三(終)
「………歩」
一人寂しそうにアルバムを見ている歩のお母さん。
歩は私の子供でまだ子供………………。
だと思ってた、歩はもう子供じゃない………。
「いえ! 歩はまだ子供よ! 私の可愛い、可愛い歩よ!」
自分に言い聞かせようとしたが失敗してアルバムの歩に自分の顔を擦りつける歩のお母さん。
「そうよ! まだ歩は私の可愛い息子で、可愛い息子で………………か、可愛い………む、すこで………なのに、なのに、なのに、あんな可愛い女の子を連れてきて! お母さんどう話して良いか分からないじゃないの! それに私だってあんなことを言いたかった訳じゃないのに………………」
歩のお母さんは可愛い子供がだ~~い好きな変な性癖を持ったお母さんだ。
可愛いくて仕方ない子供を見ると抱き締めたり、愛でたくなってしまうどうしよもない子供好きな人。
本当はあんな可愛い女の子ならお母さんオッケー!っと言いたいかった歩のお母さんだったが、まだまだ歩を可愛がりたいかったからあんなことを言ってしまって今さらながら後悔をしてる。
「うぅぅ。歩が可愛い子連れて来るのが悪いのよ。歩はまだ私が可愛がりたいのに、あんな子が来たらもう、お母さんに甘えてくれないじゃないの! それにこんな所に三人も可愛い子が居たら私は正気でいられないわ!」
歩のお母さんは歩や楓、七海のことを思い出して「ぐへへ! うへへ! もう可愛い子達!」っと気持ち悪い顔で笑ってる。
「………………でも、あんな臆病でか弱い歩を任せられるかは別ね。可愛いのは認めるけど、歩を任せられるのは別よ」
いきなり気持ち悪い顔から真剣な顔になり歩と七海をどうするか考えだした。
歩は優しくて気づかいが出来て可愛い私の息子。
そして、相手は何処の馬の骨とも分からない可愛い美少女の女の子………………。
「歩はか弱くて臆病でそれでいて、優しい子。はぁ、歩は私の天使! それを奪い取ろうとするあの子は許せない! 可愛いけど、可愛いんだけど! 許せない!」
悔しそうな顔をしてお母さんは拳をぐっと握る。
「はぁ。歩は私の天使で、か弱くて臆病な私の天使………どうしたら良いのかしら?」
歩はか弱くて臆病で優しい子。
あの子は美少女で可愛くて礼儀正しい女の子。
どうせなら二人共私の子供に………………?
「二人共私の子供に………………って、出来るじゃん。あの二人は恋人で結婚したら私の子供になるわよ? あれ、私何に悩んでたのかしら!」
今さらそんなことに気づくお母さんはバカなのか、いや、大バカ過ぎて何も言えない。
「うふふ! 何でそんなことに気づけなかったのかしら! 私のおバカさん! これなら、歩と喧嘩しないで済んだのに! そして、歩を任せられるかこの目で見極めれば良いのよ!」
そして、お母さんは矛盾だらけに気づかないで浮き浮きで喫茶店の方に行き。
「あ、お母さん………? なんか、機嫌良いね」
「あら! 楓! 歩はまだ帰ってないの?」
「あー、そうだね。まだ帰って来てないよ。お母さん、やっぱり反対するのはよそうよ。あっくんはあの子が好きなんだから………?」
お母さんは手を前に出して楓を止め。
「ふふふ! もうそれは良いのよ! ここでバイトさせてあの子を見極めるから!」
「え? あ、そうなの。なら、良かったよ」
浮き浮きにしてるので本当なのだろうと思った楓はそれ以上何も言わなかった。
(お母さん……………それに気づくの遅くない? 私だって許せないけど、ちゃんと良い子って見極めるって決めてたし。あんな可愛いあっくんを誰かに取られるなんて私だって嫌だもん)
どうやら姉の楓も同類だったようだ。
二人はやるぞ!っと言わんばかりに腕を上げてやる気満々の顔をしていた。
そして、カランカランっとドアが開く音が聞こえ歩のお母さんと姉の楓は直ぐにそっちに行き入ってきた歩に抱きついた。
「歩~! ごめんね! お母さんが間違ってたわ! あの子と交際は認めてあげるけど、でも! あの子が歩に相応しくないって分かったら別れて貰うからね!?」
「え。あ、う、うん」
