帰還
そろそろアースに帰還する時になったようだ。織姫王女の体調は回復したし、ザッドの地理や文明の資料もちゃんと記録できたから、凛はアースに帰る事を決めた。
「アルヴィス様、今度は本当にお世話になりました」
他のザッドの超神は来ない事を決めたから、見送りに来たのはアルヴィス様だけ。
「なに、その悪の根源を倒せたから、礼を言うのはこっちだ。そして聖女と神龍たち、この世界の代表として、感謝の言葉を言わせてもらおう」
アルヴィス様は深く頭を低っだ。
「そんな、アルヴィス様、私たちはただ聖女の義務を尽くしただけです!」
和歌奈様は慌ててアルヴィス様の礼を止めた。
「カミトと剣成がここにいない事は実に残念だった、私たちの感謝の気持ち、彼らに伝わせていただきたい」
うん、今はザッドに来る時と同じ、あの二人は聖剣と魔剣を操縦して、大聖殿艦に動力源を提供しているからここにいない。
「そして凛、えりな、奈美、修一、ありがとうございます」
「はい。ここにセラフィーブリンガースの総隊長として、その感謝の言葉を謹んで頂きます」
凛は代表としてアルヴィス様の感謝の言葉をそのまま受け入れた。
もうちょっと謙遜すべきだと思うけど、犠牲した人たちの事を考えれば、そうもいかなくなった。
そう、この戦いは死傷が出なかったわけがない。ザッドだけではなく、僕たちの方も何人も亡くなった。
だから凛はアルヴィス様の言葉をそのまま受け入れた。そうしないと、亡くなった人たちに失礼しまうから。
「では、私の民を頼んだぞ」
アルヴィス様最後はマーヴェレヴェス様にお願いの言葉を言い出した。
「なに、彼らはもう私の民になった、面倒を見るのは当然だろ」
「それもそうだな」
アルヴィス様は微笑んでマーヴェレヴェス様と握手した。
「今更だけど、本当にいいのか?」
シンは恐れながらクロエに聞いた。でもなんてそんな疑問があるの?
「エド様から聞いたはずだと思う、私は一人ぼっちだった。シンと出会えてから、この神に仕えるしかできない私の人生は初めて意味があった。それに私はあなたの副官だから、あなたについて行くのは当然だろ」
「わかった」
シンの答えはわかりやすい、そのままクロエを抱きしめた、クロエもシンを抱いた。
「軍団長、後の事はお任せください」
ピラコも見送りに来た。
「ああ、お前なら大丈夫だ」
ピラコは自分の剣を空に指していた。
「軍団長、クロエさん、お幸せに!」
ピラコはその言葉のせいでシンの拳を食らえた。
本気の拳ではないから、大丈夫大丈夫。
「頼んだぞ」
「はい!」
「おい!シン!ちょうどいい、聞きたいことがあってな」
サファリアンが来た。彼は既にアースの服、と言うより、ガーディアンスの服を着替えた。
「お前は自分の軍団と話が済んだか?」
「そんなの、既に済んだったぞ。それより、このスマ、スマートフォンの使い方、教えろよ!」
「玲様に聞けばいいじゃないか」
「バカのことを言うな!こんなくだらないことで玲様を迷惑かけるなんて」
「いや、お前の雇い主だろ」
「それはそうだが」
「まあ、ちょうどいい、クロエも一緒に教えてやるよ」
「はい!」
「感謝する」
「全アースの民へ、本艦はまもなく離陸しアースへ帰還する。五分間のカウントダウンが終わってから、ゲートを閉めるので、最後のさよならを大切にしてください」
凛のアナウンスが流れてくる、この宣言と共に、今回の戦いが正式に終わった。
「では私はこれで」
「軍団長に敬礼!」
「どうやら間に合いました。アースのみんなに感謝します」
「カミトに伝言させてください、私と一緒に戦った事、感謝する」
アルヴィス様、そしてピラコと他の聖女軍団、最後はぎりぎり間に合ったエド様とリズ女王。
