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速く、もっと速く

今やっとわかった。


どうして俺は上手く導師様の双剣技を使えなかった。


今の導師様が使ってる両手大剣の剣術、それは導師様が死の騎士になったからのもの。


双剣技は、その前のクラナイド皇家騎士時代で使った剣技。即ち、導師様の双剣技は守るための剣。


接近した敵に一剣。己の身を捨てても、メローを救いたいこの気持ちは決して嘘じゃない。


「そんな事を考える余裕があんのかよ!メローはお前なんかに救われるなんか望んでねえ!ここで死ぬが良い!」


敵の声。そうだな、これはただの自己満足かもしれん、メローは望んでないかもしれん。


「ライド兄!手が遅くなっているよ!」


チャルナウの声。


「ワンーーッ!」


ヴィクの咆哮。どうやらあの二人は謎のコンビを結成したようだ。


「そんなに考えるじゃねえ!」


え?チャルノウ?


「ライド、お前は一国の王子だろ!」


ロティマスまで……


王子なのに、一人も守れなかった。


ライド……


!!


間違いなく、メローは俺を呼んでいる!


早く、もっと早く!


「なに!速さがあがってるのか⁉︎」


いつか君が本当に守りたい相手が現れたら、君がこの剣術を使えるようになるんだろ。


遥か昔導師様が俺に言われた言葉を思い出した。


早く、もっと早く!


「なに!こいつの剣は一体……!」


続きを聞く余裕がない、目の前の敵を斬って進むだけ。


メローーーーー!


やっと見つけた。至黒の塔の頂点の中心にある卵形の椅子に、メローがそこに固定されている。


「まさかここまで侵入されたとは、無能な奴ばっかりだな。しかしこの魔族公爵、トーガアアアアアアアアア」


お前の自己紹介はどうでもいい!今はそこから退け!


俺は手が持つ二つの剣に華麗な剣の舞を展開した。かつて導師様から習いだ唯一の必殺技ーー


暴風のように,烈火のように、雷霆のように、そして、光芒のようにーーーー


その技の名はーー


「我が剣を止めるものなし!『果てしなく聖なる十字』!」


==========


みんなさん、こんにちは、チャルナウで〜す!


え?いつもヴィクがこうやって挨拶したじゃない?だからあたしもしないとと思ってね。


正直あたしはあまり獣化をしたくないの。だってあたしの可愛さが皆無になってしまうからね。しかしライド兄を助けるために、ヴィクちゃんを守るために、これしかないから仕方ないわよね。


素手で他人を貫くことはやっぱり嫌だな。でも獣化の獣人にとって、最大の武器は自分の肉体だから、それを活用しないとね。一応獣化した時用のガントレットを着用しているけど、この手答えやっぱり嫌。


「ガワ!俺がこんな子供に……⁉︎」


え?それでも相手を確実貫けたって?だってライド兄が頑張っているのに、あたしも頑張らないとね。


「何という速さだ!速すぎる!クソ!クワ!」


え?まさかあたしはライド兄を好きって?なにを言うのよ!イケメンじゃないけど、顔が悪くないし、それにあのレカーライヴズの王子だし、今も無双の剣術を見せられたし、少女のあたしが好きにならないわけがないだろ!


けどあたしは最初から、それは無理だと知っていた。だってライド兄はレカーライヴズの第一王子だから、将来はリズ女王に継ぐ王になる。王妃なんてあたしには無理無理、たとえそのメローがいなくても無理無理。あたしでも知っているのよ!王妃は遊びだけでいいじゃない事!レッドおじさんが処理している仕事を観れば大体わかっている。だからライド兄を憧れているけど、メローさんと争うことはしない。


「ちょっと大きな猫のくせに……!ガアアアアアアア」


だからあたしは猫じゃないって!


え?ならどうしてこんなに努力してるのって?ライド兄が困っているじゃない⁉︎伴侶じゃなくても、あたしとライド兄は家族だよ!


家族!それだけであたしが全力を出せるのよ!


え?ヴィクちゃんまであたしらしくないって……?


さすがにそれはちょっとショックだよ。あ、今ライド兄の構え、必殺技だよね!ならばあたしも!


