彼の覚悟
「まさかあんなバカでかいイノシシかいるなんて……」
そのイノシシは少なくともアースのイノシシより三倍以上の大きさを持つ。だから僕は木の上で隠して、その化け物のようなイノシシが離れたまで、
正直、きつい。
まさか藤原隊長が僕をこんな無茶な訓練に放りこんだなんて……
軍士訓練学校からの知り合いだから、隊長はそんな無謀な人ではない事は確定できる。つまりこの訓練はきっと何か隠している意図がある。
だがそれも、このでかいイノシシから逃げられた後の事だ。
こんな化け物がいるなら、狙撃ライフルを持って来らればいいのに……それもシェルシンさんに禁止された。
アースなら、こんな化け物がいないはずだと思う、つまり今僕がやってるのは、ランクレッドより困難な訓練。
クソ!
「ポルルル……」
しまった!足はうっかり木の枝に音を出した。イノシシは僕の方向に向かれる事は何より僕が気付かれた証拠である。
しかし、この3メートル高の木、さすがにあの馬鹿でかいイノシシでも無理だろ。
ドン!
そう思った瞬間、イノシシは木に体当たりした。
突然すぎて、対抗の準備をしなかった。強烈な震動で、僕は少し空を浮いた。
おいおいおい!まじかよ⁉︎
「ポルルル……」
慌てて木の枝をしっかり抱きしめた僕が見たのは、再び突進を予備しているイノシシであった。
……
ああ!だめだ!何も考えられない!「死」を意識した瞬間、僕は何も出来なかった。
ドン!
大きな震動によって、僕は木の枝から落とした。
まさか僕の死ぬ場所は異世界なんて……こんな若さで⁉︎まだ二十歳未満で、彼女歴イコール年齢の僕が、この場所で死ぬのか?
彼女、欲しかったな。
「まったく、情け無いわよ!こんな奴があの救世主赤城様と同じ狙撃兵の肩書きを持つなんて、本当に呆れたわ!」
僕をキャッチした人の声は、何処かで聞いたような気がする……そして柔らかいものを感じた……
「こいつがお前が気に入った奴か?」
こちらのは全く聞いたことのない声、とても低く、気勢がある声だ。
「ありがとうね、ノウ兄」
そして僕が見たのは一刀両断されたイノシシの死体であった。
そしてようやく僕を救った人をはっきり見えた。
「チャ、チャルナウさん⁉︎」
ま、まさかさっきの事は全部見られてしまったと言うのか⁉︎
「ど、どうしてチャルナウさんがこんなところに⁉︎」
「杏さんに監視役を頼まれたからよ」
ええええ⁉︎
「お前とは初めてだな、俺はチャルノウ、こいつの兄だ」
筋肉がありすぎ獣人の漢が僕に自己紹介した。その外見とその声が合わせて、かつ一刀両断されたイノシシの死体、僕は思わず後ろに一歩退けた。
「俺はそんなに怖いか?」
チャルノウはちょっと傷付かれた顔でチャルナウに質問した。
「まあまあ、知らない人から見ると、ノウ兄が凶悪な人に見えるからね」
「まったく……」
漢がやれやれって肩を竦めた後、チャルナウさんの後ろに控えた。
「アース人として、この森で三日耐えたのは讃えたいけど、目標は一週間だよね⁉︎つまりあなたは半分も耐えられなかった事だよね⁉︎」
「そ、そうだけど……」
まさかそんな化け物がいるなんて……
「まあ、そいつは『巨牙猪』と言う魔物で、普通のイノシシではないから、お前が対応できないのも無理ではないだろ」
チャルノウの説明で、僕は少し安心した。まあ、本当の化け物なら仕方ないんだね。
「そこが情け無い事よ!」
それを聞いたチャルナウはさらに怒るようになった。
「赤城様はその異種と言う悪の根源にも恐れずに挑んだだろ!同じ狙撃兵のあなたもせめての根性を見せなさいよ!」
そう言ったチャルナウは怒ってまま振り向かずに行った。
「どうやら我が妹はかなりお前の事を気に入ったようだな」
え?何処か?情け無いと怒鳴されたのよ?
「俺は初めてそんな妹を見たんだぞ」
え⁉︎
「しかしそれでもお前は程遠いだな、まあ、入り口くらいかな」
せめて希望があるって事ですよね!
「さっきのお前もこの様子すれば良いのによ、はっはっ」
外見が怖かったけど、チャルナウの兄のチャルナウさんはいい人のようで安心した。
「先に言うけど、我が兄妹は獣人族崩天氏族族長の子である」
え?知ってますよ、それはどうした?
「つまり彼女は姫と同格って事だ。まあ、実際、親父はレカーライヴズのレッド前王夫の義理の兄だから、チャルナウはどこにいても姫に扱うぞ」
え?しかしそうだとしたら、チャルノウさんも王子格なのでは?
「その通りだ。とりあえず、もしお前は本当にチャルナウと付き合いたいと言うなら、これからたくさんの試煉を合格しないと不可能と言えるだろ。うちのお袋はうるさいからな」
あれ?
「狙撃兵はそうやって分かりやすいはだめだろ?赤城殿は遠すぎでも、他にも優秀な狙撃兵がいるはずだろ。ロックオンや国光とか」
え?どうしてチャルノウさんはうちの事にそんなに詳しいの?
「一応、今は同盟関係だから、見学の機会もあったからな」
あ、そうでしたか。
「何をやってるのよ!ノウ兄!早く!」
遠い場所から、チャルナウはチャルノウを呼んでいる。
「おっと、長居したな」
「あ、あの!助言、ありがとうございます!」
離れそうにするチャルノウさんに、僕は頭を下げて、感謝の言葉を送れた。
「せいぜい頑張れよ」
チャルノウはさっきのチャルナウと同じ、振り向かずに行った。
これこそ「漢」かな?彼女にぴったり相手はこうなんだろか?
それを後にして、あと一週!
ぱっぱっ!
僕は自分の頬を叩いて、必ずこの訓練を乗り越えると決心した。
少し遠い場所で、チャルナウとチャルノウの会話。
「ノウ兄が彼に何か言ったの?」
「なに、未来の弟人選に少し助言しただけだ」
「ノウ兄があたしより気が早すぎない?」
「確かに杏さんからの指令は、救助は一回だけ許されるんだっけ?」
「ああ、そうよ。なんと言ってもこれは訓練だからね」
「了解した」
「しかしまさかノウ兄もついて来たね」
「あの杏と言う者、ああ見えてるけど、ただ者ではない」
「やっぱりノウ兄も気づいたよね。彼女はあたしと同じくらい歳なのに、特殊陸戦部隊を指揮できる英才だよ。それだけでははい、あのシン様は素直に彼女の指揮に従っているよ!」
「月の聖女軍団長のシンか⁉︎」
「そうよ、元から上司だそうだよ」
「だとすれば、彼女があのラエリエトと言うやつから何かを見えたと言うのか?実に興味深い」
「さあね」
チャルナウは肩をすくめて、知らないと示した。
「まあ、いずれにせよ、近いうちにその結果を拝見できそうだ」
「うんうん」
チャルノウの話、チャルナウは頷いて同意した。
そして彼女の顔は、誰よりもその結果を期待しているように微笑んでいる。




