始まりと出会い
寒い…
雨が強く降っている。
寒い…
そして僕が何のカバーもない、そのまま雨に降られている。
野良犬を羨ましいな、こんなことを何度でも耐えられて生き続けてきたなんて、僕には辛すぎる。
思わず、僕はこんなところで死ぬのかと思うになった。
街の中では沢山の人類が歩いているが、誰も僕の方向に見てくれていない。見が合ったでもすぐ目線を逸らした。
ちょっと寂しいな。
え?雨が止まったのか?雨に振られて感覚が消えた。そして僕が目を開いたら、一人の男が僕の前にいる、そして自分の傘で僕を雨からカバーしてくれている。
「生きているか?チピ?」
ちょっと腹立つな呼び方だけど、せめて彼は僕を見つけてくれた。
「どうやら生きているようだな…じゃ、行こうか」
彼は僕を抱き上げた。そして歩いた。
少し暖めようになった。
「すみません!まだ営業していますか?」
「大丈夫ですよ。あら、この子、どうしたの?」
「この子が雨の中で一人だけ。とりあえず必要な処置をさせてくれ」
「はい、分かりました」
どうやらここは動物病院のようだ。
つまり僕は助けられたってことか?
そこの動物医師はしっかり僕の状態を確認してくれた。どうやら僕は病気がない、ただ濡れすぎて体温が低すぎだけ。そして腹が減っている。
あの男はこの間ずっとケイタイで何か話しているようだ。
「お待たせしました!」
「あのすみません、もうちょっとお願いできますか?」
「はい、何でしょうか?」
「この子、一週間ここに預けたい。俺は今から大事な用事があって行かなければならないので、一週間の費用を先払いするから、お願いできますか?」
「はい、では一週間食付きの費用はこちらになります」
「わかった、もうちょっと払いから一番いいものをあげてくれ」
「はい、分かりました」
「では頼んだ」
「ポメちゃん!この一週間よろしく!」
僕のことですか。つまり僕はまた捨てられたか。せめて彼は僕この一週間の食を確保してくれたようだ。
「はい、ポメちゃんどうぞ」
嘘だろ、こんないいものを食べたことないよ、本当に食べていいのか?
「あれはどう言うことだ?あのポメラニアンにあげたもの、うちにはないはずだ」
これは一人の男性が質問している。
そうだ、僕は一匹のポメラニアン。
「はい!院長、その子の客はこんなに先払いしたから」
「嘘だろ!いくらでもこれ多すぎだろう」
「だから私は責任を持ってその子の世話をしますよ」
「そういう事なら、わかった」
どうやらあの男は高額の費用を先払いしたようだ。
ちょっと感動した、出会ったばかりの僕の為に。もう二度会う事がないもしれないが、ありがとう。
そして今日は一週間になった。正直僕はあまり信じていない、あの男は僕の為に帰ることをな。
もうすぐ閉店の時間になる、あの男は依然来てない。
まあ、最初から期待してないからな。
この一週間ずっと僕の世話をする女店員は閉店の仕事ができた、あとはドアを閉める事だけ。
女の子はドアを閉めるようとしたが、その瞬間、ドアが強く開けられた、女店員はその力に耐えられない、後ろに弾き飛ばされた。
「痛い!」
何という力だ!一体何者⁉︎
「すみません、遅れてしまって」
まさかあの男だ!でもそのドアを開く力は一体……?
