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銀色幻想曲

 絶対守護の剣。


 そうか、ザッドの民たちはそうやって俺を呼んでいるのか。


 あ、挨拶は遅れたな。俺は時雨剣成、今は守護聖剣(エクスカリバー)と一緒に熾炎天使の基地へ帰還してる途中だ。


 アースでは正体を明かすことができないから、ザッドで名を上げられた事、正直、今までの苦労は少し報われた気がする。


 『マスター、ご機嫌良さそうですね』


 おっと、俺のAI「エラ」はそう見えてきたのか?


 『マスターはこうやってニヤリする事は滅多にないんですから』


 それもそうだな。そう言えば、昔は瞳色のせいでよく虐められたから、自然に笑えるのもあいつと出会ったからだな……


 武……もしあの時、俺たちはもっと力があれば、あのクソヤロが乱入する前に、機龍型を倒せたんだろ。


 『マスター、そんな無駄話はお控えてください』


 おいおい、いつお前はそんなツッコミをできるようになったのかよ⁉︎それに、せっかくのセンチメンタルな時は邪魔するな。


 『奥さんといろんな話をしたからです』


 待って、お前とシルベリアはそんな事もやったのか⁉︎知らなかったぞ。


 『奥さんはマスターの好みや趣味などをもっと知りたいですから、私がその相談を乗っただけの事です。そう言えば、女子会もなかなか楽しかったの事ですね』


 確かに俺はお前を女子高生くらいの声と性格を設定していたけど、そこまで教えていなかったはず……


 『これでも私は二十歳になっていますのよ。それにマスターが不在した時、私はネットを巡るしかできませんでした』


 それはそうだな。


 カミトのAI、アリスは人形だが、全ガーディアンスの中でも、その姿をするAIはアリスだけだそうだ。凛や奈美、そして俺のAIはスマホのようなものだけであった。


 最初からそれはきっと裏は何かあると気づいたが、まさかアリスは創世の女神の一人、聖魔の女神ナイダルカイシューレ様の分霊であるとはな。


 『マスター、ひょっとしてカミトさんを羨ましくていますの?』


 まさか。俺ができる事は戦うだけ、あいつのように世界の運命を背負うなんて俺には無理だ。仕事は単純でいい、何処へ何物を倒す、こう言うシンプルでいい。国際情勢など複雑な事は頭がいいやつに考えるがよい事だ。


 『でも確かに以前は高校にいた時、マスターの成績は凛さんに次ぐ全学年二位でしたよね』


 それはたまたまだ。それにそれは高一第一学期の成績だけにすぎない、その後俺たちはすぐガーディアンスに入ったからノーカウントだ。


 『そうだったんですか。それでもマスターの頭は決して悪くないって事を証明したはずです』


 お前は何を言いたいのか?


 『マスターはただ思考を放棄しただけではないかと』


 ……エラの言葉に、俺は変な達成感を感じた。カミトのアリスを除いたら、おそらくこうやって喋られるAIはそうそういないだろ。


 『マスター、凛さんからの伝令です。ハワイ地区は変な軍事行動がありそうなので、帰還のついてに確認してほしいって言いました』


 わかった。エラ、守護聖剣(エクスカリバー)隠蔽模式(ステルスモード)だ。


 『隠蔽模式(ステルスモード)、起動しました』


 瞬間、俺の景色の色が反転した。


 他のガーディアンスのPAWSも隠蔽模式を搭載しているが、守護聖剣の隠蔽模式はそいつらを遥か超えているものだ。一般のPAWSが搭載している隠蔽模式はあくまで電磁波遮断や不可視の光学迷彩くらいだが、守護聖剣の隠蔽模式は根本的に光子の信号を変えるから、本当の意味で存在しなくなった。


