七
「えへへ! うへへ!」
朝から嬉しそうに気持ち悪く笑う七海。
横では少し顔を赤くして俯いている。
「あーくん! これからも遠慮無く頼んで良いからね!」
そんなことを言われ歩はさらに顔を赤くさせコクりっと小さく頷いた。
「………………二人共、昨日何かあったの?」
それを不思議に思った真矢が二人に聞くと、歩はまたしても顔を赤くしてその場で顔を手で隠しながらうずくまってしまった。
七海はよくぞ! 聞いてくれました!みたいな顔をして真矢に近づいて耳打ちをした。
それを聞いた真矢も顔を真っ赤にして「あわあわあわ!」っとあたふたし始めた。
「まぁ、最後までしてないんだけど! あーくんが積極的にね! うへへ!」
七海は本当に嬉しそうな顔で両手で頬を抑えて首を横に振ってる。
(何で僕はあんなことをしたんだろう………みぃーが可愛くて、可愛くて………………つい!やっちゃったんだよな)
「はぁ、後悔しても仕方ない、か」
自分がしたことに今さら悔やむより昨日の七海を思い出しておこうっと思った歩………………だが、思い出して恥ずかしくなったのか「うぅぅ」っと唸ってゴロゴロ転がっている。
湊に「なにやってんの?」っと言われ転がるのは止めたが「うぅぅ」っと唸って両手で顔を隠していた。
☆
「では、今から交流会のゲームを始めます!」
合宿所の大きなグランドに全員体操着やジャージを着て皆集まっていて、今から交流でやるケイドロが始まる。
ケイドロは警察側と泥棒側でやる鬼ごっこみたいなもので、違いと言えば捕まった仲間の泥棒を助けられることぐらい。
だけど、この大人数でやるのはかなり骨が折れると思う。
一クラス三十人ぐらいでそれがどちらにも二クラスあるので約百二十人ぐらいでやるケイドロは流石に無理があると思うけどやるみたいだ。
そして、チームが分けられ………。
「あーくんっと、違うチーム……………」
僕が泥棒で逃げる側、みぃーが警察で捕まえる側で今回は違うチームになってしまった。
(僕はたまには違うチームとかでみぃーっと勝負してみたいけど………)
歩は横目で七海を見る。
手と膝を地に着いて絶望に染まった顔でぶつぶつっと何かを言っている。
そんなみぃーを見た僕は若干呆れた溜め息をついた。
そこまで僕と一緒が良いって思ってくれるのは嬉しいけど、たまには良いんじゃないかと思う。
「うーん。だったら! 逃げる歩を捕まえたら何か一つ言うこと聞かせるってのはどうだ!」
そんなことを湊が言うとピクッと七海は体を動かして反応した。
暫くぶつぶつ言っているとスッと立ち上がり。
「あーくん。捕まえたら何でもして良いんだよね?」
「え………………………………。あ、うん」
それは湊が言ったことだけど、ずっと落ち込んでいたら僕は心配になるので言うことを一つ聞くぐらいは良いかなっと思い答えた。
(それに、足には自信があるし、逃げ切れば大丈夫でしょ)
自分の足に自信があって気楽でいる歩だが、七海は歩のことになると何を仕出かすか分からないことを本人はしらない………………。
そして、ケイドロは始まり次々に泥棒は捕まっていってしまい泥棒側が不利になってしまった。
「えっと、今捕まってるのは約半分は捕まってるよね」
今は残ってる数人で集まりこれからどうするか相談をしている。
追ってする側にはそれなりに速い人達が来て次々に捕まってるよね行ってしまい。もし、助けに行こうとするっとそっちはそっちで運動神経の良い湊が居て全然通れないからこっちはかなり不利になっている。
そして、残ってる人達で色々と相談して作戦が決まった。
「居たぞ! 捕まえろ!」
まず、残ってる数人でで探してる警察側を引き寄せて、そしてまた残ってる人達で捕まってる人達の所まで突っ込んで行く。
強引で力業だけど、これには必勝法がある。
それが………………。
「歩! 逮捕してやるよ!」
「へぇー、出来るんだ。やってみたら?」
僕の前に湊が来て「歩!」っとやる気満々に僕に襲いかかってきた。
(よし。和泉の作戦で行くとこれで良いんだよね?)
「へ? え。あ、歩!? どうした?」
歩は泣きだしてしまい、それを見た湊はどうしたら良いか分からなくあたふたしていた。
「うぅぅ、怖いよ~。みぃー湊が苛める! 助けて~!」
歩は泣きながらそう言って湊は「はあ!?」っと驚き後ろから来る殺気に顔を真っ青に染めて体を震わせた。
「み・な・と………………………殺る!」
怒りの形相で七海は仲間でもある湊を追い掛け湊は怖くて泣きながら逃走して行った。
そう、これは強引で力業の作戦でも無い。
卑怯でずる賢い本当に泥棒みたいな考えをした悪どい作戦だ。
即戦力だった湊と七海が居なくなったことで歩はさっさと捕まってる仲間をタッチして行き捕まってる泥棒達も逃げて行った。
そして、歩達の悪どい考えで殆どの泥棒が逃げてしまい時間切れで警察側が負けた。
☆
「で、あーくんに何したの?」
「いやいや! 俺は何もして無いから! 歩が勝手に泣いたんだよ!?」
ゲームが終わっても湊はずっと胸ぐらを掴まれ七海に睨まれ尋問を受けていた。
「みぃー、もう良いから。湊を許してあげて」
「………………………………………………………………ちっ。あーくんに感謝するのよ」
パッと持ち上げていた湊を落として直ぐに歩を抱き締めて頭を撫で撫でして歩を慰める始めた。
「あーくん、ごめんね。守れなくて」
「う、うん」
全部嘘でそれを本気にして慰めてくれる七海に罪悪感が生まれ胸がうっ!っとなる。
(うーん。やっぱりみぃーには隠し事したくないな)
「みぃーごめん。慰めてくれるのは嬉しいけど、全部嘘だよ。僕達の作戦だったんだよ」
「うん。知ってるよ」
その答えに僕はびっくりして目を見開いた。
それに対して七海はクスクス笑いぎゅぅぅっと歩を抱き締めた。
「本当に苛められてて、後から知って後悔するより、今そいつが居るなら殺るまでだからね。私のあーくんに手を出す人は絶対に許さないもん」
「う………うん」
そこまでする必要が無いと思うけど今回は一度嘘をついてるから大人しく同調しておこう。
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