四
「湊~」
「 歩!………!? あ、ごめん!」
学校で湊を見かけたので声を掛けたら怯えられる顔で何処に行かれてしまった。
「なんだったんだろう?」
湊が逃げて行くことなんてした覚えが無いけど、何かしたかな僕?
歩は湊に何かしてしまったのか暫く考えてるっと後ろから「あーくん!」っと呼んで七海が抱き付いてきた。
歩は後ろから飛び付かれてバランスが崩れそうだったがなんとか保てて七海を背中から降ろした。
「み、みぃー。そのね? 僕とみぃーじゃあ身長さがあるから余り後ろから抱きつかないで欲しいんだけど」
「分かった。なら、前からにする!」
「前………。まぁ、そっちなら大丈夫だけど、余り勢いもつけないでね?」
みぃーは「はーい!」っと返事をして腕に引っ付いてきたけど、ちゃんと分かってるかな。
本当に分かってるのか不安になる歩は暫く七海を横目でチラチラっと見ていた。
「あーくん、今日はお家の手伝いある?」
「うーん。姉さんから連絡来てないから、大丈夫だよ」
「なら、あーくん。お店と言うか、私、あーくんのお部屋行ったこと無いから行ってみたいんだけど、良い?」
「もちろん。みぃーなら大丈夫だよ」
確かに、みぃーを自分の部屋に入れたことが無かったね、少し恥ずかしくなるけど、彼女のみぃーに見せるんだから………………。
「あ」
歩は自分の部屋を想像したら、ヤバいっと思い七海に「掃除してから呼ぶね」っと可愛くおねだりした歩の結果、七海は二つ返事で了承して貰えたので歩は家に帰ったらさっさと片付けようっと決意した。
別にエッチな本があるとかじゃない歩の部屋だが、歩の趣味の物があちこちにあるからそれを余り見られたく無い歩だった。
「皆さん。いよいよ自然合宿が来週に控えました。皆さん準備はちゃんとしといてくださいね?」
最後にそう先生に言われてホームルームは終わり皆、帰る準備をしだした。
「あーくん! 帰ろ!」
歩が教科書を鞄に入れてると鞄を持った七海が来て歩はさっさと鞄に教科書を入れて立ち上り二人は腕を組んで一緒に帰って行った。
☆
「みぃー、良いね? 僕が来て良いって言うまで入ってきちゃ駄目だよ?」
「うん。分かってるよ」
歩は念には念っと七海に釘を刺してから自分の部屋に急いで向かった。
案の定、七海はそんなことを守るはずも無く楓に歩の部屋の場所を聞いてから歩の部屋に向かった。
(あーくんが隠すってことはそんなに見られたくない物があるってこと? もしかしてエッチな本!? 何で、私に言ってくれないの? あーくんなら私は受け入れるのに、何で言ってくれないの?)
七海は心を決めて歩の部屋のドアを開けた。
「へ?」
そこにはあちこちに猫のぬいぐるみや猫柄の毛布、猫柄のカーテンや猫柄のカーペットとかがあり歩は急いで全部を隠そうっとクローゼットに突っ込んでいた。
まさかの別の意味で規格外過ぎて七海は終始停止していた。
「………み、みぃー」
歩に声をかけられ七海は正気を取り戻して。
「あー。えっと、あーくんが隠したかった物ってこれ?」
七海はチラチラっと部屋を見渡して歩の部屋が猫だらけっと再確認した。
「あはは。男がこんなのキモいよね。うん、分かってた。七海。正直に言ってよ」
光りの無い瞳で何もかもを諦めた顔をしてる歩。
「ううん。変じゃないよ? 私はてっきりエッチな本でもあるのかって思ってて、まさかのこれだったから、少しびっくりしてるだけだよ」
「あーーー! やっぱりキモいって思ってるんだ! みぃーにまでそう言われたら、僕は、僕は!」
歩は七海が言ったことを勘違いして「うぅぅ」っと泣き出してしまい、七海はどうしたら良いか分からなくあたふたしていた。
(えっと!? あーくんが泣いた姿も可愛い! じゃなくて! 今はあーくんを慰めないと)
七海はよし!っと気合いを入れて歩に近寄り、そっと抱き込む様に歩を抱き締めた。
「あーくん、私はどんなあーくんでも好きだよ。別にこんなので引く訳ないじゃん。あーくんほら、泣かないで」
「うぅぅぅ。本当に?」
「うん。だから、泣かないで。皆が引いても、絶対に私はあーくんから離れないから」
歩は暫く七海の胸に自分の顔を埋めてぎゅぅぅぅっと抱き締めた。
「みぃー」
「何~? あーくん」