 もちろんカミトの貫雷魔剣(グラム)も同じものを搭載しているが、カミトが狙撃や砲撃をしようとする時はどうしても光子を集中するから、隠蔽模式はなかなか効かなかった。


 だからこう言う偵察任務は俺がやる場合は圧倒的に多い。


 『しかしそれはガーディアンスの衛星を使えば良いのでは?なんてわざわざマスターに?』


 それはもし介入が必要だとしたら、そのまま実行しろの意味も含めてるだろ。つまり現場の判断は俺を任されたって事だな、やれやれ。


 『マスター、さっきはこう言う思考は好まないと言ってなかった?』


 それは凛は既に幾つかの方案を用意したはずだ。俺はどうやっても、彼女はきっと対応できるからな。


 『マスター、もう少し真面目にやってください。凛さんは十分忙しかったんですから、兵科長のマスターは彼女の辛労をそれ以上増やしないてください』


 おい、お前は俺の支援AIなのに、凛の肩を持つのか?


 『マスターこそ、真面目でいてください』


 はいはい、わかったわよ。


 ハワイ地区の上空に到着した。隠蔽模式のお陰で、誰も俺を気づかなかった。


 どれどれ……あれか。エラ、現場の情報を。


 『現場の収音を開始します』


 よく聞けば、英語と日本語が重ねているから、言う事をよく聞き取れない。しかしある事は確定できる、それはあと一歩で武力衝突になりそうだ。


 『どうします?もし1941年の真珠湾事件のようになったらまずいでしょう?』


 俺も動きたいが、変な予感はずっと頭から振れられない。


 『あの?マスター?衝突が起こしてしまったんですよ?』


 あとはきっと何か来る、いつでも戦えるように準備しろ。


 『あの?その根拠はあります?』


 俺の勘だ。


 『予知の領域まで至ったマスターの勘なら、信じざるを得ませんよね』


 そこまで理解してくれたらさっさと準備しろ。


 『はい〜』


 エラがシステムを調整している間に、俺は既に戦場になっているハワイを俯瞰していた。


 『あの〜調整は完了しましたけど、本当に彼らを阻止しなくてよいのですか?地域衝突もできれば阻止するべきのでは?』


 エラが行った調整はあまり時間をかかってなかったそうで、俺を質問された。


 もちろんこの衝突は阻止すべきだが、今はそれを構える余裕がない。


 『しかしマスターの勘でも、当たらなかった事もありますよね』


 おそらく待ち切れないから、エラは明らかに不満の感情が起こしている。


 エラの成長を感動しつつ、今から俺の勘を証明してあげようか。あと少しだ、三、二、一!


 俺のカウントダウンと共に、空はとあるものに出口を切り開かれた。


 これはお久しぶりだな、まさか母艦型異種とはな。


 エラ、守護聖剣の隠蔽模式(ステルスモード)を解除、戦闘模式(バトルモード)へ移行する。光子動力は戦闘レベルへ!


 『戦闘模式起動しました。母艦型異種に照準されました』


 では行くぞおおおおお!


 守護聖剣の足は地面に重く踏まえて、目標に剣を振り下ろした。


===================



 相変わらず理解できない戦い方ですね。


 みんなさん、こんにちは、私は時雨剣成(マスター)の支援AI、エラと申します。


 マスターがガーディアンスに入ったからずっと一緒に戦ってきましたから、客観的に見ても、私はそれなりに成長したと言えるでしょう。


 しかしマスターの戦い方をどうやって観測しても、規律を見つかりませんでした。それはその超限反応能力と言う力なのですか?私が警報する前に、マスターは既に反応し動き出したのはさすがに私の理解を超えています。


 そしてこんなマスターと対等に戦えるカミトさんもはっきり人間離れと言えるんでしょう。


 おっと、余計な事を考えてしまったね、ちゃんとマスターを支援しないと。


 次、右……って、マスターはまた私の報告より先に敵を殲滅しました。


 『エラ、隠してる目標があるのか?』


 はい〜今スキャンしますよ。


 私自体はそんな能力が持てませんが、今私は守護聖剣(エクスカリバー)と繋いでいますから、この機体の探査儀を使えば、この星の半分範囲も私のスキャンから逃げられませんよ。


