二
「歩~!」
元気な声で僕を呼びながら走ってくる湊。
「あのさぁ、またバスケの助っ人頼まれたんだけど、大丈夫か?」
「何日?」
「一応、六月十六日だ」
土曜日か、空いてないことは無いけど、みぃーが突然に入れて来るかもしれないしなぁ………。
みぃーは断ろうとすると不機嫌にもなるししつこく理由も聞いて来てぐちぐちっと文句を言ってくるからかなり困ってる。
でも、そんな嫉妬してくれるみぃーが可愛いのでついつい構ってしまう。
「うーん。一応空いてるけど、もしかしたら行けなくなるかもしれないから。その時はごめん」
「おう! 分かった! そう伝えておくわ!」
湊は何処かに行ってしまい僕はみぃーが居る教室に戻った。
「あーくん! 今度の休みは何か予定ある?」
「えっと、土曜日に助っ人を頼まれたんだけど」
そう言うと案の定みぃーは体の動きを止めてじ~~~っと僕を見てくる。
(あー、これはまた尋問されるのかな。まぁ、正直に答えて許可を貰おう)
歩はこの後あることを悟り何が来ても良いように心の準備を整えた。
「なら! 応援に行くね! お弁当作ってあげる!」
歩の予想は外れて歩はビックリした顔で七海を見ていた。
七海の頭の中でとある事が連想された。
歩が部活の助っ人→歩のスポーツしてる所が見える→カッコいい歩が見える→よし、彼女らしくお弁当を作って応援に行こうっと連想して今回は不機嫌にならず済んだ。
「あーくんはどの部活の助っ人するの?」
「うん。バスケ部の助っ人だよ。一回湊に頼まれて一緒に試合に出たら、そこから試合がある度に呼ばれる様になったよ」
そう聞いて少し七海は首を傾げる。
バスケは身長があった方が有利のスポーツだ。なのに歩は普通の高校男子の平均より下なのにバスケ部の助っ人に呼ばれるのが変で七海は首を傾げ疑問に思っていた。
でも、呼ばれるってことは歩は凄いんだっと思いそんな迷いは直ぐに消え。
「あーくんがスポーツしてる所を初めて見るから楽しみだな~!」
二人は付き合って一ヶ月少しで、良く二人では居るが歩からそう言ったスポーツをやることを今まで知らされて無かったり、学校は男女別で体育が行われるので見れなく今回見れることに七海は凄く楽しみにしていた。
(今回は機嫌が悪くならなくなって良かった………………でも、頬を膨らませたみぃーが見れなくて少し残念)
嫉妬する七海を見れなくて少し残念だと思った歩は小さな溜め息をついた。
そして、試合のある土曜日。
市内の総合体育館で春坂高校と荒富士高校のバスケットの試合が行われていた。
観客席には埋まっており双方の応援団も来ていてそのその中には七海と采明、真矢の姿もあった。
采明は湊が出ると聞いて直ぐに行くと言い出し二人が行くならっと真矢も付いてきた。
そして選手が試合場に出てきてそこには頭にバンダナをした歩と特に変わった物は付けてない湊も居た。
先に言うならば歩と湊が合わさった連携プレイはかなりうざったく、そこに春坂のバスケ部が一番得意とする防御が合わされば無敵に近くなる。
歩は自分の低い背を活かして更に屈んで相手の視界に入らない様に行動して直ぐにゴール前に行き、湊からのパスを受け取りそのままゴールに入れる。
中々この二人の連携は崩せず今まで破った学校は無いが、二人は助っ人なのでこれからも居るとは限らない。
「歩!」
大きな声で歩と叫ぶ湊は歩にパスをしてそのまま歩はゴールに入れる。
そしたら観客席から声援が飛び散り会場はかなり騒がしくなっている。
「あーくん! カッコいい!」
そう言いながら次々にカメラのシャッターを押す七海。
その隣で声には出して無いがバスケをする湊が見えて嬉しそうにしてる采明の姿もあった。
そして、試合は進み結果は六十対二四で終わり見事、歩達が勝った。
☆
「あーくんどう?」
「うん。美味しいよ」
みぃーが作ってきてくれたお弁当は卵焼き、タコさんウインナーやお弁当サイズのハンバーグや唐揚げが入っておりどれも僕が好きな味付けで箸が進む。
今は昼休みで湊はバスケ部の人達とお弁当を食べており僕はそこから外れみぃーとお弁当を食べてる。
「あーくん。あーん!」
「あ、あーん」
誰かに見られてたら恥ずかしいがここは体育館の裏手なので多分、誰も来てないから僕はみぃーからのあーんを受ける。
(はぁ、おちょぼ口のあーくん可愛い! もう一回しよっと!)
