その冒険者、最高級戦闘兵である(二)
「そう言えば、そのルードって、元の国籍はどこか?」
私たちは魔導軍団が持つ書庫で情報を探す時、クニミツは突然問題を言い出した。
「何か思いついたか?」
「いや、怨霊だと言うなら、俺の故郷では、霊は自分が住んだところに帰るって話がある」
「国光、ロティヴァン候爵は知らないけど、はっきり死んだエド様はレカーライヴズ人ではなかったぞ」
「いや、確かにエド様はクラナイド人だけど、それはネクライ先王がエド様に国を頼んだから、例外としたい」
その発想はともかく、まさかこの世界の情報はそこまで正確的に把握しているとは……アカギ様を部下に選ばれるだけの実力があるわけか。
「いや、これはいい着眼点かもしれん」
ロックオンと国光はまた何かを争っている時、ロティマス様はクニミツの提議に頷いた。
「ロティマス様、それはと言うと?」
ロティマス様の考えはわからないから、私は素直に質問した。
「エド様の目覚めを導いたとは言え、この世の中では、ルードへの認識は邪神ニンザスに従うの怨霊騎士に止まっている」
「つまりエド様やロティヴァンのおじさんとは違う事か?」
おい!ロックオン!何よ!他国の王家導師は様付けなのに、我がカノン帝国の選帝侯爵におじさんと呼ぶのは、失礼にもほどがあるでしょう!!
「それって俺の考えが当たり可能性があるって事だな」
私が怒る先に、クニミツは少し笑った。
この人、なんてこんな子供のように笑ってるの?可愛すぎるだろ!
「ではロティマス様、どうなさっていますか?」
変な考えをやめて、私はさっきの話を続いた。
「ロサナさん、リクペティアという王国、聞いたことある?」
リクペティアって……まさか⁉︎
「古の王国ですが、邪神ニンザスが降臨した時、一番先に死神軍団に滅ぼされたと、軍団記録ではそう書いています」
記録はこれだけ書いているけど、噂によれば、その王国の王が魔族に魅了されて、ニンザスの復活に協力したという。
待って、この時でその王国の名を出す事は……⁉︎
「しかしライドは至黒の塔にいた時、そういう者がいなかったと言った。坊主、お前もその冒険に参加したはずだ」
確かにその至黒の塔はリクペティア境内だが、その前に、こいつをーー!
「きさま!ロティマス様にそんな無礼な呼び方はなんですか!!」
「ほう?無詠唱でこれほどの火炎球を使えるとは、百人長だけの実力がありそうだな」
こいつ、どこまで私を見下げるのよ!今きさまにその傲慢を後悔させて差し上げましょう!
「坊主、いいのか?」
え?ロティマス様、あなた様が頷くのはどういう事ですか⁉︎
「少し痛いだが、そこは我慢しとけよ!」
きさま!!
そして今私は天井を見ている。
え?何か起こした⁉︎なんて私は床に倒れている?え?
「お見事。どうやら俺でも、お前に敵わないようだ」
「いや、坊主の無詠唱はこいつより早いだろ」
あ、あの、私を無視して勝手に話を進めないてください、ロティマス様!
「すまん、ロックオン先輩は失礼な事をした」
私に手を差して、引き上げてくれたのはクニミツであった。
同じあのアカギ様の部下なのに、どうしてこんなに差があるの?
「クニミツさん、さっきのは一体……?」
「無詠唱とは言え、素子を集めるには時間がかかるから、魔法が形になる前に、術者を倒せれば魔法を阻止できるだけの事だ」
ま、待ってよ⁉︎確かに理論はそうだけど、実行にはかなり難しいはずだ!
「お前、俺とクニミツは何者だと思うのか?」
私が慌ててクニミツに聞きたい声はロックオンに聞かれたようだ。
しかし誰って……アカギ様の部下に小隊長で……
「ロサナさん、小隊長はこの二人の職務、その職務の前に、この二人は最高級戦闘兵である」
最高級戦闘兵って……なに?
