4.2章
お待たせしました。
4.2章の投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「お前さん、何でぇこんな所にいるんだ?」
「いや、俺は子連れの蟒蛇が出るって聞いたから、その調査に来たんだよ。」
「ごめんなさい、通してね。よっと、いやぁ、鬼人族の人はみんな背が高いね。あれ、ヒガさん。お久しぶりです。」
「なんだい、金髪の坊主も居たんか。」
金髪か坊主なのかはっきりして欲しい所だが、俺は突っ込まないぞ。
鬼人族の壁を超えて、シズトが遅れてやってきた。
「シズトですよ。それよりも、蟒蛇っていうのは…。」
「どうやらボクたちの徒労だったみたいだね。」
いつのまにか隣にバクさんが立っていた。
バクさんの魔法の一つ、空間跳躍魔法で後ろの人だかりを抜けて来たみたいだ。
「で、この惨状はどうしたんですか。」
倒れ臥す鬼人族の人たちは、意識はあるのか呻き声を上げている。
うわ言のように「もう飲めねぇ。」とか、「噂は本当だった。」とか繰り返している。
「ああ、酒飲み勝負を吹っ掛けてきやがったから、負けた方が奢りってことで乗ってやったんだ。自信満々に来るもんだからよ、結構強いのかと思ったんだが、そうでもねぇらしいや。」
「ヒガさんに勝てる人類はいないと思いますよ。」
なんせ、と言いかけた所で後ろからクックの声がする。
「すみませんっ、通して下さいですわ。って、お酒臭いですわっ⁉︎」
遅れてやってきたクックが、あまりに強烈な酒の匂いに鼻を塞ぐ。
「ああ、クックお前も来たのか。」
「私だって何があったのか気になるのですわ。それよりもその方はどなたですわ。」
名前を言った所で伝わらないだろう。
名前の通ってるあっちの方も使うか。
「この人は火我 嗣水 さん。お前には『泥酔勇者』と言った方が分かるかな。」
「ええっ、あの王城にある名酒の数々を一晩にして飲み干したと言われる、『泥酔勇者』ですのですわっ⁉︎」
おお、久しぶりにこの説明聞いたな。
「何でぇ、勇者だなんて照れるじゃねぇかよ。ガッハッハッ。」
「今そこに謙遜するのですわっ⁉︎」
快活に笑う出来上がったヒガさんに、クックが突っ込むも、この様子では、話半分程度にしか聞いてなさそうだ。
笑いながら飲み続けるヒガさんを眺めてると、その後ろにくっついてる一つの陰に気づく。
「ヒガさん、その子は誰なんだ。」
小さい女の子が隣で寄り添うようにミルクを飲んでいる。
見た目の年齢的には小学校低学年あたりだろうか。
耳が長くとんがってるのが特徴的だ。
エルフと言われる人種に当たるのだろうか。時々、エルフ種の人を見かけたことがあるが、子どもの姿を見るのは初めてだ。
ヒガさんがそのエルフの子どもと何で一緒に居るんだ?
「ああ、コイツか。コイツはな。」
俺が覗き込もうとすると、怖がられたのか、ヒガさんの服を掴むと一言。
「お父さん。」
「「「お父さんっ⁉︎⁉︎⁉︎⁉︎」」」
珍しく驚いたシズトとバクさん、そして俺の声が重なる。
いや、それもそうだろう。
なんさ、転移時当時ヒガさんは1人だったのだから。
それが1年ぶりに出会ったら、こんな大きいお子さんを持つだなんてあり得ない。何より種族からして違う。
「んあ、怖がんなよチビ助、コイツ父ちゃんのダチ公よ。」
「ツクシって呼んで。」
チビ助が気に食わなかったのか、ムスッとした顔でその子は一気に不機嫌になる。
「あぁ、悪かったよ、ツクシ。紹介する。コイツはツクシ。親無くして1人の所を、オレが拾ったてわけさ。」
成る程、1人の所をか。
トラウマの刺激になりそうだから、あまり深くは聞かない方が良いな。
「そっか、よろしくなツクシ。」
「よろしくツクシちゃん。」
「よろしくなのですわ。」
「よろしくね。」
「よろしくお願いします。」
怖いものでは無いと理解してくれたのか、ツクシは丁寧に挨拶をしてくれる。
