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ロティマスの溜息

さすがにこれは酷すぎない?


親父に連れて行ったロサナさんが荷物をまとめ出来た後、親父はそのまま光神信使(ルーズブリュナーク)の全員をクーフーリンまで送った。


そう、ロックオンとクニミツも一緒にそのまま帰還した。


つまり俺は一人だけの帰途になった。


いや、別にこれからの旅を恐れてるわけじゃないけど。突然すぎて、俺の計画は全て乱れられた。


本来はロサナの気持ちでロックオンを勧誘する材料にし、サンタルシアの屋敷で彼らを歓待するつもりだったのだが、親父の行動はそれを全て打ち破られた。


実に惜しい。あの二人を我が国の軍隊教官になってもらえれば、それだけで我が国の軍隊戦闘力は一気に上昇できるはずだ。


はんー


今は溜息しかできない。


まあ、今は素直にロサナさんがいい人と一緒にいられる事を喜ぼう。


今回の任務は完全終了だから、俺は思わず乗ってる馬の速度を上げた。


ティリンズ……


最初は政略結婚っぽいから気を食わない感じだったが、今は俺の命をかけても守りたい相手になった。


うん、今更だが、今の俺は充分ライドの気持ちを理解できるようになった。そうか、あの時のお前もこう言う気分だったのか?ライド。


「坊様、馬を乗る時は専念してください。考えすぎると、馬から落ちてしまいますよ」


え⁉︎この声は……!


上⁉︎


俺は頭の上にある木の枝を見ると、そこにはマドナが着た偽装服を思い出させられるほどの服を着てる人がそこに立っている。


「おばさま?」


その人は俺が知ってる人。彼女はファランセナ、ファランセナ=サンタルシアだ。俺のお母様の妹で、サンタルシア三姉妹の末妹、つまり俺のおばさまだ。


「お久しぶりです、ロティマス公子閣下」


おばさまはそのまま枝の上で下にいる俺に敬礼してくれた。


「えっと、おばさまはお母様の妹だから、俺に敬語を使うのはやめてほしい」


「そうはいけません。私の職責は裏でお姉様たちと坊様を守る事です。それに私は先鋒伯爵に扱われるとは言え、正式な爵位がありませんので、公爵以下候爵以上の公子である坊様には敬意を持たずにはいけません」


「本当に頑固だな、おばさまは」


でもおばさまの考え俺も理解できないわけがない。


知ってる通り、我がサンタルシア家は先祖テレシア様から、ずっと強力な魔法使いの才能を伝承している、そう、お母様と俺のように。大公爵位をお母様に譲ったファランシスナおばさまですら上位以下の魔法を無詠唱で発動できる。


なのにファランセナおばさまが持つ魔力の量は極めて少ない、身体強化類の魔法だけで精一杯であった。


だがそんなファランセナおばさまでも、先代大公爵であったお祖父様は放棄せずしっかり育てた。その成果、今おばさまはこのカノン帝国の裏社会や貴族たちには知らず人がいない、「サンタルシアの死神」って。


「そう言えば、今回の案件も本来、私が対処すべきだったのですが、まさか大公爵様と坊様の手を煩わせてしまって、本当に申し訳ありません」


ほんの少しだが、おばさまは切ない表情をした。


「いや、それはお母様も俺にこの件から何かを習わせられたいだろ。そんな事より、何故ファランセナおばさまはこんなところに?」


偶然か?


「坊様は次期大公爵でありますから、見張りがいるのは当然な事かと」


「やっぱり俺はずっと監視されているのか……」


「違いますよ、坊様。これはお国のための見張りをしているだけです」


いや、それこそ監視という事だぞ!


「他の事がなかったら、俺は出発するぞ」


「そう言えば、坊様は本気であの二人を勧誘したいのですか?」


「あの二人?」


「ロックオン=スタウダマイヤとクニミツ=リュウホウジの事です」


やっぱり気付かれたか。まあ、多分お母様たちも既に俺がしたい事を見破ったんだろ。


「あの二人と共闘したから、彼らの強さに憧れるようになった。それは俺が持てない強さだ。身体だけではなく、心の強さもだ。もし家臣にしてもらえれば、我がサンタルシア家だけではない、我が国も一層精進できるだろ」


「実は国皇陛下もそのようなお考えをしました」


え?これは初耳だ!


「でも結論から言うと、彼らには光神信使(ルーズブリュナーク)に大切な人がいるから、私たちの勧誘を応じてくれるとは考えにくいです」


だから俺はロサナさんの気持ちを利用したかったのだが……確かにあの斎香と言う人がいるから、ロックオンはこっちに来る可能性が皆無と言えるだろ。


「確かにそうなります。たとえロックオン=スタウダマイヤは坊様に従っても、あの斎香はきっと彼を連れ戻すだろ」


だろな。


「そう言えば、ティリンズ様は坊様の帰還を聞きましたから、今は坊様の為にいろんな準備をしているそうです、料理とか」


「それは一番最初に言ってくれよ!おばさま!」


俺は思わず馬を駆け出した、最高の速さで。




「坊様はまたまた若いですね」


姿はもう見えないロティマスに、ファランセナは微笑んでいた。



================



「ティリンズ様、厨房までおいらっしゃるなんて畏れ多い事」


「いいんだよ、私は旦那様のために手料理を作りたいだけです」


「でも……」


「大丈夫だよ、お義母様はこんな事であなたたちを責める事はしないよ」


みんなさん、こんにちは、ティリンズです。旧姓はエイルだったけど、今はカノン帝国のサンタルシア家に嫁いで、そしてお義母様のお情けのお陰で、私はサンタルシアを名乗れるようになった。


最初の時、旦那様は政略結婚の事を気を食わないようだったけど、今は愛を感じられる。


「ティリンズ!」


突然、誰かが厨房の扉を強く開けた。そしてあの人は私の名前を呼んでいる。


この声は……!


「ロティマス様!」


本当にお久しぶりだから、私の手は料理を作っているから汚されているのに、私は思わずロティマス様の腕に飛び込んだ。


「ティリンズ!」


ロティマス様も私を強く抱きしめてくれた。嬉しいけど、どうしたの?


「実は……」


ロティマス様と一緒に私が作った料理を楽しんでいる時、ロティマス様は今回の旅についてを私に語ってくれた。なるほど、本当にお強いですね、あの光神信使と言うアース人の部隊。さすが救世主アカギ様の部隊ですね。


「彼らと各自の相手の仲を見たから、俺も急いであなたの元へ戻りたくなった。途中、ファランセナおばさまからティリンズは俺のために手料理とかを作っていると聞いたから、俺は馬に加速魔法と風の防御魔法を掛けて、最高の速度で帰って来た」


うん、やっぱり私の選択は間違っていない、ロティマス様こそ私が人生を託すに値する人。


別にレカーライヴズのライナー前王子を否定するではないよ。ただライナー前王子より、ロティマスの方が私の好みでもあるから。


「旦那様、あんー」


私は匙に料理を乗せて、ロティマス様の口に運んであげた。


このお久しぶりの夫婦の水入らずの時間、私はとても幸せだと実感している。


「いつのまにこんなに料理の腕が上手になった?美味いぞ、ティリンズ」


やっぱり、夫からの讃美は誰よりも私が一番嬉しい。


末長くよろしくお願いしますね、私の旦那様。


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