帰り道 そのニ
「前回より賑やかなっているね」
みんなさん、こんにちは、ヴィクです。
ロサナさんとアリスは買い物に行こうとするから、僕はロティマス様から頼まれて、二人の護衛として一緒に出掛けをした。
まあ、今はアリスに抱いているのでそう見えないけど。
「そうですね。そう言えば、ロサナお姉さんはヴィクちゃんと会話できますか?」
「私は既に試したけど、見た事ない生物の上で、アースからやって来た者なんて……私には無理そうで」
そう言えば、この村までの途中、ロサナさんは僕の意思を解読しようとしたそうだが、上手くできなかった。
「でもでもロティマス様は会話できていますよね?それを習えますか?」
「それはロティマス様はあのサンタルシア家の者だから。私に教えてもらっても使える気がしないわ」
なるほど、さすが最強魔法使いの血を持つだよね、ロティマス様。
あ、そうなると、観察だけで交流できる剣成やカミトたちはそれ以上の化け物だよね。
「それは残念ですね」
「大丈夫よ!ロックオンもヴィクちゃんと会話できると見たから、彼らのやり方ならできるかもしれない」
「うん!」
僕と会話できないから落ち込んだアリスに、ロサナさんは慰めた。ロックオンと国光が魔法を使わず僕と会話できると聞いたアリスは笑ったけど、それはどれほど難しい技術を知る僕は彼女に言いたいが、この二人は僕の言葉を理解できないから伝えられなかった。
そう言えば、悪妖の襲撃から回復できたばっかりと聞いたとは言え、もうかなり活力がある村と見えるようになっている。なんてロティマス様はわざわざ僕に護衛を頼まれたの?
その答えはすぐ知った。
「ここで仇を……!」
三人のチンピラっぽい奴が僕たちを包囲した。えっと、仇?どう言う事?
「あの馬鹿強い奴がいない好機!」
「それに十分綺麗な女じゃねえか」
「子供だけど、顔は悪くねえな」
理由はともかく、さっきの発言はアウトトトトトトだ!
「ヴィ、ヴィクちゃん⁉︎」
僕はアリスの腕から跳び降りて、三人のチンピラに向かって咆哮の構えをした。
「こんなちっちゃい奴は何をできると言うのか?あはははは!」
僕を舐めてもいい、後で後悔させるから。
それはいいよね、デゥカラガン様。
「ヴィクちゃん⁉︎」
ロサナさんも僕を心配しているようだ。確かにロサナさんはそれなりの魔法使いが、お二人の護衛はロティマス様が僕に頼まれた任務だ。
「あははは!」
「アリスちゃん、私の後ろに!」
敵はかかって来た。ロサナさんは急いでアリスを後ろを庇おうとした。
好機だ!僕は深呼吸した。
ワーーーーーーーーーーン!!
「うわわわわわわ!」
「なんて力だ!」
「ば、化け物だ!」
デゥカラガン様の加護のお陰で、僕の咆哮は重力波を発生して、チンピラを撃ち倒れた。
うん、撃退できた、さすが僕。
あ、これはいけない。決して力に酔うにはいけないんだ。
もしあの時のシンのように、僕は力に酔っぱらったら、きっとデゥカラガン様はこの加護を没収するだろ。
今デゥカラガン様はここにいないけど、僕がそのような気がする。
だからこの力は決して悪用するにはいけない、僕はそう決めた。
「ヴィクちゃん凄い……!」
「これはデゥカラガン様の加護……」
二人は僕を撫で撫で褒めているけど、さすがに照れになるよ。えへへ。
「何かあった?」
しばらく後、ロックオンと国光は僕たちのところへやって来た。え?なんて二人はここに?
「ヴィクの吠えを聞いたから急いでやって来た」
なるほど、それもそうだろ。少し聞こえたのかってツッコミしたいけど、僕は自分がやった事を一番理解しているからツッコミはしない。
「ヴィクちゃんの咆哮はチンピラっぽい三人を撃退してくれたの」
ロサナさんは二人に状況を説明した。
「なるほど、これはぼうずが言ったデゥカラガンの加護か?偉いぞ」
ロックオンも僕を撫でてくれた。えへへ。
「二人も無事のようでよかった」
ロックオンと国光は現状を把握できたから、そのまま僕たちと一緒に買い物に回っていた。そのおかげで、それ以降は何の事も起きてない、無事で買い物できた。
時々ロックオンは自分の顔を隠そうとしたのはちょっと面白かった。
「お帰りなさい〜」
借りた屋敷に帰った時、玄関で僕たちを迎えてくれたのはマドナさんであった。
「ぼうずは?」
今更だけど、ロックオンがロティマス様に対しての呼び方は本当に大丈夫か?
「はい、さっき遊撃子爵?とにかくとある軍隊の小隊長っぽい人がやって来たから、内で相談してる〜」
遊撃子爵って事は、遊撃軍団の人か?
「ではこれから私は守備任務に戻ります」
「ああ、ご苦労」
「では」
ロックオンと国光は買った物を下ろした時、皮の鎧を着てる青年が出て来て、ロティマス様に敬礼した後、この屋敷から離れた。あ、多分さっきマドナさんが言った遊撃子爵だよね。
「ロティマス様、何かなされたんですか?」
「ロサナさん、まずは夕食の準備をお願いしたい、話は食事の時話す」
「はい、わかりました」
ロティマス様は貴族の口調でロサナさんに指令を言ったから、ロサナさんは少し頭を低くして敬礼して厨房へ行った。
「アリスちゃん、マドナさん、ロサナさんに手伝ってください」
「はい!」
「はい〜」
「って、話は?」
女子の三人がここに居なくなったから、ロックオンはとても真剣な顔でロティマスに質問した。えっと、さっきは食事の時で話すと言ったじゃない?
