3.18章
お待たせしました。
3.18章を投稿させて頂きました。
お読みいただければ幸いです。
「おお良かった、無事みたいだね。」
駆けてきたのか、額の汗を手で拭いながらミーティスさんが安堵の息を吐く。
「うちの子たちが急に騒ぎ出すから、心配で覗いて見たら、僕が見たのより大きいのと戦ってるから心配で。」
「はい、確かに別種ですが、この通りもう大丈夫ですわ。」
「そうかい、他の種類まで出て来たのかい。だとすると、報酬を他に払わないといけないね。」
「俺たちが勝手に狩っただけだから、報酬は最初の金額通りのを組合から貰うだけで良いよ。」
本来であれば、アルゲンホークを狩った時点で、依頼完了のサインを貰って撤退しても良かった所を俺たちが勝手に狩っただけだ。
それに今回は不測の事態だった。
勿論虚偽の報告をしたというなら、冒険者組合から重いペナルティが課せられるが、アウルムホークの存在を知らなかったというのが事実だと思う。
なにせ、こっちもアルゲンホークを捕まえるまでは気づかなかった訳だからな。
組合にはパパラチアの名前で、アウルムホークが出現したが狩ったという報告だけ入れておけば良いだろう。間違ってないしな。
「それに、牧舎をボロボロにしちゃったしな。」
牧舎は最初と比べ、随分と風通しが良くなった匠仕様となっている。
「仕方ないよ、それはあの銀の大きいやつが出た時から覚悟していたことだよ。幸い中に居た子たちはみんな無事だしね。」
「取り敢えずお互い目立った被害が無くて良かったのですわ。」
「うん、そうだね。」
ミーティスさんは本当に気にしてないといった様子で笑った。
「あ、そうですわ、依頼書に拇印かサインをお願いしますですわ。」
「うん、分かったよ。書くものが必要だね、一旦家に戻ろうか。」
ミーティスさんの後をついて行き、サインを貰った所でミーティスさんが質問をして来た。
「これから君たちはどうするんだい、今から街に戻っても遅いだろう。もう一泊して行ったらどうだい。」
今から街に戻ろうとしても、途中で日が暮れて野宿する羽目になりそうだ。
それに、2匹の鷹の処理も手付かずのままだ。
ここは是非とも泊まらせてもらいたい。
「ありがとう、明日の朝にここを出ることにするよ。」
「その方が良いですわ。私も野宿は好きではありませんですわ。」
「ん。」
この場の全員が賛成みたいだ。
「うん、是非そうしてくれると嬉しいよ。」
「ミーティス、アンタはのんびりしてないでさっさと屋根の修理に行きな。」
会話が終わった所でイーラさんが尻を叩くようにミーティスさんを働きに出す。
「あっ、そうだね。すぐ行ってくるよ。」
ミーティスさんは言葉通り、直ぐに外へと飛び出して行った。
「クック、俺たちも片付けに行くぞ。」
「はい、今日のスープは鶏肉のスープですわ。」
もう夕飯のメニューを決めてご機嫌なクック。
鶏肉スープか久し振りに食べるな。
クックが作るとなれば絶品間違いなしなので、想像するだけで涎が垂れそうだ。
「オクトは火の準備をしておいて下さいですわ。パパラチアさんは肉を運ぶのを手伝って下さいですわ。」
「ん。」
クックとパパラチアも外へと駆け出して行った。
2人を見送った俺はイーラさんに許可を取り夕飯の支度に移る。
まぁ、火起こしと水汲み、食器の準備しか出来ない訳だが。
昼飯を食い逃した分、余計にテキパキと仕事をこなして行った。
しばらくして、両手バケツ一杯にどれだけ食べるんだと思うほど肉を切り分けたクックとパパラチアが戻ってきた。
あのサイズだと手間取ると思っていたが流石クック。
そういえば首から落としてたからな、血抜きも手間取らなかったのかもしれない。
クックは直ぐに夕飯の支度を始める。
まず鶏肉を食べやすいサイズに切り分け、軽く焼いて火を通すと肉を鍋に入れ、薄くスライスした野菜を投げ込むように入れると、ダシを取るためか骨と一緒に水を入れ茹で始めた。
手の空いた時間で肉を今度は普通に焼いてき、香草で肉の臭みを消していき、こっちは直ぐ完成した。
どうやら鍋の方も肉を焼いてるうちに完成したようだ。
夕飯の支度が終わり、食卓に並ぶのは肉と肉の入ったスープとパワフルな並びになった。
だが、2日連続で肉を逃しているのだ。
やっと肉にありつけることに感謝しなければ。
「頂きます。」
手を合わせ、挨拶をすませるとすぐさま肉に齧り付く。
肉汁が口一杯に広がりとても幸せな気分だ。
鶏肉のスープも野菜にまで味が染み込んでおり絶品だ。
「美味い。」
「美味。」
「そうだね、毎日食べれる君たちが羨ましいよ。」
「アンタは少しは見習ってほしいよ。」
食卓に笑いが溢れる。
そんな夕食の会話の中、クックがイーラさんに質問する。
「そういえば、後どれくらいで産まれるのですわ。」
「2ヶ月くらいかね。」
「うん、楽しみだね。」
2人とも笑顔で答えてくれる。
2人を見ていると此方まで少し嬉しくなりそうだ。
そんな会話を弾ませながら夕食も終わり、大物相手の疲れからか、直ぐに3人とも眠りに着き翌日の朝を迎えた。
「お世話になりましたですわ。」
「いつでもまた来な。」
「はいですわ。」
昨日、一昨日と親睦がかなり深まったクックとイーラさんは、互いの手を取り合い握手をする。
「次来るときは出産祝いが必要だな。」
「あはは、それは楽しみだよ。」
かく言う自分もミーティスさんと握手を交わす。
「じゃあ、もう行くよ。」
「うん、良き冒険を。」
牧場の夫婦は俺たちが見えなくなるまで、その背を見送ってくれたのであった。
お読み頂きありがとうございました。




