その村の村長
まずい……!本当にまずい……!
私はカノン帝国の辺境準男爵、今の役職は村の村長である。
そんな私が慌ている原因は、まさか悪妖が大勢に私の村を攻めに来てしまっているとは……!
援軍を求めるために既に使者を出したけど、間に合えるかどうかまだわからない。冒険者酒場にも緊急依頼を出したが、悪妖の規模はさすがに大きすぎる、この村の冒険者たちには対処できるかどうかもわからない。
そしてはっきり言うと、私は一番下の貴族だ。
だから今は絶望している。
それはカノン帝国の法律によって、辺境貴族は自分の軍隊を持つ事は許されてないから。軍隊が必要な時、駐屯する軍制貴族に求めるしかない。
まあ、もし本当に事件が起こしたら、功績になれるから、そいつらは迷わず兵を出すに違いないけど、私の村から一番近いの駐屯地は二日程の遠さだから、間に合えるかどうか本当に心配している。
「村長殿!悪妖の殲滅は、確認できました!」
使用人からの報告、別の意味で私は驚いた。なに⁉︎軍隊が間に合ったのか⁉︎さすがだ!
「それを成せた冒険者は、村長殿と会見したいと申し込んで来ました」
なに⁉︎まさか悪妖を殲滅できたのは冒険者だと言うのか⁉︎
「その者から、もし村長殿は会見を許可しない時、これを村長殿に見せるって言われました」
使用人が私に見せた物は、一つの金属製の名札だ。
「早くその方を通してくれ!」
その名札を見た瞬間、私は慌てて使用人を命令した。
「村長殿、無事だそうで何よりです」
少しの後、一人の青年が私に挨拶してくれた。
「ロティマス公子閣下、ご無沙汰しております」
一般的には、貴族の子供は爵位がないから、あくまで爵位を持つ親の面子で礼をしたが、この方だけは違う。
王の子は王子と呼ぶとするなら、公爵の子を公子と呼ぶのも当然だろ。
しかし我がカノン帝国の貴族の人数は少々多すぎから、大公爵サンタルシア家の子だけ特別に公子を呼んでいる、もちろん女性の時は公女だ。
つまりそれはただの敬称ではない、国皇陛下が承認した正式な爵位で、公爵以下候爵以上くらいの位置で。
さらに簡単に言うと、私の直属上司である辺境男爵より偉い人だ!
「悪妖を殲滅したのは公子閣下でしたよね、さすがですな」
サンタルシア家は代々強大な魔法の力を伝承している事はこの国の常識だ。この実力とあの名札、目の前のこの青年を疑うにはいけない、この青年は間違いなく本物だ!
「悪妖が大量現れた事に、何かの心当たりがある?」
最初の時は敬語だったが、お互い身分を示したから、ロティマス公子閣下は上の言い方で公事の会話を始めた。
不満はない。だって身分だけではなく、この人は単独で悪妖の軍勢を殲滅できた化け物だぞ!
「残念ですが、今はなにも……」
本当だ。今私でもさっぱりから、頭を振って公子閣下に答えた。
「そうか」
どうやら最初から期待してないからだろ、公子閣下の表情は変わっていない。
コン、コン
誰かが来たようで、私は公子閣下に答えるの許可を求める。
ここは私の家なのにって考えるかもしれんが、私たちは貴族だから。
「誰か?」
公子閣下はどうぞを示してくれたから、私は扉の外に声を掛けた。
「はい、先程、公子閣下の仲間だと自称している冒険者たちがこの屋敷にやってきました」
「相手の様子は?」
「はい、男性二人と女性一人、そして女の子が一人です」
子供がいるのはさすがに怪しすぎるから、私は再び公子閣下に確認した。
「ああ、大丈夫だ」
念のため、公子閣下も何かの魔法で確認したようだ、本当に慎重な人だな。
「どうやら無事だったそうだ、さすがだな」
「おい!きさま!この方は誰だとご存知ないのか⁉︎」
使用人が連れて来た冒険者たちの一人はさすがに無礼すぎるから、私は思わず咆哮してしまった。公子閣下の立場を維持しようとした事を示すのも貴族だから。
「サンタルシア家のぼうずだろ?知ってるよ」
知ってもそんな態度を取ったと言うのか⁉︎
「大丈夫だ、確かに隊長は私だけど、この二人は私と平等関係なので」
公子閣下がそう言われたら……
待って、公爵以下候爵以上の公子閣下とは平等関係だと⁉︎この冒険者は一体……⁉︎
「私はロサナ=ブリキットと申します。今度はファランディナ=サンタルシア大公爵様の命令で、ロティマス公子閣下のお供をしております。この二人は公子閣下と私の協力者で、こちらのはロックオン=スタウダマイヤ、そちらのはクニミツ=リュウホウジです」
女性は私に二人を紹介してくれた……待ってよ⁉︎ブリキットと言ったら、確かに魔導軍団所属の軍制子爵だよね!
「まさか子爵殿ですか!これは失礼致しました」
慌てて謝る私に、ロサナ様は大丈夫だと答えてくれた。ありがとう。
「さて、この子の事だが」
その子が着てるボロボロの服から見れば、どうやら公子閣下の子ではないだろ。
「はい」
「貴方に預けたい」
えっと。
「失礼ですが、今この村にはそう言う余裕がないと申します」
「どう言う事?」
「はい、実は、ここ最近、外部から流れ入った民の数は大幅増えています。現状では、こんな仕事ができるはずがない子供を養う余裕が全くございません」
「待って、まさかその人たちの元住み場所は悪妖が来た方向とは同じだったのか⁉︎」
もう一人の男性冒険者が発言した。
「それは……」
「さすがクニミツ、私もちょうど同じ事を考えてる。って、どうなってるのか?」
「は、はい!今すぐ調査に入りますので、少々お待ちくださいませ!」
公子閣下の目からには反論余地がないので、私は急いで調査の手配をした。
「あ、あの、どう言う事ですか?」
ロサナ様は公子閣下に質問した。よくやった!私もそれを知りたいのだ!
「クニミツ」
公子閣下は説明の事をさっき発言した冒険者に任せた。これほどの信頼なのか⁉︎
「了解。さっき俺と先輩が使った矢を回収した時、ついてにあの悪妖たちの死体を調べた。その飾りの紋章と俺たちの資料庫に照合したら、ここからかなり遠い場所のものだ」
でーたべーす?なにそれ?
「情報の倉庫だと考えていい」
おそらく私とブリキット子爵殿は全く理解してない顔になっているから、ロックオンが説明してくれた。
それにしても、情報の倉庫?今時の冒険者酒場がそんなものまで持つのか?
「お疲れ様だと思いますので、調査を待つ間にささやかな食事を用意します、ぜひ……」
情報が無さすぎて話が進めそうにないから、私は夕食を提議した。それにせっかく公子閣下がいらっしゃっているのに、一食も提供しない、貴族としては無礼かつ失格だ。
「気持ちだけでありがたいが、ここはお言葉に甘えて邪魔するよ」
うん、提供しなかったらのは私の失礼に違いない。でも招待したのに、受けてなかったらのは公子閣下の失礼だ。たとえ私たちが出した料理はどんなに口に入れなくても。
まあ、それでもわざと嫌がらせをする奴はいないだろ。だって、私のような底辺貴族としては、これは滅多にないファランディナ大公爵閣下と接触できる機会だ!
我が帝国、いや、この世界でただ一人で大公爵の爵位を所有している方だ!




