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ポメラニアンとご主人の奇妙な冒険  作者: クレナイ
レカーライヴズ王位選抜
124/215

来るべき未来

深夜、王弓騎士団団長室。エドはカミトと相談しにやって来た。


「ところでエド、お前はもう次の王になる者を決めたか?」


ラーナーとリリズが領主の身分で己の力を見せてもらうのもかなり時間が経った。


「いや、この先の事はわかるとはいえ、あの二人が頑張っているから、選びにくく状況になって来たぞ」


「いつもはっきり決断できたのお前がそこまで言うなら、相当な難題だな」


「だからこうやってお前に助言を求めに来たぞ」


「確かにそうだったな」


「そしてちょうど今はお前の意見を聞きたいところだ」


「とりあえずその来るべき未来のために、我らがやるべき事から考えようぜ」


「しかしそうすると、答えは一つしか無くなるぞ」


「ならばそれはお前が求めていた答えだ」


「し、しかし!」


「エドよ、全ての要素を含めて導き出す答えが一つだけならば、どんなにやりたくなくてもそれはやるべき正解である」


「お前が言う事は理解している、しているが……」


「もしお前は同情なんかでもしていると言うなら、国のためにさっさと捨てる方がいい」


いつのまにかカミトがそう冷血になった、カミトの態度にエドでも驚いた。


「忘れあるまい?俺は狙撃兵だぞ。目標以外の事は考えるな、目標だけを専念しろ」


あ、確かにそうだった。このザッドの狙撃者と言う冒険者職業はあくまで射撃に上手な人に与えるの称号に過ぎない。しかしアースの狙撃兵というものは、例え目標がどんなものでも冷静に撃ち殺せる専門家である。そしてその中に、カミトは最強の狙撃兵と言われている。つまり……


「なら俺はどうすれば良い?」


おそらくこれはエドが死の騎士でありながら王家導師を務めた以来初めてこんな言葉を口にした。


「お前と俺は一緒に極光神剣(フラガラッハ)を通って、あの光景(みらい)を見たはずだ。となれば、誰を選ぶには既に答えが有ったはずだ」


「ラーナー、及び彼を支持する者たちは受け入れるのか?」


「リリズのために、あいつらをまとめて片付けないとな。とりあえず、まずはどんな罪でもいい、それでラーナーを投獄する」


「いくらなんてもそれは無茶すぎるだろ⁉︎」


カミトが言い出すやり方に、エドは驚いた。


「これはアースのとある皇帝も使った方法だ。無理矢理ラーナーを投獄する事で、彼を支持する者はきっと大暴れになるだろ、最悪のところは反乱でも上がるかもしれないな」


「おいおいおい!」


「しかしその時ラーナーは監獄にいるから、いくら外がどんなに暴れていても彼とは関係ない。そしてそうなると、お前は一気にラーナーの支持者、即ちリリズの反対者を片付けられるじゃない?」


「確かにそうだけど……ラーナーは納得できるか?公平な競争ならともかく、こんな理由で落ちるなんて……」


「それは監獄の中で俺はあいつと間話でもすればいい事だ」


「え?」


「俺が提議した方法だから、これくらい責任は取るよ」


「わかった」


カミトのその真剣な表情に耐えられず、エドは決めた。


「伝令!直ちにラーナー王子を逮捕せよ!」


「導、導師様、それ本気ですか?」


近くにいる衛兵がこんな反応になるのも当然だろ。内政の領域でよく功績を立てたラーナーは民たちだけではない、衛兵の中でも相当な人気がある。自然にエドのこの命令を疑うになる。


「ラーナー王子は大逆無道の罪を犯した!王家導師の私も信じたくないが証拠がある!」


そしてエドは空に魔法でいろんな映像を映して、どれもラーナーが明らかに違法な事をしている映像だ。


「は、はい!今すぐラーナー王子を逮捕するように宣告します!」


その映像を見た衛兵たちはすぐ走り出した。


「死の騎士はこんな事までできるの?」


多分その映像に興味があったから、カミトはこっそりエドに確認した。


「ニンザスに仕えた時俺が握った権能は死と恐怖だった。あの衛兵はラーナーの無実を信じているけど、俺は王家導師だから、それで彼にほんの少しでも『もしかして』の気持ちが生み出せた」


「そしてお前は彼にその『もしかして』の映像を見せた?」


「そういう事」


「まあ、これでフェーズワンが終了、フェーズツウに入る事だな」


「おい待って、なんてお前は古代語を喋られる?」


「古代語?」


「そのフェーズなんかのやつだ!それはシェルフィーのようなヴァルキュリアが聖武具を発動する時、或いは神龍剣の力を解放する時だけが使う言語のはずだ!」


「そうか、彼女の剣刄波動(ソードウェイブ)とお前の重力圧壊(グラビティバスター)がこういう事か」


カミトが極自然にその言葉を口にしたから、エドはさらに質問した。


「まさかと思うけど、それはお前たちアースが使う言語か?」


「これはアースで英語と呼んでいる言語だ。そしてそれはアースで一番多い人が喋れる言語だ」


「しかしお前たちが喋る場合はなかなか見なかったぞ」


「今お前と話しているこの言語、アースでは日本語という、これは俺の部隊がメインに使っている言語だからな」


「これはこっちの通用語だけど……」


「つまりこれについてはアルヴィス様たちを聞くしかなさそうだな、しかし今はそういう場合ではないから、後回しにしてくれよ」


「ああ、もちろんそうする」


エドが去った後、リジルはやって来た。


「本当にあなたの世界でやった方法なの?あまりにも残酷過ぎると思わない?」


「もちろん本当の事さ、だが少しこっちに合わせて調整をしただけだ。安心しろ、ラーナーも俺の家族だ、そして家族を加害する趣味俺にはないから信じてくれ」


「もちろん信頼しているけど……しかしその来るべき未来とは一体何の事なの?」


正直、ラーナーの事よりリジルはこっちの方に興味がありそうだ。


「それは俺とエドだけではない、このザッドをはじめとして、全ての世界への試煉……今はこれだけが言える」


「私を守ってくれる?」


「もちろん、えりな、織姫、あなた、そして桜たち、俺は全力で守ってあげるから」


「私の思いもあなたを守るから……」


未知に対しての恐怖、それは今リジルがカミトをぎゅっと抱きしめた理由である。

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