 あらあら、敵の増援ですね。そして六時方向に三機の異種が隠れていますよ、おそらく機会を覗いて襲撃するつもりです。


 『増援の数と距離は?』


 はい〜距離5000、機龍型が出てきましたよ〜


 え?私の性格ですか?変わっていませんよ。マスターが言った通り、女子高生ですもの。


 もちろん異種はこちらだけではなく、日美両軍にも襲っています。まさに混沌の化身です。


 『なんと言う化け物だ!クソ!』

 『死にたくないのに……!』

 『ママーー!』


 おっと、嫌な音まで聞き取れてしまいました。彼らを否定するつもりはありませんが、同じ死と対面した場合、武さんの方がよっぽど立派でした。


 他の部隊が乱入したせいで、カミトさんの射撃が外れてしまったんですから、武さんは自分の犠牲をもう一度のチャンスを作った。


 (あとはよろしく!カミト、今回はハズレじゃねえぞ!)


 (武!やめて!)


 あの時凛さんの悲鳴、私は今でもはっきり覚えています。


 結局から言うと、そのチャンスは確実に成功へ導いた。恋人や戦友たちにとっては悲しいですが、せめてあの時の武さんのお陰で、世界を守れました。


 マスターは確かに凄いですが、母艦型異種は異種の空母のようなものですから、異種を多数搭載しているのも当然です。そしてその数、厄介ですね。


 マスター、やっぱり凛さんに増援をお願いしましょうか?


 『いらん!俺がなんとかする!』


 しかし……!


 『カミトは斬裂剣(ティルヴィング)でそれを一発撃墜できたら、今の俺と守護聖剣(こいつ)ができないわけがねぇだろ!』


 そうでしたよね。


 斬裂剣(ティルヴィング)はカミトさん昔乗った機体、今の短剣式狙撃装備型(ショートソードスナイパー)の原型機と言える機体です。あの時、守護聖剣(エクスカリバー)貫雷魔剣(グラム)の資料はまだ完全解読していませんでしたから、僅かの資料によって作ったアース史上初の光子兵装、それは斬裂剣(ティルヴィング)の光子狙撃砲です。光子動力技術は未熟でしたから、一発の射撃にはPAWS両機分のエネルギーが必要だと言う記録が残してます。聞けば少し欠点が多めの試作品でしたが、カミトさんの空間認識能力が庇ったのお陰で、さらに発展する機会を得ました。


 おっと、余計な事を考えないで、マスターを支援しなきゃ。


 私がそんな事を考える時、マスターの撃墜数は既に三十を超えました。貫雷魔剣とは違う、守護聖剣は接近戦タイプの機体ですから、つまりあれ全部マスターが斬った事です。


 今さらですけど、守護聖剣の射撃兵装は極めて少ない、頭にある近接防御火器と散弾砲一つだけ。それと引き換え、光子斬刀と光子サーベルは四つずつ搭載しているから、さすがに多すぎと思います。


 でも一般人ならうまく使えない双剣の剣技、マスターにとっては朝飯前ぐらい簡単に使えた。さすがです。


 うん?この反応は……⁉︎マスター!母艦型から高濃度の光子反応を検出しました!


 『あいつめ、この地区をまとめて殲滅するつもりか!』


 マスターはそう言いながら、さっき斬り落とした翼獣型異種が落下している残骸を踏台にして、強力なジャンプで母艦型異種の高度まで短時間に来た。


 守護聖剣は浮遊することができますが、加速度はお世辞でも早くとは言えません。だからマスターはそんな無茶な方法で一気に母艦型異種を接近としたんだろ。


 まさかさっきの砲撃は守護聖剣に避けられたからだろ?母艦型異種は少し焦って逃げたいと見えるような行動を取った。


 『逃さんぞ!』


 マスターは守護聖剣のとある兵装を取り出して母艦型異種を指している。


 『エラ、システムの構築は任せた』


 やっぱりあれを使いますね、はい、お任せを!


