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3.23章

お待たせしました。

3.23章の投稿となります。

お読みいただければ幸いです。

「合図だ、行くぞエイト。」


 三回空で光が瞬いたのを俺も確認した。


 エースは体に身体強化魔法を発動させたのか、一瞬だけ魔法の光が宿る。


「ああ、パパラチアも準備はいいか?」


「ん。」


 三回が、作戦を次に進めろ。

 二回が、作戦失敗、撤退する。

 四回が、作戦中断、救援求む。

 と、取り決めているらしい。

 正直、そんな簡単なら最初の怪盗の時に教えておけと言う話なのだが。


 作戦完了の合図は無いのかと質問したら、「怪盗は、皆んながお家に帰るまでがお仕事なんだぜ〜。だからその合図はいらないんだ〜。」とラビにドヤ顔で言われて少しイラッとした。


 言い出したのはエースだろうか、遠足気分で怪盗なんて、される側を不憫に思ってしまう。

 だが、帰って全員が顔を合わせるまでが仕事というのは、団員内の結束の強さ…いや、絆と言えば良いのだろうか、それを感じさせた。


「侵入口はあそこだ。調査中に人が使っていないことが判明している。」


 エースは最上階のガラス戸を指すと、紐魔法で結び目のあるロープを出現させ、その先にフックを結びつけると、それを自在に操りスルスルと窓枠へと引っ掛ける。


「エイト出番だぞ。ハートから聞いたが鍵開けのプロフェッショナルなんだろう。先に登り鍵を開けてきたまえ。」


「凄く不名誉なプロフェッショナルだっ。」


 小声で反論するが、ここで駄々をこねる時間など無いので、さっさとロープを登り、最初の時同様に鍵をパパッと開けてしまい、だだっ広い部屋の中に侵入すると、下のエースたちに手を振る。


 それを確認した、エースたちはすぐにロープを登り終え、紐魔法で出現させていたロープを消して、侵入の形跡を隠してしまう。


「では、手筈通り、ダフブスの捕縛に向かおう。」


「パパラチア、先導は頼んだぞ。」


「ん。」


 パパラチアは壁に背をつけ、扉の外を覗き込むと廊下の様子を伺う。


「来て。」


 パパラチアは寄り道することなく、真っ直ぐと目的の場所へと向かっていく。


 廊下には人の気配は全くなく、それどころか部屋数もそこまで多くはない。


「この階に幹部の者しか住んでいない。人が使っているのはたったの3室だけだ。」


 だから周りが静かで部屋がやたらに広い訳か。

 時間帯も寝静まる頃合いの時間帯だが、寝息や寝返りの音一つ聴こえて来ないので不気味に思っていた。


 しばらく歩くと、とある扉の前で立ち止まる。


「ここ。」


 パパラチアが指す扉は何の変哲もない扉だ。その扉には鍵穴があり、扉を軽く押してみるもしっかりと鍵が閉められいる。


「ここはワタシの出番のようだな。」


 エースは鍵穴に手の平を当てると、魔法を発動したのか、直ぐにガチャッと小さい解錠の音がした。


「紐魔法を応用すればこんな鍵開けなど造作もないのだよ。さぁ、どうぞ。」


 なら、最初の鍵開けも自分でやって欲しかったな。

 隠密中なので声には出さないけど。


 扉の鍵を簡単に開けたエースは、扉に手をかけ俺たち2人を部屋の中へエスコートしようとする。


 ギギィッと軋む音を鳴らして扉が開いた瞬間、パパラチアが即座に『それ』に反応する。


荒々しく殺す(アウトローキル)。」


 ガキンッ、ギリギリギリッ!