「………お願いがあるんだけど」
「うん。何でも言って!」
そして七海が歩にお願いされたことは………………。
「にゃ~、みにゃ~」
ベットの上で歩が七海の膝の上に頭辺りを乗せて猫みたいに七海に甘えていた。
実際甘えられてる七海でも何でこんなことをお願いしてきたのか良く分かってないが可愛いから何でも良いやっと思い大人しく言うことを聞いている。
「にゃ~」
「はいはい~! あーくんは甘えん坊だね~!」
「………………」
「あれ?」
歩は鳴くのを止めてしまい外方を向いてふてくされ始めた。
(えっと、これは………もしかして)
七海はもしかしてっと思い歩に言ってみた。
「猫ちゃ~ん! 機嫌直して~!」
「にゃゃゃ~!」
思った通りあーくんは多分、今だけ猫ちゃんって呼ばないっと返事をしてくれない。
歩は七海を押し倒して幸せそうな顔で「にゃふふ!」っと言いながら七海にすりすりしていた。
「猫ちゃ~ん、キスしてくれても良いんだよ?」
七海は悪ふざけで歩に言ってみると、歩は少しじ~~~っと七海を見てるとまず頬をペロッと舐めてそのまま唇にキスしたりっと端から見たら歩が七海を襲ってる絵面になってるが七海は鼻血が出そうなぐらい喜んでいて別にこのまま襲われても良いっと思ってる。
(積極的過ぎるあーくんも良いな~。後はこのまま襲ってくれるっと私も嬉しいけど、多分そこまでされたら………………私の方が理性保てないよ!)
そしてそのままキスしたり七海が歩の頭を撫でたりっとイチャイチャして七海も満足し過ぎたぐらい家に帰って行った。
「えへへ! あーくん。やたら今日は甘えて来たけど、可愛いかったな~~!」
七海はルンルンにスキップをして鼻歌を歌いながら家に帰って行った。
☆
そして、歩は………。
「………………何してたんだろう。僕は」
無自覚でやっていたとか、記憶が無い訳でも無くて、記憶も鮮明に覚えてるし、ちゃんと自覚があってやっていたことだけど、何であんなことをお願いしたのか、今考えれば良く分からない。
だけど、後悔や恥じらいは何故か無かった。
ただあるのは何であんなことを頼んだ自分が居たのかの疑問感だけ。
(ほんっと、何であんなこと頼んだんだろう?)
首を傾げて何でだろ~っとずっと悩んで。
どう考えても何であんなことをしたか頭に浮かばない。
「………………確実に気持ち悪かったよね。でも、みぃーは何も言わなかったら大丈夫だったのかな?………………」
一人でさっきの不可思議な行動について考える歩だった。
(あ。そういえば、湊もなんか変だったよな。人を見て怯える顔で逃げて行くとか)
歩は今度会ったら文句を言おうっと心に決めた。
☆
少し前の出来事。
何故、湊が歩を見て逃げた理由はもちろん歩にでは無く後ろに居た七海が原因だった。
ショッピングセンターに出かけた次の日に湊は七海に呼び出されていた。
「で、どうかしたか? 柊」
湊は部活の助っ人帰りでジャージを着ていて七海は胸ぐら辺りを思い切り掴み上げて、とても冷たく光りが無い冷徹な瞳には嫉妬の炎が灯っていて湊は一瞬でこれはヤバい!?っと勘が気づいた。
「ねぇ、何で私からあーくん………歩君をとるの?」
「いや、取った覚えは無いんだが、あと、痛いから離して!」
「嘘をつくのもいい加減にして。次、嘘をついたらこのまま地面に叩きつけるよ?」
普通なら力で湊が七海に負けるはず無いのに湊は七海の力に勝てなくて本当にそのまま地面に叩きつけられそうでじたばたっと暴れてどうにか離そうとした。
「暴れないで、次に暴れても地面に叩きつけるよ」
湊はピタッと体を止めて体を震わせ大人しくなった。
「よろしい。で? 何で私から歩君をとるの?」
(いや、俺………取った覚えとか無いんだけど。と言うか歩の彼女って怖い………)
湊は取った覚えすら無いからここは嘘をつかず話を聞いて貰おうとした。
「取った覚えは無いけど、まず話を!……… ぐふぉ!?」
湊は硬いコンクリートに頭から叩きつけられそのまま湊は気絶してしまった。
七海はこれだけ釘を刺しておけば良いだろうっと思い湊をそのままそこに放置して帰って行った。
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