光神の槍先
「いい天気ですね、ヴィクちゃん」
「ワーッ!」
今僕はリジルザックスさんと一緒お散歩している。桜たちは凛の承認をもらってこの光神信使へ正式に移籍できたから、カミトとえりなは大変忙しくなった。シンと杏もあの二人に手伝いに行ったから、僕をリジルザックスさんに預けた。
しかしいきなり模擬戦でも始めたなんて…一体何の意味があるのだろう?
「赤城様の考えはきっと何かの深意があると思いますよ、ヴィクちゃん」
本当に?まあ、確かにそうかもしれないけど、今は急ぐザッドを救援しに行く方が…なんかリジルザックスさんはよっぽどカミトのことを尊敬してない?
「私の世界、ザッドを救ってくれた救世主様ですから」
でもそれだけで見えないよ。
「さすがシン軍団長の友、到底は瞞すことができませんね」
リジルザックスさんは僕を抱き上げて撫でながら微笑んで言った。
どう言う事?
「強さだけではなく、弱い人に助けてあげる志も、私には眩しくと見えます」
ま、待って、これはまさか…!
それはともかく、なんてリジルザックスさんは僕と普通に会話できるの?
「巨龍ですから」
それもそうだけど。
「あ、リジルザックスさん、こんにちは。そしてヴィクちゃんも」
「織姫殿下」
「その呼び方をやめてほしいですよ、ここの私はただの一般人にすぎませんから。それにリジルザックスさんも姫ではありませんか?」
おそらく織姫は一国の姫だから、リジルザックスさんは敬語を使った。そしてリジルザックスさんは白龍族の前族長の娘だと聞いた、そうだったら確かに姫に扱われるよね。
「確かにそうですね。でもレカーライヴズに居候した身として、レカーライヴズ第一王女に敬意を持たないといけません」
「ここはアースですから、そんなことはいりませんよ。楽にして、ね」
さすがカミトの妻になった人、織姫は前より交渉に上手くなっている。証拠はそれを聞いたリジルザックスさんは頷いて同意した。
「はい」
「カミトさんたちはまた仕事中なの?」
「はい、編隊のためにいろんなことをしないといけないようです」
「そうですね。ではもしよろしければ、リジルさんに夕食の準備に手伝いもらえませんか?」
「もちろんいいですよ」
リジルザックスさんは僕を降ろして、織姫と一緒にこの基地の食堂へ行く。
そう、カミトが総隊長を就任してから、織姫はこの光神信使のシェフに担当してもらった。そのおかげで、この部隊の食事の良さは全ガーディアンスの中でも一番ではなくてもかなり有名になっている。
織姫もようやくカミトを助けさせられるから喜んでいる。杏も言った、闇仕事をよくやっているこの部隊には、食事が良くなるだけで、士気が高く保持できる。確かにこれは凛も使った方法だな。
「織姫さん、今日のメニューはどうします?」
「そうね、今日はあんなが疲れたから、少しでも慰労したいな。うん、やっぱりカツ丼で良さそうね」
食堂までの途中、この二人が話し合った結果、お互いの呼び方はさんで定着した。
織姫のカツ丼か…美味しい記憶が甦った。僕のはあるかな?
「もちろんヴィクちゃんのもちゃんと用意してあげるよ」
僕の考えが織姫に見抜かれたちょっと恥ずかしい。でもありがとう!
「では私が何をすれば良い?」
「あ、リジルさん、まずはこちらのお肉を軽く叩いてください」
「こうですか?」
リジルザックスさんの一撃で、肉は完全に潰されてしまった。
「ごめんなさい、こう言うことは初めてですから…」
リジルザックスさんは少し恥ずかしいながら織姫に謝った。うん、白龍の姫だからしょうがないかも。
「大丈夫よ、これからもう少し軽くていいよ」
「はい」
さすが織姫、料理の領域にはまるで凛のように他の兵士たちを指導し指令を出している。
「シェフ、下準備はできました!」
「シェフ、油の温度あと三十秒で」
「シェフ、衣用の粉は混ぜ合わせました!」
「シェフ、出汁はできました!」
「シェフ、ご飯はできました!」
「ありがとう、みんな。そろそろ時間です、仕上げにいきましょう」
「はい!シェフ!」
うわ。ここの支援兵科のみんなはカミトと剣成に劣れないような連携で料理を仕上げ続いている。この部隊の人数はまた多くないとは言え、短時間でこれほどの量を作り出せたとはさすがだね。
「なになに、そうか、今日はカツ丼か」
「総隊長」
カミトとえりなは一緒にやって来た、二人の後ろには桜たちがついている。誰も疲れている顔をしているけど、桜からは何かの達成感を感じられる。ロックオンは少し落ち込んでると見えるけど、なんかそう来なくちゃのような気がしている。
さらに後ろにいるのは国光と彩子さん、国光も疲れたそうだけど、桜と同じ達成感を感じられる。彩子はほっとした顔をしているけど、何かを警戒しているような気がする。
そして一人、見知らない顔だけど、桜たちより年上、カミトより若いと見えるんだけど。
「勝手に厨房に入ってすみません」
おそらくカミトは一目でリジルザックスさんが厨房にいる事を気づいたから、リジルザックスさんはカミトに謝った。
「いや、織姫の許可があるだろ、構わない。ところで、織姫、仕事が終わったら一緒に食べよう」
「はい!」
織姫は僕の前にカツ丼を置いた後、えりなの隣に座った。リジルザックスさんは客だから、特別カミトの隣の位置に。つまりカミトの左はえりな、右はリジルザックスさんになった。
「とりあえず、頂こう」
カミトは何かを話したいようだけど、彼からいただきますを言わないと、このテーブルのみんなは誰も食う気がしないようだから、カミトは一応一口を食べた。
「まずは、剣輝の事だな」
そしてみんなも食べ始めたを見た、カミトは話を始めた。しかしてっきり部隊の話だと思ったけど、剣輝の事から始めるのはどう言うつもりなのかな?
