表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
83/173

4.1章

お待たせしました。

新章、4.1章投稿させて頂きました。

お読みいただければ幸いです。

「私を酔わへるなて、この変ひゃいっ、くっ…、殺しなさいでふわ〜〜zzz」


 すでに目がトロンとしていた、クックの瞼が閉じる。


 待ってくれ、別にクックを酔わせて送り狼しようだなんて考えてないし、そもそもクックは一滴でも、酒を飲んだ訳ではない。


 その原因にチラリと視線を向ける。


「がぁっはっはっはっ、勇者全員で飲む酒は格別だなぁ。」


「飲んでるのは、もうヒガさんだけですよ。」


 (かろ)うじて意識の残る俺は、目の前の30代半ば程に見える男、『泥酔勇者』火我(ひが) 嗣水 (つくみず)さんに突っ込みを入れる。


 意識が辛うじてと言ったが、別に俺も一口でも酒を飲んでいる訳ではない。

 ただ、この宿屋(やどや)の店内を支配する凄まじい酒気に当てられたのだ。


 目の前に置かれたのは、空の酒樽と半分ほど残った酒樽。

 いや、樽を開けるとは、ヒガさんの人体はどういった構造をしてるのか不思議でならない。


 この酔っ払い、意外なことに、無理に飲むのを強要するどころか、坊主どもにゃまだ早いと酒を勧めることは無かったものの、結果がこれでは最早アルハラと同罪だと思うのだが。


 ヒガさんはまだ酒が残る樽から、木製ジョッキで酒を汲み上げ、また一杯と浴びる様に飲み干す。


「かぁーっ!細けぇことは良いじゃねぇか。久しぶりに全員集まったんだ。今日は宴だっ!そーれ、勇者の再開を祝して乾ぱーいっ!」


 その宴をしてるのが、もう、1人しか残っていないというのは細かいに部類するのだろうか。


 多分ヒガさんは自分が飲みたいだけだろう。

 だが、酒気に目を回した俺は突っ込む気力すら薄れていく。


 同席者たちに目を向けると、ヒガさんに合わせて、酒をちびちび飲んでいたバクさんは、テーブルに突っ伏したまま動かない。


 向こうで女子会といった雰囲気を醸し出していた、あのドグたち三姉妹は、サファイアとヒガさんの連れていた子どもと共に、とっくに部屋へ帰っている。


 そして、たまたま同じ目的で合流したシズトは、ヒガさんの宴会という言葉を聞いて、即座にクックが自作の手料理を食べたいと言った事を理由に、勇者最強は厨房に逃げ込みやがった。


 ちなみにシズトと一緒にいたカーメイは、女子と間違えられて三姉妹に連れてかれた。


 円形のテーブルに突っ伏すの3人、俺、クック、バクさんだ。

 死屍累々のテーブルで1人、酒豪が飲みながら笑いたける。


「何でこうなったんだ…。」


 薄れる意識の中、俺はこんな風になった原因を思い返す。



 ◇ ◇ ◇ ◇ ◇



 そう最初は俺たちは、蟒蛇(うわばみ)の調査をする為に、この鬼人族の里へとやって来ていたのだ。


 いや、それも徒労に終わったのだが。

 既に察してると思うが、目の前の泥酔勇者が蟒蛇だった訳だからな。

 まぁ、それは置いておこう。


 兎に角、調査に来た俺たちは同じ目的のシズトたちと偶然ばったりあったのだ。


「あれ、オクト。久しぶり、こんな偶然あるんだね。」


「お久しぶりっす。2人とも。」


 シズトがはにかみながら、カーメイは普通に俺たちに挨拶をして来た。

 これで、シズトに会うのは3回目になるな。


「おお、久しぶりだな。シズトたちは何でここにいるんだ?」


「僕たちはここに、子連れの蟒蛇が出るって言うから、調査に来たんだよ。湖を飲み干したって話もあるくらいだからね。」


 シズトの目的はやはり、俺たちと同じ目的だったらしい。


「それよりも、オクトの後ろの人たちは誰?」


「私のことを忘れてしまったのですわっ⁉︎」


「いやいや、ちゃんと覚えてるよ。コックちゃんだよね。」


「それは私の魔法の方の名前ですわっ⁉︎」


「師匠、からかうのはやめるっす。クックさん、ちゃんと覚えてるっすから、安心してくださいっす。」


「それで結局、後ろの5人は誰なの?」


 自分で話の本題をずらしたはずなのに、さも当たり前のように、本題を促す。

 相変わらずのマイペースさといった所だな。


「ボクかい、ボクはね「泥棒勇者の中の人だ。」」


 この、待ってましたと言わんばかりの振りから、自信満々に仮面を出現させたところで、焦れったくなった俺は先に答えを言う。

 あのノリは一度見ればお腹一杯だ。


「ああ、道理で聞き覚えのある声だった訳だね。」


 自己紹介を潰され、固まっていたバクさんが再起動し、矛先が俺へと向く。


「オクトくん、お約束と言うものが「私はサファイア。」」


 また、バクさんが最後まで言い切る前に、ウチの気分屋が自己紹介を入れる。


「ラビはラビだよ〜。」

「アタシはドグだ。」

「あの…、バドです。」


「うん、4人ともよろしくね。」


「よっろしく〜。」

「いぇ〜い。」


 コミュ力の化け物であるシズトとラビの2人は、一瞬にして仲良くなり、ハイタッチまでしている。


 俺たちに感動の再会というのは似合わないらしい。


「蟒蛇が出たぞーっ!」


 鬼人族の男性が叫び、その言葉にこの場の全員が振り返る。

 元々台無しであった再開を、更に台無しにした根源へと俺たちは一斉に走り出す。


 そして、辿り着いた場所は一件の宿屋(やどや)

 蟒蛇が出たというのに、鬼人族の人たちが寄ってたかってその中を呑気に見物してる。


 鬼人族の人たちは、俺たちより背がだいぶ高く、そのせいでよく中が見えない。


「すいません、ちょっと通してください。」


 そんな声をかけながら、人だかりを掻き分けて進むとそこには、倒れ臥す鬼人族たちの姿と1人の30代半ば程の呑んだくれの姿があった。

 だいぶ体格が変わっているが、その顔を忘れるはずが無い。


「ヒガさんっ⁉︎」


「おう?タコの坊主じゃねぇか。」


「いや、タコじゃねぇしっ。」


 そこに居たのは、王都から捕縛依頼が出ている勇者一味の1人『泥酔勇者』火我 嗣水の姿があったのであった。

お読み頂きありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