二人の決意
「シン、俺は玲様と共にアースへ行く事を決めた」
こうやって少し興奮しながらシンと僕に語っているのは、音の聖女軍団長、サファリアン・グランド。
「どう言う事?」
シンと僕が共に疑問の顔を出した。
「レカーライヴズの織姫王女がアースへ行く事、みんなに知らせたから、聖女を追随したい者の申請が殺到している」
「ピラコ、俺たちの軍団は大丈夫か?」
シンは隣にいるピラコに聞いた。
「はい、ここは軍団長様自身はアース人であるから、申し込んで来たら、軍団長様に却下される事はみんなに知らせた」
「よくやった」
「ありがとうございます」
「どうやらお前が帰っても、月の聖女軍団は大丈夫そうだ。俺もちゃんと後継者を見つけないとな」
「しかし軍団長、クロエさんはどうします?」
「どう言うと?」
ピラコのその問題、僕も知りたい。
「軍団長はクロエさんを連れて帰りませんか?」
やっばり予想通り。
「それもそうだな、シン、クロエの事、お前はどうする?」
「なんて俺はそんな事しなければならねえのかよ!」
サファリアンも同じ事をシンに聞いたが、あまり良くない答えをもらった。
僕にしては、クロエさんがシンと一緒にアースに帰れば良いのだが、これはただの引越しではない、住む世界が変わることだ。
織姫様の決心はどれほど強い、僕は現場で見たから、十分わかる。
しかしサファリアンはどんな理由でアースに行く事を決めたの?
「俺は聖女の世界を見たい、そして玲様も俺を護衛に認めてくれた。シアンシャズ様の目は怖かったが、このムオンゲンゴを通って俺を認めた。そして聖女本人に仕えること、聖殿騎士団にとってこれ以上の誇りがない」
ムオンゲンゴ?
「それはお前の剣の名前か?」
ちょうど僕もそれを知りたい時、シンが聞いた。
「その通りだ。ちなみに、カニンガンさんもアースに行くと決めた。そっちの理由は簡単に言うと、麻奈実様の世話をする人が必要だ。だからカニンガンさんだけでなく、副官の一人も一緒のようだ」
「しかし凛の答えは?」
「織姫王女の事があるから、指揮官は反対しにくく状況になりそうだ」
確かにそうなるな。
「では、アースに到着したら江戸広一と言う男をお前に紹介するよ」
「誰だあいつ?」
「玲様の護衛だった人」
「なぜあいつは護衛を辞めたんだ?」
「性格が合わないからだ。それでもお前にいろいろを教えるはずだ」
「ならその時はよろしく」
「軍団長、あなたに処理しなければいけません書類を持って来ました」
クロエが来た、手の中には分厚い書類を持って来た。
でも何か変な気がしている?
「クロエ、ちょうどいいところだ、お前はアースに行かないか?」
サファリアンは単刀直入にクロエに聞いた。
「それは私が決められる事ではありません」
クロエは冷たい態度でサファリアンに答えた。
「それはそうだけど、行きたいかどうかを聞く、あなたの望みはシンに教えるべきじゃないか?」
今度の質問、クロエは直接サファリアンを無視した。
「軍団長、私は先に失礼します」
え?今気づいた、さっきからシンにも敬語になった事。
「ピラコ、ここは任せた!」
シンは離れたクロエを追いかけに行った。僕もシンを追いかけた。
「待って、クロエ!どうした?」
「軍団長には関係…ありますね」
クロエのその言葉から切なさを感じた。
「アースの事なのか?説明を要求する!」
そんな大きな声で質問しているシン、クロエは無視して離れた。
「どうやら俺より鈍い人がここにいた」
その声…剣成か!しかもシルベリアとちゃんと手が繋いでいる。考えるまでもない、今二人の関係をはっきり示された。
「今考えれば、剣成さんは鈍いより、ワザとの方だよね」
「それはどうかな?」
シルベリアと剣成の言葉により、僕は察した。
昔、デゥカラガン様が僕に言った事を思い出した。
シンの幸せは僕と出会った前に壊された事を。
ならば今シンの態度は説明できる。下意識でそちらの事を回避している。
その美咲という人の逝去、シンの心に傷付いた傷跡が大きすぎから、両思いしてもシンはイエスを言える勇気がない。
おそらく、さっきシンの言葉はクロエに聞かれてしまったからだ。改めてシンに敬語に使ってもその故。
「シルベリア」
「わかったわ、あまり遅れないでね」
どう言う事?そしてそのウインクはなに?
「ちょっといいかな」
剣成はシンに聞いたが、返事を待ってないそのまま連れて行った。おい!
「なにしやがる!」
「高原美咲の事、俺は知っている」
剣成はシンをバーみたい場所に連れて来たから注文までした後に言った。
えっと、お酒でも飲むのか?
そんな事より、剣成は美咲の事を知っている?