「一番良いのはガーディアンスの学校に入る事は承知しているけど、私はお父さんとお母さんが私を育てたように、自ら剣輝の世話をしたい」
「…ロックオン、お前はどう思う?」
「教官とえりなさんを例として挙げたら、こちらは文句を言えなくなったじゃねえのかよ痛い!」
ロックオンの話は斎香に中断されてしまった。まあ、ロックオンはその言い方だから当然な事。
「総隊長、私たちは最初から桜ちゃんの気持ちをわかっている上で、その試練を挑戦しましたのよ。だから桜ちゃんは剣輝くんを最優先にしたいこと、私たちは大丈夫です」
斎香は視線で国光たちに同意を求めて、それを気づいた国光と彩子も頷いた。
「では…シェルシン、お前は?」
「赤城先輩、じゃなくて、総隊長、俺は桜ちゃんに負けた身ですよ、意見を言える立場ではありません」
それはあの見知らないの中年男性のようだ。着てる制服はカミトやロックオンたちと同じ赤色、つまりこの男も最高級戦闘兵の一人だと言うことだよね。カミトを先輩と呼ばそうとしたから見ると、カミトの後輩分かな?
「構わない、って、本音は?」
「やっぱり赤城先輩を騙す事ができませんね、けど俺も賛成しますよ。だってあの剣輝は時雨先輩の孫だと聞いております、それだけでちゃんと育つ意味があると考えています。最終はガーディアンスに入らなくとしても、その強大の力が悪に利用されることを防止できる事だけで意味がありますと」
ロックオンと国光と違う、このシェルシンさんは理性的な分析を言ったら、このテーブルの誰も桜がしたい事を賛成した。カミトの後輩なら、剣成の後輩でもあるよね。だからシェルシンは剣成のことも先輩と呼んでいる故か。
「やっぱりお前がいる本当に助かったわ」
「それは恐縮ですよ、カミト先輩」
あのシェルシンに称える言葉を送ったから、ロックオンは少しやきもちの気がしそうになった。まあ、歳から見るとそれも仕方ない事。
「杏たちもいいよな」
「はい!シン、広一、顕衛、大丈夫よね!」
「はい!」
まさかシンたちは杏の決定に全く意見がないとは…まあ、それは無理もない、杏はちゃんと実績を残っているからね。
「では桜は第一小隊長で、ロックオンは第二小隊長で、シェルシンは第三小隊長で、国光は第四小隊長で、杏は特殊陸戦部隊で」
「杏の部隊は既に編成できていますから、他のみんなも部隊編成できるまで、主力として働きもらいたいです」
えりなさんは追加説明をしてくれたけど、少し意味はわからない。部隊編成?カミトは一体どう言う考えのか?
「それは大丈夫ですけど、まさか他のみんなも私の部隊のように完全編制をするのですか?」
「そのつもりだ。狙撃兵としては既に桜、ロックオン、そして国光がいるけど、総隊長としてはまだ後継者がいない。部隊成立したばっかりのに早すぎと思うのも仕方ない。けど、いつか俺は他の世界へ行かなければならない時は必ず来る、その時えりなと織姫はきっと俺について行くと」
「もちろんだよ」
「もちろんです」
えりなと織姫の答えで、みんなが納得したように頷いた。
「ではこれから一ヵ月、お前らは自分の隊員を探しなさい。そのあとはザッドへの遠征だ」
「リジルザックスさんは大丈夫ですか?時間的には」
万が一のために、えりなはリジルザックスさんに確認の声を掛けた。
「出発する前に、エド様は赤城様はきっと時間をかかりますと仰っていましたから、多分今はまた大丈夫ですと」
「まあ、もし何かあったら、俺は感じられるはずだ」
「そうですね、一緒に生死を超えて来た戦友ですもの」
アリスの発言で、残っている時間はまた大丈夫だと確定した。
シェルシン=ライカート:戦闘兵科のランクレッド、カミトと剣成の後輩。既婚者だけど、妻は一般人。