「ロサナさん、そのガーディアンス最高級戦闘兵と言うのは、弱者の盾になり、未来を導く人の事だ」
ロティマス様、いちいち説明してくれてありがとうございます。えっと……
「全ての行動は充分の準備からってのは、俺らが習いだ最初の教示だ。つまり今回の任務について、対魔法戦も既に想定して、シミュレーションでしっかり訓練された」
え?そのシミュレーションってのはなに⁉︎
「まあ、少しでも俺らの実力を示して見せたいと言っても、女の子に暴力を振る事はさすがに心苦しい、悪かった」
クニミツは小さい声でそれは模擬訓練の意味で私に教えてくれた後、ロックオンは私の前に来て、手を私に差してくれた。
「べ、別にあなたを許したわけではありませんわ!でもあなたの実力、確かに見せていただきました」
理由はともあれ、私は負けたのは事実だから、ここは潔く認めてあげよう。
でもそれだけよ!ロティマス様に無礼な呼び方をした事はまだ許さないのよ!
僅かの瞬間、私は握手した手を引いた。
「ではさっきの話を続くぞ。ルード=ギアトが怨霊騎士になった前には、リクペティア王国の王都セイントリフィルトの聖堂で、司祭をやっていたと言う記録、文献にはあった」
え⁉︎本当ですか⁉︎
「フン〜さっきの話を含めば、この世に認められてないルードは、自分をよく知る場所で隠居すると言うのか?」
これは初めてロックオンからまともな推理を聞いた。
「元司祭だから、たとえ怨霊騎士になってたくさんの人を殺したとしても、本来の彼をよく知る故郷の人たちなら、彼を受け入れる可能性が他の場所より高い」
「では私たち次の目的地はリクペティア旧王都ですか?」
「ああ、だから俺はお母様にリクペティア旧王都へ向かうことを報告するので、一旦サンタルシアの屋敷に帰る」
「では、私に同行させてください!」
「いや、さすがに目的地までは距離があるので、補給品は必要だ。いくらロックオンとクニミツは最高級戦闘兵として、既に場所を把握できたとしても、細いところで罠を踏まえてしまうかもしれんから、ロサナさんに頼みたい」
「りょ、了解しました」
「では、ロックオン、ロサナに手伝ってくれ」
「俺かよ⁉︎」
「赤城殿なら、決して女の子一人でみんなの荷物を準備させようとしないはずだと思うけど」
「それはそうだが……」
「そしてさっきの事のお詫びも含めて、護衛を頼みたい」
「……わかったわよ」
さっきまで無礼な態度なだけど、ロックオンは素直にロティマス様の命令に従った。
……って事は、私はロックオンと一緒に街に出かけるって事⁉︎ロティマス様!そこはなんとか!
「お見事だ、ロティマス。これって、ロックオン先輩とロサナさんも仲直せるだろ。次期大公爵の手腕は確かに拝見してもらった」
「いや、今回の任務はあくまで機密だから、ロサナさんも一応我が帝国の貴族なのに、機密任務のせいで公的に護衛を用意できない故、ロックオンを頼んだまでの事だ」
「それを利用し、あの二人に絆を植えようとした事こそ、俺がお前を讃えた理由だぞ」
「さすがアースのランクレッド、全てはお見通しのようだ」
「旦那様、お帰りなさい!あら、こちらの方は?」
サンタルシアの屋敷に到着した同時に、一人の少女は二人を迎えに来た。
「初めまして、ティリンス様、自分は光神信使所属第四小隊長、国光=龍宝寺と申します。今回はファランディナ様の要求に派遣しに来た者です」
ティリンスは元姫ってことを知っているから、国光は丁寧な態度を取った。
「私の旦那様はよろしくお願いしますわ、龍宝寺殿」
「はい!」
「ティリンス、俺はお母様に報告したい事があってから、お母様はどこにいらっしゃってる?」
「現在、お義母様は皇宮で国皇陛下からの相談を乗っているようです」
「ありがとう、わかった」
「まあ、先輩達が帰るにも時間かかりそうだな」
「ではその前に、うちでゆっくり休みたまえ」
「それなら案内役一人を頼む、こんな古城っぽい場所に来た事は滅多にないから、少し回したい」
「わかった。そこのお前、総管に通達してくれ」
国光の要求に応じて、ロティマスは使用人を命令した。
「はい!」
「つまり少し暇になったよね、旦那様」
「そうみたい」
「なら、お久しぶりに夫婦の時間をご一緒にできるかな?」
「もちろんだ」
自分が見てるのに、無視して勝手にいちゃいちゃするロティマスとティリンスを見た国光は、クーフーリンに帰ったら、絶対に彩子といちゃいちゃすることを決めた。