 『静かな波が消え、呪われる赤い瞳。無垢なる純粋、その剣に心を。我が祈りを応えよう、守りの守護神よ!』



 擬似魔力回路開放、素子を集束。


 展開。


 光子エネルギーの干渉が確認、破壊エネルギーに成形。


 放射。



 グウワワワワワワワワ



 おそらくマスターがやろうとしたことを本能的に恐怖を感じたんだろ。母艦型異種は更に逃げようとしたが、マスターがそれを許すわけがありません、最後の詠唱を完成した。


 『聖約守護の剣、意志を貫く湖の光、エクスカリバー!!!!!』


 マスターの吶喊と共に、守護聖剣(エクスカリバー)は強烈無比な斬撃を放って、母艦型異種だけではなく、周りに随伴している異種もまとめて消滅した。


 異種の反応が消滅しました、お疲れ様でした。


 『これはまだまだだな……』


 え?何の事ですか?もし擬似聖剣の事だったら、既に充分な威力なのでは?


 『もし相手が機龍型だったら、あの詠唱を唸る時は既に反撃されたんだろ。今回は運がいいうまく行けたが、実戦運用にはまだ早いのようだ』


 しかし記録によって、カミトさんたちがザッドでやった事も同じでしたけど?


 『機体の能力差だ。カミトは極光神剣(フラガラハ)、そしてシンの奴は邪神(ニンザス)の力が身に纏った灼世邪剣(レーヴァテイン)を使うから、集中できる素子の量、どっちも今の俺を遥か超えている』


 しかし今守護聖剣は奥さんの指導によって、マスターのために武装を特化してもらいましたから、もっと強くなりたいと言うなら、奥さんと相談するのはよいのでは?


 『ああ、そうしよう。あいつらの後ろ姿をそのまま見てたまるものか!』


 来た来た!マスターの負けず嫌いだ!最強だから滅多に悔しいと言う気持ちを感じてなかったけど、マスターの性格は根からの負けず嫌いだそうだよ。


 まあ、私が初めて知ったのもこの前、瑞徳(レイド)さんはカミトさんに教官役をお願いしたから、マスターは瑞徳(レイド)さんの決定を認めたけど、心のとこかで悔しかったんだろ。


 狙撃はお互いの才能が違うから、マスターがカミトさんに負けたのも当然。それを引き換え、カミトさんの接近戦もマスターを勝てるはずがないから、そこは引き分けとした。


 だから誰もマスターを教官役を頼まなかった事に、マスターの負けず嫌いの心を刺激した。


 『とりあえず凛に連絡して、後処理部隊を派遣してもらおう』


 はい〜送信しました!凛さんもすぐ手配してくれそうですよ。


 『さすがだな、では帰還とするか』


 了解です〜



 『おい、あの銀色の奴、凄くない?』

 『I’m still alive!thank you!』

 『つえええええ!』

 『まさに銀色の旋風だ!』



 離れていく戦場に、マスターが聞こえないけど、私はしっかり聞こえた。うん、やっぱりマスターが讃えられて、私も嬉しい!あの両軍もそのまま争いをやめたそうで、めでたしめでたし。
















 とある世界にて



 「亜紗、どうしたの?」


 「これは王妃殿下、失礼しました」


 「そんなに堅苦しくなくても良いのに、亜紗だって騎士の首席ですから」


 「そうはいけません。王妃殿下の言う通り、私はあくまで主君を仕える騎士に過ぎない故、礼儀はちゃんと守るべきと申します」


 「でも今は勤務中ではありませんから、少し失礼しても構いませんよ?もしかして私の友人って嫌?」


 「……わかりました。では僭越します。王妃殿下さっきの質問に関して、私は誰かに私の剣の真名をぱくりした気がしている……」


 「でもあの剣は陛下から亜紗専用に渡したのよね、ただの気のせいかしら?」


 「私もそう思いたい」



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