「あーん!」
またしてもしてきたのでパクりっと食べて今度は自分で食べようと思って箸を取ろうとしたらまたみぃーがあーんをして来たのでまたパクりっと食べて、どうやらみぃーは食べさせたいみたいで箸を渡す気は無いようだ。
大人しくみぃーからのあーんを受けてお昼ご飯を完食した。
「この、後も試合?」
「うん。後一回あるから、帰りは四時過ぎかな? みぃーは大丈夫?」
「うん! お母さんもあーくんの応援に行くって言ったら遅くなっても良いよって」
「えっと、その、それもだけど、誰かに何もされてないかな?」
「!?」
七海は直ぐにぎゅぅぅぅっと歩を抱き締めた。
歩は何でいきなりしてきたか分からないけど同じ様に七海をぎゅぅぅぅっと抱き締め暫く二人は抱き合っていた。
(うへへ! あーくんが私を心配してる! はぁ、このままあーくんお持ち帰りしたい)
抱き締めてる間に変態染みたことを考える七海だった。
そして、昼の試合も歩達は勝って今日は連勝で終わった。
「うーん。やっぱりお前ら入らないか?」
「自分は家の手伝いがあるので」
「俺は………歩が入るなら俺も入る!」
湊はおかしなことを言ってるが、それだと永遠にバスケ部には入れないと思うんだけど。
だけど、湊は首を傾げてるので多分本当に僕が入らないとこいつは入れないな。
「ふむ。なら! 間宮を説得すれば良いのか!」
「無理ですね。家の手伝いがあるので」
僕はきっぱり断り、先生は肩を落として落ち込んでいたが仕方ないから受け入れて欲しい。
部活より家の手伝いを優先したいから入る気何てもうとう無い。
まぁ、一番優先するのはみぃーだけどね。
そんなこんなで先生はしつこくお願いして来たが僕達は断りそれぞれの家に帰って行った。
☆
「あっくん。今度の月曜日って祝日だよね? みぃーちゃんっと何か予定ある?」
家に帰ってきて部活で疲れてるけど店の手伝いをしていたら姉さんからそんなことを聞かれた。
「うーん。明日ならみぃーっと出掛けるけど、月曜日はどうだろう?」
日曜日はみぃーっとショッピングセンターを回るから無理だけど月曜日はまだ決まってないんだよね。
「まぁ、空いてるなら言ってね。お姉ちゃんと買い物行くからね! まぁ、あれだったらみぃーちゃん誘っても大丈夫だけどね~!」
姉さんはそう言ってホールに戻って行った。
(なら、後で聞いてみよっと)
「歩~! カフェオレとシフォンケーキ頼む!」
父さんから頼まれたので「はーい」っと返事をして僕は仕事に戻って行った。
「みぃー、癒しを~」
手伝いで疲れたのでみぃーに電話で癒しボイスを頼んだ。
そしたら「分かった~!」っと言って、わざとらしく咳をしてからみぃーは答えてくれた。
「あ~~くん、好き、大好き、あ~~くん愛してる♥️ 私はあ~~くんがだ~~~い好き!」
「も、もう、大丈夫です」
歩は自分で頼んでおきながら顔を真っ赤にしてうずくまっていた。
「ねぇ、あーくん。私だけ?」
「へ?…………………。み、みぃー大好きだよ………………ごめん、今はこれが限界です」
さっき七海にくらったダメージがまだ消えてない歩はその一言しか言えなかった。
「仕方ないな~! もう! あーくんは可愛いんだから!」
そして、歩は更に顔が熱くなって七海から会心の一撃をくらったのであった。
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