「責任、取りますよね」
「本当にすみません、あなたの医事費は俺が責任を取りますから」
「本当に痛いっては!」
店員さんがあの男を責めた後、院長が出て来た。
「お客様、私はこちの院長で藤崎と言います」
「これは本当に悪かった。その子に失望させたくないと思ったら、力加減が失敗してしまった」
「どうやらお客様はこの子の事を重視していますね」
「それはもちろんだ。あとよろしければ、犬用のバックバッグ一つをお願いしたい」
「分かりました、ではこの黒のはどうですか?この子のサイズには十分余裕があります、そしてお客様にも」
「じゃそれで」
「お客様の先払いには残額がありますので、このバッグを含めて精算したらお釣りしますから少々お待ちください」
「わかった」
あの院長は紙で何か書いている、その男はようやく僕を見てくれて、そして僕の頭を撫でている。
「お待たせしました、お客様。精算完了です、こちらはお釣りになります」
「感謝する、あとはこいつをバッグに入れて助けてくれ」
「はい!分かりました!」
院長とその女の子と一緒に僕をあのバッグに入れた、そしてあの男に渡した。
「ありがとうございます!」
「またのご来店を!」
「心からお待ちしております!」
男が僕を背負って店から離れた、その時院長とあの女店員の声また耳元に残っている。
「では、行こうか」
この男は一週間前と同じセリフを言った。
そして僕が見たのは、見た目でわかる凄いバイクだ。
そして今更気づいた、今この男着ているのはスーツではない、レザージャケットだ。
同じ黒だから、本当に分別しにくい。そして彼は僕を背負うままそのバイクに乗った。
気のせいか?この男から変な匂いがしている。まるで硝煙と血の匂いが混んでる匂い。
なんてこんな変な匂いをしているのか?
「あまり頭を出ないぞ、危険だから」
男が喋った。
直感でその事は危険すぎるって理解した。
「ウーッ」了解です。
「よし、気をつけろよ」
そしてこの男はそのバイクを僕でもわかる制限以上の速度で運転している。
「ウーッウーッ」
ちょっと待って!って言いたいが、今の速度なら、僕は頭をバッグから出る勇気がない。
一時間?二時間?それはどうでもいい、この瞬間はそれを遥かに超える気がする。
永遠のような、僕はずっと震えている。そして外が明るくなった時、バイクが止まった。その後男は僕を降ろして手で抱く事になった。
そして僕が見たのは、広すぎる屋敷のゲート。
まさかこの男はお金持ち?いえいえ、そんなことがないはず、あの匂いはこことは相応しくないよ。
「シン様!お帰りなさい!」
「ただいま」
様付きのか?まさか本当にお金持ち?
「シン様、その子は?」
すぐ僕に対して疑問が出された。
「あとで俺自ら当主様に報告するから、抜け駆け先に報告しねえぞ」
「はい、了解しました」
どうやらお金持ちじゃなくても身分高いのようだ。
「あら、シン兄、お帰りなさい!」
一人の少女が男の声を聞いたら出てきた。犬の僕から見てもとても綺麗な女性だ。
「はい!ただいま帰りました!お嬢様」
「あら、この子はどうしたの?」
「可哀想ですから、拾いました」
確かにそうだけど、ちょっと短すぎるよね。
「今祖父様はここにいないから、そんな堅苦しなくでも大丈夫だと思いますよ」
「他の使用人がいますからそれはいけません」
丁度その時。
「何か騒しい!」
「お祖父様、お帰りなさい」
「当主様、お帰りなさい」
この男とお嬢様はその声の主へ一緒に礼をした。
見た目はちょっと怖い老人、怖い。
「シン、その犬はどうした?」
「はい、雨の中で一人で可哀想ですから、拾いました」
「この屋敷で飼うつもりか?」
「はい、どうかご許可頂いてお願いできないでしょうか?」
老人がシンを見ている目線は厳しいから優しくなった。
「ちゃんとお世話するからな、シン」
「ありがとうございます、当主様」
え?そんなあっさり同意した?てっきりもうちょっと難しいと思った。
「シン兄、この子の名前は?」
「それはまだです」
名前か?確かにそんな物僕には持っていない、なにせそれを得る前に捨てられたから。
「では私から付けていい?」
「ぜひお願いします」
お嬢様はしばらく考えた、ようやく言った。
「ではヴィクって。勝利のヴィク。あなたに勝利ありってことで」
「ありがとうございます。どうだ?この名前を好きか?」
ヴィクか…呼びやすい、意味もいい、確かにいい名前だ。ありがとうございます!お嬢様。
僕はわかるように頷いている、お嬢様とシンは僕の頭一緒に撫でている。
「ようこそ、綾崎家へ」