 刃物と刃物がぶつかり合い、甲高い音が建物全体へと響く。


 突然襲ってきた敵は鍔迫り合いでパパラチアに押し負けたのか、その影は部屋の中へと飛びのく。

 俺は捉えようと触手を即座に顕現させ伸ばすも、横から生えるように出てきた黒いものに触手を切断され、触手は届かなかった。


「1人じゃない。」


「みたいだな。」


 使い物にならなくなった触手を消し、再び新しい触手を構える。


「なっ、なんなんだお前たちはっ⁉︎」


 就寝していたのだろう、部屋の広さに似合ったキングサイズのベットから飛び起きた1人の男性が喚き散らす。


「パパラチア、アイツがダフブスか?」


「そう。」


 どうやら、俺たちの目的の人物は最奥のベットにいる人物で相違ないみたいだ。

 あとは捕まえるだけなのだが、部屋にいる人数が把握(はあく)出来ない。


 恐らく、ダフブスを含めて3人以上。


「なんだっ、なんの騒ぎだっ!」「上から叫び声だっ。」「高い音も聞こえた。」「襲撃かっ⁉︎」「誰かが戦ってるみたいだっ。」「全員武器を持てっ!」


 階下にまで戦闘音が響き渡ったため、階下にいる住人が慌ただしくなり始め、階段の方からはドタバタと走り回る音が聞こえる。


「どうするエース。」


「エイト、パパラチア君たちにはダフブスを頼もう。ワタシはこの中にいる者たちを倒してから合流するとしよう。」


「分かっ…!危ないっ!」


 突如、虚空からナイフが出現し、エースの眼前へと迫る。


 だが、エースはまるで分かっていたかのように、ナイフを素手でキャッチする。


「問題ない。中にいるのはダフブスを含め計4人だ。1人が魔法で姿を消しているようだが、ワタシには見えているぞ。」


 そう言って、何も無いとこに向かってナイフをシュッと投げつけるが、ナイフはピタッと空中で止まり、透明になり見えなくなった。


 …ナイフ投げ俺も練習しようかな。


「見えなく出来るものはどうやら自分の身に付けているものだけのようだな。」


 ナイフをわざわざ返したのはそういう理由か。

 けどなんで、見えてるんだ。

 俺には全く理由が分からない。


「何をしておるお前たち、さっさと彼奴(あやつ)らを殺さんかっ!」


 ベットの上で自分が狙われる恐怖に怯えたダフブスが更に大きく喚き散らす。


「エース、敵は任せた。」


「では、そちらにはダフブスを任せよう。」


「任された。」

「ん。」


 扉での攻防を繰り広げていたエースが真っ先に月明かりに照らされる室内に飛び込み、ダフブスに向かって走る。


 先ほどと同じように虚空からナイフが飛び、黒い何かが床から飛び出し迫る。


 エースはそれを難なく、拳で打ち砕くとエースはダフブスの襟首を掴み此方に投げ飛ばす。


「グエッ。」


 ダフブスは蛙のような悲鳴をあげ、扉の外へと転がってきて蹲る。


「閉めろっ!」


 扉を閉めろと叫ぶエースを信じて、俺は扉を触手で掴み勢い良く閉める。

 バタンッと扉が閉まった直後、黒い何かが針のように突き刺さり扉に穴を開ける。


「これは影か?」


 そうとしか表現出来ないものは、獲物を逃したことを理解したのか、スッと扉の中へ引きずりこまれるように消えた。


「エイト、聞こえているな、三回だ。」


 扉越しにエースの声が聞こえる。

 三回といえば作戦を次に進めろだったはず。

 つまり、この騒ぎを利用するということだろう。


「分かったっ。」


「居たぞっ!最上階だっ!」


 何とか室内戦闘を避け、難を逃れたと思ったが、騒ぎに駆けつけてきた数人に見つかってしまった。


 息つく暇も無いとはこのことか。

 俺は直ぐに触手をダフブスに伸ばし、逃げられないように拘束すると、直ぐに戦闘へと移る。


 最初に駆けてきた両手に剣と盾を持った敵に触手を真っ直ぐに伸ばすと、片手方の盾で防ぐ、だが、逆に触手の吸盤で掴み、盾を取り上げると空いた腹に触手で打撃(ブロウ)を決める。


「うっ…。」


 最初の男がドサリと倒れるが、まだまだ敵は押し寄せる。

 だが、戦闘になるまでには僅かながら時間がある。


「ここは俺に任せろ!パパラチアっ、代わりに合図を頼む。」


「ん。」


 くぅぅぅぅっ、いつかは言ってみたいセリフシリーズの1つを使う日が来るのとは、っと浸っている場合じゃないか、今は集中しないとな。


 パパラチアは俺の代理でクローバーへと合図を送りに行ったのを確認すると、視線を階段の方へ向ける。

 既に5、6人が集まり始めており、こちらを伺っている。


「退けっ、俺がやるっ!」


 その集団の後ろから双剣の男が身を低くして飛び出し、体の前に双剣をクロスしながら走ってくる。

 先程と同じように真っ直ぐに触手を伸ばすが、伸ばす先から微塵切りにされて行く。

 威力から考えて、剣魔法持ちと考えて良いだろう。


「グヒャヒャヒャヒャッ!手も足も出ねぇってかっ!」


 出してるのは初めから触手なんだけどな。


「貰ったぁぁぁっ。」


 双剣の男は跳ね上がり、両手の双剣を逆手に持って空中から迫る。


 ので、天井から触手を顕現させ、死角から手元を縛り上げる。


「なっ⁈」


「なっ⁈っじゃねぇよ、そんな隙だらけの攻撃をする方が悪いだろっ!」


 そのまま振り子のように、天井に叩きつけて意識を奪う。


「なんだアイツ。」「ダフブスさんを掴んでるのはなんだ?」「気色悪いわ。」「新種の魔物かっ。」「でも、人の形をしてるぞ。」「じゃあ、一応人人間なのかっ。」


 俺の固有(しょくしゅ)魔法に驚き、敵たちが騒めき始める。


「いや、海人族かもしれないぞっ。」


「「「「ああっ、成る程。」」」


「よし、アンタら全員ぶっ飛ばすっ!」


 スクド オクト=海人族という式を成り立たせ納得をした敵を一掃するために、俺は右腕にある触手を顕現させる。


「おい、アイツまた何かしてるぞっ。」


 一番前にいた奴が、俺の新たに顕現させた触手に素早く気づいて叫ぶ。

 だが、この廊下のフロア内の距離なら俺の魔法のギリギリ攻撃範囲内であり射程範囲内だ。


 右腕を目一杯伸ばし、その触手の先端を敵に合わせる。


「喰らえっ!ロケット触手パンチッ。」


 技名を叫ぶとロケットのような速度で触手が射出され、男のボディにめり込み、吹っ飛んで行く。

 その触手はというと、既に手元まで戻り縮んでいる。


 これはそう、その技はロボット好きなら誰しもが憧れるロケットパンチ。

 その触手版である。


 そして、火も吹かなければ、手元に戻ってくるという何という地味さだろうか。

 男の憧れが泣きながらグーで殴ってきても文句は言えない。


 さて、この触手は何の触手かというとイカの触手だ。

 イカには魚を一瞬にして捉えるために隠れた触手があり、その触手の速度は伸ばしきってから戻るまでの時間は驚きの1秒以内だ。

 到底、目で追える速度ではない。


「なっ、何が起こったんだ。」「分からん。」「突然味方が吹っ飛んだぞ。」


 察しが悪い目の前の敵は理解が及んでいないようだからもう一回だけ宣告する。


「だからぶっ飛ばすって言ったろ。」


 俺は再び右腕を構え、次々と獲物を屠って行くのであった。


お読み頂きありがとうございました。

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