帰って来て早々に抱き付かれて何がなんだか分からないが一つだけ分かるのは母さんがみぃーとの交際を許可してくれたみたいだ。
「歩! 明日あの子、七海ちゃんを連れて来なさい! 早速ここで働いて貰うわ!」
「分かった。伝えとく。でも、ありがとうね、母さん」
歩は満面の笑みでお母さんにお礼を言ってから部屋に戻って行った。
☆
「うん。だから、明日から来てくれると嬉しいかな」
歩は部屋に行くとさっそく、七海に電話をしてバイトと交際の許可が降りたと電話をした。
「うん! なら、明日から行くね! あーくん! またね!」
「うん。またね」
歩は電話を切ってからベットに寝転がり。
(何があったかは知らないけど、良かった。母さんは過保護過ぎるから不安だっけど、みぃーとの交際許して貰えて良かった~)
歩は安心したのかそのまま眠りについてしまった。
☆
「あら! 可愛い!」
次の日さっそく、七海と湊が来て、今は七海にお店の制服を着せていた。
制服と言っても黄色の三角巾と同じ色のエプロンをしてるだけだが。
胸辺りにはFurantsueとお店の名前が入ってるエプロン。
「七海ちゃんは可愛いわね! 歩も良い子を連れて来たわね!」
七海もギュッと優しく抱き締めて頭を撫で撫でするお母さん。
七海は昨日とは違い過ぎる反応のお母さんに困惑しているが大人しく抱き締められ撫でられた。
「それで、二人の関係のことなんだけど」
お母さんからそんな言葉が出ると二人は体をすくめ緊張を走らせお母さんの方を見た。
「まぁ、認めてあげなくも無いわよ」
二人はそう聞くとホッとして体の力を抜いた。
「但し! 条件はあるわよ!」
「条件って?」
「一つはまだキスは駄目よ。まだまだ子供なんだからそんな不純なことは禁止します!」
歩は目を逸らして、七海は目をちらつかせ二人共挙動不審になっていた。
それもそのはず、この二人はキスやハグは毎日のようにしてるからお母さんが言ったことは守れるはずがない。
「………ふーん。もう、し、たの、ね」
そんな二人を見たお母さんは察して体をぷるぷるっと震わせて怒っていた。
「母さん、その、えっと、僕がね!? その、したいってみぃ、七海に言ってるの! だから、嫌がる七海に無理を言って頼んでるのは僕だから!」
実際は七海が無理にでも歩にお願いをしてやっているのだが、歩はこの子供バカの親を理解してるから自分からやったと言えば仕方ないっと思ってくれるはずだと思い苦し紛れの言い訳をした。
「ふーん。七海ちゃん、そうなの?」
「えっと、その、あ、はい」
七海も歩に同調したが、お母さんは………………。
「そう。まぁ、歩も年頃だってのは分かるけど、まだまだ私にとっては子供よ!」
「う、うん」
どうやら信じてくれたのかな? それなら良かった………。
なんとか信じて貰えて歩達はホッとした。
「お義母さん、その、歩君との交際は良いんですよね?」
「まだお義母さんって呼ばないで! 歩に合うか見極めるまでお義母さんは駄目よ!」
「でしたら、なんて言えば?」
「紗枝さんって呼んで、それともう一つの条件はデートは一週間に三回までにして! 貴女が歩に相応しいっと思えるまでデートは三回までよ!」
それはデートするだけでも許してもらえたのに、七海にとってはかなりキツい条件だった。
デート。放課後や休みの日、そう言った時間で出来る恋人のお出掛けのこと。
七海は歩とは放課後は殆ど毎日、歩が用事でない限りはデートをしていたから、これはかなりキツい条件だ。
「歩が最近、家の手伝いをしないと思ったら、そう言うことだったのね。いま理解できたわ。歩も良いわね? キスやハグも限度を守りなさい。もうしたのなら何も言わないけど、七海ちゃん! 歩を汚す様な真似はまだしないこと! 以上で二人の交際は、認めます!」
こうして、二人は親の公認?のもとに交際を始めたが、だされた条件は七海にはキツくてとても耐えられるものではなかった………………。
お母さんとの約束はもちろん七海は守る訳ありまへん。
次からは合宿編に入ります!殆ど七海と歩がイチャイチャするのしかありませんが頑張って行くので応援お願いします。