「それはこっちの台詞だぞ、ロックオン」
え?ロティマス様⁉︎
ロティマス様の表情は少し変わった。
「お母様はお前二人に何かを依頼したについて、そろそろ俺に教えられるだろ?」
ロティマスの質問を聞いた瞬間、ロックオンと国光は素早く目で何かを交流した。
「ぼうずは何かを聞いたか?」
「お母様からの手紙に書いた指令とファランシスナおばさんから送ってくれた情報が合っている、どう考えても不自然だろ?そんな偶然はあるか!」
ロティマス様はちょっときれたそうで、僕は思わず一歩退いた。
えっと、ファランシスナと言ったら、遊撃候爵にして辺境総管だよね。情報を集めるのも仕事だったか?
「ファランディナ様からはなんと?」
そしてロティマス様の疑問はロックオンに無視された。えっと、一体……?
「……後で一緒に話す、同じ話を繰り返すのは面倒だ」
ロティマス様は諦めて、ロサナさんたちを見に行った。
「さすがファランディナ様だな」
「帝国大公爵は伊達ではないよな」
あの、ロックオン、国光、何の話なの⁉︎
「だがちょっと気になるのはファランシスナ様からの情報だ」
「確かに」
国光はただロックオンの話に従ったけど、その目も何かを考えてると見える。
「明日は予定通りこの村で休もうとする、それからは少し道を変わる」
「あの、何処へ向かうについて、伺ってもよろしいでしょうか?」
「さっきファランシスナ遊撃候爵の使いからの情報で、ここから南の方の領地は少し不穏な空気がありそうで、それの調査は俺に頼まれた。ついてにお母様からも同じ指令を下した」
「でも、ここの南って……」
え?なんてロサナさんの顔が変わった?
「そうだ、ブリキット辺境子爵の領地だ」
その地の名を言った瞬間、ロサナさんの顔がさらに悪くなった。
あ、ブリキットは確かに……!
「ブリキットって、ロサナの姓だよね!でもでも魔導子爵は軍制貴族だから領地が持てないと聞いたけど?」
マドナさんは空気を読めず、そのまま言った。
「ロックオン、クニミツ、ここからはもはや我が国の私事に過ぎない、お前たちはルード=ギアトを探すに手伝いだけ、ここで別れてもいいぞ」
ロティマス様がロックオンと国光にそう言った瞬間、二人は少しにやりをした。
「ロディヴァンのおじさんが言ったな、お前っちに戻ったらこそ任務完了ってな」
どうやらロックオンと国光は既にロティマス様のその言葉を予想したようで、無難に答えできた。
「あ、あの……」
ロサナさんは何か怯えそうな顔をしている。
「大丈夫だ、何かあったのはわからねえが、俺たちがついているから心配すんなよ」
ロックオンはロサナさんの頭を撫で撫でた。えっと、なんだか桜の心配をわかったような気がする。
「はい……」
「どっちにしろ、これはお母様からの指令である、反論は認めない」
つまりこれは帝国大公爵から下した命令って事だよね!
「どう言う事?」
トラコはさっぱりわかってない顔で僕を質問してくれた。
「えっと、新しい命令が来たから、道を変更するって」
「そうか。あたしたちも行くのか?」
「ああ、ロックオンと国光はそれも任務の範囲だって言ったよ」
「なるほど」
トラコは理解したから頷いた。
「ほら、ヴィク、トラコ、お前たちはこれを食えよ」
少しの後、ロサナさんが用意した料理は僕とトラコには不向きだったから、ロックオンと国光は改めて僕とトラコのために食を作った。
本当になんでもできるよね、ランクレッドって奴は。
「ドッグフードくらい誰でも簡単にできるだろ。まあ、今回はトラコのために少し肉を多めにしたが」
いやいや、こんな塩分の加減が絶妙に控えている物、普通の者には無理だろ。
「国光、奴らはもう寝たのか?」
「ああ、さっきは浴びたから、今はそろそろだと思う」
えっと、なんてお前二人は何か悪い事を企んでいるっぽい悪い顔をしているのかよ⁉︎
「いいか、ヴィク、俺と国光はファランディナ様から受けた依頼は、ロサナを実家から守ることだ」
え⁉︎なんていきなり僕に説明するの⁉︎
「お前は俺たちを誤解しそうな顔をしているからな」
でもでも、それだけならロティマス様たちにも説明すればよかったのに!なんてわざわざ黙っているの?
「それは俺と先輩は状況によって、ロサナさんの実家の人を殺さないといけない状況になるのも可能だ。さすがにそれはロティマスと彼女たちの前に言えないだろ」
あ、はい。そこまで言ったら、なんとなくわかった。
「そしてそのために、ヴィクの力が要るかもしれんからだ。桜さんはそこまで見破ったどうかはわからないが、今ヴィクがここにいるのは好都合だ」
ええええええええ⁉︎
「どうか俺たちを協力してくれ」
えええええええ⁉︎ロックオンは僕に頭を下げた⁉︎
「ヴィク、俺からもお願いしたい」
ええええええ⁉︎国光まで⁉︎
でもでも、僕は何かできるのかわからないよ!役に立てないかも!
「その時になったら、俺らの後ろを頼むぞ」
ほ、本当にいいの⁉︎それより、ロサナさんの実家は一体何かあったと言うの⁉︎
「少し複雑すぎるので、説明するより実際見る方が早い」
「以上はここだけの話だ、ぼうずたちに言うなよ」
ただの犬である僕にこんな話を言うなんて、普通なら変に見えるが、確実交流できるランクレッドこそ僕に言ってくれただろ。
冗談だと思いたいけど、ロックオンと国光の目は今まで見た事のない真剣だから、僕は頷いた事しかできなかった。