「一人で五千人を皆殺した奴、自然に我々も注目した」
「そんな昔の事…」
昔?今より半年もないよね。でもこれでシンがあの事を語りたくないことは明白だ。
「感情の事は介入すべきじゃない事だが、このままじゃクロエは可哀想すぎるから」
「そんな絶望感もわかってないくせに、よく言うのか?」
「大切な人の逝去、その絶望感、セラフィーブリンガースの誰もわかっている」
あ、その武の事だね。シンの叫びに対して、剣成は冷静に答えた。
「シン兄、ここにいたか?」
え?和歌奈お嬢様?
「お嬢様、なんてこんなところに…」
「シルベリアさんが私に教えた、シン兄が何か悩んでいるようだから」
おい、そのウインクはこういう事?剣成とシルベリアのコンビは良すぎない?それだけで、シルベリアはわざわざ和歌奈お嬢様に連絡したなんて。
「では俺はちょうど今用事があったから、和歌奈お嬢様、クロエの事はよろしく」
剣成はそのまま問題を和歌奈お嬢様に投げ出したから離れた。
でもシンの事ではない、クロエと言った。これは今の状況を和歌奈お嬢様に提示した。さすがランクレッド。
「わかったわ」
和歌奈お嬢様の反応は早いで助かった。
「クロエさんを連れて帰らないの?シン兄」
和歌奈お嬢様も単刀直入にシンに聞いた。
「お嬢様…」
でもサファリアンの時とは違う、和歌奈お嬢様の前でさすがにそんな悪口ができないよね。
「美咲の事は辛いけど、似たような事私もかなり時間をかかったからようやくもう一度立てる事ができたから、シン兄も時間が必要だよね」
既に座った和歌奈お嬢様は立った、離れそうの前に最後の言葉を言った。
「クロエさんは美咲さんと似ているよね」
えええ?
「お嬢様!」
このバーに来たから、シンが初めて動揺しているような反応が出た。
「なに?シン兄」
「お嬢様はどうやってこのような事を乗り越えました、教えていただいてもよろしいでしょうか?」
「ずっと悩んでも、逝去した人が帰らない。時限を超えたら、エドの力でも復活できない。バロンとたくさんの人が亡くなったが、私にはまたシン兄がいる」
さすがお嬢様。こんな話を言えるなんて。
「でも…」
「確かにシン兄にとっては美咲さんを裏切る事になるかもしれないが、クロエさんにとって、シン兄はただ一人の英雄なのよ。もちろん私にとってもね」
あの、お嬢様?
「しかし今は私ではない、美咲さんでもない、クロエさんはシン兄が一番側にいて欲しい人ではないか?」
「本当に良いのですか?」
僕は初めてシンのこんな切ない顔を見た。
「あの日と同じだね、シン兄の顔。あの日私はシン兄に復讐する事を許可した。だから私は今ここでシン兄にクロエさんをアースに連れて帰る事を許可する」
「はい!」
「あとは任せたね、クロエさん」
「はい、和歌奈聖女様」
和歌奈お嬢様が離れた、そして来るのはいつのまにかここに来たクロエ。
「時雨殿は私に教えてくれた、美咲さんの事」
「そうか」
どうやら剣成の用事はクロエを探す事だな、そして多分ある程度の事をクロエに説明したのおかげで、クロエの言い方が回復した。
「あの人の代わりになれるかどうかわからないけど、私は全力であなたを支える」
「代わりなんてなれるものか!」
おい、シン!なにを言ってるの?
「クロエはクロエだ、誰かの代わりでもない。クロエだからこそ、俺は悩んだ。この血を洗うことができない両手は、あなたの手を取る資格があるのか、ずっと悩んでいた。そして俺は正常の人間ではない、戦闘用に改造された強化人間だ。そんな俺はあなたに幸せをできるかどうか、わからないんだから」
「大丈夫、私は全てを受け入れる。どんなあなたでも、私は全力で支えるから。だって、私はあなたのパートナーだよ」
それからしばらくの沈黙、シンが恐れながらクロエに手を差し出した。
「一緒にアースに帰ろ」
「喜んで」
クロエはシンの手を優しく握っていた。
わい!良かった!
「これで一件落着だな」
いつのまにかこのバーの扉のところに沢山の人が集まっている。えっと、剣成とシルベリアさん、そしてお嬢様はわかるが、何てカミトたちもいるのかよ!
「これはおめでとう、織姫!頼んだぞ!」
カミト、お前はこの気分を台無ししたよ!
「はい!えりなお姉様、手伝ってくれる?」
「もちろんだ!これは盛大に祝わないと!」
「パッといこうぜ!」
剣成はさっき飲む事が出来なかった酒を一気に飲んだ。
おい!さすがに騒ぎすぎるから、シンとクロエの目が死んだぞ!
お待たせしました。
あと少しアースに帰ります。




