雪の降る日、
※この作品はフィクションです。言うまでもないですね。
※この作品は作者の自己満足が多分な傾向があります。ですが、より良い作品にするためなら人の意見を聞くことも大切だと思います。
だから感想くださいm(_ _)m、感想を読めば元気も出ると思うのです。
その日は珍しく雪が積もった。
どの家も暖炉をたき、家族団欒と輪になって暖をとる。幸せそうな声が漏れ聞こえる真夜中。厚手の防寒着を着た警備隊の男は白い息を吐いた。
「俺も仕事切り上げてさっさと帰りてぇ」
寒さに震え両手を擦り合わせながら、警備隊の男は現在課せられた仕事の内容を思い浮かべる。
――大罪人がこの王都付近に潜んでいるという情報を掴んだ。見つけ次第、報告、可能であれば拘束すべし。
無理なんだよなぁ。警備隊の男は独りごちた。自分のような木っ端など、かの悪名馳せた人の形をした化け物からすれば塵に等しい。加えて、貴族圏を警護するために人材が多く割かれている。人手不足の、それこそ、ここのようなスラム付近の地区では、今も一人で巡回しているように、例え見つけたとしてもすぐに逃げられることは想像に容易い。
しかし、不満を吐いたところで現状が変わるわけでもなく、専ら高貴な身分の人間たちが安全であることに安心してから、この役目は終わるはずだ。
「ほんと……何やってんのかな、俺は」
子供の時に夢見た騎士になったが、普段やってることはスラムの人間を追いかけるばかりの仕事だ。こうして巡回というまともな仕事をするのも久方ぶりで、自分のしてきたことを振り返ってみると、思わずにはいられないのだ。
「どっかで道を間違えたんじゃないのか」と。
ふらふらと歩きながら雪道を踏み固め、警備隊の男は家庭の声を聞きながら欠伸をする。
――平和で結構。そんじゃ今日の業務は終了ってことに……。
「……――っ!?」
そう考えるやいなや、警備隊の男は違和感を覚えた。まるで、不吉な予感も生易しいような、悍ましい光景が目に浮かぶ。
蛇に睨まれる? 否、悪魔に取り憑かれた。
全身を包み込むような濃密な死相に本能が警笛を鳴らして、鳥肌が立つ。心臓が煩かった。急な焦りから汗をかく。
背後に『何か』いる。
そしてその『何か』には、心当たりがありすぎた。
「そうだね、君は来るべき道を間違えた」
青年の声が耳朶に響く。耳元で囁かれた言葉は、甘く優しく、何よりも恐ろしく感じた。
「僕の糧となって死ね」
次の瞬間。警備隊の男の心臓から、腕が生える。手には臓器を掴まれ、やがてそれを握りつぶす。
それだけで警備隊の男は死に絶えて、引き抜かれた腕の持ち主はその赤い双眸を怪しく光らせ困ったように微笑した。
「糧にもならないや」
倒れた警備隊の男から流れ出る鮮血が足元の雪を赤く染め上げる。死体となったそれを一瞥した後、白銀の長髪をした青年――大罪人は何事もなかったかのように雪道を歩いた。
「いいかげん限界が近いか……」
無人の闇に、消えていく。零した声を拾うものは誰もいなかった。
この世界の常識
○人を殺せば経験値が手に入る。
どういう仕組みかは謎。RPGの世界観を思い浮かべてくれたら、だいたいそんな感じの世界。
序章は四話に分ける予定
とりあえずの目標ブクマ10件。
あと何十話で達成できるだろうか?