の弱体化を意味し、事態は益々悪化の一途をたどっていった。


 追い打ちをかけるように、【知性ある種族達】が女神から与えられた強力な権能(ギフト)を戦うことにベクトルを向けて改変した結果、とんでもない【力】を生み出してしまった。それらは彼等【知性ある種族達】だけでなく、世界そのものをも滅ぼしてしまう、とても危険なものであった。




 




 



 ―――――やがて


 幾つもの国や都市が滅び、かつての栄華など見る影もなく荒廃した世界で、もう何時、何かの拍子に終焉を迎えてもおかしくない中、それでもなお争いの続く、そんなある日



 何の前触れもなく目も眩む様な強烈な光が世界中を包み込んだ。


 それはかつての力を失った女神が最後の力を振り絞って発動させた、とある魔法だった。


 その効果はその光を浴びた者すべてを【ある種族】に変えるものだった。


 その種族は、かつて女神が創造した世界を幾度となく戦争で滅ぼし、彼女が最も嫌悪し、権能(ギフト)を与えられなかった唯一の種族であり、権能(ギフト)が無く最弱であるが故に、宝玉に執着しなかった種族―――【人間】に






 【知性ある種族達】は【人間】になることで権能(ギフト)を失うことにより、ようやく争いは終わりを告げ、世界は滅亡を免れたのだった。




 つまり、我々は女神の魔法で本来の姿と権能(ギフト)を封じられた【知性ある種族達】の末裔なのだ ――――――と


                           

*********************************




 情報が瞬く間に世界中を飛び交い、宇宙にも本格的に進出しようとしている科学万能の現代世界において、今更進化論に真っ向から喧嘩を売る、こんな荒唐無稽な話を堂々と国営テレビで放送した国があった。

 

 当然、世界中のニュースやネットでも話題となった。もちろん悪い意味でだ。


 しかも、その放送でその報道官はこうも言った


『我々は古の呪いを解き、かつての力を取り戻した。これは偉大なる将軍閣下の指導のもとに達成された偉業である。そして、近日中に愚者どもは将軍閣下の偉大なる成果を、その身をもって知ることになるであろう』―――― と、


 ある意味、宣戦布告とも言える、この宣言に対する世界の反応は

『ああ、またか・・・』であった。

 その国は過去に何度も同様の恫喝する様な発言を繰り返し、看板は民主主義を名乗っているが、内情はジャイアニズムあふれるという愉快な国だ。


 もちろん、今回の宣言も世界中で表向きは一応の警戒はされたが、内心全く相手にされるはずもなかった。


 なぜなら放送されたのが4月1日(エイプリルフール)だったのだ。


 あまりの滑稽な話に世界中がジョークだと思った。


 まあ、あの将軍様が『ウッソ、ピョ~ン‼‼』などと言うはずもなかったが・・・・


 後日そう言った訂正の報道がされるものと世界中の誰もが思っていた。

 


 翌日未明、その国から異形の軍隊が長年敵対していた南の国に侵攻するまでは―――






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