「挨拶も済んだことだし、久々の再会だ。全員オレの泊まる宿に来い。丁度部屋も余ってら、今夜は宴会だ。」
「まだ飲むんですかっ⁉︎」
今も飲んでると言うのに、まだ足りないのかこの酔っ払いは。
「たりめぇよ。まだまだ序の口と言った所だ。これじゃ足らんっての。」
「じゃあ、僕は料理を振舞いますよ。クックちゃん、前に僕の料理を振る舞うって約束したよね。」
「えっ、はっ、はいですわ。」
「そうだね、泊まる宿も欲しかった所だし、後ろの5人と合流したら行こうか。」
どうやら、シズトもバクさんも賛成らしい。というか、断るのを諦めてる節がある。
まぁ、ここで俺が断る理由も無い、なんせ蟒蛇の調査は必要無くなったし、時間には余裕がある。
それにヒガさんは既に出来上がってる。
宴会といっても長引くことは無いだろう。
俺はサファイア、シズトはカーメイ、バクさんは三姉妹を呼び寄せると、ヒガさんの紹介を軽く済ませた後、ヒガさんの泊まる宿へと向かう。
「店主、今から宴会をやる、取り敢えず酒樽一つ持って来い。」
「あいよ。」
待ってくれ、注文の仕方がおかしい。
さも、当たり前のように注文を受け付けてる店主も、大分きてるな。
「ヒガさん、バクさんはともかく、ほかのは未成年ですよ。」
この世界に飲酒に関する規定があるかは知らないが、まぁ、ほら勇者として悪いことはなるべくしたくないじゃん。
「分ぁてるって、坊主どもにゃまだ早いからな、店主、ついでにジュースでも持って来てくれ。」
「あいよー。」
「あ、厨房借りれますか?代わりに店主さんにも料理を振舞いますよ。」
シズトがクックとの約束を果たすため、厨房を借りれないか打診している。
「あいあい、構わんよ。」
随分と受け答えがおざなりな店主だな。
だが、許可が出たので、シズトは厨房へと引っ込んで行った。
ほかのメンバーはぞろぞろと好きな席に着き、勇者組とそれ以外で別れた。
カーメイはまぁ、言わずもがな性別を間違えられ、女子組に捕まっている。
いつもなら適度な所で助けてくれるシズトが居ないので、今、カーメイを助ける人は居ない。
「なんでっすか⁉︎オクトさん。助けて下さいっす。」
ヘルプが聞こえるような気がするが、気のせいだろう。
「そういえば、ヒガさん、随分痩せましたね。」
出会った当初の中年腹が見事に凹んでいる。
今は寧ろ筋骨隆々といった所だろうか、元々筋肉があった人なのかもしれないな、肉が削がれて、服の上からでも逞しい筋肉がわかる。
「おうよ、まぁ、冒険してればな。坊主もヒョロかったのがだいぶ逞しくなったじゃねぇか。」
それもそうか、お互い1年も冒険をしてきたわけだ。
戦ったり、長い道を馬車にゆられたり、険しい山を越えたりしたからな、自然に体は鍛えられるか。
「そんな詰まらん話より、せっかく集まったんだ、昔話に話を咲かせようや。」
「召喚された時に一回あったきりですよね。俺たち。」
おかしい、思い出話をする程の時間を過ごして居ない筈だ。
なんせ、次の日には王都から追われる身だったからな。
いや、そう考えると、思い出話を出来るほどには、濃密な時間を過ごしていることになるのか?
「私、その話聴きたいですわ。」
耳聡いクックが、女子会テーブルから抜け出し、勇者組テーブルへとやって来た。
「おう、嬢ちゃんも聞きたがってるじゃねぇか。」
「うーん、まぁ、隠す事でも無いし良いか。クック、俺たち勇者は呼び出される存在って事は知ってるな?」
「勿論ですわ、歴代の勇者様も全員が、王族の血族のみが使える魔法。『勇者召喚魔法』によって呼び出されたのですわ。しかも、その魔法は生涯に一度しか使えない魔法という事も知っていますですわ。」
おおう、随分と物知りだな。だいたい合ってる。
なんだコイツ、勇者オタクか何かか?
「結構詳しく知ってるんだな。そうだな、じゃあ、呼び出された直後からの話を始めようか。」
俺は1年前の出来事を思い返しながら、語り始めるのでたあった。
お読み頂きありがとうございました。