「はい」
「では」
「これより、ゲートを閉めます。総員、各自の位置へ」
今度はえりなの声が流れてきた。
僕はザッドに最後の一目で見た、シンたちと一緒に待機の位置へ行った。
「ゲート、完全に閉めました。これより技工兵科全員は離陸の準備に入ります」
奈美の声で何かが動き出す気がする。
この前で一度だけ技工兵科の人たちと面会した。グレイドを除く、誰も分厚い筋肉を持つ大漢なのに、よく奈美は彼らを統御できるのね。
「大井兵科長は俺らが一生をかかっても追い付けない技術を持ってるのに、俺らに常時最新技術を教えてくれた。そして時雨さんや赤城さんほどではないが、兵科長の彼氏である日向清英も一人で俺らを倒せる男だ」
確かにシンはそうやって彼らに聞いた時、彼らはこうやって答えた。
さすが伝説のランクレッドの一人だね、日向さんは。
「私たちの支援をするために、清英は方面軍司令を就任した。今は評議会メンバーの一人で全面的に私たちの支援を担当している」
これはシンがあの日向清英は今どこ?って奈美に聞いてもらった答えた。
「結婚?そうしたいだが、凛の気持ちは心配しているから、しばらく放置した」
でもカミトとえりなは結婚したよね、そして今の剣成も。
「アースに戻ったから考えよう」
奈美が何かを考えているようだ。
「アースはきっといい世界だな」
スマートフォンの使い方の勉強会で、サファリアンは突然呟いた。
「なんていきなり?」
「ザッドでは、魔法を使えないとこんな便利の通信ができない。この『ロイン』と言うもの、実に便利だから、思わず嘆いた」
「それほどかい?」
「シンは慣れているから感じられないかもしれない。確かに信号がある場所であれば、どんなに遠くでも連絡できるよね」
「それはそうだが」
「これがあれば、どんなに遠くても隣りにいる事を感じられる。せめて私はそう思っているが」
「確かにそうだな」
「おい、俺の前でイチャイチャをやめてもらえるか?」
サファリアンの抗議で、いつのまにか接近したシンとクロエが離れた。
「ところで、サファリアン、お前は未婚なのかよ?」
「俺は聖殿育て子だから、恩を返すために、軍団長を目指して一生懸命己を鍛錬してきたから、その辺のことはあまり興味がなかった」
「でも軍団長であるお前に好意を示した子がいるはずだと思うけど」
「お前は俺がどう言うつもりであんな話をお前に言うと思うか?」
「そう言う事か」
「どんな話?」
クロエは少し頭を傾いてシンとサファリアンに聞いた。
おそらくそれはサファリアンと初対面の時、サファリアンが言ったあれだろ。
「クロエもよく知っているはずだ、上位にいる奴は常に清廉ではない事を、な」
「あ…」
クロエは何かを思い出したように顔が黒くなっていた。
「ちょっと無責任の話だが、そんな事も今の俺と関係なくなった」
「そう言えば、お前の後継者はどうした?」
「それは玲様に自ら選んだいい奴だから、しばらくの間は問題ないはずだ、それに今は武力より内政能力が必要だから、内部の整頓をあいつに託した」
「本当に無責任だな、お前は」
「史上最短時間軍団長のお前に言われたくねえ」
「まあまあ、ピラコさんはきっとうまくできるよ」
「確かに」
「全艦に宣告する、これより本艦は発進する、各員は自分の安全を確保するように」
「私はマーヴェレヴェス・アマルガン、今回の遠征、みんなさん、お疲れ様でした。私は最高評議会の代表としてみんなに感謝を差し上げます」
凛の声でアナウンスしたから、マーヴェレヴェス様の声が続いた。
「では、家に帰ろ」
周りからマーヴェレヴェス様の声に応えた声が聞こえた。
床からの振動は、今回ザッドの旅が終わった事を宣告した。
お待たせしました。




