3.19章
お待たせしました。
3.19章投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「成る程、分かりました。報告有難う御座いました。流石は白金冒険者の方ですね。」
「ん。」
深々と頭を下げ、受付嬢がパパラチアとクックにお礼をする。
俺はそれをなるべく離れて見ているだけだ。
ミーティスさんの家から依頼をこなして冒険者組合へと戻ってきた俺たちは、アウルムホークの報告をさっさと済ませることにしたのだ。
「終わったか、じゃあ、素材を買い取って貰いに行くか。」
冒険者組合にも買取を行ってくれる場所はあるのだが、今回は素材は武器にしようと考え、直接持ち込むことにしたのだ。
素材は勿論アウルムホークだ。
金属質の羽ならかなりのものが期待できる。
俺は鼻歌をしそうなくらいのテンションで武器屋に向かうのであった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「なんでアイスピックを作ってくれないんだっ⁈」
「うちが武器屋だからだわいこのド阿保っ!」
「じゃあ、作ってくれよっ。」
「嫌だっつってんだろがいボケッ!」
身長160に届かない位の小さくてムキムキな髭を蓄えた老人が怒鳴る。
彼の種族はドワーフだと思われる。
「じゃあ、彼のは作らなくて良いですわ。」
「おい待てポンコツ。」
クックが武器屋のおっさんとの会話ち割り込む。
何勝手に話を進めてくれちゃってるんだ。
俺だって金色の武器とか、少しは勇者っぽくて憧れてたんだぞ。
「その代わり、私に包丁を作って下さいですわ。」
「帰れッ!」
ドワーフのおっさんが額に青筋を作りながら怒鳴る。
「ナイフ作って。」
「かえ…ここでまともな依頼だとっ⁈」
パパラチアが最後に自分の依頼をする。
おかしい、全部まともな依頼のはずなのだが。
はぁ、本当は買い取って貰いたかったのだが仕方ない。
「素材の余った分は融通するぞ。」
持っていても持ち腐れだからな、交渉の材料になるなら良いか。
カウンターで胡座をかいて視線を合わせようともしないおっさんに、スッと素材を置く。
「はっ、巫山戯た注文をする輩が持ってきた素材なんぞ…アウルムホークの羽根だとぉっ⁉︎」
一応見てくれるんだね。
やはり、商売人としての性根というやつだろうか。
視線を素材にくれたおっさんは顔に驚愕を貼り付ける。
「どこで盗んできたんだ、この馬鹿たれ共めっ。」
あっ、そうなっちゃいます。
「盗んでなんかねぇよ、正真正銘コイツが倒したんだ。ほら、冒険者プレート見せてやれ。」
俺らの会話をボーッと聞いていた(多分)パパラチアの肩を掴みズイッと前に出す。
「ん。」
首に下げていた冒険者プレートを引っ張り出し、おっさんの顔の前に出す。
「白金冒険者だと、このちっこいのがか。信じられんわい。」
おっさんはあんぐりと空いた口に手を当て、本日二度目の驚愕をする。
「どうだ、これで分かってくれたか。」
「けれどもなぁ、儂にもプライドってもんが……おい、その腰に着けてるもん見せい。」
それでもなおも渋り、値踏みするようにこちらを見るおっさんの目が俺の腰に止まる。
「ん、これか。」
中型ドラゴンの骨製アイスピックをカウンターに置くと引っ手繰るように、おっさんは手に取り舐め回すようにマジマジと観察を始めた。
「おい、これは。」
「ああ、武器屋の親父が作った、中型ドラゴンの骨製アイスピックだ。」
「包丁もありますですわ。」
「これですわ。」とクックは中型ドラゴンの牙製包丁を並べる。
「どれも一級品ではないか、この出来栄えは製作者の熱意を感じるわい。」
良かったな武器屋の親父。アンタの作った武器が大絶賛されてるぞ。
「作れない?」
ここでパパラチアが、どうとでも解釈出来る一言を放つ。
俺の予測では、俺たちの会話など全く聞いておらず、単純に自分の質問の返答を聞いているのだと思う。
だが、このタイミングでその一言は別の誤解を生む。
「なんだとぅ、儂にコレよりも良いもんが作れんと言ったのかっ。良かろうっ、お主らの依頼を受けようとではないか。」
実力を疑われたと勘違いしたおっさんが、江戸っ子を彷彿とさせながら依頼を受けると言った。
「じゃあ、依頼内容を纏めるぞ、アイスピック一本と包丁一本、それとナイフが二本だな。」
「待て、ナイフが一本の増えとるぞい⁈」
「いやぁ、ナイフが一本ボロくなってたのすっかり忘れててな。ついでに頼む。」
「あ、後ハンマーをお願いしますですわ。」
意外な物を頼むクック。
「更に注文を増やすだとう⁉︎ぬぅ、うちは安く無いからな。」
「そこは余った素材を足しにしてくれ。」
素材を分担し、3人で持てるだけ持って帰って来て助かった。
流石にあれをそのまま土の下は勿体無いからな。
「くぅ、ぬぬぬぬぬぬぬぬぬ。はぁ、わかった。3日後取りに来い。それまでに完成させて置くわい。」
重い溜息を吐いた後、遂に折れたのか承諾をくれた。
「随分と早いんだな。」
アウルムホークの金属羽根を溶かして使うのだろうから、かなり時間がかかると思ったのだが。
「儂は鍛治魔法持ちだ。金属を溶かすしたり曲げたりするのに苦労はせんわい。」
手をしっしと払い、用が済んだなら帰れと追っ払おうとする。
どう考えても客にする態度じゃないな。無愛想すぎるだろ全く。
武器屋の親父もこののおっさんもそうだが、製作と売り手で分けた方が良いと思う。
何故、自分でカウンターに立ちたがるのだか。
売り子を雇えばこっちとしてもスムーズに依頼が済みそうで助かるのだが。
「あっ、これハンマーの設計図ですわ。」
クックが横から手を伸ばし、紙をカウンターに置く。
「嬢ちゃんコレ、儂の台所で見かけた事がある気がするぞい。」
「ハンマーですわ。」
「それもそうなんだが…。」
「ですわ。」
「はぁ、分かった、分かった。もう良い疲れたわい。はよ帰ってくれ。」
ハンマーなんて使えないだろと思っていたのだが、話を聞く限りそれも調理器具の一つなんだろう。
おたまと菜箸くらいしか持ったことのない俺には分からないけど。
疲れたきった武器屋のおっさんの姿は、入店した時よりも、より一層老けて見えたのであった。
「売り子雇おうかなぁ。」とぼやきが聞こえたのは心の内に留めて忘れておこう。
お読み頂きありがとうございました。