「喰らえばいいのよ!『虎竜双撃』!」


======


みんなさん、こんにちは、ヴィクです。


今僕はわかった。ライドとチャルナウの実力は決してチャルノウやロティマスに劣れてない事。


それより、今僕がチャルナウの頭の上に伏せているから、お二人の戦いは誰よりも近く見えた。


ライドの必殺技っぽい剣技はあの魔族公爵を倒せたけど、あの命名センスとは一体……?


『認めたくないんだが、それは俺自身の若さ故の過ちだ』


え?エドの声?


『この俺もデゥカラガン様から神龍剣を貰ったから、君と遠距離の会話ができる事も怪しくないはずだろ』


って事は、シンもできるじゃない?


『もちろんできるけど、君との会話は成立できないから、君の安全を監視しているだけだ』


え?つまり僕たちはずっと監視されていたのか?


『シンは君一人をそんな未熟な若者たちばっかり任せられると思うか?』


あ、しないよね。しかしこれでも未熟なのか……


『ライドに剣術を教えた時、一番大切な事は気づかなかったと思ったけど、今のライドにはそんなものを見つけられたようだから、その剣術の実力を発揮できた』


えっと、それはいつのエド様の剣術ですか?


『それはクラナイド皇家騎士に選ばれたばっかりの俺が勢いで創造した剣術であった。確か……何十年前の事だったな』


そんなに昔なの⁉︎


『だから若さ故の過ちだ』


了解した。


ゴオオオオオッォl


ええ⁉︎今何があった⁉︎


「ライド兄!」


「俺もわかってねえ!俺はメローを解放したばっかりだ!」


ゴオオオオオッォl


その吼え声は一体……?


うわわわ!ここも崩落している!


「ヴィクちゃん、しっかりあたしを掴まえてね!」


落石を容易い回避し、次々の着陸点を見抜く、さすがチャルナウ。


「エヘヘ、ヴィクちゃんに褒められた」


えっと、また危機中なのだけど……


そしてメローを抱いているライドは避けるだけで全力のようだ。このままじゃまずいぞ。


『ヴィク、聞こえるか、外へ全力跳べ!』


ええ⁉︎シン⁉︎


『エドと何かを話したのは知った事ないけど、今その至黒の塔が崩れている!だからお前たち全員は全力外へ跳べ!』


えっと、シンがそう言った。


「ヴィクちゃんのご主人なら、あたしは信じているよ!ライド兄!」


「わかっている!しかしロティマスとチャルノウは!」


「俺らはここにいるよ!」


「ではヴィクちゃんの言う通り、あたしが三に数えたら!」


「三!」


おいおい!一とニはどこへ行ったのかよ!


元々崩壊寸前か、あるいは僕たちが跳んだのせいか、僕たちが跳んだ後、その至黒の塔は完全に崩壊した。


「おい、これからはどうする?このままでは地面に墜落死だぞ」


『……』


おい!シン!


何も答えてないのまま、僕たちは地面に墜落していく。


うわわわわわわわ!


『そんな事を起こせるわけがねえだろ!シン、しっかりキャッチしろよ!』


え?


誰かの声を思考する暇もない、僕たちは飛んできたネットで一緒に捕まえた。


そしてそのまま見覚えのあるPAWSにキャッチされた。


『ヴィク、大丈夫か』


あ、これはシンの専用機だ!つまりさっき僕たちをキャッチできたのはシンなの?


『その通りだ』


これはカミトの声だ。つまりこのネットを発射したのはカミトだったか?


『俺じゃねえと誰ができると思うか?』


あ、確かにこれは最強空間認識能力を持つカミトだけできる事だよね。でもここはザッド、魔法でもっと楽できるじゃない?


『あそこにはニンザスの魔力に汚れている事はご存知だと思うけど』


あ、エド様が言う事、確かにロティマスが言ったよね。


『とりあえず、これからは俺の仕事だ』


え?


シンの機体が向いた方向の先には、大きな狼の頭を持つ巨人がいる。


何それ⁉︎


『復活不完全のニンザスだ。おそらくライドがメローを強引にその復活の座から抜いたせいだと思う』


え⁉︎今エド様は何と……?


『それはどうてもいい!お前たちはすぐカミトに従って安全な場所へ!』


え⁉︎ではシンは?


『言っただろ、これからは俺の仕事だってさ』


最後僕が見たのは、ゴリアテを挑むダビデのような悪夢な景色であった。

次回、決戦!

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